2017年10月4日水曜日

吃音者と働く 職場で吃音者の合理的配慮がうまくいかないのはなぜか?

吃音者雇用ガイドラインです。随時バージョンアップします。
2017年10月4日NHKのハートネットTVで私たちの就活 —吃音とともに生きる— が放送されます。こちらは吃音者が吃音を持ちながら一般枠就労を目指すという内容です。このような吃音者の選択も良いでしょう。しかし合理的配慮がほしいという吃音者もいます。合理的配慮をするから精神障害者保健福祉手帳を持っていてほしい。法定雇用率に計算したいという企業団体や行政機関の採用担当者もいるでしょう。今回の記事は吃音者と職場側の『吃音の認識の違い、情報が共有されていない』がゆえに起こる課題について取り上げます。




―――吃音者の就職活動、吃音者への合理的配慮はニュースになるなど意識が高まっています 検索ワードでも増加してきました しかし大きな課題があった!

吃音者と働く、吃音者と働きたいと考える、企業団体や行政機関が増えてきています。
ここで大きな課題がわかりました。

発達障害者の就労移行支援をする人、障害者枠の採用担当、特に発達障害者の採用担当や職場内での合理的配慮を考える立場の人から、こんな声がありました。

『吃音者がどれくらい吃るのかわからない。面接のときに、私どもります。配慮してほしいと言われて、面接官・採用担当部署もそれを「わかった」というのですが…。そのあとがうまくいきません。』

『採用したあとに吃音当事者が、思ったよりどもる。吃音が中度・重度だったことがわかったのです。これでは仕事になりません。どうしたらいいですか?』


これについて筆者は色々考えました。
なぜ、うまくいかないのか?

1.吃音当事者が言う「私どもるんです。吃音があるんです」
2.面接官、採用担当が考えるまたは知っている吃音のイメージによる「この人どもるんだ。吃音者なんだ。まぁでも面接でも普通に話してるし大丈夫だろう」
この1と2が100%一致していないからです。


吃音者の認識している吃音というそのもの。



吃音 ← ここに認識の違いが生まれることによりトラブルになる。



採用側、雇用側が認識している吃音というそのもの



―――吃音当事者が言う「私どもりますから合理的配慮してください」と面接官や採用担当部署が理解している「吃音、吃るというそのもの」がどういう状態か完全に一致していない


吃音者は「私どもります。吃音があるんです。」
面接官、採用担当「大丈夫ですよ。」
この段階で吃音者は全てが受け入れられたと思い込んでしまう。
面接官、採用担当は、今は上手く話せているからいいか。

そうなのです。
たとえば、発達障害者が就職活動をする場合、エントリシートや履歴書の中に、『私の取扱説明書』、『私はこんなことが苦手ですリスト』、『してほしい合理的配慮・助けてほしいことリスト』などを別途準備してそれを提出します。文書化して見える化します。2018年現在、就労移行支援事業所によっては、就労移行支援事業所、採用側、当事者の間で合理的配慮事項を決定した書類を印刷して保存するという場合もあります。後々の言った言わない問題の回避や採用側(官民企業団体)に採用されたあと上司や同僚に説明する場合に必要、上司が変わった場合、異動した場合などの情報引き継ぎに使うためにも書面化するということです。

発達障害者向けの就労移行支援事業所であれば、就労移行支援事業所の環境がすでに会社という状態になっている場所もあります。上司役の人が数名いて、そのもとで利用者さんが訓練をするという形です。ここでリアルな現実に適応した就労訓練を行います。そこで利用者さんが「自分は何が苦手?何が大変?今日は何を注意された?今度はミスしないようにどういう工夫やアイテムを使う?困ったときは誰に相談する?職場の同僚(他の利用者さん)とはどう接する?上司へはどのタイミングで話しかける?メールで?電話で?言葉遣いは?」という実体験をしながら成長していきます。

利用者さんは実際の会社や職場が再現された環境で、自分の得意不得意を知り、失敗や困難な状況になるまえに避ける方法、アイテムの利用、スマートフォンアプリなどの利用、詳細な順番を書き起こした仕事手順書の作成、困ったときはわからないときは自分で判断しない上司に質問する。報告連絡相談をするということができるようになります。

それでも難しい、失敗してしまう場合は、私の取扱説明書で、「こういう場合、私はミスしやすいです。疲れやすいです。私がこんな行動をしていたらパニックになっているかもしれません。声をかけてください」といったことや「集中したいのでこういう場合は声をできればかけないでください」、「私は一人が好きなので、食事は一人でしたいときもあります。付き合い悪いなと思わないでください」、「感覚過敏があるのでイヤーマフを使っています。ノイズキャンセリングヘッドホンをしています。怒らないでください」などなど色々文章化して、面接官や採用担当者、採用後に働く職場に情報共有します。


上に書いたこと。これが吃音当事者には存在していないのです!!
これが存在していないが故に、面接官・採用担当者、採用担当部署もその後配属される職場も【吃音者がどもった場合にびっくりする】、【思ったより吃音が酷くて仕事にはならない(辞めるように仕向けるということも)】ということになっているようなのです。


この課題を解決するには【吃音状態がどの程度なのか?】を文章に書き起こす必要があります。尺度も必要になります。医療では吃音検査法という尺度があります。しかし働く現場環境を基準にした再現したリアルの尺度は筆者の知る限りありません。医学上の診断では、職場という常にいろいろなことが起こるかもしれない環境は想定されていないからです。
また吃音状態で吃る時に吃る事・発話発語の困難さ以外にどんな外見上の変化があるのか?相手におよぼす影響についても文章にしなければいけません。


―――吃音のこと、吃音状態がでると発話発語がどうなるのか?何秒間吃るのか?合理的配慮とは当事者も相手も「個々の人間ごとに個別の事例ごとに話し合い、お互いに一致した状態」をつくらないといけない 『私どもるんです』→『わかりました』が1番あぶない

・どのくらいの秒数吃るのか?どんな場面が吃りやすいのか?
まずは1番重要なところです。
吃音当事者ごとのどのような仕事・職務で吃るのか?『吃る時間』の見える化が必要になります。
発達障害者の就労移行支援事業所でも吃音者の就労移行支援の中でストップウォッチをつかって、吃る時間の計測が必要になるかもしれません。

●どもることによりどうなるのか?こういったことを見える化文書化すると良いかも
・●●な場面で■■秒吃ります。▲▲秒無音になります。(いろいろな場面を想定して過去を振り返り、文書化すると良い)
これが雇用する側、採用する側が1番知りたいことです。
吃る場面ごと、どれくらいの秒数吃るのか?
そこまで吃るなら発話発語にこだわる必要ないよね。テキストやメールでのコミュニケーションも使ったほうがいいかもしれないと選択肢を考えることができます。

・吃りながら唾液を飛ばしてしまう
だから、職場内でマスクを着用したいと申し出る。

・吃るとき、敬語よりもタメ口、友達言葉を使ってしまうかもしれない
こうなってしまった場合は、怒らないでほしい。触れないでほしい。自分でも悪いという感情はありますと申し出る。

・会社名、人名、お客様の名前、薬品名、モノの名前など言い換えができないときは吃ることがありますと申し出る。

・吃るとき、手足や頭、首が不自然に動いてしまうかもしれない。
このほうが発話発語しやすいのです。それを怒ったり指摘しないでほしい。こうなってしまう時もあるのでよろしくお願いします。

・吃らないようにするため歩きながら話すことがあります。
職場内を歩きながら話したり、壇上でスピーチや説明するときにスティーブ・ジョブズ氏のようにあっちこっちに歩き回りながら話すことがあります。



―――しかし、吃音者が合理的配慮を求める、自分の取扱説明書などなどの書類を就活で提出するとなると、一般枠での勤務は難しい(または一般枠で働くにしても法定雇用率に計算したいから障害者手帳はもっていてほしいと言われる)、障害枠での採用になるのではないか?という場面も想定される

発達障害向けの就労移行支援事業所では当たり前の説明なのですが。吃音業界では全く共有されていない情報です。

就職活動には、障害をオープンにして働く「オープン就労」、障害を持っていることを完全に隠して働く「クローズ就労」の二種類があります。クローズ就労の人でも精神障害者保健福祉手帳を持っている人はいます。クローズ就労の場合でも通院、服薬、ソーシャルスキルトレーニング、発達障害特性により仕事をミスしないようにいろいろなアイテムやアプリを使い頑張るという人もいます。頼りになるのは自分自身ということになります。

※クローズ就労の人でも精神障害者保健福祉手帳を取得できることを考えると、吃音者も吃音が軽度でも精神障害者保健福祉手帳を取得できることがわかります。医師がどうやって申請書類を書くのか?吃音の困りごとを理解しているかが重要になりますね。


オープン就労の場合は基本的に障害者枠採用になります。ただし、職場では合理的配慮をしっかりしてくれます。

クローズ就労の場合は一般枠で働きますが、苦手なこと失敗しそうなことがあっても、全部自分自身で解決しないとなりません。弱みを見せることはできません。

発達障害向けの就労移行支援事業所ではオープン就労の場合の履歴書の書き方、自分の取扱説明書などの書き方について丁寧に教えてくれます。しかしクローズ就労の場合、障害や病気、苦手なこと合理的配慮してほしいことは書いてはいけませんと指導します。もちろん書いていいのですが、一般枠でこのような応募者があった場合不採用になるということを就労移行支援事業所はよく理解しているからです。(このへんは今後変化してほしいとは思いますが、現実はそう甘くないようです。精神障害や発達障害を発見する採用試験がビジネスモデルになっている現状もあります)


さて、ということは。
吃音者も『吃る時間・吃る場面』を克明に文書化した私の取扱説明書を提出するということになれば一般枠採用が大変困難になるのではないかということになります。しかし吃音者は障害受容ができない人もいますので、障害者枠を受け入れないという場面もあります。今後、障害者雇用をする企業団体、行政機関、障害者就労を支援する団体、就労移行支援事業所、障害者向け就活サイトなどが吃音者の実態を知り、どうしたらいいか考えることも必要になるかもしれません。


以上 この記事はバージョンアップします。


関連記事
全文テキスト化 私たちの就活 吃音とともに生きる ハートネットTV
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2018/03/tv.html

2017年10月1日日曜日

【番組紹介】10月15日 バリバラにて場面緘黙を放送

番組紹介です。
2017年10月15日(日曜)放送のバリバラにて場面緘黙が放送されます。
過去には2015年にハートネットで場面緘黙の放送がありました。
今回はバリバラですので、少しテイストが異なるかもしれませんね。

詳細はコチラ 
「知られざる場面緘黙(かんもく)の世界」
学校など特定の場面や状況で話せなくなる状態になる「場面緘黙(かんもく)」。不安障害の一つとされ、場面緘黙のある人は500人に1人ほどいると言われている。しかし、ただの“人見知り”と思われがちで、困っている事を伝えるのも困難なことから、周囲の理解を得られずに孤立している人も少なくない。番組にもたくさんの悩みの声が寄せられている。当事者はどんな生きづらさに直面しているのか、”あるある“エピソードやコミュニケーションの工夫などを紹介。周りはどんな風にサポートすればよいのか、考えていく。
http://www6.nhk.or.jp/baribara/next/

2017年9月27日水曜日

10月4日のハートネット 吃音当事者さんは顔出しなの?プライバシーは大丈夫なの?

10月4日放送のハートネットTVです。
吃音者の就活だそうです。
現在、ホームページを見てとても驚いているのと同時に心配なことがあります。
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/program/index.html?id=201710042000

「顔出し」でやるのでしょうか?

「名前」は出すのでしょうか?

「仮名」なんでしょうか?

「音声加工」はするのでしょうか?

就活生を顔出しや名前出しで放送するのはリスクがとても高いです。
ハートネットTVは医療従事者や福祉従事者、支援者も見ますが。障害関連だと、官民企業団体の障害者雇用担当者、就労移行支援事業などに携わる人も視聴します。また、悪意を持って見ている人もいます。精神や発達障害者発見試験などを販売する人たちです。

もしも今回、吃音者の就活という番組に出る人が「クローズで就活」しているなら、絶対に顔出しや名前出しはダメです。リスクが高すぎます。

「オープンで精神障害者保健福祉手帳を取得している状態で就職活動するなら」それはまだマシかもしれません。

ただ、吃音以外の発達障害児者団体なら就職活動をする新卒学生がテレビ番組に出演するという場合に顔出し、名前出しについてはリスクの説明を当事者に何度も何度もします。まずはモザイクと仮名での出演をするようにと話し合います。テレビ局やテレビ局から委託され番組撮影をするスタッフもそういうことは理解していると思うのですが…。支援者も当事者を守るためできるかぎり個人がわからないようにしてほしいと働きかけるはずです。
今回「私たちの就活 —吃音とともに生きる—」という吃音当事者の就活番組が放送されますが。もし顔出しだとしたら、今からでも遅くないので、顔も服装もモザイク入れたほうがいいと思います。(可能なら音声も変更します)

吃音業界の支援者や支援団体は出演者に何も言わなかったのか?と心配になります。
発達障害関係の番組はできるかぎり当事者が誰であるかわからないように番組制作するのがセオリーです。

NHKハートネットであれば、ASD当事者など発達障害児者の番組を何度も報道しているのでそれはわかると思います。発達障害の当事者団体、保護者団体も当事者がわからないようにしてほしいとNHKハートネットの番組スタッフに伝えるでしょう。普段から発達障害関連の番組に携わっているNHKハートネットのコアスタッフもそこは理解しているはずです。それなのに現在ハートネットTVのホームページを見る限り、就活する吃音者は顔出しのように見受けられます。心配です。

NHKハートネットでも発達障害者向けの就労移行支援事業所を取材したときもできるかぎり当事者がわからないように撮影しています。普通はそういうものなのです。

吃音業界は発達障害業界と比較して、本当に情報が周回遅れです。
就職活動には「オープン」、「クローズ」の2種類しかない。ということが理解されていません。極稀にイレギュラーがありますが。原則としてオープンかクローズしかありません。発達障害者向けの就労移行支援事業所でも「オープンとクローズ」についてはとても丁寧に何度も説明します。オープンの場合、クローズの場合で履歴書、エントリーシートの書き方が異なること。オープンの場合は自分の取扱説明書などそれに準ずるものの書き方も指導します。

しかし吃音業界はまだまだそうなっていません。
今回のハートネットTVに顔出しででてしまい、あとで不利益があってもなんともいえません…。何事もないことを祈るばかりです。

2017年9月26日火曜日

【番組紹介】9月26日27日 NHK(Eテレ)で『自閉症アバターの世界 仮想と現実を生きる』が放送

メーリングリストで紹介されてきました。
今日、明日放送だそうです。




『ハイパーワールド:共感しあう自閉症アバターたち』(2017年3月刊、NTT出版、
2,808円)で書かれた自閉症アバターたちに会うために、著者・池上英子先生が全米
各地を旅してきました。その記録が、NHK(Eテレ)の「ハートネットTV」で、二夜連
続で放映されます。

2017年9月26日(火) 20:00~『自閉症アバターの世界 仮想空間の住人達』(再放送
は10月3日 13:05~)

2017年9月27日(水) 20:00~『自閉症アバターの世界 仮想と現実を生きる』(再放
送は10月4日 13:05~)

「インターネット上の3D仮想空間として誕生し、10年前にはバーチャルコミュニケー
ションの一時代を築いた「セカンドライフ」。SNS等の登場でブームは去ったもの
の、今もそこを楽園として居住している人々がいます。自閉症の人達です。
米国ニュースクール大学大学院の池上英子教授は、自閉症者には無いとされてきた他
人への共感性が、セカンドライフ内では豊かに存在する事を発見しました。
池上さんは、今回初めて現実世界で彼らの暮らしを知る旅に出ます。出会ったのは、
4人の個性的なアバター達。」(「ハートネットTV」での番組内容紹介より)

*) 『ハイパーワールド:共感しあう自閉症アバターたち』:「大人になった自閉症
の人は世界をどう見ているか。米国では約50人に1人いると言われる「自閉症スペク
トラム」の人たち。仮想空間で遭遇した自閉症の人々が語っていた内面世界は、情報
を過剰なままに取り込んでいる強烈な脳内景色、ハイパーワールドだった。「自閉
症」の社会史への深い洞察と、仮想エスノグラフィーから見える世界を斬新にリポー
トする。」( https://goo.gl/y4EQqP )

*) 9月26日放映の内容紹介は、https://goo.gl/ecHEgD
*) 9月27日放映の内容紹介は、https://goo.gl/AXtzyN

2017年9月21日木曜日

【保護者必見】NHKで発達障害関連番組再放送!!2017年9月22日0時ころから

吃音のあるお子さんの保護者。
吃音のあるお子さんが吃音だけじゃないかもしれないと考えている方。
吃音当事者の方。
吃音当事者で自分は吃音以外にも生きづらさがあると考えている方。


発達障害関連番組が一挙再放送されます。
NHKとNHK教育で2017年9月22日0時ころから再放送の情報です。
見逃してしまった人はぜひご覧ください。
おそらくNHK総合で一挙放送されると思います。
詳細はテレビの番組表をご確認ください。
深夜放送なので録画しておくことをオススメします。



■番組放送予定はこちら
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/

9月2日(土) ・9日(土) ・16日(土) ・23日(土) ・30日(土) 総合 夜11:25
「ハンク ~ちょっと特別なボクの日常~」
★学習障害の少年が主人公 イギリスの人気ドラマ
 5回シリーズ(一話完結)で放送!

9月22日(金) ※21日(木)深夜 これまでの番組を一挙アンコール放送!
① 9月22日 総合 午前0:10
 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」
② 同 午前1:10
 ETV特集「“いるんだよ”って伝えたい ~横浜・特別支援学級の子どもたち~」
③ 同 午前2:10
 ウワサの保護者会 「子どもの発達障害part4 どうする?進学・就職」
④ 同 午前2:40
 ハートネットTV「シリーズ 罪を犯した発達障害者の”再出発” 第1回 少年院の現場から」
⑤ 同 午前3:10
 ハートネットTV「シリーズ 罪を犯した発達障害者の”再出発” 第2回 出所、そして社会へ」

9月24日(日) 総合 夜11時
深夜の保護者会「発達障害 子育ての悩みスペシャル」
★「あさイチ」と「ウワサの保護者会」のコラボ特番
 保護者の悩みに徹底的に向き合います!

9月26日(火) Eテレ 夜8時
ハートネットTV
「自閉症アバターの世界① 仮想空間の住人達」

9月27日(水) Eテレ 夜8時
ハートネットTV
「自閉症アバターの世界② 仮想と現実を生きる」

9月27日(水) 総合 朝8:15
あさイチ「どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」

2017年9月20日水曜日

【番組紹介】10月4日 NHKハートネットにて吃音者の就活について放送 発達障害の部分は説明されるか?

NHK Eテレ、ハートネットTVの紹介です。

私たちの就活 —吃音とともに生きる—
2017年10月4日(水曜) 再放送2017年10月11日(水曜)
今年もスタートした就職戦線。社会に出る期待と不安に揺れる大学4年生。近年、売り手市場が続くなか、取り残されそうな若者たちがいます。吃音症のある就活生たちです。
吃音症とは、発声の際、第一音が出ない、繰り返す、引き延ばすなど言葉を円滑に話せなくなる症状。全世界の人口の100人に1人が吃音者であり、日本では120万人以上の吃音者がいると言われています。吃音は、その場の状況によって不規則に変化していき、家族や周りの人も理解しづらい上、本人すらもいつどこで吃るのか、わからないといいます。医学的にも、その原因や本態は分からず、完治も困難というのが通説です。
多くの吃音者が、自分の障害と正面から向き合わざるを得ないのが就職活動の時。言葉によるコミュニケーション能力が要求される面接は大きな壁となっています。言葉が円滑に話せないことで、コミュニケーション能力が不足していると判断されることも少なくありません。夢を抱くことよりも、吃音による障害が頭をよぎり、話すことの少ない職業を選ぶ吃音者も多くいます。
吃音への理解が乏しい状況で、生きづらさを抱えながら、社会に旅立とうとする姿を追いかけました。
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/program/index.html?id=201710042000





吃音者の就職活動についてEテレが取り上げるようです。
多くの吃音者が、自分の障害と正面から向き合わざるを得ないのが就職活動の時。言葉によるコミュニケーション能力が要求される面接は大きな壁となっています。
と明記されているようにNHKが、NHKのEテレが『吃音を障害である』と表現するのはとても良いことです。今までの吃音業界では吃音が障害ではない障害ではないとしていた空気もありました。しかし吃音があって困っている人がいる。就職活動で悩む人がいるということになります。

ただ、放送まで気になるところがあります。
「吃音は発達障害者支援法に含まれており、精神障害者保健福祉手帳を取得することができると説明するのか?」
「放送では純粋吃音者だけを取り上げるのか?」
「ASDやADHDやLD、チックを持った吃音者も取り上げるのか?」
「吃音と発達障害は異なるんだ!彼らと彼女らと一緒にしないでという空気感で番組が放送されるようなことはないのか?発達障害児者の当事者や保護者が見て悲しくなるような内容ではないか?」

2017年、NHKは発達障害プロジェクトという名目で、ASD、ADHD、LDについては頻繁に多くの番組を放送しています。しかしチック・トゥレット症候群、吃音についてはほとんど取り上げていないように感じます。

吃音業界では「吃音と発達障害は違う」という差別主義者もおり、発達障害を持った人と一緒にしないで、あんな人たちと一緒だと思われたら困るという価値観が蔓延しています。このようなことが当日放送する番組で出てこないだろうか?という心配があります。

2017年9月18日月曜日

8月7日 日本経済新聞の吃音記事について思うこと どこの組織?団体?がやっているの?

(読了目安 15分)
少し古い記事を紹介。
2017年8月7日に日本経済新聞が15面医療健康にて吃音の記事を掲載した。
日経スタイルがそれをネット上に記事公開。引用記事は最下段に。

さて、この記事が出た時に思ったのはどこの誰が研究しているのか?ここです。
吃音当事者団体が吃音の治療や診療ガイドラインを厚生労働省に要請要望したという話が
過去にあるが、それに厚生労働省が応えた結果なのか?ということだ。

また、吃音の記事が日本経済新聞社から、また関連の日経と冠するメディアから発信されるのは影響力が大きいと考える。日本経済新聞と言えば読者層もビジネスに関心がある層、人事部門、採用部門、障害者採用担当部門、発達障害者と一緒に働く人、経営者層が読んでいるともいえる。

吃音(きつおん・どもる人)は障害でもある。
発達障害者支援法に含まれていること。
精神障害者保健福祉手帳を取得できること。
吃音者は法定雇用率に含むことができること。
これらを読者層が知ったというのは大きな一歩だ。
困っている吃音者、障害受容のできている吃音者、障害者枠で働きたいという吃音者と経営者側の情報がリンクしたことになるからだ。

また、発達障害者の就労移行支援事業を行う事業主、経営者も『吃音者も就労移行支援事業所で受け入れるようにしよう』という考えをひらめいた人もいるであろう。

■1 記事本文について

―――記事冒頭は吃音の説明

記事は吃音の説明。幼少期の20人に1人。そのうち7割は自然になくなるという説明だ。
吃音は専門家の間でも病気や障害としてのとらえ方や、治療や対策の考え方に違いが出る難しい分野だ。世界保健機関の定義をもとに、厚生労働省は吃音症という病気の分類を設けている。これに沿って診断を受けると発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合もある。
というように、厚生労働省は吃音の分類を世界保健機関の定義をもとにして発達障害者支援法を利用し精神障害者保健福祉手帳をもらう場合と明記している点も見逃せない。

吃音を診療する医療従事者や支援者の間では、『吃音は身体障害者手帳を取得することも可能』との見解を述べる人間もいる。この場合は『吃音と明記しないで言語障害を表現すればよい』とのことであるが。身体障害者手帳申請書類を書く15条指定医師は 音声・言語・そしゃく機能障害の診断基準に明記されていない状態を書くことを躊躇う人もいる。15条指定医師としての資格を取り消されるリスクもあるためだ。

日本経済新聞では身体障害者手帳については触れていない。発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合、としている。15条指定医師も吃音については曖昧な基準になっている身体障害者での申請よりも発達障害者支援法で明確になっている精神障害者保健福祉手帳での申請を促すだろう。

実は筆者もこの点が気になっており。東京都に確認したところ、『吃音は発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳を申請できる』と説明を受けている。身体障害者手帳も取得できるのでは?と聞くと『発達障害者支援法に吃音が含まれている』と説明を受けた。

この点、日本経済新聞の藤井寛子氏はしっかり取材しているなと受け止めた。
日本経済新聞が『世界保健機関の定義をもとに、厚生労働省は吃音症という病気の分類を設けている。これに沿って診断を受けると発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合もある。』と明記したことは大きな影響がでるだろう。



―――国立障害者リハビリテーションセンターが2016年夏からアンケートを実施
記事中盤では国リハが中心となり、3歳児健診などの際に吃音を調べる調査を昨夏から始めたこと。自治体と連携して親にアンケート調査をし、必要ならば面談もするという。言葉の繰り返しの状況などを確認し、4カ月ごとに質問用紙を送り、計2000人を調べるという。
 
 調査期間は2年で、2017年3月の集計では約5%が吃音と推定されたという。同センターの森浩一部長は「幼児全体では5%よりもっと多いと考えている」と話す。調査を続けると増える可能性があるとみているとのこと。

―――気になるのは「費用対効果」という発言
記事中盤では
 一般に、8歳になるころから、症状はなくなりにくくなるといわれる。早期に日常生活の対策となる訓練を受ける必要性が指摘されている。森部長は「半数以上は自然になくなるため、支援のかけすぎという声もある。費用対効果を考えて、最適な介入のタイミングを調べたい」と話す。
と書かれているが。費用対効果を治療、療育、訓練に持ち出すのはいかがなものか?というのが率直な感想だ。X歳までに、●●をすれば吃音が完治する。寛解するというならばよいが、そうでない場合もよくよく想像してほしいものだ。

そもそも2005年から吃音が発達障害者支援法に含まれていること、それが公に広く周知されるのは2014年7月3日の国立障害者リハビリテーションセンター内部の発達障害情報支援センターが「発達障害の一覧」に「吃音」を加えた日である。

本来であれば2005年から、自閉症スペクトラムやADHD、学習障害、トゥレット症候群の当事者や家族と同じ権利が吃音児者にあったはずである。医療機関の充実や、社会保障制度、合理的配慮、障害者雇用枠の利用、自立支援医療費(精神通院)などなどありとあらゆる面で全く同じ権利、同じ内容を利用できたはずである。

とくに国立障害者リハビリテーションセンター病院は2014年7月3日以前から吃音者に精神障害者保健福祉手帳を取得できることをホームページ上で公開していたのか?医療従事者に吃音は発達障害者支援法に含まれていて、法によりありとあらゆるサービスを利用できますとアナウンスしていたのか?という疑問がでてくる。まさかと思うが費用対効果という価値観で、吃音者に気軽に精神障害者保健福祉手帳を取得されたら日本の財政が傾くというような価値観があったから?吃音が発達障害者支援法に含まれていることを故意に伏せていたのかしら?と想像すると恐怖しかない。

このように発達障害者支援法に吃音が含まれていたことが事実上、見えなくされていた過去があったうえで「費用対効果」という言葉がでてくるのは驚きを隠せない。
困っている当事者が、ライフステージに合わせて、いつでもありとあらゆる制度が利用でいて良いはずである。

そもそも、発達障害者の中でも精神障害者保健福祉手帳3級を取得しているが、服薬、スマートフォンのアプリ、スケジュール管理、リマインダー、イヤーマフ、静かな環境、人が少ない時間に移動、ソーシャルスキルトレーニング、当事者会で悩みを話す、病院で医師や支援者に相談などなど、余暇活動でストレス発散、仕事や職場ではなんとかなるが帰宅した後は何もできないから家族や他人に助けてもらう、仕事や職場で働く時間の体力・ヒットポイントはあるが使い切ってしまう(仕事や職場以外で定型発達を装うのが精一杯でそれ以外の場所で発達障害特性がでてしまう、飲み会や遊びの誘いを断ることも)いろいろな選択肢を利用して健常者・定型発達者を装い、振る舞い、

(上に書いた数々の努力により)精神障害者保健福祉手帳を持っていることを勤務先に隠して、一般枠で働く当事者も存在するからである。吃音だって上手く吃らずに話す方法を編み出して頑張っている人が精神障害者保健福祉手帳を取得することはできるはずなのです。

ここに「費用対効果」という価値観が入ってきてしまうのは悲しいことだと考える。この考えが拡大していくと軽度吃音者は精神障害者保健福祉手帳を取得できません。手帳申請書類を医師が書きません!! などという日本社会に発展する可能性もある。また発達障害者も一般枠で働ける人には精神障害者保健福祉手帳を交付しません!という日本社会に発展する可能性も考えられる。

吃音も含む発達障害は学校や職場だけ「障害特性」が表出しなければいいというものではない。日常生活も、毎日の終わりの飲み会や遊びのお誘いも、買物、銀行、役所の窓口、友人との電話、家族や親戚とのつきあい、御近所付つきあい、パートナーとの時間、余暇活動などどこの場面でも困ったことがあれば精神障害者保健福祉手帳を取得できる。こういった価値観が吃音業界にも、吃音を診療する医師にもひろがってほしいものですが…。吃音業界はあくまでも学校や職場という想定ばかりなのが気になるところだ。

吃音を含む発達障害を一般の人が体験できるシステムができればと思う。発達障害については最近、その世界を体験できる方法が開発されたが、吃音の場合はまだまだ難しい。口が動かない、喉を締められている、頭のなかで何かが衝突している、話したいことを話せない。こういったことが365日、いつどんなタイミングで襲われるのかということである。医療従事者にはこういった「●●障害体験」などは積極的にしてほしいと思う。

2014年7月3日に発達障害情報支援センターの説明に吃音を加えるように指示した、英断した、「英雄の職員」には心から感謝している。あなたのおかげで吃音児者の失われた1X数年に終止符がうたれた。

こういうところを日本経済新聞に取材してほしかったとも思う。



―――診断方法の紹介
費用対効果の語りのあとは。診断方法や治療について書かれている。
診断は患者の年齢もふまえ、音の繰り返し、子音と母音の長さ、単語の途切れなどの症状をみるという。
 子どもの対策では、海外で開発された手法「リッカムプログラム」を使う医療機関が増えているという。環境調整法という子どもが話しやすい環境を整える例についても言及されている。


―――吃音治療ガイドライン作成へ
この記事の本題だと思われる、吃音治療ガイドラインの作成について言及。
 現場では様々な取り組みが進むが、国内の学会などによる治療ガイドラインはまだない。そこで国立障害者リハビリテーションセンターなどは、これらの対策の効果を探る多施設での試験を昨秋始めた。約2年で結果を出し、ガイドラインの作成につなげる狙いだ。
 この分野は専門家不足が指摘されている。実際に訓練などをする言語聴覚士は高齢者施設に就職することが多く、吃音に対応できる人は少ないという。森部長は「十分な対策をとりたくてもできない」と話す。
 悩みのある人は耳鼻科医や言語聴覚士に相談することになるが、診断や訓練などを十分に受けられないことも多い。受け皿の整備が求められている。
吃音の治療ガイドライン作成。これは一定の評価はできる。
吃音が治療できるなら、筆者も治したいものである。
ただ、問題なのは吃音はそもそも全員が全員治るものなのか?
ある一定の年齢でなになにをすれば治るものなのか?
それとも何をどうやっても治らない吃音もあるのか?
こういったことも判明していけば嬉しいが。

―――吃音治療ガイドラインだけでよいのか?

吃音を治療するべきだ治すべきだという医学モデル、医療モデルではなく、吃音をもったまま生きていける日本社会の構築も同時にやっていかないとならないだろう。社会モデルである。
吃音でうまく話せないこと、発話発語できないことの不利益は発達障害者支援法や障害者基本法、精神障害者保健福祉手帳、障害者権利条約、障害者差別解消法でも対応できる。

吃音を治療しなければいけないという価値観のガイドラインを作成するよりも。
吃音を診断するガイドラインを作成し、その後の生き方は当事者の自己決定権に委ねるという視点も忘れてはならない。精神障害者保健福祉手帳を取得してオープン就労、精神障害者保健福祉手帳を取得してクローズド就労する際のガイドラインも考えてほしいところである。

もしも吃音は治すものであるという価値観が広がれば、そのうち出生前診断の中に「発達障害があるかどうか」を調べる時代になったときに吃音のある子どもを出産しないということにもつながりかねない。

例えば東京大学、大阪大学、京都大学、同志社大学、早稲田大学などが協力しているこの研究がある。
構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-
http://devsci.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/about

http://devsci.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/archives/42#A01

この研究では各分野の研究者が横断研究をし、発達障害を多角的に解明していくという。
しかし、この研究の目的は発達障害を持った人がこの世に誕生しないように生まれないよにするためではなく、発達障害があってもこういう配慮やこういう方法があって、こうやって生きてけるんだ。と勇気づけるものだという。当事者にも親にもどのような支援が必要?周囲の人はどう接する?という視点だ。発達障害を治すよりも発達障害があってもこうやって生きていけるという視点である。

吃音業界では吃音を治せ。吃音を治せ。吃音を治せ!!!という価値観がまだまだ消えないということである。吃音治療ガイドラインだけではなく、別の視点を入れてほしいのである。吃音業界の医療従事者も上に書いたこういった研究者とつながってほしいと考える。

吃音を持つ子どもの親は保護者は「なぜ。子どもが吃音だと困るんだろう。悲しくなるんだろう。子どもの吃音を治さないといけない」と考えるのか?
親、保護者向けのアンケート調査も必要だろう。
たとえば「お父さん、お母さんの職場では発達障害者や吃音者が働いていますか?」、「働いている人はどのような条件で働いていますか?」、「吃音を持った子どもは不幸だと思いますか?」こういったアンケートを行い、そもそも日本社会が吃音を含め発達障害児者に厳しい価値観なのではないか?という仮定をして問題解決するアプローチがあってもよいのではないか?とも考える。


記事終盤でも
 悩みのある人は耳鼻科医や言語聴覚士に相談することになるが、診断や訓練などを十分に受けられないことも多い。受け皿の整備が求められている。
という書き方がされているが。そもそも吃音のある人は耳鼻咽喉科医師や言語聴覚士に相談するだけで良いのだろうか?発達障害分野につよい精神科医師、社会福祉士、精神保健福祉士などともつながるべきではないか。


―――北里大学東病院について
記事終盤は北里大東病院の事例が書かれている。
こちらは大人の場合という内容である。
吃音について治療のマニュアルはないというのが印象的だ。
それでも少しでも吃らないように、吃りを減らせるようにというのは吃音当事者の切実な願いだろう。
北里大東病院を訪れる人が存在するということは、吃音を持ったままでは生きられない、日本社会が吃音を許容していないということがうかがえる。



■2 日本経済新聞の吃音記事 この研究はどの組織がやっているの?
日本経済新聞を読んだだけではわかりませんでした。
調べた結果
発達性吃音(どもり)の研究プロジェクト
http://www.kitsuon-kenkyu.org/
というグループが行っていたということがわかりました。

―――構成メンバーは?
メンバーは以下の通りです 2017年9月18日閲覧時点
氏名所属担当
研究代表者森浩一国立障害者リハビリテーションセンター全体統括/青年~成人期の治療研究
研究分担者原由紀北里大学疫学調査/介入研究
宮本昌子筑波大学疫学調査/介入研究
小林宏明金沢大学疫学調査/介入研究
菊池良和九州大学病院疫学調査・介入研究
酒井奈緒美国立障害者リハビリテーションセンター疫学調査統括・青年~成人期の治療研究
見上昌睦福岡教育大学ガイドライン作成
前新直志国際医療福祉大学ガイドライン作成
川合紀宗広島大学ガイドライン作成
坂田善政国立障害者リハビリテーションセンターガイドライン作成/介入研究統括
北條具仁国立障害者リハビリテーションセンター青年~成人期の治療研究統括
金樹英国立障害者リハビリテーションセンター合併症への対応
研究協力者大野裕国立精神・神経医療研究センター認知行動療法に関する助言
堀口寿広国立精神・神経医療研究センター啓発活動に関する助言
須藤大輔薩摩川内市鹿島診療所疫学研究に関する助言
宇高二良宇高耳鼻咽喉科疫学調査

構成メンバーは主に、吃音業界で吃音研究をしているおなじみの人達だ。
ただ、発達障害を専門するに著名な医師や社会福祉士や精神保健福祉士養成学校の教員、
社会学者の参加はない。ソーシャルワークについて研究やガイドラインは作成しないのだろうかと心配になる。あくまで吃音を治療することが重視されているようだ。
また就労移行支援などの視点も不足しているように見受けられる。

―――研究予算はどこが出している?
この研究予算は国立研究開発法人日本医療研究開発機構  
http://www.amed.go.jp/

から出ている。

詳細は平成28年度「認知症研究開発事業」「長寿科学研究開発事業」「障害者対策総合研究開発事業」の採択課題について の中にある。
障害者対策総合研究開発事業→(イ)感覚器障害分野→発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一

http://www.amed.go.jp/koubo/010420151125_kettei.html

と説明がある。


―――この研究の目的は何?
この研究の目的については
ホームページにこのように書かれている。
研究の詳細 http://www.kitsuon-kenkyu.org/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E8%A9%B3%E7%B4%B0/

1) 幼児吃音への支援ガイドラインの作成
1a) 幼児の疫学調査
幼児吃音への早期介入システムの開発
1b) 幼児の介入研究
1c) 合併症のある幼児の対応
2) 中高生・成人の認知行動療法による治療
2a) グループ訓練
以上が行われるという。

メインは幼児期の吃音について子どもや保護者向けに支援するようだ。
吃音児への早期介入システムも開発するという。
ここがX歳までになにかをすれば吃音が消失または寛解するというところだろう。

合併症がある子どもへの対応であるが。こう書かれている
吃音のある幼児さんの中には、自閉スペクトラム症や注意欠如多動性障害(ADHD)、構音障害といった他の難しさを併せ持っているお子さんが少なくありません。幼児の介入研究を行う中で出会う、このような合併する問題があるお子さんの経過や、研究班のメンバーのこれまでの臨床経験、文献レビューをもとに、合併症のある幼児の対応に関するガイドラインを作成することも、本研究では目指しています。
まずは子どもへの対応であるが。しかもこれだと、吃音を主訴にした子どもに他の発達障害や症状があった場合に読める。例えば(耳鼻咽喉科ではなくて精神科病院などで)発達障害を先に発見された子どもに吃音があった場合の展開を想定していないように見受けられるので、国リハの精神科医師1人だけではなく、このような部分はなおさら、発達障害に強い精神科医師が入るべきだと思う。吃音を普段研究する環境から作るガイドラインでは不足である。発達障害児者を診療する精神科医師も入るべきだと考える。

もちろん幼児だけではなく、成人している吃音者の中にも「発達障害」を持った人いるのではないか?という研究もしてほしいところ。ここは吃音業界の派閥抗争、戦争、当事者会分裂、当事者団体分裂、ソーシャルワークの失敗を含めて研究してほしいものなのだが。今回の研究グループのこのような危機感を持った研究者がいないことが残念である。

そもそも厚生労働省もこのように調査をしている
平成28年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業指定課題15「発達障害当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を委託し、結果がでている。
http://jdda.or.jp/info/chousa2016_15.html

なかでは当事者会運営における、トラブル。運営スタッフ内の喧嘩や主義主張の違い、結果的に団体を分裂させる、発展的解消と称して会を潰す、発達障害者どうしのトラブルを第三者機関が仲裁するというサービスを希望する当事者の声も聞かれた。しかし、この話を聞いていて思うのは吃音業界が1960年ころから繰り返している歴史だということがよく理解できるためである。発達障害者の間で起きているトラブルはそもそも吃音業界が昔むかしからやっていることなのだ。

●「発達障害当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」に関連する報道
発達障害 85%が「就労支援必要」
 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14HC0_U7A710C1000000/

「本人が自覚していないと周りが振り回される」「事務作業が苦手」大人の発達障害当事者会で見えた課題 池上正樹
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakiikegami/20170731-00073946/

「大人の発達障害」当事者会の国内初の調査報告 参加者は30~40代男性が突出
池上正樹
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakiikegami/20170705-00072937/

大人の発達障害、悩み話し合う 当事者の交流必要 初の全国調査 /東京 
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170819/ddl/k13/040/011000c

全国の発達障害当事者会が一堂に会する日本初のフォーラム!〜発達障害当事者会フォーラム2017〜 りたりこ発達ナビ
https://h-navi.jp/column/article/35026532



―――2) 中高生・成人の認知行動療法による治療 2a) グループ訓練
について。
ここでも吃音を治すことについて重視されている。
これも仕方ないのかもしれないが…。

例えば、就労移行支援事業所やどのような合理的配慮があれば吃音者と一緒に働けるのか?という雇用する側、一緒に働く側のことについて触れられていないのだ。吃音のある人同士の訓練や吃音を治療する医療従事者との訓練だけだと実社会では使えない可能性もある。吃音者と医療従事者以外がいることにより、より実社会に近い状態になるわけである。

また、実社会でも、無理に発語発話するよりもテキストチャットやメール、筆談してほしいという要望もあるだろう。

この部分も今後、もっと別の視点がある研究者が加入して方法を編み出してくれると期待する。




以上
2017年8月7日 日本経済新聞の記事を読んで思うところである。




「吃音」幼少期20人に1人 治療ガイドライン作成へ
2017/8/7付 日本経済新聞 朝刊

 話すときに言葉がつまったり同じ音を繰り返したりする「吃(きつ)音」について、実態調査や有効な対策を探る動きが進んでいる。幼少期には約20人に1人にみられ、そのうち約7割は自然になくなるといわれるが実態はよく分かっていなかった。学校など日常生活を過ごしやすくするための明確な治療ガイドラインもない。担当できる専門家の医師や言語聴覚士が少なく対策が遅れていた。
 吃音は専門家の間でも病気や障害としてのとらえ方や、治療や対策の考え方に違いが出る難しい分野だ。世界保健機関の定義をもとに、厚生労働省は吃音症という病気の分類を設けている。これに沿って診断を受けると発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合もある。
 吃音の症状は「おおおおかあさん」などと音を繰り返す、言葉につまる、「ぼーく」などと言葉を伸ばすことが代表的だ。自身が吃音の九州大学の菊池良和助教は「頭の中では話しているつもりだが、タイミングがあわず、つまった感じになる」と説明する。
 いつも言いよどむわけではなく調子の波がある。周囲にも左右され、誰かと一緒に同じ文章を読んだり、メトロノームに合わせて文章を朗読したりすると症状が出ないことも多い。
 原因は遺伝的な要因や脳の機能障害なども指摘されているが、明確には分かっていない。緊張や不安、ストレスは原因ではないが、症状が悪化する要因になると考えられている。
 2~4歳から症状が出始め、幼少期は20人に1人にみられるが、約7割は3年ほどで自然になくなる。成人になると100人に1人になるともいわれている。だが国内の実際の対象者数はきちんと調査されていなかった。
 そこで国立障害者リハビリテーションセンターが中心となり、3歳児健診などの際に吃音を調べる調査を昨夏から始めた。自治体と連携して親にアンケート調査をし、必要ならば面談もする。言葉の繰り返しの状況などを確認する。4カ月ごとに質問用紙を送り、計2000人を調べる。
 調査期間は2年。今年3月の集計では約5%が吃音と推定された。同センターの森浩一部長は「幼児全体では5%よりもっと多いと考えている」と話す。調査を続けると増える可能性があるとみている。
 一般に、8歳になるころから、症状はなくなりにくくなるといわれる。早期に日常生活の対策となる訓練を受ける必要性が指摘されている。森部長は「半数以上は自然になくなるため、支援のかけすぎという声もある。費用対効果を考えて、最適な介入のタイミングを調べたい」と話す。
 診断は音の繰り返し、子音と母音の長さ、単語の途切れなどの症状をみる。幼児や小学生、中学生以上と年齢に合わせて検査する。
 子どもの対策では、海外で開発された手法「リッカムプログラム」を使う医療機関が増えている。家庭で吃音の子どもの発言に対して声をかけていく方法だ。
 流ちょうに話せたときはほめたり、「いまのどうだった」などと自身の評価を聞いたりする。明らかにつまったときなどには「ちょっと疲れてたね」などと指摘し「さっきのすらすらでどうぞ」と言い直しを促す。指摘よりも褒める頻度を増やすことが重要ともいわれる。言語聴覚士がかける言葉の内容やタイミングなどを家族に定期的に助言しながら進める。
 国内では以前から「環境調整法」と呼ばれる方法が使われている。子どもが楽に話しやすい環境を整えることで滑らかに話す力を伸ばす。症状に合わせて、吃音が出にくい話し方の練習も組み合わせる。
 九大の菊池助教は「話し方をアドバイスするのではなく、話を聞いて内容に注目して自信を育ててほしい」と指摘する。家庭で子どもが話せずいらいらしていたら、順番に話すなどの工夫で話す意欲を育てる。
 現場では様々な取り組みが進むが、国内の学会などによる治療ガイドラインはまだない。そこで国立障害者リハビリテーションセンターなどは、これらの対策の効果を探る多施設での試験を昨秋始めた。約2年で結果を出し、ガイドラインの作成につなげる狙いだ。
 この分野は専門家不足が指摘されている。実際に訓練などをする言語聴覚士は高齢者施設に就職することが多く、吃音に対応できる人は少ないという。森部長は「十分な対策をとりたくてもできない」と話す。
 悩みのある人は耳鼻科医や言語聴覚士に相談することになるが、診断や訓練などを十分に受けられないことも多い。受け皿の整備が求められている。

■大人の対処法 悩みにあわせ練習提案
北里大学東病院では、その人にあった練習法で支援
 「『いらっしゃいませ』や『ありがとうございます』がうまく言えない」。北里大学東病院を受診した吃音の人の悩みだ。アルバイトを始めたが、流ちょうにあいさつできないときがあり、このままでは仕事に支障があると考えて来院した。

 中高生や大人になると、吃音の対策は、実際に社会生活で言えなくて困っている言葉や苦手な場面でも話しやすくする訓練をするのが中心だ。電話や面接での名のり方などそれぞれ言いたいことがうまく言えなかったり苦手に思ったりして悩んでいる。それを聞き、症状や悩みにあわせた練習方法を提案する。

 練習の基本は力を抜く、話す速度を変える、息の吸い方を変えるなどがあり、試しながら、その人にあった方法を探ることになる。同病院の言語聴覚士、安田菜穂さんは「吃音の治療にマニュアルはない」と話す。

 国立障害者リハビリテーションセンターなどは、中学生以上を対象に認知行動療法を生かしたグループ訓練法を開発した。5~6人のグループで週に1回、約3時間かけて話す訓練などをする。例えば、言葉が滑らかに出てこなくても、やめずに続けて話すようにする。今年からこの訓練法の臨床研究を始めており、2020年度まで実施して効果を探る。

https://style.nikkei.com/article/DGXKZO19661070U7A800C1TCC001?channel=DF140920160921