2017年2月5日日曜日

吃音を診療・診断する医師の方向け吃音診療ガイドライン

※この記事は医師免許を持っていない者が書いています。これを念頭にお読みください。

◆あらすじ

吃音が発達障害者支援法に含まれるということが、改めて公になった2014年7月3日。
吃音業界には激震でした。まさに青天の霹靂、寝耳に水という事案・事件ではなく、事変でした。吃音事変2014と言うべきところでしょう。

はっきり言うと、吃音が発達障害者支援法に2005年の施行当初から「吃音」が発達障害者支援法に含まれていたことを理解できていれば2013年、北海道の吃音看護師も自死を避ける選択をした可能性もあったわけです。

2013年の吃音看護師自死は7月、8月に北海道のローカルメディアで報道されたあと、半年後に朝日新聞社が全国紙として、テレビ朝日も取り上げました。

問題なのは吃音業界の派閥抗争の異常さです。
2013年の吃音看護師自死の報道の際も『吃音は発達障害者支援法に含まれているよ。精神障害者保健福祉手帳を申請すれば取得できるし、社会保障制度を利用できるし、人権侵害があれば障害者を扱う関連法案と既存の人権侵害の両方からも戦えたよ』と詳細を調べて報道するマスコミ、マスメディアがいなかったことです。

しかし、筆者が独自に調べたところ、一般社団法人 日本発達障害ネットワーク JDDnetには設立時から2012年?までに「全国ことばを育む親の会(2016現在 言葉を育む会)」が参加していました。
 
また2007年? 2008年?に「一般社団法人 日本言語聴覚士協会」もJDDネット参加しています。2017年現在でも加盟団体です。

おかしいですよね?
吃音にも関係ある団体がJDDネットに参加していたのにも関わらず、「吃音が発達障害者支援法に定義されている」と全国各地で周知徹底をしなかったのです。法律や情報を「見える化・分かる化・共有化」しないという理解しがたい行動です。


ただし、一般に言われる発達障害の子どもを学校で担当する教員、大学などで発達障害児者を研究する研究者や学者や教員、発達障害を診療する医師、小児科の医師は、自閉症スペクトラムやADHD、LDやチック・トゥレットの方々に吃音を持った人が存在することはよく知られていました。筆者を発達障害であると診断した小児科医師も「吃音と発達障害は両方持った人が多い」と話していました。「発達障害とは、考え方、認識の仕方、人間の五感、運動機能、記憶、学習能力、読み書き、話すこと、などなどを司る脳の機能の障害である。それがもとになり不利益や不自由、コミュニケーションが困難、生き辛さが生じる」と小児科医師は説明していました。吃音であれば話すことの発達障害になる、自閉症スペクトラムであれば、考え方や認識の仕方の発達障害になるというのです。


吃音業界と縁の深い耳鼻咽喉科医師やことばと聞こえの教室の教員、言語聴覚士はそのようなことは知らないというテイを現在でも貫き通しています。
(知っていたなんて認めれば、吃音を苦に自死した人、ひきこもりになった人、イジメを受けた人、進学を諦めた人、就職活動を諦めた人、に合わせる顔が無いですからね。知らなかったという魔法の言葉で自分の責任から逃れているわけですね)

特に公務員、公務員に準じた独立行政法人など、国公立の教員、国公立大学の教員・研究者、国公立の病院医師は法律や通知文(17文科初第16号厚生労働省発障第0401008号)を知らないなんて言い訳ができるのが驚きなのですが…。


17文科初第16号厚生労働省発障第0401008号平成17年4月1日
厚生労働省 文部科学省 発達障害者支援施策について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0412-1e.html


吃音業界が伏魔殿であり異常事態に陥っていることは
別記事をお読みください。
2016年11月27日 東京大学の吃音サークルが吃音業界の不都合な真実を演劇で披露しました

【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン

【重要なお願い】吃音業界は2005年4月から施行の発達障害者支援法を本当に知らなかったのか?なぜ2013年に北海道で吃音看護師が自死したのか



◆本題 吃音を診断、診療する際に気をつけること 医師が懸念していること

筆者が医師や精神科医師に質問して判明したことです。

吃音は従来、国立障害者リハビリテーションセンターが担当していたこと、耳鼻咽喉科が担当科であると暗黙の了解・空気で決まっている。住み分けとも言うべきか。そして発達障害者支援法ができる前に医師免許を取得している医師の場合、本当に吃音の知識は少ない。無い。故にあまり精神科や発達障害専門にする病院では敬遠する傾向があります。

また、吃音は「なりすますことができる。演技をして吃音を装えることができる障害」であることが、精神科医師や発達障害を専門にする病院医師が抱えている大きな悩みだというのです。

国立障害者リハビリテーションセンター病院のように脳を調べることができるなら、この人は確実に100%吃音であるとわからないことが怖いというのです。もしも吃音をなりすまして演技をしている人に精神障害者保健福祉手帳申請書類、診断書を書いてそれが自治体、厚生労働省に認められるようなことになれば、診断した医師の能力や責任問題になることがとてもとても恐ろしいというのです。

佐村河内守氏問題のときに聴覚障害者を診療診断する際のガイドラインができたことはみなさん記憶しているでしょう。結果として厳格化されることになりました。

厚生労働省 聴覚障害の認定方法に関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai.html?tid=185034

聴覚障害「全聾」認定、脳波検査義務づけへ 佐村河内さん問題で厚労省検討会 2014.10.30 21:21
http://www.sankei.com/life/news/141030/lif1410300043-n1.html 
東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/shinshou_techou/sintaisyougaininteikijyun.files/choukaku.pdf

例えば国立障害者リハビリテーションセンター病院で吃音の診療診断をする際は、fMRIやその他検査で脳を調べることになります。

しかし、それ以外の病院では、そこまでできる設備があるのか?
導入費用や維持費用はどうするのか?
その検査方法に精通した医療従事者がいるのか?

結果的にいろいろな原因が複雑に絡み合い、吃音診療を躊躇する医師が存在することになります。
法律上は2005年から発達障害者支援法に含まれている吃音、最近の研究では吃音は脳神経の話す部分のネットワークの障害である(神経発達障害である)とわかって来ましたが。まだまだ日本全国の医師が実際に吃音患者を診るというのは別というのです。


◆吃音者に精神障害者保健福祉手帳申請書類、診断書を書く場合はどうすればいい?
現在、困っている吃音者のこと、吃音業界の異様さ暗黒面を認識した医師が立ち上がっています。一部の精神科医師、発達障害を専門にする精神科医師はこのようにして障害者手帳がほしい吃音者に対応しています。

吃音を診療している実績がある耳鼻咽喉科医師や国立障害者リハビリテーションセンター病院で、「あなたは吃音である」という診断書や紹介状が入手できるならば、それを証拠にして精神障害者保健福祉手帳申請のときに利用するというパターンです。

または、幼稚園、保育園、小学校、中学校の連絡帳や成績表や評定表の記述に吃音のことが書かれている。ことばときこえの教室に通級していた事実も証拠として利用するというパターンです。

または、幼少期に利用していた小児科病院、子ども病院などのカルテに吃音のことが指摘されていれば、その病院から紹介状や診断書を入手するというパターンもあります。

もちろん証拠があればあるほど心強いというのです。

これらの証拠を利用して、この人は現在も吃音で悩んでいる。生きることに困っている。障害者手帳が必要であると、精神科医師は書くことになります。

精神障害者保健福祉手帳の申請はとくに医師の指定がありません。医師免許を持っていれば誰でも記入できるといいます。従来の吃音を診療する耳鼻咽喉科医師、その他耳鼻咽喉科でも精神科医師でもない医師も、自分を守るため、このように情報収集をすることは重要なことでしょう。

2016年の日本吃音・流暢性障害学会でも、精神科医師が自分のところに吃音患者がいるが、積極的に吃音者を受け入れるとは情報発信していないという方がいました。


◆本来は吃音診療診察ガイドラインを厚生労働省が発表すべきこと 医師や医療従事者を守ることも大切

本来は厚生労働省が吃音診療診察ガイドラインを発表することが重要です。
吃音を診療、診断する医師が心配していること、懸念していることを受け止めて、全都道府県ごとに吃音の脳検査やその他の専門検査をできる病院を指定し、そこでの結果をもとに地域の発達障害を専門にする病院につなげるという仕組みができればいいのですが…。日本医師会や耳鼻咽喉科医師、精神科医師、発達障害専門医師の団体などは連名で厚生労働省宛に「吃音診療診察ガイドライン策定の要望」を発表することはできないのでしょうか?

吃音診療診察ガイドラインの策定にはもう一つ意味があります。吃音は身体障害者手帳なのか?精神障害者保健福祉手帳なのか?、それとも吃音の重さにより身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を選択できるのか? この部分がハッキリすることにも通じるでしょう。

2016年現在、吃音は行政、法律上は精神障害、精神疾患として扱うと厚生労働省が認めています。吃音で身体障害者手帳4級(家族しか会話が理解できない)という障害者手帳をもっている人もいますが、明らかに家族以外と会話ができている吃音者もいます。都道府県の身体障害者手帳審査部門でも身体障害者認定別表に吃音が存在しないため尺度がありません。しかし吃音はICD-10によると「F98.5」のFコードであるし、DSM5でも神経発達障害として一般に言われる自閉症スペクトラムやADHD、LDと同じ場所に吃音が含まれています。

吃音は身体障害の15条指定医師がカバーするのか、精神障害者保健福祉手帳でカバーするのか? 吃音の重さによってどちらも選べるのか? それとも精神障害者保健福祉手帳の申請書類のチェック欄に吃音と吃音により困りごとを具体的に項目として設けるのか?
などなどが考えられます。

2016年10月22日、東京で開催された吃音啓発の日レポ 厚生労働省 日詰正文氏講演 吃音と発達障害者支援法
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/10/20161022.html
吃音(きつおん)は身体障害?精神障害? 厚労省の専門官が回答 | 小口貴宏
http://www.huffingtonpost.jp/takahiro-koguchi/disfluency_b_12614138.html


吃音が発達障害支援法に含まれていることが判明している現在。
発達障害が軽度でも、障害者枠では働かないけど、服薬やSST、スマホ、手帳、アイテム、家族や支援者の支援、などにより、一般社会になんとか適応している発達障害者がいます。その人達も精神障害者保健福祉手帳3級を持っている人もいます。いざという時自身を守るためのお守りとして、法定雇用率以外の社会保障制度を利用するために持っているという理由などです。

要は、発達障害はたとえ軽度であっても、精神障害者保健福祉手帳3級が取得できることになります。これは吃音がたとえ軽度であっても、精神障害者保健福祉手帳3級が取得できることと同じです。(現在インターネット上では軽度吃音者は障害者手帳を取得できないという悪質なデマ・流言飛語が存在しています)

障害者手帳を希望する吃音者は現在日本全国に存在しています。
しかし、吃音業界の暗黒面、伏魔殿が存在するため、声を大きくして、吃音で障害者手帳を取得しよう・しました。と情報発信をする当事者は少ないです。そして障害者手帳を取得できると法律上決まっていても、地元に吃音を受け入れる病院がないために、困っている吃音者も存在しています。吃音を診療するぞ!!という医師や病院に対しても障害者認定反対派の吃音者団体や人物から攻撃されること、批判されることもあるかもしれません。


医師のみなさんも「吃音診療診察ガイドライン」について厚生労働省に要望要請、意見表明をしていただけないでしょうか。困っている吃音者のために出来る限りその人の望むことに寄り添っていただけないでしょうか。