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2017年9月11日月曜日

2018年よりハローワークに発達障害者雇用トータルサポーターが配置 まずは13都道府県から

NHKで報道されました。
2018年の事実上の雇用義務化という精神障害者保健福祉手帳所持者の法定雇用率計算式組み込みの情勢変化もあるでしょうか。

発達障害といえば自閉症スペクトラム、注意欠陥・多動性障害、学習障害、トゥレット症候群、吃音が一般的に周知されています。
※内閣府政府広報オンライン 発達障害ってなんだろう?
http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html
厚生労働省は2018年よりハローワークに発達障害者の就職支援をするために専門の相談員を配置するそうです。「発達障害者雇用トータルサポーター」として精神保健福祉士、臨床心理士がその役目を担うそうです。

吃音やトゥレット症候群についてはハローワーク職員、労働局職員も詳しくは知らないと思うのでそのあたりがどれくらい職員が対応できるのかがこれからの課題なのかなと感じます。

またハローワークというのは就職希望者と採用活動をする企業団体などの間にも入ることになります。雇用側ができる合理的配慮の限界、雇用側がしてほしい仕事、吃音者がしてほしい合理的配慮、吃音者が働きたい仕事との大きな乖離、大きな溝にも直面するかもしれません。

発達障害者向けの就労移行支援事業所を運営するところでも同様でしょう。
雇用側は発達障害者の合理的配慮として、まずはできる仕事をやってほしい。苦手な作業を無理せずやらずにできることを腰を据えて頑張って働いてほしいという想定していますが…。

吃音者の場合、吃音で吃ることにより職務を限定するのは許せない!という価値観を持った人もいます。話すことが大変だけど接客をしたい、営業をしたい、電話応対したい、アナウンスしたいなど、話すことに「こだわり」を発揮する人もいます。

その点、発達障害者で障害受容ができている当事者は雇用側とよく話し合い、まずはそこからやってみよう。と徐々にステップアップしていきますが…。

2017年、2018年以降は「吃音者への合理的配慮」というのが重要になるかもしれません。吃音者は精神障害者保健福祉手帳を取らないという選択をする人も多いので、精神障害者保健福祉手帳を持っていない状態、法定雇用率に計算できない状態で就職活動をする人もいます。精神障害者保健福祉手帳を持っていない吃音者が一般枠で応募してくることも考えられます。
【外部リンク】
はてな匿名ダイアリーではこんな記事があります。
人事なんだけど吃音のある人を採用できない理由を述べる(障害者枠なら可能)
https://anond.hatelabo.jp/20170615135046
吃音のある就活生はなぜ障害者手帳を持っていない?人事採用戦略の話
https://anond.hatelabo.jp/20171012000353 
2018年からハローワークで配置される「発達障害者雇用トータルサポーター」も「発達障害向けの就労移行支援事業所の職員」も吃音者の就労支援には苦労するかもしれません。障害受容をする段階から始まることもあるかもしれません。接する職員さんも支援困難事例の対応があるかもしれませんが、民間の就労移行支援事業所や福祉職、病院・医療従事者との横のつながりが、情報の交換・共有が大切になるでしょう。

また、発達障害のある人が精神障害者保健福祉手帳を持っているけれど服薬やSST、発達障害特性でミスしないようにスマホのアプリなどで武装してクローズで一般枠で働くということが可能なように、吃音者でも吃音が軽度でも精神障害者保健福祉手帳は取得できます。発達障害者の就労支援を担うみなさんも『吃音は軽度でも精神障害者保健福祉手帳は取得できる』ということを忘れないでください。クローズ一般枠で働く発達障害者がどのように主治医に診断書を書いてもらっているのかも情報収集してみてください。


この吃音ガイドラインでもメールフォームより連絡があれば相談に対応しています。また他の記事で吃音業界の見える化をしていますのでそちらの記事もご覧ください。今後も発達障害者の就労支援に携わる人、学校の進路室、就職支援課などで働く人向けの記事をバージョンアップしていきます。



●他記事紹介
【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html

【随時更新 吃音Q&A】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

【吃音Q&A】吃音は発話発語の障害 そして相手、聞き手の時間を奪う障害
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/06/q.html

吃音者と働く 職場で吃音者の合理的配慮がうまくいかないのはなぜか?
吃音者の「吃ります」と相手の「この人吃るんだ」という認識が完全に一致しないと合理的配慮が困難になる
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/10/blog-post.html


【吃音Q&A】就労移行支援事業所や高校・大学の進路指導や就職支援室やキャリア支援室、障害学生支援室は吃音者にどう対応すればいい?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/12/blog-post.html

吃音をカミングアウトしているという吃音者の先輩の就職体験談を聞くときに気をつけることとは?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/05/blog-post_29.html

園や学校でカミングアウトする場合と就職活動でカミングアウトする場合の違い
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/05/blog-post_30.html

【保護者・当事者必見】吃音者、吃音の子ども、病院にいくタイミングとは 障害者手帳を取得するタイミングとは デメリットは何?初診日問題について
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/12/blog-post_10.html

●NHKの報道
発達障害者の就労サポーター ハローワークに設置 厚労省
9月10日 7時55分
他人とのコミュニケーションがうまく取れないといった発達障害の人たちの就職を支援するため、厚生労働省は来年度から、ハローワークに専門の相談員を配置して、仕事探しから職場への定着までを一貫して支援していくことになりました。
厚生労働省によりますと就職を希望する発達障害の人は急速に増えていて、昨年度、新たに仕事を探し始めた人は4033人と、10年間でおよそ14倍に増えています。
しかし、発達障害の人はコミュニケーションや対人関係を築くのが難しい人が多く、就職先がなかなか決まらなかったり、すぐに離職してしまうケースが相次いでいるということです。
このため厚生労働省は仕事探しから職場への定着までを一貫して支援する専門の相談員「発達障害者雇用トータルサポーター」を来年度からハローワークに配置することを決めました。
サポーターは、過去に病院や自治体などで発達障害の人たちの生活相談などに応じた経験がある、精神保健福祉士や臨床心理士などの中から選ばれます。
相談にやってきた人の障害の特性を把握し、就職活動を行う際にどのような仕事や会社が適しているかアドバイスを送ったり、就職後は仕事上の悩みの相談に応じるだけでなく、企業に対してもどのような配慮が必要か伝えるなどして職場への定着を図っていきます。
厚生労働省は来年度、全国13の都道府県で合わせて34人のサポーターを配置する計画です。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170910/k10011133671000.html

2017年8月11日金曜日

ゼリア新薬新人研修自死のニュース「吃音」だったのか そうでなかったのか アウティングだったのか

ゼリア新薬工業の新人研修、新入社員研修によりある男性が自死。
2017年8月8日、9日とニュースが報道された。

――バズフィードジャパンから詳細で丁寧な記事がでる

Kazuki Watanabe
渡辺一樹 BuzzFeed News Reporter, Japan の報道がヤフージャパンのトップトピックスにも掲載され、ヤフージャパンを「ブラウザのスタートページ」にしているユーザーは無意識にそれを見たかもしれない。

https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.ebmZDQBMY#.ikl193pPX

しかし、その後、「本当に吃音だったのか?」、「家族のコメントだと吃音ではなかった?」、「吃音は本人だけが知っていた?」、「上手く吃音を隠していたのに、新人研修でアウティングされた?」、「新人研修の極限ストレスで一時的に心因性吃音になった?」、「というか絶対音感のある人って他人の吃音がすぐわかってしまうの??」などの指摘がSNS上でされています。とくに吃音当時者から。

――毎日新聞記事だと吃音の診断は受けていないという

2017年8月9日報道の毎日新聞記事ではこのようになっている。
https://mainichi.jp/articles/20170809/ddp/012/040/018000c

ゼリア新薬工業(東京都)の男性新入社員(当時22歳)が2013年、入社研修中に男性講師の言動で精神疾患(統合失調症)を発症し過労自殺したとして、東京労働局中央労働基準監督署が労災を認定していたことが分かった。千葉県内に住む男性の両親は8日、同社と講師などを相手取り、約1億510万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
 労災認定は15年5月。労基署の決定などによると、男性は13年4月の入社直後から8月までの予定で研修を受講。4月10~12日に研修会社実施の「意識行動変革研修」を受けた際、講師から「吃音(きつおん)」と決めつけられ、いじめられた経験を同期入社42人の前で言わされた。5月18日に一時帰宅する途中に都内で自殺した。労基署は労災認定基準の「ひどいいやがらせ、いじめに該当する」と判断した。
 両親によると、男性が吃音と診断されたことはないという。
 ゼリア新薬工業広報部は「まだ訴状を受領していないのでコメントは控えたい」としている。【早川健人】

――Twitter上のつぶやきを紹介
もしも自死された男性がグループの中の生贄の山羊に選ばれていたとしたら本当に言葉で表現できない気持ちになりますね。これは吃音者に限らず、発達障害者、いじめサバイバー、社会的障壁、マイノリティ、さまざまな当事者には深刻なダメージを与えるでしょう。とくに隠していたとかわからないようにして普段生活をしている当事者にとって深刻です。糾弾会、自己批判、フラッシュバック、集団リンチ、人間とはこのような行動ができるのでしょうか。研修という名目だと「これおかしいよ」という感覚は失われてしまうのでしょうか?

――男性は吃音だったのか?

すでに男性は亡くなられているため。真相はわかりません。
1.本当は男性が吃音があった。しかし家族にも言えなかった。
吃音者の一部の人が体得する「独自の鍛錬で吃音状態にならないなんらかの話し方」を発見した。
2.新人研修の極限ストレスにより、一時的に吃音になる。心因性吃音だった。

が考えられます。

――しかし家族や周囲の友人が気づかない吃音をビジネスグランドワークス社はなぜ気づいた?

筆者はここも疑問です。
家族や周囲の友人が気づかない吃音だったして、なぜか新人研修のときの研修でアウティングされる。

となると今回吃音だと指摘され、過去のいじめ体験を無理やり告白させられ、強いストレス、統合失調症になってしまった被害者。そして亡くなってしまった。

この被害者を新人研修した講師や職員が「吃音」をとても詳細に理解していたのではないかという視点がでてきます。

アウティング説明
(アウティングとはセクシャルマイノリティのコミュニティで有名な用語です。自分の属性を勝手に他人にバラされることです。例えば一橋大学で大学生が自死した件

このニュースも渡辺氏が執筆です。
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170419?utm_term=.kaD5oVqmW#.dug9Ojon8
一橋大・ゲイだとばらされ転落死「同性愛者を差別する社会が、彼を死に追いやった」ゲイの大学教授が指摘
LINEグループに「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめんA」と投稿され……。2017/04/19 17:26
Kazuki Watanabe 渡辺一樹 BuzzFeed News Reporter, Japan)


――まさかと思うがBGW社か講師に吃音当事者が存在した?
仮にアウティングされるとして。
吃音がどういうものか?吃音とはどんな症状なのか?
を丁寧に理解していないとなりません。
軽度吃音を見抜くなんて、よほどの吃音業界関係者でないと難しいです。
フジテレビのとくダネ!の小倉智昭アナウンサーも吃音ですが、丁寧に発語を観察していれば『今、吃ってるよね。吃りそうになったのを回避したよね』なんて話が吃音当事者会で話題にのぼることもあります。

さて、今回の件だと、BGW社の人間か講師が吃音当事者、または家族に吃音者がいたのではないかと推論もできます。

この場合だと、吃音を克服した(独自の話し方や血の滲むような何らかの努力)、または大人になると吃音が消失するタイプだった。と考えられます。

こういう吃音を克服してしまった当事者は吃音を克服していない吃音者に対してマウンティングをします。「私が吃音を治せたのになぜできない?」、「おまえのやり方は間違っている」、「俺が治し方を教えてやろう」、「吃音を治さない奴は甘えだ。怠け者だ」、「そんな話し方じゃ社会人失格だ!」

パターナリズムです。自分の価値観の押し付けですね。
もしもBGW社や関係者に吃音者存在したと仮定して、たまたま被害者が必死に隠していた吃音を見抜かれて、人格攻撃やストレスを与えられたとしたら。同族殺しです。同じ障害や社会的障壁を持った人の中で心無い行為が行われたことにもなります。

このブログでも取り上げている吃音業界の派閥抗争や主義主張問題が暗い影を落としているかもしれません…。


――「大人の発達障害」のように人事業界、雇用側の発達障害アレルギーのため、発達障害発見マニュアルがある?

いや、BGW社に吃音者がいたとは思えない。
人事業界で流行している「発達障害者発見マニュアル」があるんじゃないの?
人事業界や雇用する側では「できるだけ発達障害者を採用したくない」という空気があります。発達障害者を採用するにしても、合理的配慮をしなければいけないとか、本来の一般枠で想定した給与分の仕事を1%でもできない人なら障害者枠で雇用したいという希望があるためです。そのため、発達障害を採用段階や面接段階で見つける手法やマニュアルが販売されています。障害者差別解消法施行後は人事業界の専門誌や社労士など限られた場所で宣伝されたりしています。

ダイヤモンドオンラインから 2017.7.25
「大人の発達障害」への無理解がパワハラ事件の一因になっている
http://diamond.jp/articles/-/135973

日経ビジネスから河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
発達障害を“流行”させる私たちの自己防衛の牙
無意識下で進めている「カネを生み出さない人」の排除 
2017年2月15日、「あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築」を目的とする参議院の「国民生活・経済に関する調査会」参考人質疑が行われた。

 参考人のひとり、東京大学先端研の熊谷晋一郎氏は発達障害が排除に使われていることを指摘
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/021700092/

今回の件、「発達障害発見マニュアル」に吃音のことも詳細に説明が書かれているのではないか?吃音者が吃音を説明するYouTubeにある動画を何度も見て、吃音ラジオなどの音声を何度も聞いて、吃音者の特徴を勉強しているのではないか?とも考えます。

例えば、医療従事者向けの診断基準マニュアルなどは、医療従事者でなくともAmazonで購入できますし、図書館で読むこともできます。発達障害当事者が執筆した書籍(発達障害あるある、発達障害により人生で困ったこと、幼少期や大人時代のいじめ告白、発達障害はどのようなことが症状としてでるのか)などが日本社会にはとても多く出回っています。

実はこれ、執筆した当人は困っている発達障害児者や家族のためになればという気持ちで書いていますが。Amazonなどで購入する人はそういう人だけではありません。人事業界の人間、官民問わず企業団体や組織で採用担当部門で働く者なども書籍を購入します。

すでに組織内で働いている人、働いていた人が起こしたトラブルが「発達障害が原因だった」から、今度から発達障害者を採用しないようにしよう。
発達障害ってどうやったらわかるんだ?



医者が勉強する発達障害の診断基準や症状一覧を読んでみよう



発達障害当事者が書いている本を読んでみよう


なるほど。こういう人は採用しないほうがいいんだな。
こういう話し方をする人は採用しないほうがいいんだな。
目を見て話せない人は採用しないほうがいいんだな。
会社ルールより自分ルールが優先と考えている人は採用しないほうがいいんだな。
こういう意味不明な言動をする人は採用しないほうがいいんだな。
こういう仕草をする人は採用しないほうがいいんだな。
このアイテムや道具やアプリを使っているってことは発達障害かもしれないな。採用しないほうがいいんだな。
こういう失敗を繰り返す人は採用しないほうがいいんだな。
なるほど、こういう風に説明したり接しないといけないということは逆に考えれば
この人は発達障害なんだな。採用しないほうがいいんだな。
この人のインプット方法やアウトプット方法を見ていると発達障害の人が使う解決方法だよな。ということは発達障害の疑いがあるから採用しないほうがいいな。

クソッ。発達障害っぽい人を間違えて採用してしまったよ。合法的に解雇する方法は何かないのかな?←これを解決するためのマニュアルも人事業界では販売されています…。

悪用しようと思えば診断基準や発達障害当事者の人生録、経験、あるある体験を利用できるわけです。

今回の吃音だと指摘されて自死した人も、隠れ吃音者だったが、外部からのとても悪意のあるアウティングにより自らの命を絶つという大きな決断をしたとも推論できます。



――報道機関には、表面的な取材ではなく、もっと掘り下げてほしい

・実は吃音者が研修を実行した組織内にいた?

・アウティングとは何? セクシャルマイノリティだけではなくて発達障害児者の世界でもアウティングがあるんじゃないの?

・新人研修の闇 パワハラ系、軍隊系、人格否定系、人格攻撃系、自分の弱みを告白させる系、理不尽系(本当は聞こえているのに え?きこえなーい もう一回)などの新入社員研修の裏側について丁寧な取材報道する

・吃音と発達障害者支援法について 吃音や発達障害の合理的配慮や障害者差別解消法のこと

・人事業界や採用側、雇用する側に「発達障害者発見ビジネスが蔓延している」のではないか?

・発達障害者(もちろん発達障害に限らずですが)を排除するその思想の根底。内なる植松はなぜ生まれるのか?

などなどの色々な視点から今後も取材報道してほしいと願っています。






お時間のある方は別記事もご覧ください

【重要なお願い】吃音業界は2005年4月から施行の発達障害者支援法を本当に知らなかったのか?なぜ2013年に北海道で吃音看護師が自死したのか
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/12/200542013.html

2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/2013.html

2016年11月27日 東京大学の吃音サークルが吃音業界の不都合な真実を演劇で披露しました
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/20161127.html

2017年8月8日火曜日

2013年に北海道とは別件で吃音者が自死していたことがわかりました

悲しいお知らせです。
心よりご冥福をお祈りいたします。

2013年は北海道の吃音看護師さんの自死がありましたが。
まさか東京(千葉)でも吃音者の自死があったとはショックです…。



詳細はバズフィードジャパンより 全文はリンク先で
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.ssj0RPqpp#.xbRmnv4xx

製薬会社・ゼリア新薬工業に勤めていた男性Aさん(当時22歳)が、新入社員研修で「過去のいじめ体験」を告白させられ「吃音」を指摘された直後の2013年5月に自死し、「業務上の死亡だった」として2015年に労災認定を受けた。
Aさんの両親は8月8日、ゼリア新薬と研修を請け負った会社、その講師を相手どって、安全配慮義務違反や不法行為に基づく損害賠償、約1億円を求める訴訟を東京地裁に起こした。千葉県在住の父親(59歳)と代理人の玉木一成弁護士が厚生労働省で記者会見し、明らかにした。
何が起きていたのか。
中央労基署の認定によると、労基署が注目したのは、4月10日〜12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんはこうした話をさせられていたという。
Aさんは、研修報告書に、次のように書き残していた。
「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」
「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になってその後何をどう返答したのか覚えていません」
「涙が出そうになりました」

2017年7月26日水曜日

記事紹介 障害は個性???

Facebookから気になる投稿がシェアされてきたのでご紹介します。
吃音業界でも吃音は個性、武器といわれることがありますよね…。


2017年6月18日日曜日

人事、採用担当者の本音?吃音者はカミングアウトすると不採用になる?

――2017年8月29日更新 こちらも関連情報として読んでみましょう
LITALICO発達ナビが記事を公開。
『発達障害カミングアウトで退職に追い込まれた26歳。実体験から伝える、退職までの軌跡とこれから』
https://h-navi.jp/column/article/35026527



はてな匿名ダイアリーから吃音に関係する投稿がありました。
最近、新卒学生の就職活動で吃音をカミングアウトするという場合が多くなっているのでしょうか?

人事なんだけど吃音のある人を採用できない理由を述べる(障害者枠なら可能) はてな匿名ダイアリー
https://anond.hatelabo.jp/20170615135046 全文はリンク先に
最近ちょっと気になることがある。人事の仕事だ。
人事畑の人間として心配で心配で伝えたい事がある。病気や障害を一般枠応募でカミングアウトするな。
なぜこんなことを書こうと思ったかというと最近多すぎる。エンカウント率が高いとある障害があるからだ。
新卒の学生で「私は吃音があり、上手く話せないことがあります」、「私は吃音があるので、話せないことがあるので合理的配慮をしてほしい」だとか。
こんな感じのエントリーシートや履歴書を見ることが増えた。
 ※吃音ってのは、きつおんという上手く話せない障害のこと
 最近、発達障害者支援法に含まれた新しい障害らしい。発達障害だから精神障害手帳をとれるとか。
 でも法律に入るまえから話し方おかしい人は不採用傾向だけどね。
 
ごめんなさい。
吃音のある人は不採用です。問答無用で不採用です。
もちろん応募者に理由は明かさないよ。
人事の業界では障害とか病気とか変な人とかは出来る限りは採用したくないんだよ。
法定雇用率に計算できるなら話は別だけどね。


書いてあることは、事実だろうと思います
吃音も含めた発達障害者を採用する企業団体などの人事部、採用担当者、障害者採用担当の人はよく指摘します。「障害受容のできた、病院に行っている、就労移行支援事業所に通所している、支援者がいる」などの条件を満たした人を採用するようにという暗黙のルールはあります。

また、就労移行支援事業所や障害者枠就職エージェントなども、応募する側の人に、クローズド応募かオープン応募しかない。一般枠で障害者手帳などを持っていないのにカミングアウトすることはただの自殺行為だと説明しますよね。採用する方もカミングアウトするなら法定雇用率に計算したいから障害者手帳などを持っていてくださいね。と考えているわけですから。それを知っている間に入る人は応募する人にそれとなく伝えるわけです。

ツイッターの投稿 新卒で就職活動をする学生と思われる人の投稿があります


一般枠で障害や病気をカミングアウトしてはいけない
これは今後吃音業界に浸透していくでしょうか?
吃音のある先輩達の美談に翻弄され、カミングアウトしても大丈夫なんだ!っと勘違いする就活生もいると思います。一生に1回の新卒という資格をどのように使えばいいのか?新卒障害者枠で行くのか、新卒一般枠で障害者手帳を持っていないのにカミングアウトして不採用通知を受け取るのか?メンタルを病むとか新卒で就職できなかったという履歴を残すのか?これから徐々に事例が増えていくと思います。


2017年10月15日記事内容追加
10月11日に再放送された吃音者の就活を扱ったハートネットTVを見た、どこかの企業の人事?と思われる人が投稿。吃音者はなぜ障害者手帳を持っていないのにカミングアウトするのかということを心配している。吃音者学生と発達障害学生の違いにも言及している。

吃音のある就活生はなぜ障害者手帳を持っていない?人事採用戦略の話
https://anond.hatelabo.jp/20171012000353


吃音のある就活生はなぜ障害者手帳を取らないのか 人事採用戦略で障害者雇用、法定雇用率が重視されていることを知らないのか? 発達障害学生達の方が障害受容をできている件
2017年10月11日、NHKEテレで放送したハートネットTVを見終わった。
吃音のある大学生の就職活動だった。番組は「私たちの就活 —吃音とともに生きる—」
>http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/program/index.html?id=201710042000>
今年もスタートした就職戦線。社会に出る期待と不安に揺れる大学4年生。近年、売り手市場が続くなか、取り残されそうな若者たちがいます。吃音症のある就活生たちです。吃音症とは、発声の際、第一音が出ない、繰り返す、引き延ばすなど言葉を円滑に話せなくなる症状。全世界の人口の100人に1人が吃音者であり、日本では120万人以上の吃音者がいると言われています。吃音は、その場の状況によって不規則に変化していき、家族や周りの人も理解しづらい上、本人すらもいつどこで吃るのか、わからないといいます。医学的にも、その原因や本態は分からず、完治も困難というのが通説です。多くの吃音者が、自分の障害と正面から向き合わざるを得ないのが就職活動の時。言葉によるコミュニケーション能力が要求される面接は大きな壁となっています。言葉が円滑に話せないことで、コミュニケーション能力が不足していると判断されることも少なくありません。夢を抱くことよりも、吃音による障害が頭をよぎり、話すことの少ない職業を選ぶ吃音者も多くいます。吃音への理解が乏しい状況で、生きづらさを抱えながら、社会に旅立とうとする姿を追いかけました。<<
これを見てショックだった とても不憫に見えた
なぜ、一般枠の就職活動で吃音があることをカミングアウトしているんだろうか。自殺行為だ。吃音のある人を採用できない理由になってしまう。はっきり言って多くの採用側が不採用決定するだろう。もちろん宝くじに当たるような確率でどんな障害をもっていても障害者手帳は必要ありませんという事業者もいるだろう。だがそのような奇跡に巡り合うのは就職活動期の短期間ではありえない。新卒という大事な時期を逸してしまうだろう。もしも吃音や障害などをカミングアウトしても大丈夫という企業名や団体名が存在するならインターネット上でリスト化されているはず。逆に名称を教えてほしいくらいだ。
病気や障害があることは隠し通せるなら隠してよい。どうして正直に話してしまうのか。職場で配慮してほしい事なんて告白されれば、配慮の必要ない人を採用したいと思ってしまうのが本音だ。採用側としても法定雇用率にすら計算できない状態の人を採用すると吃音のある学生達は本気で思っているのか。
障害者手帳を持っている状態で吃音がありますとカミングアウトするならまだ理解の余地はある。吃音のある就活生は障害受容が足りないと感じる。障害受容をしないで吃音がありますとカミングアウトをするのが逆に怖い。職場内の環境を整え配慮をする採用側はその分、法定雇用率にも計算したい。ウィン・ウィンの関係だ。吃音のある学生は正直にカミングアウトしてくれるわけだから、採用側の考えはカミングアウトをするなら障害者手帳をを持ってきてくださいだ。あとでコピーを提出してくださいだ。今ここで正直に吃音のある学生に告白します。



関連記事
吃音をカミングアウトしているという吃音者の先輩の就職体験談を聞くときに気をつけることとは?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/05/blog-post_29.html

園や学校でカミングアウトする場合と就職活動でカミングアウトする場合の違い
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/05/blog-post_30.html

【随時更新 吃音Q&A】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

秋田県由利本荘市 地域おこし協力隊の合格者が後に精神障害者保健福祉手帳所持者とわかった後に合格取り消し
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/06/blog-post_9.html

【他記事紹介】発達障害でNHK記者をクビになった私が思う、NHKの「発達障害プロジェクト」
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/05/nhknhk.html

2017年6月12日月曜日

【吃音Q&A】吃音は発話発語の障害 そして相手、聞き手の時間を奪う障害 吃音者への合理的配慮 障害者雇用か一般枠雇用か?

吃音は発語発話の障害だけではない
相手の、聞き手の時間も奪ってしまう、消費されてしまう障害だ。

関連記事 【随時更新 吃音Q&A】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について

吃音業界とは関係のない人からの貴重な意見です。
発達障害児者当事者会や発達障害児者の診療をする医療従事者、支援者、就労移行支援事業、障害者就職転職エージェントなどからの新たな視点です。当事者研究方式や障害に関係なく、吃音業界と全く関係のところからは吃音業界がハッと思う意見が飛んできます。筆者もこれを指摘されたときは最初は理解できませんでしたが。たしかに自分が吃音者ではなければそう思っても仕方ないなと気付きをえました。


吃音とは吃る障害である。そう。それで正解です。私たち吃音者もそれはそうだと考えていました。

しかし、他の障害者や医療従事者、支援者、就労移行支援事業の職員、障害者枠就職転職エージェントからの新しい意見がありました。


「吃音のある人って100%吃りながら話すのを最後まで待ってほしい!と合理的配慮を要求してくる人いるけど。それって無茶だよね。お互いの歩み寄りや落とし所というのを無視している発言ともとれるよね」

「合理的配慮ってお互いに話し合ってどこまではできて、ここはできない。合意形成も必要だよね」

「相手や聞き手にも仕事はあるのだから、無理に話すことにこだわらなくてもいいよね。コミュニケーションツール、手段は色々あるのだから。吃ることにこだわりを持つのはなぜなんだろう?」

「100%吃りまくるから、私の発言を全部待ってというのは正直に言って無理だと思う。逆の立場だとどう思う?」



厚生労働省が合理的配慮のガイドラインを公開しています

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000083347.pdf

(4)過重な負担
○ 合理的配慮の提供の義務は、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合を除く。事業主は、過重な負担に当たるか否かについて、次の要素を総合的に勘案しながら個別に判断する。
① 事業活動への影響の程度、 ②実現困難度、 ③費用・負担の程度、
④ 企業の規模、 ⑤企業の財務状況、 ⑥公的支援の有無

○ 事業主は、過重な負担に当たると判断した場合は、その旨及びその理由を障害者に説明する。その場合でも、事業主は、障害者の意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮の措置を講ずる。


吃音者が話すことを、発話発語を吃りまくって吃り倒すのを話相手、聞き手は最後までずっと黙って聞いていないといけないの?

① 事業活動への影響の程度
吃音者が「私はドモリなんだから、吃りまくるからよろしく。絶対に私の言いたいことを先取りしないでね。言いたいことを「これのこと?」とか割り込んでこないでね」

こんなケースもこれから出てくるでしょう。

事業活動へはどの程度の影響を与えるでしょうか?
定型発達者、健常者が報告連絡相談などを上司に終える時間が1分とします。
しかし吃音者は吃りまくりで3分毎回かかるとします。
これは事業活動への影響がでると考えられます。
筆者も過去に採用担当者から言われたことがありますが、「トヨタ生産方式って知ってる?ジャストインタイムって知ってる?ムリムダムラの排除って知ってる?キミの話し方って時間のムダだと思わない?」と言われたことがあり何も反論できませんでした。

確かに時間は大切です。仕事場、ビジネスでは時間は重要です。何時までにあげないと、完了させないといけない仕事は吃音当事者にもありますし、話の聞き手も同様です。お客様だって早く目的を用事を達成したいと思っているはずです。吃音で吃ることによりロスタイムがどんどん増えれば、その分、1日の想定された就業時間が延長することになります。


たとえば0.1秒や1秒で命が危ない仕事や危機管理や危機回避が必要になる仕事もそれです。陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、警察官、皇宮警察、消防士、救命医師、救命看護師、旅客業のパイロット、航空管制官などです。0.1秒1秒の単位で状況が一変するような仕事は吃音者のどもってしまう時間が影響します。

公共交通機関など運転手や駅構内で安全確認、アナウンスや乗降者確認をする場合もそうです。「ドアしまります、駆け込み乗車はおやめください」などが「どどどどどどどっどどどっどア閉まります。かかかかかかかかかかかかか駆け込み乗車はおやめください」となると電車の発車時刻に影響がでます。

自衛隊では吃音者を不採用疾患として公開しています。それに近い職務である警察官や皇宮警察も公開されていないけれど採用時の暗黙のルールがあるかもしれません。

これは別記事でも書きましたが。
自衛隊がダメなら警察や消防なども本音と建前ルールがあるかもしれません。
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/blog-post.html
吃る時間が自分だけではなく、相手やお客さん、一般市民の「生命の危機」に影響を与える職業も吃音者は難しいでしょう。吃ってしまうその一秒一秒が危機につながる場合です。そう考えると銃火器など武器を使用する仕事、緊急救命医師、外科医なども吃音者には難しいかもしれません。ドクターX大門未知子が手術中に吃ってしまい、手術時間に影響を与えたら患者が死ぬかもしれません。技術があって失敗しなくても、時間経過に勝てないのです。
警察や自衛隊が「とまれ!撃つぞ」という警告をするにしても、吃ってしまい警告する時間に影響を与えて、危機回避できない場合もあるかもしれません。

例えば防衛省の防衛省訓令第一号があります。航空身体検査に関する訓令です。ここでは「不合格疾患等」という項目に一般に言われる自閉症などの発達障害、吃音や気分(感情)障害や既往歴が不合格の基準として明記されています。海幕衛第8931号は海上自衛隊の身体検査です。こちらでも不合格疾患として「精神と行動の障害」、「吃音」が明記されています。陸上自衛隊達第 36―1号は陸上自衛隊の身体検査です。こちらでは具体的に吃音という項目はありませんが「脳神経・精神」の検査項目があります。
このような検査を見れば、行政職員でさえこのような基準があるなら、民間でも存在するはずだ、いや表向き存在しないとしていても裏ではあるはずだろうと思います。2013年に北海道で自殺した吃音者も警察官になりたいという夢があったとのことでしたが、どうしても面接で落ちてしまうことを繰り返したそうです。警察内部の採用活動基準については不明ですが、自衛隊でNGなら警察や消防でも難しいのではないかと思いました。
他にもこのような研究報告が独立行政法人労働政策研究・研修機構から発表されています。
吃音で困っていても、適切なソーシャルワークや、支援機関につながることができず、困難な状況に陥っているようです。

NHKのプロフェッショナル 仕事の流儀「真夜中の東京スペシャル」でも消防士の人がこのような貴重な発言をしている。吃音者だと難しいかもしれない。
http://www.nhk.or.jp/professional/2017/0227/index.html
「1秒で助かる命、亡くなる命」
東京の下町、葛飾区。ここにも夜を駆ける1人の男がいる。本田消防署一部大隊長、八巻信也(57)。消防一筋38年、この道のスペシャリストだ。八巻は消防隊の指揮官、80名からなる隊員たちはその号令1つで動くことになる。担当する葛飾区は、古い木造住宅がひしめく下町。年間150件もの火事が起こる都内有数の火災多発地域だ。この消防署の隊員たちに徹底されているのは、スピードだ。どんな夜中でもひとたび出場命令が下れば、彼らは1秒を争い消防車に乗り込み、1分以内に飛び出していく。
八巻は言う。「スピード、スピード、スピード。安全なんてのは当たり前。1秒たったら燃えなくてもいいものが燃えちゃってるかもしれない、1秒早けりゃ助けられたかもしれない、1秒遅くなったら死んでしまうかもしれないっていう。私は災害ってそういうことだと思ってるんですよね」
八巻はいつでも走る。大隊長という立場ながら、火災現場では煙の中に飛び込み火元を確認し、周囲を走り回り、延焼の危険を察知し、消火指示を出す。一旦、鎮火と要救助者がいないことを確認すれば、すぐさま消防車の撤退を決め、新たな火災に備えさせる。全ては「1秒のため」だ。
基本の勤務は朝8時半から翌朝8時半までの24時間。心休まる時間などない。八巻たち消防隊員は1秒でも早く災害に対応できるよう、神経を研ぎ澄まし、準備をしている。
そして1か月半にわたる密着取材で見えてきたのは、消防の仕事の多様さだ。火災はもちろんのこと、水難事故、孤独死の現場、そして電車への飛び込み事故など、私たちの生活で起きるあらゆる災害に彼らは真っ先に駆けつける。命の可能性がわずかでもある限り、救助活動を行うのも消防隊員の任務なのだ。しかし、助けられる命よりも亡くなってしまう命に立ち会うことの方が圧倒的に多い。八巻は、そんな現場の最前線に38年居続けている。そして最後、自分の信念をこんな言葉で表現していた。
「かけがえのない命というのは多分消防をやっていれば、意味がわかると思います。命は1回なくなっちゃったら、無になってしまう。取り返しのつかないもの。だから助けなくちゃいけないんでしょうね。自分たちが助けられるなら、助けなくちゃいけない」

このあたりを読むと、吃りまくる、100%吃るから話し終わるまで待ってくださいと合理的配慮を要求してくる吃音者は難しい事例だと思われる。 ① 事業活動への影響の程度はとても大きい。命の現場に、治安維持や戦争状態、災害救助での吃音者の吃るという発達障害特性は難しいかもしれない。

工場などでも同様です。
指差し安全確認。
後ろ通ります。
XXXを補充します。
XXXを運びます。
などなど、意外に声出し、発話発語しなければいけない部分は多い。
ホウレンソウも1秒でも早く終わらせないと、自分の作業も同僚や相手の作業も遅延することになる。

吃音のアナウンサーがいて、常に吃りまくってニュースを読んでいるのもダメだろう。
これは聞き手、視聴者も時間を多く消費してしまう。また、時間通りに番組が始まって時間通りに番組が終わらないと、毎日の放送予定がどんどんズレてしまう。

「おはようございます。おはようニュース日本です」

「お お お お お お お お お お おは おはようございます。お、お、お、お、お、おはようニュース日本です」
となってしまっては時間消費という視点からだと、朝の忙しい時間にニュースを素早く聞きたい視聴者のほうから困りごとが発生してしまう。

②実現困難度
実現困難度はどうだろうか?
これはとても簡単だ。吃音者が吃って話しているのを黙って聞いていればいいだけである。実現困難か?と言われれば待つことはできる。だが事業活動に影響がでるという視点が絡むとそうではないかもしれない。

③費用・負担の程度
これは全く問題ない。
吃音者への合理的配慮の場合、施設を改修する、バリアフリー化するということは必要ないため大きな費用・負担はそもそも発生しない。(吃音者のために発話発語以外のコミュニケーション手段、パソコンやタブレット、ブギーボードなどを準備するなら少額ですが費用負担が考えられます)
吃音者が吃りまって話すのを待つ時間がもったいないという視点ならばこれは問題になるが……。

④ 企業の規模
例えば企業の規模が大きく部署ごとに部屋ごとに職務ごとに携わる人間が多い企業規模ならば障害者支援担当職員がいたり、大企業ならば、障害者とはたらくには?企業内ガイドラインが作成されている場合もある。

しかし、中小規模ならばそれはどうだろうか?
あまり合理的配慮をするだけの時間や人員が足りないということも出てくるだろう。


⑤企業の財務状況
こちらも中小企業や大企業で変わってくる。
吃りまくる吃音者を説得して、筆談やチャットやEメールを利用してほしい。ブギーボードを購入するとか、タブレットを購入するとか、そのような対応はできる。
受電する架電する電話機の自動音声に「この電話は吃音者が架電しています。受電しています。話し方が変でも気にしないでください」などの音声を入れることは簡単だろう。

接客業や受付だったとしても、「お客様へ 弊社では吃音者が働いています。吃ってしまうこともありますが、ご理解よろしくお願い致します」など目に見える部分に注意書きや看板をたてることはできる。下のリンクのようにスターバックスコーヒーではこのように聴覚障害のある人が働いていますよ。という掲示を行うという事例もある。

がしかし。吃音者は「吃音は障害じゃありません。発達障害や精神障害と一緒にされては困ります。あんな人たちとは一緒にされたくないです。接客の際も店舗内に掲示はしないでほしい」という人もいるので注意が必要です。吃音至上主義という差別主義があるのです。

関連記事 吃音至上主義とはなんですか?どんな差別ですか?


 外部リンクTwitterから
スターバックスでは聴覚障害のある人が、聴覚障害のあることを明かす、または掲示 している。https://twitter.com/i/moments/804168140594630656?lang=ja




吃音者の中には発話発語の際に唾液を飛散させて話す人もいるので、「弊社では吃音者が働いています。マスクの着用をしています。ご理解よろしくお願い致します」という掲示もあるかもしれない。マスクの費用はあまり大きなものではないはずだ。

吃音者への合理的配慮はエレベーターが必要だ。スロープ設置が必要だということではないので、そこまで巨額の費用は発生しないと考える。


⑥公的支援の有無
吃音者を支援するための人員やサービス、補助金などがあるか。
吃音者を限定しダイレクトに支援する人員配置や就労移行支援事業サービスは今のところないと思います。吃音という発達障害は合理的配慮事例や企業団体で働いている場合の事例が極端に少ないのです。吃音がありながらもどもりまくって働いていますという美談はよくありますが。真実かどうかはわかりません。もしも真実なら吃音者が入社しやすい働きやすい企業ランキングなどが作成されるはずです。

しいて言えば、就労移行支援事業所の職員、ハローワーク、ジョブコーチなどが企業団体、公的機関の一緒に働く人の間に入って、困りごとや合理的配慮の相談。トラブルになった場合の解決などには入ってこれるでしょう。

公的支援の一つ、障害者の社会参加のために障害者の法定雇用率があります。
吃音の場合は発達障害者支援法により精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。これにより吃音者を障害者枠で採用し法定雇用率に計算することもできます。しかし、吃音を診療できる医師、耳鼻咽喉科医師、精神科医師が少ないため手帳申請が困難という事例があります。吃音者を採用する官民にかかわらず企業団体の人事部採用担当者は『吃音に対して合理的配慮を提供するから、法定雇用率に計算したいな』という本音を持っていることもあるでしょう。しかし吃音当事者には吃音は障害ではないと思っている人もいるため、正々堂々とどもりながら私は吃音がありますと一般枠採用に応募してくる場合もあります。人事側の本音としては法定雇用率に計算したいという部分が吃音者や吃音業界ではそれを受け入れないという人も数多く存在します。
吃音で吃ることは聞き手、相手、お客さん、職場の仲間の時間を奪ってしまうという新しい視点は今後どうなるか?
吃音者が吃ることは相手、聞き手の時間を奪ってしまうこと。
こんな視点がでてくるのは吃音とは関係のない人と話し合うことの良いところです。
公的機関や企業団体の人事部、人事採用担当者、就労移行支援事業などでもこれからは重要な合理的配慮合意形成の手順になると思います。

私は吃音者だ!!吃って何が悪い!!という吃音者もいれば
私は吃音があるけど、たしかに聞き手の人の時間も大切だよね。このへんを落とし所にしたい。言葉の先取りや私の言いたいことを推測してくれていいですよ。筆談やチャットも利用しましょう。という吃音者も出てくるだろう。

就労移行支援事業の職員や学校の進路指導、キャリアセンター、就職支援課などなども採用する側の本音と建前の情報収集が大変になるだろう。場合によっては吃音者が障害受容や歩み寄りをするように一緒に考えるということも必要になるかもしれない。

就職する就労する吃音者もこの問題を真剣に考えないとならない。
私は吃るので、私が吃っているときは邪魔せず黙って聞いてください。最後まで待ってくださいという合理的配慮を要求したほうがいいのか?
それとも相手側採用側、人事担当者とよく話し合い。どこまでの合理的配慮が可能なのか、歩み寄り、落とし所を決めるのか?
どのような姿勢ならば一般枠や障害者枠で採用されやすいのか?ということもよく調べて研究しなければならない。

吃音者を採用する場合。吃音は軽度でも精神障害者保健福祉手帳3級が取得できることの情報共有、見える化も今後よりいっそう必要になることでしょう。

2016年12月1日木曜日

【吃音Q&A】就労移行支援事業所や高校・大学の進路指導や就職支援室やキャリア支援室、障害学生支援室は吃音者にどう対応すればいい?

【随時更新】

この記事は就労移行支援事業所、そのスタッフ。
高校や大学の進路指導や就職支援室の教職員、キャリア支援室の教職員、職員、社会福祉士、精神保健福祉士向けです。吃音のある学生を支援する人、授業や講義で接する教員にもオススメです。

※関連ニュース https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2018/03/
2017年10月4日に放送された番組が番組まるごとテキスト化になっています。この放送では吃音業界独特の「一般枠で吃音をカミングアウトして就職活動をする」という発達障害のある人や就労移行支援事業所の人が見れば驚愕する内容が放送されています。このように、オープンかクローズという概念が2017年現在でも吃音のある人、吃音のある学生に共有されていない悲惨な現状があるのです…。

ハートネットTV 私たちの就活 吃音とともに生きる
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/program/?id=44452

ハートネットTVを見たという人事担当者の声が匿名でネット上に公開されています
吃音のある就活生はなぜ障害者手帳を持っていない?人事採用戦略の話
http://anond.hatelabo.jp/20171012000353



本題です。


みなさんの仕事の重要な部分は、採用・雇用する側の人、公的機関、企業団体の人事部や人事採用担当者の本音を聞き出すことです。(ここに書かれていないこと個別に相談したいことや知りたい事、不明なことがあればメールフォームより連絡をください)
https://kitsuonkenkyuguideline.jimdo.com/メールフォーム

そしてもしもその本音が「(吃音に限定せず)障害を理由に合理的配慮するなら、法定雇用率に計算したいから障害者手帳を持っていてほしい」というならばその事実を学生や保護者に伝える必要があります。

一方で、吃音があっても障害者手帳を持っていなくてもよいという企業団体があるかどうかを調べることも仕事です。

吃音に限らず、自閉症スペクトラムやADHD、学習障害やチック・トゥレット症候群があっても活躍している人はいます。筆者の印象だと研究者、芸術家、スポーツ、芸能人などイメージですが…。例えば栗原類さんは障害は認めているけど、障害者手帳は持っていないように思えます。周囲の環境が助けてくれるのかもしれません。ちなみに統合失調症と診断されているハウス加賀谷さんは障害者手帳を持っていると認めています。



―――吃音業界の闇は、このブログの他記事にてご存知だと思います。
吃音は長い間障害か?障害ではないか?と意味のない論争を継続しています。おかげさまで自殺の決断やひきこもりの決断をする方もいたでしょう。
もちろん吃音は障害ではないし、会社などでカミングアウトして働いているという人もいます。
または、吃音があるが必死に吃らないように隠している場合もあります。

その他にも高学歴や学んだ分野、理系だった、専門の資格を持った吃音者の場合、障害者手帳を必要とせずにその能力で就職ができてしまっている人もいます。


一方で、吃音があることにより就職困難な者もいます。
吃音業界の派閥抗争の餌食となり、障害者手帳を取得できることを知らずにひきこもりや自殺の道を選択する者もいます。


吃音は吃音当事者によって、吃音が障害ではない。という人もいます。
堂々と吃り、カミングアウトして働いている吃音者はあなたの職場にいませんか?
このような吃音者の場合は、放っておくことが1番です。
余計なことをせずにそのまま放っておきましょう。


ただし、吃音があっても私は仕事ができている。カミングアウトして就職している。
私の会社は吃音に理解がある。と発言する
当事者会、小学生や中学生、高校生や大学生に語る、ブログやTwitterなどで発表している吃音者ほど、その企業団体名の公開をしませんし、その成功している吃音者は、困っている吃音当事者を「私の職場に来なよ。人事部を説得したから。大丈夫だよ」とは行動してくれないのです。

本当に矛盾です。吃音があっても社会に居場所があるが故に、そのたった1つの貴重なイス「居場所を守りたい」のです。自分以外の吃音者が職場に来たら競争相手になってしまうので、比較されるので困るわけですね。

★現在、インターネット上を検索すると吃音者の職業データーベースが公開されていますが。
・企業団体名の公開
・人事部も吃音を把握しているのか?
・その吃音の先輩は後輩吃音者のために所属団体へ口利きをしてくれるのか?

ここを確認することが最重要です。ここまで対応しているなら、成功している吃音者でも後輩のために道を切り開くパイオニアとして活躍する素晴らしい吃音者の先輩でしょう。肝心の情報を隠す吃音者はただの自己満足です。


吃音業界の闇の1つとして、成功している吃音者達がそうではない吃音者や子ども、小学生、中学生、高校生、その保護者に、成功体験だけのエピソードを伝えることです。たしかにそれに当てはある人はそれでよいのです。

しかし、全ての人が100%同じ道、同じ職業を選ぶことはできません。そのイスに座ることはできません。

うまくいかなかった吃音者の大きな挫折は就職活動の時期です。
成功してしまった吃音者は、そうではない吃音者をバカにしたり見下します。
【本当は職場で吃音をカミングアウトしていないのに】私は吃音をカミングアウトしている!
お前らも見習え!なんて発言をして、その一時だけ優越感に浸る人もいます。
まさに障害当事者の中でマウンティングが行われいるのです。

では就職活動時期は困っている吃音者にどのように支援すればいいのでしょうか?



【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html

【随時更新】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

2016年11月27日 東大スタタリングが駒場祭で吃音をテーマに演劇を披露 その内容はセルフヘルプの限界を指摘するものだった
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/20161127.html



1. 困っている、支援を必要としている吃音者にはどうしたらいい? まずは吃音当事者とその保護者の吃音への価値観を知ること 吃音業界のどの派閥の色に染まっているか確認せよ

まず重要なのは吃音当事者と保護者の吃音価値観を把握することです。
もしも吃音が障害ではない、障害者とは可哀想な存在で、税金の世話になる、身分の低い、周囲に配慮される、恥を知らない人達であると考えている場合は。
とても支援困難事例となります。
この場合は、本当にとても長い時間をかけて支援しなければいけません。
学校の職員ではなく、相談支援ソーシャルワークのできる医療従事者とも協力しないと困難です。


場合によっては、学校を卒業してしまうかもしれないので、後はハローワークや若者サポートステーション、発達障害向けの就労移行支援事業所などに任せたほうがよいでしょう。学生でいる間の短い限られた時間では対応しきれないでしょう。


2. 吃音が障害であると障害受容できそうな場合
この事例ならなんとかなるかもしれません。
この場合、一般に言われる発達障害学生に説明するように、社会保障制度の説明や使えるメニューの説明、診断や障害者認定を受けることメリット、デメリットの説明などから丁寧にはじめましょう。障害者枠、一般枠の両方で就職活動をすることを提案してみましょう。


学生という身分で就労移行支援事業サービスを提供しているところがあれば、その情報を伝えるのも有効でしょう。制度上、自費になってしまうのですが、現在、大学生向けのサービスを展開しているところもあります。

また、人材業界でも発達障害学生向けのサービスを開始するところが2016年現在チラホラでてきています。


3. 吃音者はいつ障害者手帳を取得すればいいか?
吃音に限らず発達障害者は精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
この手帳は初診日から半年しても症状が固定することが条件です。さらにそこから自治体の審査があるので10ヶ月は時間を見たほうがよいでしょう。

吃音の当事者は病院にいって診断を受けていない場合もあるので、その点を考えて、就職活動の始まる一年前には障害者手帳を取得しておくべきでしょう。そこから逆算すると大学一年の冬くらいには動いていたほうがいいかもしれません。

就職活動が解禁になって、一般枠で不採用通知が大量に届いてから、やっぱり障害者手帳を取得しようと思っても後の祭りです。障害者手帳を交付してもらう間に学校を卒業してしまいます。


吃音に限らずですが、発達障害も含めて大学の障害学生支援室、キャリア支援室は、学内に発達障害の理解をすすめる情報提供ポスターを貼ったほうがいいかもしれません。とくに吃音は2005年から発達障害者支援法に含まれていることがまだまだ知られていないので、情報提供をしないとわからないのです。例えば内閣府の「発達障害者ってなんだろう」のページを印刷して貼ること、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターの「発達障害の定義」のページを印刷して学内や相談室付近に貼ること。学生が必ず閲覧する書類や、シラバスに書いてしまうこともよいでしょう。

内閣府 政府広報オンライン 発達障害ってなんだろう
http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html

国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター 発達障害の定義
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B/%E5%90%84%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9/

4. 例えば、現在、Aという大学では発達障害傾向の学生を把握し、支援につなげるために取り組みをしています

現在、A大学では、3年ゼミや卒論、就職活動との同時並行作業のときになって発達障害特性で失敗する学生が多かったことを反省し。その状況を大学一年のときにその状況を別の手法で再現して苦労する学生がいないか?調べる試みをしています。就職活動のときに発達障害だとわかってもどうしようもないことが多いからです。

・同時並行作業でプレッシャーをかける
・急激な情報変化 ルール変更 → それについてくるか? 理不尽だと怒り出すか?
・ホウレンソウが必要な場面
・自己分析
・1回でも授業を休むとやる気がなくなってしまうか?
・ウソをつけるか? 発達障害の特性の1つで、履歴書などでウソを書くことができない、または正直かかないといけないと必要以上に気にしてしまう。そのためその部分から先に進めない。


これにより、大学一年生のときから、「もしかしたら私、何か違う?」と気づいてもらい、相談室などに来てもらえるようにという試みです。把握した個人情報をもとにごく一部の限られた教員や職員がすぐに動けるように待機しています。そして話し合いや情報提供の結果学生本人が望むなら、すぐに支援が始まります。

もちろんここにたどり着くまでに、当事者に「君は発達障害者かも?」なんてことはしません。当事者の人権もあります。当事者のほうが、緩やかに気づくように学内でも情報提供のための情報が配慮されているのです。



5. 吃音は純粋吃音者もいる 一般に言われる発達障害と吃音を持っている人もいる
吃音者には純粋な吃音者と一般に言われる自閉症スペクトラムやADHD、学習障害、チック・トゥレットなど複数の障害を持っている場合があります。発達性協調運動障害を持っている場合もあります。もちろん感覚過敏などを持っている吃音者もいます。

純粋な吃音者の場合は吃音についての合理的配慮をすれば大丈夫です。
ただし、一般に言われる発達障害を持っていそうならば、その支援ノウハウがそのまま利用できます。


6. 吃音のある学生への合理的配慮はどのようなものがあるか?

吃音のある学生への合理的配慮を考えます。
高校や大学だと、小学校、中学校よりも、受け身な授業が多いので吃音者は逆に一時的に安心しているかもしれません。

吃音とは話すとき、発話するときにその障害が表面化します。
しかし、吃音者は一人ひとり症状が異なります。
また、吃音者の価値観により、「最後まで言葉を話すことを待ってほしい」という人もいれば。
「私が吃っている言葉を、相手に先取りして、●●のこと?」と相手に吃っている言葉を先取りして誘導してほしい人もいます。

吃音者も今日は調子よくて喋れる!という場合もあるので、その場合の合図も決めたほうがいいかもしれません。右手で挙手しているときは問題もわかっているし指名してくれ!!という合図。
左手で挙手しているときは、問題は理解できているが吃るから指名しないでくれ!!という合図。

故に、吃音者の合理的配慮とは一般に言われる発達障害者のように、個別事例ごとに丁寧に考えないとなりません。

・吃音者が発話する、話しているとき、質問するときの時間延長を認める。

・吃音者が話すことではなくて、テキストやチャット、メッセンジャーなどで質問できる、発言できるようにする。

・人口音声読み上げソフトの利用を認める。

・筆談を認める。

・期末試験や卒論など口頭でしなければいけない場合、吃っている部分で成績を評価しないこと。
試験時間の延長を認める。

・学校内の手続きなどするときに窓口対応や電話窓口対応ではなく、Eメールの利用で完結できるようにする。

・国家資格などで「実習」が必要な場合、実習先にも吃音の説明、合理的配慮をお願いしにいくこと。吃音当事者に付き添って説明をすること。

・吃っていても、笑わない、怒らない

・吃るため、発話しやすい言葉を使うがゆえに、敬語など、日本語のルールから逸脱するかもしれないが、違和感のある言い回しをするかもしれないが。それを笑わない。怒らない。認める。


学校であれば、学生全員に吃音のことを説明して、目が悪い人がメガネやコンタクトレンズをして視力矯正するように。吃音の場合は周囲の人がそれ受け入れる、助ける。「吃ることを笑う、怒る」などをやめること。待ってあげること。言葉を先取りしてあげること。などを考えることができるようになれば。もっと生きやすいかもしれません。


●例えば仕事や就職の合理的配慮だとこのようなものがあります。

【随時更新】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について

記事の中盤あたりに合理的配慮が書いてあります
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

◆吃音者に想定できる、考えられる合理的配慮一覧

・声をだして挨拶ができない場合は笑顔や会釈でも良いとする。

・電話応対を一部免除する。全部免除する。社内の電話のみ応対させる。外部との電話応対は免除する。

・社内アナウンスや店内アナウンス、放送の業務を免除する。

・落語家の桂文福さんのように歌いながらメロディに乗せて職場内やお客様のところで話してよいと認める。吃音者は歌いながら、メロディに合わせて話すと吃らない人がとても多いため。

・落語家の桂文福さんのように、会話の中でギャグを織り交ぜたり、舌打ちをして滑稽な音を鳴らして職務遂行をしても、それを許容する。許す。怒らない。吃音者の道化キャラで働くことを認める。

・社内の朝礼、全体集会、全体挨拶、飲み会の挨拶、式典の挨拶などで口頭発表させることや社訓の暗唱や社内用語暗唱などを免除する。

・吃音者には営業以外の仕事をしてもらう。他の障害者のように社内の仕事をその分切り出す。その仕事をしてもらう。

・吃音者は吃ること避けるため、言いやすい言葉に言い換えを行う。「赤いボールペン」→「レッドなボールペン」、「トイレ」→「お手洗い」、「昨日(きのう)」→「昨日(さくじつ)」、「水曜日」→「火曜日の次の日」、「新聞紙」→「ニュースペーパー」などと言い換えることがあります。

それを不自然だと笑わない。指摘しない。

・吃音で有名な芸能人やアナウンサーや総理大臣や王族がいるからといって、あなたの目の前にいる吃音者はそうではない場合もあると認識を改めること。XXさんがこうやって成功したからあなたもやりなさいと意味不明のアドバイスをやめる。障害が個性となる職業のイスは非常に限られている。

・筆談を利用できるようにする。

・吃音者は吃ることを避けるため、言いやすい言葉を発話する。場合によって敬語などを使わずにタメ口になってしまうことがある。それを認める。許す。怒らない。

・営業や電話応対を認めるにしても、必ず初回に外部やお客様に接するときに、同僚や上司が「弊社のXXは吃音という障害があるので。話し方が不思議に思われるかもしれませんが仕事には影響がないので気にしないでほしい」と説明する。

→とくに職場の同僚や上司が一度、吃音当事者とファーストコンタクトする相手に説明するステップは重要です。吃音当事者自分の言葉で説明するのは大切ですが、同僚や上司のワンクッションがあるかないかでは相手側の受け止め方も変化します。

・電話応対の場合 自動音声システムでを利用する。「この電話は吃音者、吃る人が架電しています」、「この電話は吃音者、吃る人が受電しています」こういったアナウンスも必要になるでしょう。

・口頭での報告連絡相談よりも筆談以外に手書きメモやEメールやチャットの利用を認める。コミュニケーションアプリの利用を認める。

・吃音者は人それぞれであるが、話すときに、唾液を飛ばしてしまうことがあるので、マスクの着用を認める。

・工場や調理場など安全確認が重要視される職場で、「後ろ通ります」、「声出し安全確認作業」ができない場合ブザーやホイッスルなど他の手段を考える。

・飲食店やサービス業であれば、いきなりステーキの従業員が利用している透明マスクの着用を認める。(これは吃音者の中に吃るとき唾液を飛散させる場合もあるためである)

・飲食店やサービス業以外では普通の顔が隠れるマスクの着用を認める。吃音者は吃る時の顔を見られたくない人もいます。口がまがる。唇が震える。唇が尖る。口元が痙攣する。唾液を飛ばしてしまう。白目をむいてしまう。視線が合わない。などなど吃るときの外見上の影響がでる当事者も存在するためです。

・飲食店やサービス業ではお店の入り口などに、「吃音者が働いています」と告知すること。聴覚障害者の洋菓子店のように吃音者が働いていることを説明しましょう。タッチパネル方式だと聴覚障害者も吃音障害者も助かりますね。

・吃音者がホウレンソウや会話をするときに、吃ってしまうため他の人よりも時間が倍近く必要だとしても、ゆっくり余裕をもってその話を聞く。

・吃音者の言葉を先取りしない。吃音者の主義主張によっては最後まで言い切るまで待ってほしい人もいます。逆に話している途中で、XXXのことを言いたいの?と言われたほうが話しやすい人もいます。 ※このあたりは当事者とよく話し合う


★医療従事者、コメディカルの吃音者はどのような合理的配慮?
医療従事者、コメディカルの吃音者にはどうしても言い換えのできない言葉を多く使用する場面が想定できます。人名や薬品名、患者さんクライエントさんとの面接や心理検査、言語療法、結果の説明などがたくさんあります。とくに心理検査や言語療法などの場合は一言一句間違わないで実行できなければいけません。

現在、吃音のある医師、言語聴覚士、臨床心理士、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士などがいます。また、それを目指す学生も存在します。

心理検査や言語療法などで患者さんに「私のあとに続けて話して下さい。マネしてください」などと説明して、吃る部分まで真似をされてしまうという事例も発生しています。事前に患者さん、クライエントさんへの吃音の説明が必要になります。この場合も同僚や上司がワンクッション説明を入れることが重要です。




以上のように様々な合理的配慮が今のところ考えつきます。
話すこと発話することの配慮だけが必要です。それ以外はおそらく大丈夫だと思います。

※しかしながら、吃音当事者には吃音だけではなく、自閉症スペクトラムやADHDなどの一般によく知られている発達障害を持っている場合もありますので、この場合はその発達障害特性にも配慮をする必要もあるかもしれません…。



7. 就労移行支援事業は吃音者をどうしたらよい?どう対応する?

就労移行支援事業のサービスを吃音者が利用することもあるかもしれません。
場合によっては完全に障害受容ができておらず、事業所に通所する他の障害者を差別したり、見下す、バカにする行動をとる者が出てくるかもしれません。一方で、障害受容ができた吃音者も来るでしょう。

他の障害や社会的障壁のある人を差別する吃音者が就労移行支援事業所に来てしまった場合、態度を改めない場合は、利用規約などに、契約を解除するなど盛り込んでおいた方がいいかもしれません。


就労移行支援事業所提携・協力の病院医師に「吃音は発達障害者として精神障害者保健福祉手帳を取得できること」を説明して診断をしてくださいと情報共有をしておく。就労移行支援事業のホームページにて「吃音者は障害者枠でも働けます」と掲載してください。


就労移行支援事業所の企業団体担当の営業さんなどは、「吃音者が働くには障害者手帳が必要か?」ということを官民問わず企業団体の人事部、採用担当者から本音を聞き出すことが大切です。もちろんその中に、吃音があっても一般枠で雇用しますという団体があるなら、その情報も集めて下さい。

2016年現在では、吃音者の就労事例が集まっていません。官民問わず企業団体と協力して、吃音者の雇用事例を集めてください。それをどんどん情報公開してください。吃音者が障害者雇用できるんだ!という情報が日本社会で広まれば広まるほど、吃音者が社会参加できるかもしれません。就労移行支援事業所主催の企業団体の人事採用担当者、行政職員向けの講演会で吃音は障害者雇用できること、法定雇用率に計算できることを説明していくのも大切です。


就労移行支援事業はまず雇用する側の本音を聞き出し、吃音者にそれを伝え、障害者手帳取得や障害者枠で働くことも考えてみてもいいのでは?と説得することも仕事になるかもしれませんね。


8. 専門職になりたい吃音のある学生にはどう支援する? そもそも入学を認めるのか?
障害のある学生の進学事例は近年増えてきています。とくに国公立の学校であれば障害者差別解消法の合理的配慮は義務化されているためこの点は進学先選びに重要です。

障害があっても医師になっている人がいます。
脳性麻痺の医師、熊谷 晋一郎氏(東京大学先端研所属)が有名ですね。
吃音があっても医師になっている人として菊池 良和氏もいます。
2人の時代はまだ障害者差別解消法がなかった時代なのでとても苦労や辛いことがあったかもしれません。

さて、医学部となれば国公立大学があるため、障害者差別解消法を使える可能性は高いです。看護学校も可能性は高いでしょう。

しかし、問題なのは言語聴覚士養成、社会福祉士養成、精神保健福祉士養成の学校に国公立の学校が少ないことがあります。

現在、吃音ある言語聴覚士と学生をつなぐ会「吃音がある、ST学生とSTの会」というものがあります。ただ、言語聴覚士に限定されているのは残念だと思います。「吃音がある医療従事者の会」としたほうが今後の吃音のある子ども達の未来につながるでしょう。

例えば吃音のある医療従事者の会が、吃音があっても資格取得のために支援してくれる専門学校一覧、大学一覧というリストを作成する必要もありますし、吃音や発達障害などを持った学生でも入学できるよう。資格取得に必要な実習施設・研修施設の開拓も必要になってきます。

過去に吃音当事者でもあるライターの近藤雄生氏がこのような投稿をTwitterにしています。吃音があって看護学校の実習を乗り越えることができず、新たな道を歩き始めたという女性のことを投稿しています。このようなことがある以上、医療従事者や支援者の資格を持っている先輩吃音者達は団結して、「私の勤務先に来なよ。この学校なら大丈夫だよ。私が口利きするよ。私が責任とるよ」など道標になることも大切になります。





2016年9月8日木曜日

【随時更新 吃音Q&A】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について

この記事の読了目安は20分です。
吃音者への合理的配慮については■5番、■6番あたりから読み進めてください。

関連記事もご覧ください。
人事、採用担当者の本音?吃音者はカミングアウトすると不採用になる?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/06/blog-post_18.html
吃音者と働く 職場で吃音者の合理的配慮がうまくいかないのはなぜか?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/10/blog-post.html
【吃音Q&A】就労移行支援事業所や高校・大学の進路指導や就職支援室やキャリア支援室、障害学生支援室は吃音者にどう対応すればいい?http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2016/12/blog-post.html 



2016年9月現在
吃音は徐々にではありますが、社会全体に認知が広がっているのではないかと思います。
フジテレビの4月スタート月9ドラマ「ラヴソング」が放送されたこと、吃音当事者団体の変化、吃音ラジオという吃音当事者が吃りながら放送するラジオ、毎日新聞社が積極的に吃音について取材報道する、吃音ドクターこと菊池医師の情報発信、日本吃音・流暢性障害学会が発足し今年で4回目の大会を開催などなど―。吃音という言葉が世の中に広まるようになってきているのです。

そもそもの発端は2014年7月3日の厚生労働省管轄である国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが「吃音は発達障害の1つである」と発達障害の定義を説明するページに吃音を明記したことからはじまりました。この情報の掲載はある意味勘違いにも繋がりました。2014年に吃音が発達障害に指定されたという勘違いです。これは間違いで2005年の発達障害者支援法施行時からずっと含まれています。この法律がどのような理由なのか「見える化」されていませんでした。


この投稿記事は、吃音者の雇用事例、吃音者採用・雇用ハウツー、吃音者雇用ガイドライン。吃音者の雇用促進マニュアルとして読者の方(特に人事採用担当者、障害者雇用担当者、就労移行支援事業所職員)の力になればと思っています。この記事は新しい情報があればその都度更新します。
吃音者の障害者雇用や合理的配慮についてもっと詳細に知りたい場合はコチラより問い合わせをください。http://kitsuonkenkyuguideline.jimdo.com/%E3%81%8A%E5%95%8F%E3%81%84%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B/


■1.この投稿記事を読む前に、吃音業界の真実を知らねばならない。とくに官民・企業団体の人事採用担当者、障害者雇用担当者、就労移行支援事業所職員は必ず知っておいてほしい

こちらは必ずお読みください吃音者、吃音業界のリアルです
・【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html


■2.行政職員、民間企業・団体、その他、人事採用担当部門、総務部門などの職員の方へ
上のリンクは読んでもらえましたか?

残念ながら吃音者、吃音業界は不毛な争いをしています。聴覚障害者の人々が考え方の違いにより対立していること、発達障害当事者会が意見の違いや喧嘩により分裂することと同じ状態になっています。吃音者も障害者認定絶対反対派、吃音があるが程度が軽い・なんとか吃音を隠しているから障害者認定消極派、吃音があって学校に行くのも働くことも困っているから障害者認定して障害者手帳や合理的配慮が必要派というように大きく3つの派閥が存在しています。

吃音当事者団体によっては『完全な障害者認定反対派』の団体があるため、関わると面倒なことになります。例えば2016年8月17日毎日新聞社朝刊の一面トップに吃音への差別や困っていることが報道されました。しかしその内容と毎日新聞社と担当記者、アンケートに協力した吃音者団体を痛烈に批判し間違っていると表明する吃音者団体が存在するのです。とくにその内容で恐ろしいのは「障害者はかわいそう」だと子ども達に言わせている点です。障害はかわいそう。この気持がすでにありとあらゆる障害者や社会的障壁がある人より吃音者は優れているという優生思想があるのだと辟易します。吃音が障害ではない。頭のオカシイ精神障害者とは違うんだ。発達障害者とは異なる。と主義主張を開陳するのは言論の自由ですが、困っている人はずっと困っていれば良い。というのも人間の文明社会では異常でしょう。使える選択肢、社会保障を利用することを否定するのは理解に苦しみます。どのような選択をするかは当事者が決めることです。


このような実例を見ると、行政や民間企業において、吃音者を採用する場合は『障害受容のできている、障害者手帳を所持している、障害認定反対派ではない穏健な吃音者』を採用することが前提になると筆者は推測します。毎日新聞の報道を糾弾する叩く団体は今後近い将来、吃音者を対象とした就労移行支援事業所や吃音者を障害者雇用した官民の団体が事例として集まってくれば、次にその関係各所に刃を向けて攻撃することは予想できます。

もちろん吃音や発達障害がある人でも、どのような社会的障壁がある人でも、障害者手帳を所持しておらず法定雇用率に計算できなくとも、ウチの団体は社会的障壁のある人を雇用するよという先進的な考えを持った篤志家な経営者もいると思います。これはこれでとてもありがたいことです。本来なら障害者手帳がなくとも全ての社会的障壁のある人が働ける社会になればいいのですが…。雇用する側としては仕事に配慮が必要ならば障害者手帳を持っていてほしいというのが本音でしょう。

日本社会の現実として、障害や難病がある人はなかなか一般枠で働くことはできません。一般枠でも双方の条件が一致すれば問題はありません。障害者の就労移行支援事業所もその訓練の中でこのように利用者に説明しています。就労移行支援事業所としては現実も知っているためです。

例えば

1.障害を完全に隠すことができるなら、一般枠で応募しなさい。障害者手帳を持っていても言わなければ問題ありません。エントリーシートや履歴書に●●障害や苦手なことがあるとは書いてはいけませんし、カミングアウトは絶対にしてはいけません。それが理解できているならば一般枠での就職活動をしてください。その方法も教えます。と。

一方で

2.もし障害についてカミングアウトする場合はこのように説明がなされます。
一般枠と障害者枠での両方で就職活動しなさい。そして現実を体験しなさい。
一般枠というのは雇用する側が想定した給与分100%以上の仕事をすることができる人が働きます。障害者枠とは障害や病気により、雇用する側が想定した仕事をこなすことができない、仕事の一部免除や苦手な仕事の完全免除、転居なし、通勤時間を前後させる、障害に応じた合理的配慮などなどをするために見返りとして障害者手帳・法定雇用率に計算できることが必要だからです。
と説明します。


精神障害、発達障害を扱う就労移行支援事業所は特に1と2の説明を強くします。なぜこのような説明をするのかというと、就労移行支援事業所の職員は雇用する側の希望、本音を知っているからです。

人事採用担当者の本音。雇用する側、企業側の本音ですね。カミングアウトする場合は、
配慮しなければいけない場合は障害者手帳や難病の証明を持っていて法定雇用率として計算したいという本音です。

例えば2015年12月内閣府の障害者週間セミナーでこのようなセミナーがありました。ここで説明されたことは、精神障害者雇用をするときは必ず「就労移行支援事業所に通所している者」、「ジョブコーチなど相談できる状態がある者」を雇用すべきと説明しています。このセミナーの場合精神障害者と限定していましたが、発達障害者も共通する部分があると思います。

さらに2016年12月の内閣府障害者週間連続セミナーでも同様のことが言われました。
「発達障害のある人は、障害受容のできている人、病院、就労移行支援事業所とつながりがある人、相談できる支援者がいる人」を採用の際に考えるようにという説明でした。
http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/h28shukan/event.html#seminar

精神障害者雇用は今! ~精神障害者の職域拡大の可能性について~
http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/h27shukan/event.html#forum
一方、平成25年度に厚生労働省が実施した障害者雇用実態調査では、精神障害者の雇用上の課題として、「会社内に適当な仕事があるか」と回答した企業が77.2%と最も多く、依然、企業において精神障害者の職務の創出・設定に苦慮している状況がうかがえる。
そこで、専門的な職種が主となる医療機関において、創意工夫して新たな職務で精神障害者を雇用する取組の紹介、そのノウハウなどについてのディスカッションを行い、精神障害者の職域拡大の可能性等について参加者とともに考える。
主催:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
所在地:〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2
電話:043-213-6203
FAX:043-213-6556
URL:http://www.jeed.or.jp/
平成25年6月に成立した改正障害者雇用促進法により精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられたこと等を契機に、雇用されている精神障害者数は大きく伸びているところである。



■3.吃音当事者は『吃音をカミングアウトすれば一般枠採用されると思っている』当事者も存在する 雇用する側と吃音当事者側の考え方の違い?

吃音当事者側の視点です。
吃音当事者は派閥に関係なく、吃音をカミングアウトすれば一般枠で採用される! と思っている人もいます。これは実際そうなのですが、吃音があっても雇用する側が吃音は仕事に関係ない、結果で評価する。という主義主張であれば成立します。しかし雇用する側が想定した給与分100%の仕事のうち90%くらいしかこなせないかもしれません。

この『吃音をカミングアウトすれば一般枠で採用されるはず』という考えは性善説的です。正直に自分の気持ちを相手に伝えれば、まっすぐに正直にありのままの自分をエントリーシートや履歴書、面接でカミングアウトしても、『吃音だけで評価する会社』は存在しないと思っているのです。吃音があっても一般枠で採用されて仕事をする機会を入手できると思っているのです。

しかし、世の中、全てがそうではありません。全てが善人とは限りません。吃音があれば雇用する側からすれば想定した給与分に見合った勤務ができないと判断し『貴意に添えない結果』など不採用通知を届けることになるでしょう。やはり、吃音がある=うまく話せない → 出来ない仕事がある。お客様や取引先に何か言われるのではないだろうか? と考えている雇用側の本音もあります。

また雇用する側の本音として、障害者の法定雇用率を満たせるなら、障害者手帳を持っていてほしいという考えもあります。カミングアウトしてきた吃音者に障害者枠での応募をアドバイスする場合もあります。もちろん障害者手帳を持っていない、吃音があっても一般枠で問題ないという雇用する側の人もいますので、これは雇用する側の主義主張次第ということになります。

2016年現在。発達障害者や精神障害者を採用時に見極める方法、発見するテストを販売しているビジネスモデルが存在しています。人事採用担当者ならご存知のことだと思います。自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群や自閉症、広汎性発達障害)、ADHDと言われる注意欠如多動性障害、LDと言われる学習障害の特徴を発見する方法が人事業界では出回っています。またそもそもDSM-4やDSM-5と言った精神疾患診断の手引きという医学書が一般人も購入できますし、医師免許がなくとも『その障害の特徴』をなんとなく見極めることはできるのかもしれません。

吃音も2016年現在でこそ、『吃音は発達障害者支援法に定義されている障害』ということになっています。が、そもそも吃音の場合は一般に言われる発達障害のように見た目ではあまりわからないわけではありません。吃音者が面接やグループディスカッションや集団面接のときに採用する側がカミングアウトしていない吃音者の状態を『あれ?この人喋り方変だな。うーんコミュニケーション能力低いから不採用方向でチェックっと』と判断することも、今まであったかもしれません。


例えば防衛省の防衛省訓令第一号があります。航空身体検査に関する訓令です。ここでは「不合格疾患等」という項目に一般に言われる自閉症などの発達障害、吃音や気分(感情)障害や既往歴が不合格の基準として明記されています。海幕衛第8931号は海上自衛隊の身体検査です。こちらでも不合格疾患として「精神と行動の障害」、「吃音」が明記されています。陸上自衛隊達第 36―1号は陸上自衛隊の身体検査です。こちらでは具体的に吃音という項目はありませんが「脳神経・精神」の検査項目があります。

このような検査を見れば、行政職員でさえこのような基準があるなら、民間でも存在するはずだ、いや表向き存在しないとしていても裏ではあるはずだろうと思います。2013年に北海道で自殺した吃音者も警察官になりたいという夢があったとのことでしたが、どうしても面接で落ちてしまうことを繰り返したそうです。警察内部の採用活動基準については不明ですが、自衛隊でNGなら警察や消防でも難しいのではないかと思いました。

他にもこのような研究報告が独立行政法人労働政策研究・研修機構から発表されています。
吃音で困っていても、適切なソーシャルワークや、支援機関につながることができず、困難な状況に陥っているようです。

・若者サポートステーションなどに訪れるクライエントの中に吃音がある人がいる。
このような人は就職困難者である
http://www.jil.go.jp/institute/siryo/2013/123.html

・大学4年生に未診断の発達障害??、および吃音の学生がいるがどうしたらいいのだろうか?
障害受容はどうなっているのか? 
http://www.jil.go.jp/institute/siryo/2015/156.html


年配の吃音者、とりわけ、今現在の「就職活動」というものが存在しない時代に就職できている人はラッキーな人です。吃音者は一般に言われる発達障害者のように一部にとても頭の良い人がいます。IQが高いといえばいいでしょうか。難関大学、国公立大学を卒業している人もいるので、履歴書のみで採用、出身校の先輩の紹介で採用、などがあったのです。年配の吃音者はよく若い吃音者に「私は吃音があっても就職できた、東証一部上場企業だ。結婚もした。子どももいる。自動車も買った! マイホームも買った! 子どもは全員大学卒業させた! キミもやればできる!」などアドバイスをしてしまいますが。その当時は発達障害や吃音の概念はあまり浸透していないという好条件も重なったのだと思います。ゆえに学歴で採用活動側、雇用する側は判断していた場合もあります。

年配の吃音者は自分が吃音ありつつも就職できたことを誇りに思っているので、現在の若者たちがなぜ就職できないのか?なんていうことは関係ないのです。

吃音の障害者認定反対派なら『吃音をカミングアウトしなさい。エントリーシートにも履歴書にも吃音のことを明記しなさい』と危機意識のカケラもないアドバイスをして悦に入る場合もあります。この手のアドバイスは2016年現在ではもはや通用しないのですが…。
逆に考えれば『自分の地位を脅かすかもしれない若い吃音者に就職してほしくない。同じ会社に入社してほしくない』など下心もあるのかもしれません。


吃音のある若者が『吃音をカミングアウトすれば一般枠採用されると思っている』理由には性善説を信じている場合もありますが、他にもこのような理由があります。障害者枠だと給与が安い、出世しない、スキルアップができない、正社員採用されないというのをデメリットだと思っていることもあります。給与が安ければ恋愛もできない結婚もできない。幸せな生活ができない。自分の両親や親類縁者と同レベルの生活水準を維持できない…。などを不安に思っている人もいます。

吃音のある子どもの父母や祖父母が『自分の職場で吃音者が採用されることは無い』と知っている場合は特に厳しく子どもの吃音に接します。なんとか治そうとしたり、病院や民間療法などなどありとあらゆる手段を使うかもしれません。親御さんの気持ちはわかります。それは社会が吃音者に冷たい、吃音があると就職や結婚が不利、ということを知っているのです。親御さんも障害者や社会的障壁のある人に冷たい接し方をしていたこともあるかもしれません。

吃音のある子どものお父さんお母さん、家族のみなさん、親戚のみなさん。ぜひ、ご自身が働いている職場の人事採用担当、人事部の人に『吃音者が就職活動で私たちの団体に応募してきたら採用する?しない?障害者枠なら採用する?』と質問してみればよいでしょう。その答えが現在の日本社会の真実です。

筆者自身も若い頃は吃音の障害者認定反対派の教典に心酔しており、就職活動の際は吃音を堂々とカミングアウトしていましたが。結果は全て不採用でした。最初の書類選考で落ちます。障害者認定反対派の人の堂々と吃れ、吃音を治してはいけない、吃音は障害ではないということが通用するのは本当にごく一部の限られた吃音者だけのものだとやっと目が覚めたのです。


■4.吃音は吃音のみの人が存在する一方で、吃音と(自閉症スペクトラム、ADHD、LD、チック・トゥレットなど)が併存している人もいます

吃音は神経発達障害とDSM-5で分類されるようになりました。
この1つの理由として、その他の発達障害と併存している事例が報告されているからです。

こちらのリンクを見てください。
 吃音に併存する発達障害・精神神経疾患に関する検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp/57/1/57_7/_article/-char/ja/

http://stutteringperson.blogspot.jp/2016/02/blog-post_23.html


■5. それでは吃音者の採用 吃音者雇用ガイドラインはどうなるか? 吃音の就労支援、合理的配慮とは?

まず、これは採用する側、雇用する側の主義主張を明確にする必要があります。
人事採用担当と経営者がよく考えて明確にする必要があります。

吃音は現在、精神障害者保健福祉手帳の対象になっています。2年更新の手帳です。
ごく一部、吃音の状態が重度な『家族でないと意思疎通できない』レベルの人であれば身体障害者手帳の4級を持っています。

4番で説明したように、吃音だけではなく、吃音とその他の発達障害を持っている吃音者もいます。これも難しいところです。


これらの情報や吃音者の派閥抗争を知ったうえで考えを明確にする必要があります。雇用する側は吃音者をどのようにとらえるのか?が重要になります。


1.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、仕事の成果を出すならば一般枠で働いてほしい。一般枠で働く機会を与える。法定雇用率には興味ない。

2.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、手帳を取得して障害者枠で働いてほしい。法定雇用率に計算したいのが本音。

3.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、障害者手帳を持っていれば、一般枠でも障害者枠でもどちらでもよい。法定雇用率に計算したいのが本音。

4.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、手帳を取得して障害者枠で働いてほしい。しかし仕事は責任ある仕事、出世できるようにする。正社員雇用する・いつかは正社員にする。スキルアップ・キャリアアップの機会を与える。



この4つでしょうか。
まずこの部分を明確にする必要があります。雇用する側としては少なくとも『障害受容のできている吃音者』を採用したいと思うはずです。派閥抗争をしているトラブルメーカーよりもそうではない温厚で穏健な人が良いと考えるはずです。そして発達障害者支援法やICD-10やDSM-5に定義されている吃音という障害であれば障害者手帳を持っていることがデフォルトであると考えるかもしれません。

この雇用する側のホンネ、障害者雇用業界のホンネを理解していない吃音者が多いことも事実です…。


吃音者を雇用する、吃音者を採用する、吃音者と一緒に働く。
これには企業団体がどのような立ち位置になるか?が重要になります。

1.「吃音丸出し。いついかなる時でも常に吃りまくっていてもいい。聞き手は吃音者の話を待つ。ちゃんと待って聞く」
2.「吃音があるなら、吃りそうなら発話発語以外の使用を認める。そのほうが聞き手も時間効率が良いから。常に吃るのは正直勘弁してほしい。」
3.「吃音があっても、どんな職務を遂行してもいい・接客も放送も営業などお客さんと接することもなんでもやっていい」
4.「吃音があるなら、話すこと以外の仕事をしてほしい。無理して話さなくていい。接客や営業や放送などお客さんと接する仕事にこだわらないでほしい」

吃音者側には吃ることは権利であり。どもらせないようにするのは差別だという人も一部にいます。
上の1から4、この条件にさらに法定雇用率に計算したいために障害者手帳の所持を希望する、希望しないという前提もあることになります。



えっ、でも、吃音者側だけの希望を聞かないといけないの?

良い質問ですね。
そうです。そもそも吃音に限らずですが、合理的配慮とは過度な過重なものはしなくてもよいということになります。

平等であるならば、合理的配慮される側の希望、合理的配慮を提供する側の希望ということ、両方が必要です。

吃音は「吃る」障害でもありますが。「相手の時間を奪う、多く消費させる障害」でもあります。吃音者が吃りまくって話しているのを最後まで相手は待たないといけないのか?吃りまくっている吃音者に話を丁寧に聞くたびに、1分、2分、3分と時間が消費されていきます。これが1年間の出勤日と計算すれば、年間吃り時間により、これだけ時間が多く消費されたということにもなります。

【吃音Q&A】吃音は発話発語の障害 そして相手、聞き手の時間を奪う障害
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/06/q.html


となると吃音者とコミュニケーションをする聞き手、相手、お客さんなども「希望」がでてきますよね。無理に発話発語してコミュニケーションしなくてよい。チャットでも筆談でもメールでも、丁寧な言葉遣いではなくていい、マニュアル通り話さなくていいから・・・と希望が出てきます。

合理的配慮とはバランス、話し合い、お互いの歩み寄り、譲り合い、落とし所を考えることにもなるのです。

■6. 吃音者への合理的配慮とは具体的に何をすればいいのか?
吃音は話すこと、発話することの障害です。(ただし発話器官に障害があるのではなく、発話しろと命令する脳神経の障害・神経発達ネットワークの障害です。)
例えば、挨拶ができない、自分の名前や社名が言えない、他人の名前を言えない、マニュアル通りの決められた順番で話せない、言いやすい言葉を発話するために敬語を使わない場合もある。などなどが考えられます。

(ただ、これだけ色々な合理的配慮を職場で、採用側、雇用する側が行う可能性があるとなると障害者手帳所持は必須だと思いますが……)

(吃音の障害者認定反対派の人は、吃る権利があると考えているので、一年間365日ありとあらゆる場所で吃りまくるので、そのありのままの状態を一般雇用枠で認めることになります…)



◆吃音者に想定できる、考えられる合理的配慮一覧

・声をだして挨拶ができない場合は笑顔や会釈でも良いとする。

・電話応対を一部免除する。全部免除する。社内の電話のみ応対させる。外部との電話応対は免除する。

・社内アナウンスや店内アナウンス、放送の業務を免除する。

・落語家の桂文福さんのように歌いながらメロディに乗せて職場内やお客様のところで話してよいと認める。吃音者は歌いながら、メロディに合わせて話すと吃らない人がとても多いため。

・落語家の桂文福さんのように、会話の中でギャグを織り交ぜたり、舌打ちをして滑稽な音を鳴らして職務遂行をしても、それを許容する。許す。怒らない。吃音者の道化キャラで働くことを認める。

・社内の朝礼、全体集会、全体挨拶、飲み会の挨拶、式典の挨拶などで口頭発表させることや社訓の暗唱や社内用語暗唱などを免除する。

・吃音者には営業以外の仕事をしてもらう。他の障害者のように社内の仕事をその分切り出す。その仕事をしてもらう。

・吃音者は吃ること避けるため、言いやすい言葉に言い換えを行う。「赤いボールペン」→「レッドなボールペン」、「トイレ」→「お手洗い」、「昨日(きのう)」→「昨日(さくじつ)」、「水曜日」→「火曜日の次の日」、「新聞紙」→「ニュースペーパー」などと言い換えることがあります。

それを不自然だと笑わない。指摘しない。

・吃音で有名な芸能人やアナウンサーや総理大臣や王族がいるからといって、あなたの目の前にいる吃音者はそうではない場合もあると認識を改めること。XXさんがこうやって成功したからあなたもやりなさいと意味不明のアドバイスをやめる。障害が個性となる職業のイスは非常に限られている。

・筆談を利用できるようにする。

・吃音者は吃ることを避けるため、言いやすい言葉を発話する。場合によって敬語などを使わずにタメ口になってしまうことがある。それを認める。許す。怒らない。

・営業や電話応対を認めるにしても、必ず初回に外部やお客様に接するときに、同僚や上司が「弊社のXXは吃音という障害があるので。話し方が不思議に思われるかもしれませんが仕事には影響がないので気にしないでほしい」と説明する。

→とくに職場の同僚や上司が一度、吃音当事者とファーストコンタクトする相手に説明するステップは重要です。吃音当事者自分の言葉で説明するのは大切ですが、同僚や上司のワンクッションがあるかないかでは相手側の受け止め方も変化します。

・電話応対の場合 自動音声システムでを利用する。「この電話は吃音者、吃る人が架電しています」、「この電話は吃音者、吃る人が受電しています」こういったアナウンスも必要になるでしょう。

・口頭での報告連絡相談よりも筆談以外に手書きメモやEメールやチャットの利用を認める。コミュニケーションアプリの利用を認める。

・吃音者は人それぞれであるが、話すときに、唾液を飛ばしてしまうことがあるので、マスクの着用を認める。

・工場や調理場など安全確認が重要視される職場で、「後ろ通ります」、「声出し安全確認作業」ができない場合ブザーやホイッスルなど他の手段を考える。

・飲食店やサービス業であれば、いきなりステーキの従業員が利用している透明マスクの着用を認める。(これは吃音者の中に吃るとき唾液を飛散させる場合もあるためである)

・飲食店やサービス業以外では普通の顔が隠れるマスクの着用を認める。吃音者は吃る時の顔を見られたくない人もいます。口がまがる。唇が震える。唇が尖る。口元が痙攣する。唾液を飛ばしてしまう。白目をむいてしまう。視線が合わない。などなど吃るときの外見上の影響がでる当事者も存在するためです。

・飲食店やサービス業ではお店の入り口などに、「吃音者が働いています」と告知すること。聴覚障害者の洋菓子店のように吃音者が働いていることを説明しましょう。タッチパネル方式だと聴覚障害者も吃音障害者も助かりますね。

・吃音者がホウレンソウや会話をするときに、吃ってしまうため他の人よりも時間が倍近く必要だとしても、ゆっくり余裕をもってその話を聞く。

・吃音者の言葉を先取りしない。吃音者の主義主張によっては最後まで言い切るまで待ってほしい人もいます。逆に話している途中で、XXXのことを言いたいの?と言われたほうが話しやすい人もいます。 ※このあたりは当事者とよく話し合う


★医療従事者、コメディカルの吃音者はどのような合理的配慮? 学校教員や弁護士、警察官や消防士なども同様
吃音当事者の中には、医師、言語聴覚士、看護師、精神保健福祉士、社会福祉士、介護士、臨床心理士など心理系、の仕事をしている当事者もいます。

医療従事者、コメディカルの吃音者にはどうしても言い換えのできない言葉を多く使用する場面が想定できます。人名や薬品名、患者さんクライエントさんとの面接や心理検査、言語療法、結果の説明などがたくさんあります。とくに心理検査や言語療法などの場合は一言一句間違わないで実行できなければいけません。

心理検査や言語療法などで患者さんに「私のあとに続けて話して下さい。マネしてください」などと説明して、吃る部分まで真似をされてしまうという事例も発生しています。事前に患者さん、クライエントさんへの吃音の説明が必要になります。この場合も同僚や上司がワンクッション説明を入れることが重要です。

また、吃音を持った当事者が医療従事者など、警察官、自衛隊、消防士、国家資格や専門資格などを目指す場合。吃音当事者学生を受け入れる学校、大学や専門学校等は、研修所、実習先にも合理的配慮を求めるときに助けてあげてください。




以上のように様々な合理的配慮が今のところ考えつきます。
話すこと発話することの配慮だけが必要です。それ以外はおそらく大丈夫だと思います。

※しかしながら、吃音当事者には吃音だけではなく、自閉症スペクトラムやADHDなどの一般によく知られている発達障害を持っている場合もありますので、この場合はその発達障害特性にも配慮をする必要もあるかもしれません…。

何れにせよ、当事者と雇用する側がその都度、その人その人ごとにカスタマイズ就労について話し合い考えることがとても重要なステップになります。吃音はその人それぞれにより症状が異なります。また吃音当事者の主義主張によっては合理的配慮をたくさんされるよりも、吃ったまま仕事をしても怒らない環境、笑われない環境を希望する場合もあります。一律にこうすれば良いという正解はありません。雇用する側の譲歩できる部分、当事者側の希望する部分。これらをじっくり話し合い落とし所を見つけてお互いが納得できる気持よく仕事ができるようになることが重要です。

まずはスモールステップアップで吃音者の雇用事例が日本全国で集まっていくことを期待します。その際は吃音の障害者認定反対派の妨害工作もあるかもしれませんが気にせず冷静な対応をしましょう。

■7. 就労移行支援事業所は吃音者とどのように向き合うか?
2014年7月から突如として吃音が発達障害者支援法に含まれていると定義されていますと発表があり―。しかし吃音以外の発達障害の業界では吃音が発達障害者支援法に含まれていることはそれ以前から知られていたようです。就労移行支援事業所の職員でもそれを理解している人はいるかもしれません。

さて、今後は、発達障害者の就労移行支援に吃音者が入るようになります。就労移行支援事業所によっては吃音者が利用申請をしてくる場合もあるでしょう。成人しても吃音が治らずに継続する吃音者は全人口の1%に世界中に存在していると言われています。吃音者への就労支援は一般に言われる発達障害を併存している場合もありますので、その部分については既存のメニューで対応ができるでしょう。

問題なのは就労移行支援事業所内で、吃音をどのように扱うのかです。これは6番でも説明したように合理的配慮を提供するのか?などを考えなければいけないでしょう。

吃音当事者が吃音だけではなく一般によく知られている発達障害を持っている場合もありますので、その部分については現在のノウハウが利用できます。

その他にも就労移行支援事業所が営業や案内やセミナーを企業団体向けに行うときに、企業側、雇用する側の吃音者への本音をどれだけ聞き出せるか?ということも重要です。そしてその本音を吃音者や吃音当事者団体に気付いてもらうことも必要です。しかしながら吃音者は障害受容ができていない場合も多く時間がかかる場合もあります。かなりのミスマッチが起こることが想像されます。

■8. 障害者手帳を持っていないのに合理的配慮を宣言された場合、雇用する側は不採用を決断する 採用したが失敗した場合 事案紹介 事例紹介
※全ての事例や事案がそうだとは限りません



1.
「吃音者の人が障害者手帳を持っていないのに。合理的配慮をしてくれ」と言ってきたので、面接では合理的配慮をしたが、後日不採用通知を出したということだ。理由は障害者手帳を持っていないから、障害受容ができていないから、他の障害者に何か悪影響を及ぼすような気がしたという。

一度非公式に「障害者手帳のコピーを今度持参してください」と伝えたが「吃音は障害ではありません。個性です。仕事上問題はありません。私は吃音で障害者手帳を取る予定はありません。」と自信満々に言われたため、『あぁ。これが講演会や勉強会でよく出てくる障害受容ができていない人か。入社後もトラブル起こしそうだし、すでに働いている障害者に個別の障害についてあれこれ説教し始めそうだから不採用』という結論にいたったという。

2.
カミングアウトしてきた吃音者が面接に来たので、障害者手帳を持っていれば、障害者枠で採用できると水面下で伝えたが、応じなかった。吃音は障害じゃない!と反論してきた。採用は見送った。

「私の団体では、吃音のある人とも一緒に働きたい。とは思っている。でも障害者手帳を持っていない吃音者が本当にいるとは思わなかった。残念だ」という。

合理的配慮をする以上。法定雇用率に計算できること、という部分については吃音者側にも理解してほしいのだけど残念だという。

3.
障害者手帳を持っているが、不採用になった吃音者。
障害者手帳を持っている吃音者が障害者枠で応募してきた事案。
合理的配慮の希望と法定雇用率の問題はクリアできたが、吃音者側が「障害者枠の仕事じゃなくて。一般と同じ仕事がしたい。なぜ接客や営業をしてはいけないのですか?なぜ喋る仕事をしてはいけないのですか?吃音者に対する差別ですか?機会を奪うなんてズルい。吃っていても総理大臣やアナウンサーや医者や営業がいる。接客や営業だって経験したい」と面接段階で意見を述べていたため、不採用通知を出したという事案。

これも吃音者側と雇用する側のみミスマッチです。
現在、吃音業界、吃音当事者団体では、東証一部上場企業や国家公務員、地方公務員に就職して活躍する人もいるため。成功した吃音者がやっている仕事や職務を遂行したい!という若い学生、新卒就活をする吃音学生が多いことと条件が合わないという事案。

たしかに発達障害という概念が世界に生まれる前は「ちょっとあの人変だよね」という人は就職できていたが、2017年現在の就職活動は件の障害者発見試験や面接、グループ面接、グループ討論、などに「発達障害傾向のある人」をなんとかしてあぶり出す手法が販売されているため、一般枠で発達障害者が隠して応募してもなかなか突破するのは難しい。ましてや吃れば一発でバレる吃音者にはハードルが高い。

そこで障害者枠で就活している吃音者が出てきたが。吃音のある先輩達、パイオニア達がやってきたこと、同じ仕事をしたい。機会を提供しないのは差別だ!という雇用する側が用意した仕事をしたくない!差別だ!と衝突につながる事案が発生したという。

雇用する側としては無理に話す仕事はしなくていいので、社内に限り電話や通信はまかせるけど、積極的に表舞台では活躍しなくていい。もっと他にも仕事があるから、こっちを一緒に頑張っていきたいと吃音者側に伝えても。吃音者側が拒否する、その仕事しかさせないのは差別だと反論してきたという事案だ。雇用する側としてもトラブルになりそうな人は最初から雇用したくないというのだ。たとえ障害者手帳を持っていたとしてもだ。

4.
採用後の事例。雇用側が吃音だけ配慮する予定で採用計画を考えており無事入社した吃音者。しかし吃音以外に、発達障害があることがわかり雇用側が「採用ミス」だと社内で一致した事例。吃音者は社内ニート扱い。

採用時に吃音者は吃音のことしかカミングアウトしておらず、雇用側も吃音だけだと思っていた。しかし、発話発語のコミュニケーションよりも空気や気持ち、雰囲気、ホウレンソウが原因となる問題が多発。時間配分や時間を守ること、ケアレスミスなども多い。独自ルールが社内ルールよりも優先されるなどのトラブルも。

吃音以外に広汎性発達障害、ADHDがあることが後に判明。雇用側は採用時に見抜けなかったのかと問題に発展。

吃音者は純粋吃音だけではないと障害者の人事採用、障害者の就労移行支援など支援者や就職エージェントなどの間で支援困難事例として現在情報共有されている。

5.
採用後の事例。せっかく障害者枠で採用した新卒吃音者が4ヶ月で辞めた。
障害者枠で採用した新卒学生の吃音者。意欲も高く採用したが。入社の後の新人研修期間、組織の人事制度、給与面、キャリアアッププランなどに不満があったらしい。吃音ではない発達障害の新卒学生は黙々と仕事を続けているのを見ると吃音の人は今後、採用対象から外すという判断をせざるを得ないことになる。発達障害の新卒学生は就労移行支援事業所に行っていた経緯もあるので支援者が間にいることが影響しているのかとも反省。「不安」や「希望」などを聞いてくれる支援者のワンクッションがここまで大切だったということが判明した残念な事案。

障害者枠で入った新卒学生がたった4ヶ月で自分勝手に辞めていった事案は、今後吃音者の就職活動全般に、後輩吃音者にとても不利になるだろう。採用にもコストがあるということを吃音者側が理解しないとならないだろう。また、吃音者も就労移行支援事業所経由でないと採用が難しくなるだろう。自分勝手に辞めてしまう衝動性からADHDもあるのではないかとも思われる。吃音者の採用をお考えの企業様、公的機関様に悪い印象になったことは間違いない。

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