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2016年12月10日土曜日

【保護者・当事者必見】吃音者、吃音の子ども、病院にいくタイミングとは 障害者手帳を取得するタイミングとは デメリットは何?初診日問題について

この記事は長文です。関連リンクなどを含めると1時間程度必要となります。
自宅など、リラックスして余裕があるときにお読みください。


保護者の方、当事者の方へ。
吃音業界では知られていない。または隠匿されている現実を書きます。


下記リンク 時間がある時にお読みください。
【別記事紹介】【保護者必見】吃音の子どもを育てる立場の人はどうしたらいいのか?どうやって合理的配慮を発動する? 保護者に向けたガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/blog-post.html
【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドラインhttp://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html
具体的に吃音で精神障害者保健福祉手帳を取得するために必要なこととは?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/07/blog-post.html
吃音至上主義(きつおんしじょうしゅぎ)とはなんですか? どんな差別主義ですか?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/12/blog-post.html
2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2015/11/2013.html
【自殺に至るまでの記録】吃音が含まれる労働保険審査会資料を精神障害の件、自殺の件 2件紹介
https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/06/2.html

この記事は最初に「初診日問題」という発達障害業界では当たりまえに知られていることですが、吃音業界ではほとんど知られていないことを扱っています。

記事については【随時更新】しています。

記事前半はデメリットのこと。
記事中盤は吃音者が取得できる可能性のある障害者手帳のお話です。
後半は「吃音があるとわかった場合、吃音以外の発達障害もあるかもしれない?」と考える時間の大切さについて解説します。

吃音者、吃音のある子ども。発達障害者、発達障害のある子ども。(自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群・広汎性発達障害、高機能自閉症)やADHD、学習障害、チック・トゥレット症候群などの発達障害)
いったい、いつ、どのようなタイミングで病院に行けばいいのでしょうか?
障害者手帳はいつ取得すればいいでしょうか?

という話をこの記事でまとめようと思います。

まず最初にみなさまに必ず知っておいてほしいこと。
吃音を病院で診療してもらうことのデメリットです。

この投稿はとても重要なことです。
しかし吃音業界ではこのことがあまりにも周知徹底されていません。筆者は驚愕しています。
吃音を診療する医師や医療従事者も「気軽に吃音のことで病院に行きましょう。相談しましょう」などとアドバイスをしてしまう人もいます。


子どもの吃音で1回でも病院に行ってしまうとどうなるのか?
すでに子どもを病院につれて行ってしまった保護者。
大人の吃音者にはとても厳しい内容が書いてある記事になります。
精神的に大変ショックを受ける場合もあります。

ではこれから下に記述する数々の問題・課題をどう解決するか?後述する障害年金格差は障害者の権利に関する条約にある「平等」な状態とはいえません。それは吃音者や家族だけではなく、他の障害者・当事者や家族や団体と協力して国の政治や企業団体に変化してもらうように運動することです。吃音者が困っていることは吃音者だけが困っていることではないからです。



■1.吃音・吃音以外の発達障害を病院で診療してもらうことのデメリット (吃音も含めて障害者手帳をもらう以前)
とても重要なことです。
まず、日本では「初診日」が発生します。

初診日とは患者がその症状を訴え、障害の原因となった病気や怪我について初めて医師又は歯科医師の診断を受けた日です。しかもたとえその医師が誤診して他の病気だとカルテに記入してもその日が初診日になります。

しかも、この初診日とは診療する医師の担当科は関係ありませんのでご注意を。吃音の場合は耳鼻咽喉科と精神科で初診日が違うのでは?と勘違いする人がいるためです。また、吃音はICD-10コード「F00-F99 精神および行動の障害」の中に含まれているため、法制度上も精神障害者(発達障害を含む)ということになります。


「吃音は障害ではありません。ましてや発達障害ではありません。可哀想な障害者ではありません。頭のオカシイ、犯罪を起こしても無罪という精神障害者や発達障害者と一緒にしないでください」と差別発言を繰り返す吃音当事者や保護者も残念ながら存在しますが。 診断コードにおいて吃音は精神障害扱いです。

ICD-10コード一覧 (東京大学)http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/icd10/
※現在、アメリカ精神医学会の2013年発表DSM-5において、よりいっそう明確に吃音は「神経発達障害」であると分類されました。
※2018年現在、日本精神神経学会がICD11の邦訳案を公開しました。ここでも吃音は「神経発達症群」とされました。より明確に吃音が発達障害の一つの特性であるとされたことになります。
https://www.jspn.or.jp/modules/info/index.php?content_id=622

しかし吃音業界は日本精神神経学会のパブリックコメントに反応せず無視した経緯があります。他団体はしっかり団体として呼びかけや行動をしています。
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/06/blog-post.html 


この初診日が一般に言われる発達障害者、吃音者、吃音のある子どもにどのようなデメリットになるのでしょうか?

1. 初診日が国民年金を納付する前にあれば、国民年金の障害年金等級(1級、2級)しか申請できない。厚生年金の障害年金で3級程度の障害や困り事があっても国民年金の障害年金に3級は存在しない。

2. 初診日が厚生年金を納付している時であれば、厚生年金の障害年金等級(1級、2級、3級)と国民年金の障害年金等級が該当すれば両方受給できる。事例として成人して厚生年金などの保険料を納付している場合に初診日があれば厚生年金と国民年金の障害年金2級がダブル受給(およそ毎年120万円程度)できるのです。大人になってから運良く厚生年金などの初診日を持っている状態の発達障害当事者はダブル受給している人がいます。生活はとてもラクになります。

3. 厚生年金の3級は配慮があれば仕事ができる程度なので、多くの軽度吃音者はこの部分に該当する。

・健康告知が必要な商品やサービスに加入できない。
●●共済、生命保険、住宅ローンなど健康告知、健康診断、病歴、通院歴を告知する商品に加入できない。
吃音のある子ども、吃音のある大人の家族である。お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、親戚など健常者の人が加入できる1番最高ランクの商品には加入できない。他のグレードの、病気のある人向け、障害者向けの商品には加入できる可能性がある。



この3つが、一生死ぬまで、その吃音者、吃音のある子ども、発達障害者、発達障害のある子どもについてまわります。
よく吃音について書かれた書籍で医療従事者・医師や言語聴覚士などが「幼少期に気軽に病院に行ってみよう。相談しよう」と保護者に思わせるような記述が多く見受けられます。学校で合理的配慮を受けるために、ことばと聞こえの教室に行くために、英語検定試験や高校入試や大学入試で合理的配慮を受けるために、国家資格取得のための試験で合理的配慮を受けるために医師の診断書が必要な場合があります。

しかし「診断書や意見書」を書くということはその医師が「この人は吃音であると診療してしまい、カルテに書いている」のです。そのためこの診断書や意見書を書いてもらう以前に初診日が確定してしまっているのです…。

吃音のある人を診療する療育する立場の人、上手く話せるように訓練する、医療従事者の人、支援者の人の中には

とても気軽に

病院に行きましょう お医者さんに相談しましょう 言語聴覚士に相談しましょう

とアドバイスをする人も存在しますが。
よく考えてください。
お父さん、お母さん、よーく考えてください。


はい。残念ながら、その時点で「初診日」が発生しました!!!
ということになっていまします。


障害年金は、現在、大人の発達障害と言われる、大人になってから発達障害が発見され、運良く仕事をしていて厚生年金保険料を納付しているときに初診日がある当事者は、『厚生年金の障害年金3級を貰いながら、これから仕事や生活ができます』

しかし、大人になってから、発達障害特性で職場でフルボッコにされて退職に追い込まれたあとに病院に行くと、初診日が厚生年金保険料を納付していないので、国民年金扱いの初診日になってしまいます。

現在、発達障害者の中で、障害特性や困り事が全く同様のAさんとBさんがいても、片方は障害年金3級が貰えない、片方は障害年金3級を貰いながら生活しているという収入格差(およそ毎年50万円ほどの3級がもらえていれば一人暮らしできる、職場の同僚とランチや飲み会などにいける、スーツやワイシャツなどをクリーニングにだせる、趣味余暇活動に使えるお金が増えるなどなどの事例)が出てきています。この問題については吃音者だけでは解決できません。他の障害者と協力して政治を動かさないとダメでしょう。国民年金の障害年金3級を創設してほしいと障害者運動をしていくしかないのです。

また、ことばと聞こえの教室など通級指導を利用した履歴でさえ、年金事務所は「そこに通級するということは、子どものときに何らかの障害を疑われていましたよね?その時に初診日があったのではないかと」疑義を呈してきます。年金事務所では疑義が1%でもあると国民年金での申請に切り替えるように指導してきます。そして国民年金の障害年金には等級が該当しませんでした。不受理という結果が告知されます。

吃音のある方で障害年金を申請する場合は必ず精神障害や発達障害に特化した社会保険労務士の申請代行をすることをオススメします。病院によってはソーシャルワーカーが記述内容を考えてくれる場合もあります。くれぐれも個人で障害年金申請はしないでください。将来もらえるはずだったものが貰えなくなる可能性が高いのです。


―――健康告知が必要な商品やサービスに加入できないのは。うつ病の人が健康告知が必要な商品やサービスに加入できない問題と同じです。しかし、うつ病の場合は治ることがあるので、医師が治ったと判断したあと5年くらい待てば加入できる場合もあります。

うつを放っておくと、保険に一生入れない?(加藤梨里 ファイナンシャルプランナー)
http://sharescafe.net/47681033-20160131.html

発達障害の場合は、国際的な診断基準で「障害」とされていますのでそもそも、「治った」という状態が存在しません。もちろん当事者が私は治ったと思っていても、世間の基準、生命保険や住宅ローン会社に属する医療従事者はそのように審査はしません。セクシャルマイノリティの当事者も同じ問題があります。障害や性の特性により、「うつ」になる。結果として自傷行為や自殺リスクが高いというのです。これらも将来、変えていかなければいけないでしょう。 

参考情報
私はワタシ ~over the rainbow~(セクシャルマイノリティの人が出演しているドキュメンタリー映画) http://rainbowreeltokyo.com/2017_sp/program/iam_what_iam_over_the_rainbow


もちろん吃音であることを告知しないでウソをついて、偽って加入することはできるかもしれません。しかしその場合は社会的責任や制裁を受ける可能性があるのでよく考えましょう。



―――吃音を含む発達障害者が加入できる保険は何?

・各保険会社の引受基準緩和型/限定告知型の保険商品

・ぜんち共済
http://www.z-kyosai.com/


・株式会社 ジェイアイシー
http://www.jicgroup.co.jp/index.html



これが吃音で病院に行くことのデメリットです。
障害者手帳を取得するかしないか以前にこんなデメリットがあるのです。
吃音を気軽に診療してもらうために。
学校や試験で合理的配慮を受けるために。
資格取得のための実習の際に合理的配慮を受けるために。
障害者手帳を取得するために。

気軽に病院に行ったがために「初診日」が発生します。
お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、親戚のみなさん。
吃音のある子どもの人生をよく考えましょう。

これらを踏まえると、

吃音があっても病院に行かない、ことばと聞こえの教室など通級にも通わせない。

生命保険など健康告知が必要な商品にはあらかじめ初診日が付く前に加入させておく。
初診日が付く前に子ども時代から入れる保険商品があれば加入しておく。

大人になって厚生年金を納付するときになってから、生まれて初めて病院に行って初診日をつける。そして障害者手帳と障害者年金3級をもらって生きていくというルートが考えられます。


また、運良く、現在大人になって働いているときまでに初診日がない吃音者は厚生年金や共済年金を納付しているときに初診日をつけましょう。吃音を指摘されて勤務先や職場などで精神的に大ダメージ、フルボッコにされていたとしても、初診日を発生させてから辞めましょう。勤務先を辞める、退職したあとに病院にいくと国民年金対象の初診日になってしまいます!


この記事に書いてあることが信じられない!!この記事はウソだ!!

と思う人は保険会社や住宅ローン業界、金融業界などにて営業や審査をしている人が親戚や友人、知り合いがいれば、このことを質問してください。正面からお客様センターに問い合わせるのはNGです。そういった電話での相談ですら、現在はお客様対応の品質改善のためなどという名目・理由で録音されているためです。その業界で働く友人知人に対面した状態で会話して質問しましょう。

現在、生命保険会社の申し込み書類を取り寄せると「精神障害や発達障害がありますか?」という質問項目があります。質問項目ではなく、持っている病気や障害をお申し出くださいという項目に発達障害(          )という場合もあります。

発達障害のある人(吃音を含む)がインターネット上に実名で公開すること。吃音のある人向けの体験談の発表などもそうです。健康告知が必要な商品の加入、加入後の支払いの際に影響が出る場合もあります。病歴・障害を隠していてもいざというときに保険金の支払いなどが実行されない、契約を解約される場合がありますのでご注意ください。


■2.吃音で取得できる障害者手帳とはなんですか?

まず最初に重要なことをお伝えまします。吃音の障害者手帳5級は存在しません。
※最近、吃音で障害者手帳5級を取得しようというデマ、流言飛語があるため。

さて本題に入ります。
吃音で障害者手帳を取得できるというのはなんでしょうか?
この3つがあります。身体障害者手帳4級、精神障害者保健福祉手帳2級、精神障害者保健福祉手帳3級です。

身体障害者手帳の4級は精神障害者保健福祉手帳2級と同程度になるイメージ(あくまで筆者のイメージ)

身体障害者手帳4級   = 精神障害者保健福祉手帳2級
該当する等級無し   = 精神障害者保健福祉手帳3級
・身体障害者手帳4級(家族としか会話ができない)
また身体障害者手帳は『明確な検査数値や可動範囲、喪失など基準があります』
これは言語障害に限らず、どのような身体障害も『この基準を満たしている』ので交付を認めるという形式です。しかし発達障害による精神障害者保健福祉手帳は『日常や学校や職場でどの程度困っているか』が基準になるため軽度吃音者でも取得することは可能なのです。

・吃音を身体障害者手帳に! という意見がありますが。これをしてしまうと軽度の吃音者の選択肢が無くなることになります。なぜなら身体障害者手帳は明確な基準をクリアしなければいけないからです。

・精神障害者保健福祉手帳2級(日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度)吃音が中度から重度、または吃音以外の発達障害を持っている。または適応障害、社交不安障害、うつ病を持っている。

・精神障害者保健福祉手帳3級(日常生活又は社会生活が制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度) ほとんど多くの吃音者はここに当てはまることになります。

・吃音と社交不安障害、適応障害、うつがあれば精神障害者保健福祉手帳2級ということもあるかもしれません。

・吃音と自閉症スペクトラム障害、ADHD、LDなどと併存があれば、精神障害者保健福祉手帳2級ということもあるかもしれません。

・医師に困っていること、不利益があること、過去の辛い経験などしっかり話すことが重要になります。それに基づいて医師は申請書類を書くことになるからです。

・吃音を診療する耳鼻咽喉科医師は精神障害者保健福祉手帳の申請書類の書き方をよく理解していない問題もあります。困っていることの表現が理解できないのです。精神科医師なら困っていることを具体的に文書化することができます。精神障害者保健福祉手帳の基準にあった表現方法を理解しているからです。これにより、本来吃音により精神障害者保健福祉手帳2級が取得できたのに、3級になってしまうということもあります。

  関連記事 吃音による精神障害者保健福祉手帳申請書類の書き方


よく吃音業界・吃音当事者の相談などで言われるデマ、ウソ、誤認識「吃音が軽度だと障害者手帳は取得できない」という情報がある。 いいえ!軽度でも取得できるのが発達障害者支援法による精神障害者保健福祉手帳です!

実は発達障害のある当事者で、全然、発達障害があるように見えないのだけど精神障害者保健福祉手帳3級を持っている人がいます。(初診日の関係で厚生年金の障害年金3級をもらっている人もいます)

その人に言わせれば『私と関わるようになって???なことが日々、徐々にでてきて。3ヶ月くらいすればやっぱり変だ!』と思いますよ(笑)という当事者もいます。吃音者も軽度であれば、すぐに吃音とはバレずに時間が経過してから。ある程度人間関係ができたあとに『以前から気になっていたんだけどさ』とその話し方について質問を切り出される場合もあるかもしれません。


吃音業界では誤解が多くて残念なのですが―。
精神障害者保健福祉手帳3級は発達障害が軽度でも日常生活でも学校でも職場でもどこでもいいので、困っていることがあれば取得できるのです。
吃音業界では本当に腐ったデマが流れています。
精神障害者保健福祉手帳を取得してしまうと、障害者枠でしか就職できない。一般枠は選べないというデマです。


―――とても発達障害が軽度な人でも精神障害者保健福祉手帳を持っている事実 そして精神障害者保健福祉手帳を持っていることを隠して一般枠で働く人もいます
発達障害特性により困っていることをしっかり書いてくれる病院・医師を探すことが大切に! 吃音業界ではこれが隠されています


はっきり言うと、精神障害者保健福祉手帳を持っていても、一般枠で【障害を隠して、定型発達者のフリをして】応募できます。そして応募先にバレなければそのまま採用されて働くことはできます。これをクローズド就労といいます。発達障害があることをクローズで秘密にして働くことです。

逆の場合はオープン就労といい。発達障害があることを応募段階から明かして、障害者枠で働くことを目的とします。オープン就労は応募者自身が苦手なこと、失敗しそうなこと、配慮してほしいことを職場に伝えます。職場の人も発達障害があることを前提に接してくれます。クローズド就労は障害や苦手なことを一切明かせないので、自分で自分を守る、自分が編み出した処世術で乗り切ることになります。

このように一般に言われる発達障害者が、精神障害者保健福祉手帳3級を持っていても、仕事をする際、一般枠で採用・雇用する側に障害者手帳を持っていることを隠して(クローズド)働いていることを考えれば吃音でも、どんなに軽度な吃音でも、困っていることを医師に伝えて、障害者手帳申請書類に書いてもらえれば取得できることは間違いないのです。現状、筆者の知っているA病院は軽度吃音者でも障害者手帳3級を取得できる事例が増えています。吃音業界側の医師は軽度吃音では障害者手帳を取得できないとか、一般枠で働いているなら障害者手帳を取得できないと言う人もいますが。これは大きな間違いです。発達障害者がクローズドで、一般枠でどうやって就労しているのか? そしてなぜ精神障害者保健福祉手帳3級を持っているのか? を理解していないのです。

そもそも重要なこととして、発達障害は365日24時間、いついかなる時でも、障害特性が出る場合もありますし、出ない場合もありますし、学校や職場ではなんとか乗り切れるけど、私生活、日常生活がムリという人もいます。学校や職場で困っていなくても、それ以外で困っていることがあれば、学校や職場において全力で定型発達者を演じるために毎日体力を使い切り、日常が犠牲になっている場合もあります。日常や私生活が大変ということで精神障害者保健福祉手帳を取得できる事例もあります。

たとえば発達障害のある人は、実家で生活している人もいます。なぜなら、掃除洗濯料理ができない、苦手という場合です。ゴミ出し、お風呂の掃除、トイレの掃除、部屋の掃除も苦手です。これが一人暮らしだとゴミ屋敷になります。水道光熱費であったり、役所・自治体の重要書類を紛失したり忘れてしまいます。学校や職場では全力で発達障害特性と戦いながら定型発達者の世界・ルールに適応しますが、それ以外が疲労で手がつかないということもあるのです。

―――発達障害のある人は、毎日体力(ヒットポイント)を使い切る人も
定型発達者の人は日々、365日。毎日、体力・ヒットポイントが100だとして、20から40位を残して生活しています。睡眠をすれば80から100まで回復します。

しかし発達障害のある人の場合、毎日、残りの体力・ヒットポイントは1から10という瀕死の状態です。睡眠をしても50から100くらいと、安定しない回復力です。新しい環境など適応が困難なストレスがあると睡眠をしても効果が少ないという意味です。

発達障害のある人はなぜ体力・ヒットポイントが安定しないのか、毎日瀕死状態まで使い切るのか。
それは学校や職場という定型発達者の世界、ルールに必死に適応するからです。適応しようとするからです。また、身体の「疲れや空腹」を認識できないという特性を持つ人もいます。発達障害のある綾屋紗月さんは「身体が動かない。なぜだ。空腹だったと気付くまでに時間がかかる」という説明をします。

こうしたことが私生活、日常生活に大きく影響します。ゆえに、発達障害によりできないことに私生活、日常生活のことを書けば精神障害者保健福祉手帳を取得できます。診断する医師も、この人は学校や職場で全力で適応している!と知っている一方で、私生活と日常生活がその分割を食う結果になっているとしっかり困りごとをひろってくれるからです。吃音者の場合も、学校や職場で、「普通」と言われる価値観の世界に死に物狂いで適応しているわけですから、学校や職場以外の困りごとで精神障害者保健福祉手帳を取得することは可能なのです。あとはそれをひろって、診断書を書いてくれる理解有る、医師が増えていくことが大切になるでしょう。



発達障害者のクローズド就労の場合
服薬、スマートフォンのアプリ、スケジュール管理、リマインダー、イヤーマフ、静かな環境、人が少ない時間に移動、ソーシャルスキルトレーニング、当事者会で悩みを話す、病院で医師や支援者に相談などなど、余暇活動でストレス発散、仕事や職場ではなんとかなるが帰宅した後は何もできないから家族や他人に助けてもらう、仕事や職場で働く時間の体力・ヒットポイントはあるが使い切ってしまう(仕事や職場以外で定型発達を装うのが精一杯でそれ以外の場所で発達障害特性がでてしまう、飲み会や遊びの誘いを断ることも)いろいろな選択肢を利用して健常者・定型発達者を装い、振る舞い、社会に食らいついているという事例もあります。

(上に書いた数々の努力や訓練、アイテムの利用により)精神障害者保健福祉手帳を持っていることを勤務先に隠して、一般枠で働く当事者も存在します。吃音だって上手く吃らずに話す方法を編み出して頑張っている人が精神障害者保健福祉手帳を取得することはできるはずなのです。


―――吃音も含め発達障害のある人、子どもが利用できるサービス、就労移行支援でオススメのところは?

現在、東京と東京近郊、大阪に事業所を展開している株式会社kaienという発達障害児者に特化した就労移行支援事業を展開している企業があります。ここの経営者は元NHKアナウンサーで家族に発達障害の方がいるということです。東京の自閉症協会会員でもあり、発達障害についての情報ネットワークは豊富です。

ここは発達障害のある人の就労移行支援事業所としてはパイオニアです。就職率、就職後の定着・安定率、就労訓練の厳しさ、発達障害特性に合わせた訓練内容、就労訓練後のアフターサービス、アフターケア、当事者同士や支援者がコミュニケーションできる場の提供などなど。とても充実した内容を行っています。2018年秋頃のNHK発達障害プロジェクトとして約一ヶ月間放送がありましたが、その中でもkaien訓練生、卒業生の映像がありました。kaienが凄いのはkaien独自求人というものを持っていることです。企業団体からするとkaienの訓練を問題なく行えている人材であれば採用したいという本音と建前があるわけで、故に人事採用担当からの信頼があるということになります。それを知っている当事者や保護者はkaienの就労移行支援待機に登録すると人も多いです。就労移行支援事業は自立支援サービスを使っても原則2年しか使えません。だからこそ最初から信頼と実績のあるkaienの利用待ちに登録するという人がいることになります。

また、kaienはHPやTwitterで情報公開をしているように、kaien訓練生は非正規雇用よりも正規雇用される人が多い、2019年現在では最初から正規雇用される事例もある、給与額もある程度良い、その後の出世の事例もあるなど(先程書いたNHKの番組でもkaien訓練生のその後の取材があり、責任ある仕事、出世しているなどが取り上げられていました)

吃音業界では精神障害者保健福祉手帳、発達障害者だと給与が安い、生活できない、結婚できない、幸せになれないなどなどの価値観が満ちていますが、そうではないということです。

事実上のkaien枠と表現してもよいでしょう。ここは吃音のある子ども、大人にも選択肢として覚えておいてほしいところです。

2019年以降、大学や高校の中で「kaien並の就労移行支援、就労訓練をしてきてほしい」という企業団体側の人事採用担当側の本音と建前が(その世界では)強く出てくるようになりました。レベル99の障害者、即戦力の障害者がほしいという本音と建前です。学校の学生支援室やキャリア支援室で、厳しい就労訓練をしてきてほしいというのです。

この理由は新卒障害者採用枠と関連します。採用側としては、kaienで行うようなレベルの訓練や新人研修を負担したくないという本音と建前があります。そして大学や高校で同レベルの訓練をやってほしいということなのですが。ここが現在、自立支援受給者証では対応できません。すべて自費です。ここが空白の、支援が行き届いてないところです。kaienでも学生向けサービスガクプロを行っていますが。こちらは全額自己負担です。これは自立支援サービス、受給者証の法律の問題であり、現在はどうしようもありません。

―――吃音の当事者は新卒障害者枠を狙え そしてみんな違ってみんな良いがまだまだ本音と建前であること

現在、身体障害者手帳を持った人の就職活動戦線は完全な売り手市場です。
しかし法制度が法定雇用率を徐々に引き上げて行くと、身体障害者のみでは達成できなくなります。そのため次に熱い視線が向けられているのはkaienのような厳しい訓練を受けたことがある発達障害者です。なおかつ新卒であれば強いです。そのため、新卒就活は一般枠と障害者枠を同時で行えるように逆算して精神障害者保健福祉手帳を取得しておく必要があります。一般枠での就職活動に失敗してから精神障害者保健福祉手帳を取得して障害者枠を検索してもすでにその年度の応募が締め切られています。障害者枠採用も一般枠と同じタイムスケジュールで行われているからです。一般枠で就職活動失敗してから障害者枠にいく場合は就職活動留年をするほうがよいかもしれません。一生に一度しか使えない新卒カードだからです。

吃音の当事者や保護者はよく間違えてしまうのですが、障害や病気をカミングアウトすれば採用される!!と思い込んでいることです。これは現在間違いであるとされています。まず企業や団体は病気や障害がある人を雇用したくないのが本音と建前になっています。そこで吃音者が一般採用枠で『吃音がありますが就職したいです。吃音があってうまく話せませんが、営業職や接客をしたいです』と言ったところで採用はとても困難です。しかし、吃音業界では、運良く、たまたまその人の環境やコネクションの強さで一般枠で採用されている人がおり、その人物が後輩吃音者や吃音のある子どもに『吃音をカミングアウトしても大丈夫だよ。吃音は障害じゃないよ。堂々とどもって仕事しよう』などと教えていることがありますが。これは発達障害のある人の就労移行支援事業を行っている企業団体からすると驚愕の内容です。吃音のある子どもの保護者の人は、保護者自身が所属している企業団体の人事採用担当にその部分を確認したほうがよいです。実際のところどうなっているのかという部分です。そうすれば一般枠でカミングアウトすることがどれだけ危険なことなのか判明すると思います。

kaienについても、LITALICOについても、その他の就労移行支援事業所でも障害を1%でも開示する、合理的配慮を希望する場合は障害者枠で応募すること、一般枠でそうすると貴意に添えない結果になりやすいと訓練生、利用者さんに教えています。LITALICOワークスでは職場での合理的配慮ガイドブックを公開しています https://works.litalico.jp/interview/consideration/ 障害当事者と支援者と採用側で覚書のように合理的配慮事項を文書化して3者間で保存するということです。

就職の場合の合理的配慮は、お客様として、学生としての合理的配慮とは異なるため、現在このようなことになっていると推測できます。お客様や学生の身分ならほぼ、可能な範囲での過度の負担にならない合理的配慮は実現されます。それはお客様と学生という身分はお金を落としてくれる、支払ってくれる立場だからです。これが企業団体が、採用側が当事者に給与を支払うという立場になると大きくかわります。給与という形式でお金を払う以上、過度な過重な負担や無茶な合理的配慮を要求してくる応募者を採用しないという本音と建前があるためです。合理的配慮することが多いならば面倒だから不採用ということになるのです…。 吃音業界によく見られる一方的な合理的配慮要求は実現困難です。

2018年財務省が障害者採用募集案内にて表記が差別であると障害者団体に抗議された事案がありました。毎日新聞記事https://mainichi.jp/articles/20181027/k00/00m/040/124000c

しかしこれは実際のところ発達障害者の採用や精神障害者の採用を行う人のための講演会やセミナーなどで、しかも独立行政法人が行うセミナーでも『障害者雇用をしたい人事採用担当者向けセミナー』で説明することがそのまま表現されていたわけです。財務省担当者も独立行政法人の説明をバカ正直にそのままコピーしたのが実際のところです。これは独立行政法人だけに限らず、就労移行支援事業所、社長や企業団体側に近い社会保険労務士は熟知していることです。要は「雇用するメリットがある障害者と雇用しなくてもよい障害者」を見分ける、ふるい落とす手法が開発されていることになります。そのバカ正直な本音と建前を障害のある当事者に、別の方向から教えてくれるのがまだマシな就労移行支援事業所でしょう。就労移行支援事業所でも独立行政法人のセミナーでもそうですが、『イベントや講演会の対象が障害当事者の場合』と『イベントや講演会の対象が人事採用担当者の場合』ではまったく正反対の説明をしているので、本当に辟易します。むしろ発達障害当事者や吃音当事者、保護者はなんらかの方法で『人事採用担当、障害者雇用担当者向けのイベントや講演会』に出席してみることをオススメします。本当に驚くでしょう。採用する方は本当にレベル99の、可能なら新卒、あまり合理的配慮しなくてよい障害者を探しているのか。そしてどんなに軽度でも困りごとが少なくても障害者手帳を持っていること法定雇用率に計算できること。こういったことが説明でされるからです。

例えば発達障害のある人、精神障害のある人の最低採用基準は『自力通勤できる、障害を受容している、自分の取扱説明書を書ける、月イチで通院している、服薬があればしっかりしている、勤怠が安定している、過度な過重な要求をしない(例 吃音なのに営業をしたいとか話すことが多い仕事を要求するとか)、就労移行支援事業所に通所した実績があるか、いつでも相談できる支援者(就労移行支援事業所職員やジョブコーチ)がいるか、軽度でも障害者手帳を持っている法定雇用率に計算できる、仕事をするという場合の合理的配慮とは何かを知っている、合理的配慮の話し合い落とし所が理解できる、一方的な合理的配慮をつきつけてこない』などなどが実現できるなら採用しなさいと教えているからです。ここが吃音当事者の一般枠カミングアウトが不採用になりやすいことにリンクします。

※過度な過重な負担とは?
  
事業活動への影響の程度
吃音のある人の場合、無理に営業職や会話、コミュニケーションが必要な職種をしたいという希望が多々あるが、それを実現できるか。否か。発達障害当事者なら自分のできないことできることを障害受容しており、まずは仕事、職場に慣れること、実績を出すことが要求されます。その後上手くいけば徐々に仕事の幅が広がる可能性も。
  
実現困難度
当事者の要求する合理的配慮ができるのかどうか。合理的配慮をするために、支援する立場の社員、職員が、設備が、コミュニケーションのルールがなどなどが実現できるかどうか。発達障害のある人の中に感覚過敏の人がいる。この場合、業務中にノイズキャンセリングイヤホンやヘッドホンの着用を許すかどうか。時間差通勤を許すかどうか。時間差通勤をすることにより実際に一般枠の人が勤務する時間からズレるため、1日の業務の流れに影響がないか。

費用・負担の程度
例えば身体障害者の場合、その人一人のためにエレベーターなどを設置できるのか。そのような余裕がお金があるのか? 発達障害のある人がクールダウンする部屋。静かな部屋を用意できるのかなどなど。

企業・団体の規模・財務状況
これはズバりそのものです。規模や財務状況が合理的配慮のための費用を賄えるのか。


これらは障害者雇用促進法にて『合理的配慮は当事者と事業主が話し合い実現可能な部分で行われる』とされているからです。これは障害者差別解消法の考え方とは少し異なります。お客様としての、学生としても立場の合理的配慮とは異なっているのです。

吃音のある子どもの保護者さんの本当の不安とは、『本音と建前の部分』だと思います。日本社会の常識やルール、慣習、保護者さんが実際に勤務している企業団体が障害者をどうあつかっているか、日本社会が障害者をどうあつかっているか。保護者のみなさんはこれらを本当は知っているから、吃音は障害じゃない、吃音を治さなければ、吃音のある子どもがかわいそう、吃音を障害にしてはいけないなどなどの考えがでてくるのも本音と建前(保護者さんの勤務する企業団体が障害者をどうあつかっているか、親戚親類が障害者をどうあつかっているか、日本社会が障害者をどうあつかっているか)の実際を知っているからではないでしょうか?

実際問題、現実はこうなっていますが。ここは吃音以外の障害者団体などと協力して日本社会や法律そのものを変化させていく運動していくしかないでしょう。100年後なのか、それ以上なのかわかりませんが、社会や価値観を変化させていくこともしていかないとなりません。



―――最初に吃音の手帳の等級イメージについて述べました。
しかし『吃音で身体障害者手帳を取得すること』は困難です。

現在、吃音とはそもそもICD-10という診断基準で「Fコード」で始まるため、都道府県(例 東京なら 東京都心身障害者福祉センター)、政令指定都市などの障害を審査する部署が吃音を受け付けない。そもそも身体障害者福祉法別表に吃音は明記されていない、さらにFコードである「F98.5 吃音」を身体障害者福祉法で対応するのは困難である。FコードとはF00-F99 精神および行動の障害とされているためです。市区町村の申請窓口にいっても吃音は身体障害者手帳ではないと言われる可能性もあります。

この点は2016年10月22日に厚生労働省の発達障害対策専門官 日詰正文氏が指摘している。吃音で身体障害者手帳を取得するなら、吃音とは書かないで、上手く話せないことを医師に表現してもらうことを指摘した。
2016年10月22日の講演会詳細
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016_10_01_archive.html
講演会詳細 ハフィントンポスト版
http://www.huffingtonpost.jp/takahiro-koguchi/disfluency_b_12614138.html


―――身体障害者の診断をする医療従事者もリスクは避けたい!

身体障害者手帳申請書類を書く、身体障害者福祉法第15条指定医師も『吃音で身体障害者手帳を交付させる書類を書くのは、リスクがあるので、断る』ということも考えられます。15条指定医という資格を剥奪されるかもしれないような危ない橋は渡らないということです。また、医師が記入する障害者手帳申請書類を自治体の担当する部署が吃音ではそれを渡さないということもあるでしょう。精神障害者保健福祉手帳の申請書類で書いてくださいと言われることもあるでしょう。

ゆえに、現在、運良く吃音で身体障害者手帳4級(更新無しの場合)を交付されている当事者はそれを亡くなるまで大切にしましょう。


■3.吃音がある場合、子どもに吃音がある場合。その他の発達障害、自閉症スペクトラム、ADHD、LD、チック、トゥレット症候群、発達性協調運動障害があるかもしれない


別記事 吃音至上主義とはなんですか?


現在、発達障害を研究する人、発達障害の診療をする医療従事者が説明をよくするようになった発達障害が1つだけの純粋者は少ないことという情報です。これは、吃音のある人、吃音のある子どもは、『吃音の診断を受けた』のかもしれませんが。もしかしたら他の発達障害もあるかもしれません。2つなのか、2つ以上併存しているかもしれません。

吃音と自閉症スペクトラム
吃音とADHD
吃音と学習障害(LD)
吃音とチック、音声チック、運動チック
※発達性協調運動障害は身体能力・手先が不器用だったり、力加減がコントロールできないなどがあります。詳細については割愛します

吃音と自閉症スペクトラムとADHDとLDということもあるかもしれません。
下のレーダーチャートのように今後は、Aのさんの発達障害特性はここが強くて
ここはあまり出ていないね。こういう特性があるんだね。ということはこうやって自己分析して、障害特性を防いだり、回避すること、対策もできるかもしれないね。逆に頑張っても無理な部分は受け入れて、得意分野で活躍したり、障害者手帳の利用、社会保障制度の利用、合理的配慮を利用してもいいかもね。

というように、吃音のある人、子どもと保護者ももっといろいろなことが困りごとやライフステージごとにカスタマイズして選択できるようになります。



吃音以外の発達障害について書かれた書籍を図書館で一度読んでみることをオススメします。吃音のある子どものお父さん、お母さんにオススメの書籍はミネルヴァ書房のこのシリーズ書籍です もしも子どもの吃音がわかった場合。もしかしたら他の発達障害もあるかもしれない。これを認識してほしいのです。子どものころに吃音以外にも何かあることがはやく分かっていれば、生きづらさが軽減する可能性もありますし、不利な状況を選ばないようにするという事前の準備や生き方を学ぶこともできるからです。


当事者であれば、子どものころのエピソードがそのまま書籍に書かれている場合もあります。吃音のある子ども親であれば、子どもの行動を注意深くみていれば、嫌がる環境、やる気がなくなるぼーっとしてる、具合悪そうな環境がある、嫌がる音や洋服がある。忘れ物、衝動性、こだわり、とてつもなく才能がある分野がある、あまりにもできない分野がある。記憶力がすごい、カメラアイやレコーダー特性がある、友人関係を維持できない、ルールや法律に厳格でちょっとした逸脱行為を見逃せない(学校で不正をする友達を許せない→イジメられるなど)、ウソをつけない、定型発達者の世界が平然とウソをつくことがあたりまえなので言うことがコロコロ変化する人間関係や上辺だけやお世辞がわからない、定型発達者は人間関係やパワーバランスを読める・空気を読めるため自身に有利な行動をとることや沈みそうな船から逃げることができる、字が汚い、書き順は関係ない、試験勉強を1回しかしなくても良い点が取れる(記憶の仕方が違う)、国語はできるけど計算がぜんぜんできない、手先が不器用、身体の使い方が不器用(体育の評価が低い)、美術の評価が高い、音楽の評価は高いのに嫌いな音がある……



書くとキリがないのでここでやめておきます。


吃音がある人、子どもと保護者は、吃音業界にはじめにアクセスしてしまう可能性が高い

吃音の当事者や家族、保護者、支援者、教員で吃音以外の障害種やマイノリティを差別する人が1000回音読してほしいTwitterのつぶやき 聴覚障害、発達障害をもつ当事者さんのTwitterをご覧ください 僕の彼女は発達障害という本を学研から出している方です



ここで発達障害(精神障害のある人、精神障害者保健福祉手帳を利用する人)のことを差別する、吃音と発達障害(精神障害)とは異なるという価値観や思想を植え付けられてしまうと、その後の障害受容が困難になります。

吃音至上主義というモノ、差別主義に取り込まれないように、染まらないようにしてください。子ども吃音だったとわかった場合、その他の発達障害もあるのではないか?と考える時間も必要になるのです。

吃音至上主義にハマってしまった、洗脳されてしまったことにより、吃音も自閉症スペクトラムも、ADHDもLDも「なんとかなる」ということで、適切な支援や療育を子どものころ(大きく成長する大切な時期に)受けられずに大人になってしまうということが実際に起こりえるからです。



吃音の他にも発達障害があるかもしれないと心配な場合。発達障害のある人、子どもと保護者さんは。発達障害を診る病院に行くこと。自閉症スペクトラムやADHD、LD、チックを扱う当事者団体、親の会にも参加することを強くオススメします。価値観や選択肢はいろいろ知ったほうがいいためです。発達障害の業界と吃音業界の価値観の大きな違い、生き方の違い、選択肢の違い、先輩保護者からのアドバイスや情報引き継ぎの多さにも驚くはずです。また、暖かさやふれあいが吃音業界と全く異なることにも驚くでしょう。

――吃音以外に発達障害も持っている当事者、吃音のお子さんの困りごとが特性が吃音だけではないように思える場合はどこに相談すればいい?
吃音以外に発達障害を持っている当事者やお子さんもいるでしょう。保護者さんもいるでしょう。そういう場合はまずJDDネット、日本自閉症協会、東京都自閉症協会に相談することをオススメします。吃音至上主義という差別主義がなくならない現状を重く見て吃音者、吃音のある子どものことを考える取り組みが開始されたといいます。

吃音業界では『吃音当事者には純粋吃音者が多い』という神話があります。
これは吃音は精神障害ではない、発達障害ではない。あのような可哀想な人とは違うという差別があるからです。前述した『あなたの子供が障害を持って「不幸だ」と思うとしたら、それはあなたが障害者をこれまでどう見てきたかということの反映なのですよね。— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 』というTwitterの投稿がまさにそれです。

吃音の子が生まれてしまった。この日までお父さん、お母さんは『障害者』をどのような価値観で見ていましたか? この価値観が差別的であれば、子どもの吃音は障害じゃない、差別されるようになっては困ると考えるかもしれません。それはお父さん、お母さんが差別の心を持つように育ってしまったからです。学校や職場で障害者がどのように扱われているか知っているからです。でも、それはこれから変えていくしかないのです。障害名、障害種別に関係なく特性が違っても困っている人同士、当事者でも保護者でも連携協力していけばいいのです。

吃音の子ども。どうやら吃音だけが困りごとではない気がする。そう思った場合。吃音業界の耳鼻咽喉科医師に相談しても意味はありません。吃音は発達障害と併存併発することは稀ですよと誤ったアドバイスをする場合もあります。しかし吃音業界はとても狭いです。吃音業界の団体のように、発達障害の団体があります。そこに参加する子ども、若者、大人の中には、ASDと吃音、ADHDと吃音、LDと吃音、ASDとADHDと吃音、などなど複合して特性を持っている人もいます。ということは逆に考えると、吃音業界に参加する吃音当事者にも未診断(または吃音至上主義に染まりすぎて発達障害を受容できない、認めない価値観のため、そもそも確定診断をしたことがない)の発達障害当事者は多いでしょう。

そして吃音業界の医師の言葉を真面目に受け止めずに、しっかり発達障害業界で活躍している精神科医に診断してもらうことをおすすめします。発達障害特性を調べる知能検査(得意不得意がわかる検査)があります。もしも発達障害がある、発達障害特性がある程度あるということが判明すれば、それに合わせた子どもへの接し方も知ることができます。

また保護者さんで、まだ医師に相談する段階ではないなと思う方は。まずは一般向けの専門書を読むことをおすすめします。https://www.minervashobo.co.jp/search/s4448.html
わかりやすいのはミネルヴァ書房のシリーズです。この他にも講談社の健康ライブラリーというシリーズの中にも発達障害を扱った本があります。http://bookclub.kodansha.co.jp/product_list?code=health-library

とりあえずです。購入しなくてもいいので図書館でいいので、発達障害関係の書籍を読んでください。内山登紀夫医師、本田秀夫医師など、NHKあさイチ、ハートネットTVなどにも出演している医師が書いている書籍もおすすめです。

まずは知ることです。
そして、ASDの子ども、ADHDの子ども、LDの子ども、トゥレット症候群の子どもの特性を知ってください。そして、その内容がどうも自分の子どもにもあるかもしれないと思えば、精神科医に相談しましょう。発達障害は吃音を含めて、早期発見早期療育が大切です。障害を治すのではなく、文部科学省がよく使う「可能な限り最大限の発達をうながす」というように、まずは大人になるその日まで、障害特性とどううまくつきあっていくか、コントロールするか、無理な場合大変な場合はどう周囲や他人に助けてほしいとSOSを発信する方法を学ぶか、いろいろ療育があります。そして大人になっても困りごとが多い、発話発語以外でのコミュニケーションもうまくいかない、人間関係の構築や維持ができない、仕事はできるけど(学校はいけるけど)自宅がゴミ屋敷、お風呂が嫌い、掃除や料理ができない、感覚過敏は結局治らないからうるさいところで明るいとこで人が多いところで我慢して働くと(学校にいくと)自宅で何もする元気がない。こういうこともあるかもしれません。こういう場合も精神障害者保健福祉手帳は取得できます。

吃音業界では吃音と発達障害を持っている人は少数であるとされてしまっています。しかし、吃音を持った発達障害当時者や知的障害当事者もいます。彼彼女らと吃音業界の医師や言語聴覚士、社会福祉士、精神保健福祉士は接点がないのです。仮にあったとしても、その事実は公にはできないのです。公にしてしまうと吃音業界で活躍することができなくなるからです。それほど吃音業界は窮屈なのです。

「子どもが発達障害(吃音も含む)だと診断されるまで、今まで私は(お父さん お母さん)障害者差別をしていた」こういうエピソードはよくある話です。要は気づきを得たのです。日本社会での障害者の位置づけ、権利擁護が遅れていること、障害者が学校や職場で社会でどういう扱いをうけているのか、お父さんお母さんが働く職場では障害者がこんなふうに扱われている。だから吃音が障害になっては駄目なんだ。という強い思いこみも、先輩のお父さんお母さんと話せば変化するかもしれません…。そして何が問題の根底にあるのかがわかるでしょう。

お子さんが吃音以外にも困りごと、その他の発達障害を持っているかもしれない。そう思ってしまったとき。こういうときこそ、まず知ることが大切になるんです。そして発達障害の子どもの親の会、団体にもつながってみてください。吃音業界の団体とは違い、保護者会、保護者の団結力、行政や政治への働きかけ、医師や医療従事者福祉従事者との連携力、発達障害を持った医師・言語聴覚士・心理士・社会福祉士・精神保健福祉士・教員の存在と会への参加、マスコミ対応などが全く異なることがわかるでしょう。またお子さんが発達障害であることがわかり、その父か母もまれに両方が発達障害でした!という事例もあります。吃音業界では相談できないこと、相談してください。吃音業界ではこんな相談したら馬鹿にされるんじゃないか、裏で差別されるんじゃないか、裏であの子は純粋吃音者じゃないのよ混血よと言われるんじゃないか、裏でうちの子どもは可哀想な子どもと思われるんじゃないか、やっぱり吃音業界の団体ではASDやADHDやLDやトゥレット症候群のこと相談できないよ…。 こんな心配はいりません。まずはつながってみましょう。


2016年12月1日木曜日

【吃音Q&A】就労移行支援事業所や高校・大学の進路指導や就職支援室やキャリア支援室、障害学生支援室は吃音者にどう対応すればいい?

【随時更新】

この記事は就労移行支援事業所、そのスタッフ。
高校や大学の進路指導や就職支援室の教職員、キャリア支援室の教職員、職員、社会福祉士、精神保健福祉士向けです。吃音のある学生を支援する人、授業や講義で接する教員にもオススメです。

※関連ニュース https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2018/03/
2017年10月4日に放送された番組が番組まるごとテキスト化になっています。この放送では吃音業界独特の「一般枠で吃音をカミングアウトして就職活動をする」という発達障害のある人や就労移行支援事業所の人が見れば驚愕する内容が放送されています。このように、オープンかクローズという概念が2017年現在でも吃音のある人、吃音のある学生に共有されていない悲惨な現状があるのです…。

ハートネットTV 私たちの就活 吃音とともに生きる
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/program/?id=44452

ハートネットTVを見たという人事担当者の声が匿名でネット上に公開されています
吃音のある就活生はなぜ障害者手帳を持っていない?人事採用戦略の話
http://anond.hatelabo.jp/20171012000353



本題です。


みなさんの仕事の重要な部分は、採用・雇用する側の人、公的機関、企業団体の人事部や人事採用担当者の本音を聞き出すことです。(ここに書かれていないこと個別に相談したいことや知りたい事、不明なことがあればメールフォームより連絡をください)
https://kitsuonkenkyuguideline.jimdo.com/メールフォーム

そしてもしもその本音が「(吃音に限定せず)障害を理由に合理的配慮するなら、法定雇用率に計算したいから障害者手帳を持っていてほしい」というならばその事実を学生や保護者に伝える必要があります。

一方で、吃音があっても障害者手帳を持っていなくてもよいという企業団体があるかどうかを調べることも仕事です。

吃音に限らず、自閉症スペクトラムやADHD、学習障害やチック・トゥレット症候群があっても活躍している人はいます。筆者の印象だと研究者、芸術家、スポーツ、芸能人などイメージですが…。例えば栗原類さんは障害は認めているけど、障害者手帳は持っていないように思えます。周囲の環境が助けてくれるのかもしれません。ちなみに統合失調症と診断されているハウス加賀谷さんは障害者手帳を持っていると認めています。



―――吃音業界の闇は、このブログの他記事にてご存知だと思います。
吃音は長い間障害か?障害ではないか?と意味のない論争を継続しています。おかげさまで自殺の決断やひきこもりの決断をする方もいたでしょう。
もちろん吃音は障害ではないし、会社などでカミングアウトして働いているという人もいます。
または、吃音があるが必死に吃らないように隠している場合もあります。

その他にも高学歴や学んだ分野、理系だった、専門の資格を持った吃音者の場合、障害者手帳を必要とせずにその能力で就職ができてしまっている人もいます。


一方で、吃音があることにより就職困難な者もいます。
吃音業界の派閥抗争の餌食となり、障害者手帳を取得できることを知らずにひきこもりや自殺の道を選択する者もいます。


吃音は吃音当事者によって、吃音が障害ではない。という人もいます。
堂々と吃り、カミングアウトして働いている吃音者はあなたの職場にいませんか?
このような吃音者の場合は、放っておくことが1番です。
余計なことをせずにそのまま放っておきましょう。


ただし、吃音があっても私は仕事ができている。カミングアウトして就職している。
私の会社は吃音に理解がある。と発言する
当事者会、小学生や中学生、高校生や大学生に語る、ブログやTwitterなどで発表している吃音者ほど、その企業団体名の公開をしませんし、その成功している吃音者は、困っている吃音当事者を「私の職場に来なよ。人事部を説得したから。大丈夫だよ」とは行動してくれないのです。

本当に矛盾です。吃音があっても社会に居場所があるが故に、そのたった1つの貴重なイス「居場所を守りたい」のです。自分以外の吃音者が職場に来たら競争相手になってしまうので、比較されるので困るわけですね。

★現在、インターネット上を検索すると吃音者の職業データーベースが公開されていますが。
・企業団体名の公開
・人事部も吃音を把握しているのか?
・その吃音の先輩は後輩吃音者のために所属団体へ口利きをしてくれるのか?

ここを確認することが最重要です。ここまで対応しているなら、成功している吃音者でも後輩のために道を切り開くパイオニアとして活躍する素晴らしい吃音者の先輩でしょう。肝心の情報を隠す吃音者はただの自己満足です。


吃音業界の闇の1つとして、成功している吃音者達がそうではない吃音者や子ども、小学生、中学生、高校生、その保護者に、成功体験だけのエピソードを伝えることです。たしかにそれに当てはある人はそれでよいのです。

しかし、全ての人が100%同じ道、同じ職業を選ぶことはできません。そのイスに座ることはできません。

うまくいかなかった吃音者の大きな挫折は就職活動の時期です。
成功してしまった吃音者は、そうではない吃音者をバカにしたり見下します。
【本当は職場で吃音をカミングアウトしていないのに】私は吃音をカミングアウトしている!
お前らも見習え!なんて発言をして、その一時だけ優越感に浸る人もいます。
まさに障害当事者の中でマウンティングが行われいるのです。

では就職活動時期は困っている吃音者にどのように支援すればいいのでしょうか?



【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html

【随時更新】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

2016年11月27日 東大スタタリングが駒場祭で吃音をテーマに演劇を披露 その内容はセルフヘルプの限界を指摘するものだった
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/20161127.html



1. 困っている、支援を必要としている吃音者にはどうしたらいい? まずは吃音当事者とその保護者の吃音への価値観を知ること 吃音業界のどの派閥の色に染まっているか確認せよ

まず重要なのは吃音当事者と保護者の吃音価値観を把握することです。
もしも吃音が障害ではない、障害者とは可哀想な存在で、税金の世話になる、身分の低い、周囲に配慮される、恥を知らない人達であると考えている場合は。
とても支援困難事例となります。
この場合は、本当にとても長い時間をかけて支援しなければいけません。
学校の職員ではなく、相談支援ソーシャルワークのできる医療従事者とも協力しないと困難です。


場合によっては、学校を卒業してしまうかもしれないので、後はハローワークや若者サポートステーション、発達障害向けの就労移行支援事業所などに任せたほうがよいでしょう。学生でいる間の短い限られた時間では対応しきれないでしょう。


2. 吃音が障害であると障害受容できそうな場合
この事例ならなんとかなるかもしれません。
この場合、一般に言われる発達障害学生に説明するように、社会保障制度の説明や使えるメニューの説明、診断や障害者認定を受けることメリット、デメリットの説明などから丁寧にはじめましょう。障害者枠、一般枠の両方で就職活動をすることを提案してみましょう。


学生という身分で就労移行支援事業サービスを提供しているところがあれば、その情報を伝えるのも有効でしょう。制度上、自費になってしまうのですが、現在、大学生向けのサービスを展開しているところもあります。

また、人材業界でも発達障害学生向けのサービスを開始するところが2016年現在チラホラでてきています。


3. 吃音者はいつ障害者手帳を取得すればいいか?
吃音に限らず発達障害者は精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
この手帳は初診日から半年しても症状が固定することが条件です。さらにそこから自治体の審査があるので10ヶ月は時間を見たほうがよいでしょう。

吃音の当事者は病院にいって診断を受けていない場合もあるので、その点を考えて、就職活動の始まる一年前には障害者手帳を取得しておくべきでしょう。そこから逆算すると大学一年の冬くらいには動いていたほうがいいかもしれません。

就職活動が解禁になって、一般枠で不採用通知が大量に届いてから、やっぱり障害者手帳を取得しようと思っても後の祭りです。障害者手帳を交付してもらう間に学校を卒業してしまいます。


吃音に限らずですが、発達障害も含めて大学の障害学生支援室、キャリア支援室は、学内に発達障害の理解をすすめる情報提供ポスターを貼ったほうがいいかもしれません。とくに吃音は2005年から発達障害者支援法に含まれていることがまだまだ知られていないので、情報提供をしないとわからないのです。例えば内閣府の「発達障害者ってなんだろう」のページを印刷して貼ること、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターの「発達障害の定義」のページを印刷して学内や相談室付近に貼ること。学生が必ず閲覧する書類や、シラバスに書いてしまうこともよいでしょう。

内閣府 政府広報オンライン 発達障害ってなんだろう
http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html

国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター 発達障害の定義
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B/%E5%90%84%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9/

4. 例えば、現在、Aという大学では発達障害傾向の学生を把握し、支援につなげるために取り組みをしています

現在、A大学では、3年ゼミや卒論、就職活動との同時並行作業のときになって発達障害特性で失敗する学生が多かったことを反省し。その状況を大学一年のときにその状況を別の手法で再現して苦労する学生がいないか?調べる試みをしています。就職活動のときに発達障害だとわかってもどうしようもないことが多いからです。

・同時並行作業でプレッシャーをかける
・急激な情報変化 ルール変更 → それについてくるか? 理不尽だと怒り出すか?
・ホウレンソウが必要な場面
・自己分析
・1回でも授業を休むとやる気がなくなってしまうか?
・ウソをつけるか? 発達障害の特性の1つで、履歴書などでウソを書くことができない、または正直かかないといけないと必要以上に気にしてしまう。そのためその部分から先に進めない。


これにより、大学一年生のときから、「もしかしたら私、何か違う?」と気づいてもらい、相談室などに来てもらえるようにという試みです。把握した個人情報をもとにごく一部の限られた教員や職員がすぐに動けるように待機しています。そして話し合いや情報提供の結果学生本人が望むなら、すぐに支援が始まります。

もちろんここにたどり着くまでに、当事者に「君は発達障害者かも?」なんてことはしません。当事者の人権もあります。当事者のほうが、緩やかに気づくように学内でも情報提供のための情報が配慮されているのです。



5. 吃音は純粋吃音者もいる 一般に言われる発達障害と吃音を持っている人もいる
吃音者には純粋な吃音者と一般に言われる自閉症スペクトラムやADHD、学習障害、チック・トゥレットなど複数の障害を持っている場合があります。発達性協調運動障害を持っている場合もあります。もちろん感覚過敏などを持っている吃音者もいます。

純粋な吃音者の場合は吃音についての合理的配慮をすれば大丈夫です。
ただし、一般に言われる発達障害を持っていそうならば、その支援ノウハウがそのまま利用できます。


6. 吃音のある学生への合理的配慮はどのようなものがあるか?

吃音のある学生への合理的配慮を考えます。
高校や大学だと、小学校、中学校よりも、受け身な授業が多いので吃音者は逆に一時的に安心しているかもしれません。

吃音とは話すとき、発話するときにその障害が表面化します。
しかし、吃音者は一人ひとり症状が異なります。
また、吃音者の価値観により、「最後まで言葉を話すことを待ってほしい」という人もいれば。
「私が吃っている言葉を、相手に先取りして、●●のこと?」と相手に吃っている言葉を先取りして誘導してほしい人もいます。

吃音者も今日は調子よくて喋れる!という場合もあるので、その場合の合図も決めたほうがいいかもしれません。右手で挙手しているときは問題もわかっているし指名してくれ!!という合図。
左手で挙手しているときは、問題は理解できているが吃るから指名しないでくれ!!という合図。

故に、吃音者の合理的配慮とは一般に言われる発達障害者のように、個別事例ごとに丁寧に考えないとなりません。

・吃音者が発話する、話しているとき、質問するときの時間延長を認める。

・吃音者が話すことではなくて、テキストやチャット、メッセンジャーなどで質問できる、発言できるようにする。

・人口音声読み上げソフトの利用を認める。

・筆談を認める。

・期末試験や卒論など口頭でしなければいけない場合、吃っている部分で成績を評価しないこと。
試験時間の延長を認める。

・学校内の手続きなどするときに窓口対応や電話窓口対応ではなく、Eメールの利用で完結できるようにする。

・国家資格などで「実習」が必要な場合、実習先にも吃音の説明、合理的配慮をお願いしにいくこと。吃音当事者に付き添って説明をすること。

・吃っていても、笑わない、怒らない

・吃るため、発話しやすい言葉を使うがゆえに、敬語など、日本語のルールから逸脱するかもしれないが、違和感のある言い回しをするかもしれないが。それを笑わない。怒らない。認める。


学校であれば、学生全員に吃音のことを説明して、目が悪い人がメガネやコンタクトレンズをして視力矯正するように。吃音の場合は周囲の人がそれ受け入れる、助ける。「吃ることを笑う、怒る」などをやめること。待ってあげること。言葉を先取りしてあげること。などを考えることができるようになれば。もっと生きやすいかもしれません。


●例えば仕事や就職の合理的配慮だとこのようなものがあります。

【随時更新】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について

記事の中盤あたりに合理的配慮が書いてあります
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

◆吃音者に想定できる、考えられる合理的配慮一覧

・声をだして挨拶ができない場合は笑顔や会釈でも良いとする。

・電話応対を一部免除する。全部免除する。社内の電話のみ応対させる。外部との電話応対は免除する。

・社内アナウンスや店内アナウンス、放送の業務を免除する。

・落語家の桂文福さんのように歌いながらメロディに乗せて職場内やお客様のところで話してよいと認める。吃音者は歌いながら、メロディに合わせて話すと吃らない人がとても多いため。

・落語家の桂文福さんのように、会話の中でギャグを織り交ぜたり、舌打ちをして滑稽な音を鳴らして職務遂行をしても、それを許容する。許す。怒らない。吃音者の道化キャラで働くことを認める。

・社内の朝礼、全体集会、全体挨拶、飲み会の挨拶、式典の挨拶などで口頭発表させることや社訓の暗唱や社内用語暗唱などを免除する。

・吃音者には営業以外の仕事をしてもらう。他の障害者のように社内の仕事をその分切り出す。その仕事をしてもらう。

・吃音者は吃ること避けるため、言いやすい言葉に言い換えを行う。「赤いボールペン」→「レッドなボールペン」、「トイレ」→「お手洗い」、「昨日(きのう)」→「昨日(さくじつ)」、「水曜日」→「火曜日の次の日」、「新聞紙」→「ニュースペーパー」などと言い換えることがあります。

それを不自然だと笑わない。指摘しない。

・吃音で有名な芸能人やアナウンサーや総理大臣や王族がいるからといって、あなたの目の前にいる吃音者はそうではない場合もあると認識を改めること。XXさんがこうやって成功したからあなたもやりなさいと意味不明のアドバイスをやめる。障害が個性となる職業のイスは非常に限られている。

・筆談を利用できるようにする。

・吃音者は吃ることを避けるため、言いやすい言葉を発話する。場合によって敬語などを使わずにタメ口になってしまうことがある。それを認める。許す。怒らない。

・営業や電話応対を認めるにしても、必ず初回に外部やお客様に接するときに、同僚や上司が「弊社のXXは吃音という障害があるので。話し方が不思議に思われるかもしれませんが仕事には影響がないので気にしないでほしい」と説明する。

→とくに職場の同僚や上司が一度、吃音当事者とファーストコンタクトする相手に説明するステップは重要です。吃音当事者自分の言葉で説明するのは大切ですが、同僚や上司のワンクッションがあるかないかでは相手側の受け止め方も変化します。

・電話応対の場合 自動音声システムでを利用する。「この電話は吃音者、吃る人が架電しています」、「この電話は吃音者、吃る人が受電しています」こういったアナウンスも必要になるでしょう。

・口頭での報告連絡相談よりも筆談以外に手書きメモやEメールやチャットの利用を認める。コミュニケーションアプリの利用を認める。

・吃音者は人それぞれであるが、話すときに、唾液を飛ばしてしまうことがあるので、マスクの着用を認める。

・工場や調理場など安全確認が重要視される職場で、「後ろ通ります」、「声出し安全確認作業」ができない場合ブザーやホイッスルなど他の手段を考える。

・飲食店やサービス業であれば、いきなりステーキの従業員が利用している透明マスクの着用を認める。(これは吃音者の中に吃るとき唾液を飛散させる場合もあるためである)

・飲食店やサービス業以外では普通の顔が隠れるマスクの着用を認める。吃音者は吃る時の顔を見られたくない人もいます。口がまがる。唇が震える。唇が尖る。口元が痙攣する。唾液を飛ばしてしまう。白目をむいてしまう。視線が合わない。などなど吃るときの外見上の影響がでる当事者も存在するためです。

・飲食店やサービス業ではお店の入り口などに、「吃音者が働いています」と告知すること。聴覚障害者の洋菓子店のように吃音者が働いていることを説明しましょう。タッチパネル方式だと聴覚障害者も吃音障害者も助かりますね。

・吃音者がホウレンソウや会話をするときに、吃ってしまうため他の人よりも時間が倍近く必要だとしても、ゆっくり余裕をもってその話を聞く。

・吃音者の言葉を先取りしない。吃音者の主義主張によっては最後まで言い切るまで待ってほしい人もいます。逆に話している途中で、XXXのことを言いたいの?と言われたほうが話しやすい人もいます。 ※このあたりは当事者とよく話し合う


★医療従事者、コメディカルの吃音者はどのような合理的配慮?
医療従事者、コメディカルの吃音者にはどうしても言い換えのできない言葉を多く使用する場面が想定できます。人名や薬品名、患者さんクライエントさんとの面接や心理検査、言語療法、結果の説明などがたくさんあります。とくに心理検査や言語療法などの場合は一言一句間違わないで実行できなければいけません。

現在、吃音のある医師、言語聴覚士、臨床心理士、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士などがいます。また、それを目指す学生も存在します。

心理検査や言語療法などで患者さんに「私のあとに続けて話して下さい。マネしてください」などと説明して、吃る部分まで真似をされてしまうという事例も発生しています。事前に患者さん、クライエントさんへの吃音の説明が必要になります。この場合も同僚や上司がワンクッション説明を入れることが重要です。




以上のように様々な合理的配慮が今のところ考えつきます。
話すこと発話することの配慮だけが必要です。それ以外はおそらく大丈夫だと思います。

※しかしながら、吃音当事者には吃音だけではなく、自閉症スペクトラムやADHDなどの一般によく知られている発達障害を持っている場合もありますので、この場合はその発達障害特性にも配慮をする必要もあるかもしれません…。



7. 就労移行支援事業は吃音者をどうしたらよい?どう対応する?

就労移行支援事業のサービスを吃音者が利用することもあるかもしれません。
場合によっては完全に障害受容ができておらず、事業所に通所する他の障害者を差別したり、見下す、バカにする行動をとる者が出てくるかもしれません。一方で、障害受容ができた吃音者も来るでしょう。

他の障害や社会的障壁のある人を差別する吃音者が就労移行支援事業所に来てしまった場合、態度を改めない場合は、利用規約などに、契約を解除するなど盛り込んでおいた方がいいかもしれません。


就労移行支援事業所提携・協力の病院医師に「吃音は発達障害者として精神障害者保健福祉手帳を取得できること」を説明して診断をしてくださいと情報共有をしておく。就労移行支援事業のホームページにて「吃音者は障害者枠でも働けます」と掲載してください。


就労移行支援事業所の企業団体担当の営業さんなどは、「吃音者が働くには障害者手帳が必要か?」ということを官民問わず企業団体の人事部、採用担当者から本音を聞き出すことが大切です。もちろんその中に、吃音があっても一般枠で雇用しますという団体があるなら、その情報も集めて下さい。

2016年現在では、吃音者の就労事例が集まっていません。官民問わず企業団体と協力して、吃音者の雇用事例を集めてください。それをどんどん情報公開してください。吃音者が障害者雇用できるんだ!という情報が日本社会で広まれば広まるほど、吃音者が社会参加できるかもしれません。就労移行支援事業所主催の企業団体の人事採用担当者、行政職員向けの講演会で吃音は障害者雇用できること、法定雇用率に計算できることを説明していくのも大切です。


就労移行支援事業はまず雇用する側の本音を聞き出し、吃音者にそれを伝え、障害者手帳取得や障害者枠で働くことも考えてみてもいいのでは?と説得することも仕事になるかもしれませんね。


8. 専門職になりたい吃音のある学生にはどう支援する? そもそも入学を認めるのか?
障害のある学生の進学事例は近年増えてきています。とくに国公立の学校であれば障害者差別解消法の合理的配慮は義務化されているためこの点は進学先選びに重要です。

障害があっても医師になっている人がいます。
脳性麻痺の医師、熊谷 晋一郎氏(東京大学先端研所属)が有名ですね。
吃音があっても医師になっている人として菊池 良和氏もいます。
2人の時代はまだ障害者差別解消法がなかった時代なのでとても苦労や辛いことがあったかもしれません。

さて、医学部となれば国公立大学があるため、障害者差別解消法を使える可能性は高いです。看護学校も可能性は高いでしょう。

しかし、問題なのは言語聴覚士養成、社会福祉士養成、精神保健福祉士養成の学校に国公立の学校が少ないことがあります。

現在、吃音ある言語聴覚士と学生をつなぐ会「吃音がある、ST学生とSTの会」というものがあります。ただ、言語聴覚士に限定されているのは残念だと思います。「吃音がある医療従事者の会」としたほうが今後の吃音のある子ども達の未来につながるでしょう。

例えば吃音のある医療従事者の会が、吃音があっても資格取得のために支援してくれる専門学校一覧、大学一覧というリストを作成する必要もありますし、吃音や発達障害などを持った学生でも入学できるよう。資格取得に必要な実習施設・研修施設の開拓も必要になってきます。

過去に吃音当事者でもあるライターの近藤雄生氏がこのような投稿をTwitterにしています。吃音があって看護学校の実習を乗り越えることができず、新たな道を歩き始めたという女性のことを投稿しています。このようなことがある以上、医療従事者や支援者の資格を持っている先輩吃音者達は団結して、「私の勤務先に来なよ。この学校なら大丈夫だよ。私が口利きするよ。私が責任とるよ」など道標になることも大切になります。





2016年10月26日水曜日

2016年10月22日、東京で開催された吃音啓発の日レポ 厚生労働省 日詰正文氏講演 吃音と発達障害者支援法

2016年10月22日。東京都北区の赤羽北区民センター(ふれあい館)にて、国際吃音啓発の日に合わせたイベントが吃音者の当事者団体である『東京言友会』と『千葉言友会』の主催で開催された。

国際吃音啓発の日は「International Stuttering Association」などが1998年に定めた世界的な啓発デーだ。毎年4月に行われる世界自閉症啓発デーのような認知度はまだないが日本でも認知度の向上が今以上に望まれる。

2016年春、福山雅治さん藤原さくらさんが出演したフジテレビ系列の月9ドラマ『ラヴソング』で登場人物女性が吃音であったことにより世間でも認知度はあがった。

吃音とは発話・発声するときに自分の思うように言葉が出てこない障害だ。
例えば「おはようございます」が吃ることにより、『お、お、お、お、お、お、おはようございます』という連発。『(口がパクパクしたり、または口や唇が震えたりしながら)なかなか言葉が言えず(お お お お お お お お お お お)  おはようございます』という発話まで時間がかかる難発。『おーーーはようございます』という伸発の3つが吃音だ。

吃音は当事者によって異なるが言葉のみではなく吃音者の顔の表情が歪む、白目を剥いてしまう、唾液を飛ばしてしまう、腕や脚、身体の一部が意図せぬ動きになるという症状が同時に出る場合もある。



●吃音と発達障害について

このイベントでは、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室 発達障害対策専門官 日詰正文氏が講演した。

講演ではまず最初に「発達障害者支援施策について」発達障害者支援法、一般に言われる発達障害(自閉症スペクトラム、注意欠如多動性障害、学習障害、トゥレット症候群)などの説明から、発達障害の定義、日本国内でどのような障害が発達障害者支援法に含まれているのかなどの説明があった。

吃音も発達障害者支援法に2005年から含まれていること、一般に言われる発達障害児者のように当事者や家族が希望すれば全く同様の社会保障や合理的配慮が受けられることが法的根拠を例にしながら話は進んだ。

吃音がなぜ精神障害(発達障害を含む)なのかの疑問に対してはICD10(WHOの国際疾病分類)が日本国内で診断基準になっていること、DSM5(アメリカ精神医学会の診断基準)が参考になっていること、次回更新のICD11ではDSM5と同様に吃音が『神経発達障害/神経発達症群』に分類されるであろうと説明があった。

日本政府も吃音が発達障害者支援に含まれていることを現在、発達障害者支援センター職員、医療従事者、発達障害施策に携わる職員を対象に研修を通じて実施しているという。



●吃音と障害者手帳取得について

吃音者が障害者手帳を取得するにはどうすればよいのかという疑問にも答えた。
吃音は発達障害者支援法以前の名残で身体障害者手帳4級取得の可能性があるが、その場合『ICD10コード F98.5 吃音症』と書いてはいけないと説明。理由はFコードを利用した時点で精神障害の部分になるからだ。身体障害者手帳を取得する場合は医師とよく話し合い吃音とは書かずに話せないことを表現する重要性を指摘した。


発達障害者支援法により吃音で精神障害者保健福祉手帳を取得する場合の医師が書く診断書については詳しく説明があった。症状の記入欄の他に、日常生活能力の判定という項目を医師が吃音者の話をよく聞き記入しなければならないと強調した。

吃音の場合、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」、「社会的手続きや公共施設の利用」が該当するのではないかと説明した。

「他人との意思伝達・対人関係」であれば、吃音によりスムーズに言葉が話せないこと、相手を待たせてしまうこと、本当に伝えたいことを話せないこと。

「身辺の安全保持・危機対応」であれば、緊急事態時、吃音により絶対に吃ることが許されない状況での発話・発声が吃ってしまうこと。

「社会的手続きや公共施設の利用」であれば、窓口などで上手く話せないことにより本来の目的を達成できないこと。

以上を精神障害や発達障害を診療する医師が患者である吃音者から丁寧に話を聞き、吃音者が困っていることや出来ないことを具体的に明記できるかどうかが大切だという。

だが、一方で吃音を診療する医師や病院が少ないことも指摘した。耳鼻咽喉科医師と精神科医師の連携についても重要だという。この部分については今後、政府も研修を通じて伝えていくという。


●吃音と合理的配慮のこと

吃音児者への合理的配慮についても例をもとに説明した。高校・大学受験や●●試験などで配慮を受ける場合は幼少期からの診療とその情報の引き継ぎが重要で、いきなり『その時』になっても配慮を希望するのは難しい。子どものころからこのような配慮を受けてきた過去があるという事実が大切になるという。

2016年発達障害者支援法改正の3つのポイント。ライフステージを通じた切れ目の無い支援、家族なども含めた、きめ細かな支援、地域の身近な場所で受けられる支援だ。

例として発達障害の特性と言われる(見通しが立たないことへの不安、感覚過敏、読み書き障害、不器用、独り言、言葉が上手く話せないなど)がある場合。どのような支援(スケジュール提示、別室対応、拡大文字問題冊子、塗りつぶしではなくレ点チェック、時間延長、話し終わるまで待つ)が行われてきたのか情報をバトンタッチしていくことが大切だという。



●まとめ、感想
厚生労働省の発達障害対策専門官の話は法的根拠や制度上の説明もあり、わかりやすかった。吃音者でも全く同様の社会保障制度や合理的配慮を希望すれば受けることができること。ここがとても重要だった。

ただ、日詰氏の話を聞いていると2005年から存在していた発達障害者支援法と吃音の関係の難しさも浮き彫りになった。会場から吃音が精神障害(発達障害を含む)であることが受け入れられない、エビデンスはあるのか、どこの誰が研究した結果なのか質問があったが、日詰氏は医系技官ではないのでその場での回答は控えた。一方で、『吃音が精神障害(発達障害を含む)と分類されるのは国際的な診断基準に従っているので、そうではないと思う場合はそのように研究している研究者と協力して行動してほしい』といった趣旨を述べた。

※吃音と一般に言われる発達障害の併存事例も報告されている日本音声言語医学会の学会誌 Vol.57 No.1,2016.1
に『吃音に併存する発達障害・精神神経疾患に関する検討 Developmental Disability and Psychiatric Conditions in 39 Patients with Stuttering 』が掲載
http://stutteringperson.blogspot.jp/2016/02/blog-post_23.html


この部分が厚生労働省や日本政府側の正直な気持ちではないだろうかと筆者は重く受け止めた。これは日本国内の吃音業界・吃音情勢の問題だ。日本国内では吃音当事者が『吃音は可哀想な障害者ではないし支援される対象ではない。吃音を治そうとしてはいけない。病院に行ってはいけない。おたくのお子さんは可哀想な障害者じゃない。吃音は個性、吃音は神様からのギフト。吃っていても堂々と吃って生活している吃音者もいる。就職や結婚もできる。子どもも2人くらい大学にいかせるだけ稼げる。マイホームだって買える。幸せだ。』と主義主張をするグループがあるからだ。

このグループの影響なのか? 2016年8月17日毎日新聞朝刊やネットで報道した『「差別受けた」6割 「理解不十分」7割』をみた子どもたちがこのような差別発言を平然を行っているようだ。 子どもに「障害はかわいそうという感じがする」と言わせるのは本当に恐ろしいことである。神奈川県相模原の障害者無差別殺害事件にも通じるところがある。困っていることや不便なことがあるなら、障害の垣根をこえて協力して「障害はかわいそう」だという価値観を身に着けるようになってしまう、そのように成長してしまう道程や周囲の人間や社会を変化させるように行動してほしいものだ。





・ここに「発達障害」と書いてあるけれど、僕たちは、発達障害なのか。障害は、かわいそうという感じがする。どもりを障害とは思わないでほしい。僕がほかの人に自分のどもりについて言うときには、どもりのことを障害や病気だとは言わない。吃音で悩んでいる人、苦しい人にとっては、吃音は障害だというのはありがたいのかもしれないけれど、「吃音を障害と認識することが大事だ」というのは、どうかと思う。
http://www.kituonkokufuku.com/archives/2016-09.html?p=3



吃音は他の障害者や難病者や社会的障壁のある人たちより優れているのか?優生思想なのか?
この点はフジテレビ系列で放送した『ラヴソング』の吃音演技指導をした大学生がこのように話す。


「『吃音は障害じゃない』『差別されるのが怖い』と言い張る吃音者もいますが、それって“逆差別”ではないでしょうか? 『障害者と一緒にしないで』って言っているのと同じですよね。だから、もし変えるなら『障害』に対する社会の意識を改革していくべきだと思いますし、私も当事者として、そこを伝えていきたい」
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/06/13/66583/3/


このグループの主義主張は吃音以外の障害者・団体や難病者の耳にも入っており、大変な怒りの感情を持つ方もいる。吃音者は優生思想を持っているのか? 同じ困っている人ではないのか?という感情だ。これはとても大きな問題で今後、吃音者や当事者団体が活動するにあたり、一度、謝罪や撤回を求められる事態に発展するかもしれない。その謝罪や撤回があった後に一緒に協力行動しようという気持ちの方もいるのだ。障害はかわいそうと子どもに言わせてしまう「教え」は吃音以外の人々に波紋を広げている。



そこまで強烈に障害者や難病者を劣った者とみなし見下す主義主張を持たないが、何とか吃らない処世術を身に着け、吃る頻度を減らし社会に居場所がある吃音者もいる。できることなら吃音が精神障害(発達障害を含む)と周知徹底されるのを怖れるグループだ。


裏を返せばこのように吃音当事者や吃音業界から『吃音があって困っている。吃音者にも社会保障の選択肢を――。』と障害者運動や行動、行政へ要望要請をしてこなかった経緯が2016年現在に影響を及ぼしている。

日詰氏の講演でも、「日本政府は『今』、関係各位に周知や研修をしている」、「医師や病院が足りないことの現状について」述べたがこれも裏の意味だと「今まで表立ってそれを強く実行することができなかった。当事者からの声が無かった」と読める。今までは日本政府、行政も吃音業界の異様さ特殊性を認知していたのかもしれない。

もしも2005年から吃音が発達障害者支援法に含まれていることが周知徹底されていれば2013年7月に北海道で起きた吃音看護師さんの自死も避けることができたのではないかと考えると悔しい。


講演の中で印象に残った部分がある。吃音は精神?身体?どっちの障害者手帳を取得できる?という説明部分だ。

吃音は発達障害者支援法以前の名残で身体障害者手帳4級取得の可能性があるが、その場合『ICD10コード F98.5 吃音症』と書いてはいけないと説明。理由はFコードを利用した時点で精神障害の部分になるからだ。身体障害者手帳を取得する場合は医師とよく話し合い吃音とは書かずに話せないことを表現する重要性を指摘した。

吃音はそもそも「Fコード」、ICD-10という診断基準の→F00-F99 精神及び行動の障害 > F90-F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 > F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の行動及び情緒の障害 > F98.5 吃音症

を利用する。
しかし、このFコードの吃音を身体障害者手帳申請書類に明記してしまうと。その時点で自動的に審査で却下、受理されないということだ。

仙台の吃音裁判、吃音で身体障害者手帳がほしいという内容であった。
市側の主張は「国は吃音を発達障害者支援法に定義しているので」と主張していた。
身体障害者手帳申請書類で「吃音」を明記した時点で不受理の条件を満たしているということになる。過去の吃音者の事例で身体障害者手帳4級を取得している者がいるが、その場合診断書には「吃音」と明記せずに別の症状により言葉を発することが困難であると書いているのであろう。バカ正直に身体障害者手帳申請書類で「吃音」と明記してしまうと審査の段階で不受理になることを知っている医師がいるということになる。


吃音者が「自分は吃音で障害者手帳はもらえない」と自己診断・自己判断で諦めてしまうことも問題だと筆者は感じる。一般に言われる発達障害を診療する医師のところに行き、困っていることできないこと、吃音で嫌な経験をしたことをしっかり明記すれば吃音が軽度でも障害者手帳は取得できる可能性はある。一般に言われる発達障害者でも服薬やSST、ミスをしないためのアイテムの利用などを駆使し障害者手帳を持っているがそれを隠して一般枠で働く方もいる。自分は吃音が軽度だからという自己判断で試してもみないで諦めてほしくはない。並行して吃音を診療してくれる医師や病院へ情報発信をすることも大切だろう。

吃音を診療したいと思う、精神科医師や児童精神科医師の中には、吃音がそれを偽ることもできるのでウソの演技を見抜けないのではないか? と危惧する方もいる。厚生労働省が耳鼻咽喉科医師や脳神経系医師、精神科医師のために吃音診療ガイドラインを作成することも望まれる。
ガイドラインの作成により、『そもそも病院で吃音は保険診療可能である』と認知されれば自由診療のクリニックや医師のいないクリニックに高額な吃音診療費を支払うこともなくなる。また自立支援医療の精神通院が利用できるから多くの吃音者は1割負担で通院や言語聴覚士との訓練ができるはずなのだ。

2016年これからの未来は吃音当事者も障害者団体や発達障害者団体と協力し情報発信をしていく時代ではないだろうか? また吃音者は自分たち以外のことを知ることもとても大切なことだと強く思う。

2016年9月8日木曜日

【随時更新 吃音Q&A】人事採用担当者の方へ 吃音者雇用ガイドライン 働く吃音者への合理的配慮とはなにか? 吃音者を採用する場合はどうしたらよいのか? 吃音者採用事例 雇用事例について

この記事の読了目安は20分です。
吃音者への合理的配慮については■5番、■6番あたりから読み進めてください。

関連記事もご覧ください。
人事、採用担当者の本音?吃音者はカミングアウトすると不採用になる?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/06/blog-post_18.html
吃音者と働く 職場で吃音者の合理的配慮がうまくいかないのはなぜか?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/10/blog-post.html
【吃音Q&A】就労移行支援事業所や高校・大学の進路指導や就職支援室やキャリア支援室、障害学生支援室は吃音者にどう対応すればいい?http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2016/12/blog-post.html 



2016年9月現在
吃音は徐々にではありますが、社会全体に認知が広がっているのではないかと思います。
フジテレビの4月スタート月9ドラマ「ラヴソング」が放送されたこと、吃音当事者団体の変化、吃音ラジオという吃音当事者が吃りながら放送するラジオ、毎日新聞社が積極的に吃音について取材報道する、吃音ドクターこと菊池医師の情報発信、日本吃音・流暢性障害学会が発足し今年で4回目の大会を開催などなど―。吃音という言葉が世の中に広まるようになってきているのです。

そもそもの発端は2014年7月3日の厚生労働省管轄である国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが「吃音は発達障害の1つである」と発達障害の定義を説明するページに吃音を明記したことからはじまりました。この情報の掲載はある意味勘違いにも繋がりました。2014年に吃音が発達障害に指定されたという勘違いです。これは間違いで2005年の発達障害者支援法施行時からずっと含まれています。この法律がどのような理由なのか「見える化」されていませんでした。


この投稿記事は、吃音者の雇用事例、吃音者採用・雇用ハウツー、吃音者雇用ガイドライン。吃音者の雇用促進マニュアルとして読者の方(特に人事採用担当者、障害者雇用担当者、就労移行支援事業所職員)の力になればと思っています。この記事は新しい情報があればその都度更新します。
吃音者の障害者雇用や合理的配慮についてもっと詳細に知りたい場合はコチラより問い合わせをください。http://kitsuonkenkyuguideline.jimdo.com/%E3%81%8A%E5%95%8F%E3%81%84%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B/


■1.この投稿記事を読む前に、吃音業界の真実を知らねばならない。とくに官民・企業団体の人事採用担当者、障害者雇用担当者、就労移行支援事業所職員は必ず知っておいてほしい

こちらは必ずお読みください吃音者、吃音業界のリアルです
・【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html


■2.行政職員、民間企業・団体、その他、人事採用担当部門、総務部門などの職員の方へ
上のリンクは読んでもらえましたか?

残念ながら吃音者、吃音業界は不毛な争いをしています。聴覚障害者の人々が考え方の違いにより対立していること、発達障害当事者会が意見の違いや喧嘩により分裂することと同じ状態になっています。吃音者も障害者認定絶対反対派、吃音があるが程度が軽い・なんとか吃音を隠しているから障害者認定消極派、吃音があって学校に行くのも働くことも困っているから障害者認定して障害者手帳や合理的配慮が必要派というように大きく3つの派閥が存在しています。

吃音当事者団体によっては『完全な障害者認定反対派』の団体があるため、関わると面倒なことになります。例えば2016年8月17日毎日新聞社朝刊の一面トップに吃音への差別や困っていることが報道されました。しかしその内容と毎日新聞社と担当記者、アンケートに協力した吃音者団体を痛烈に批判し間違っていると表明する吃音者団体が存在するのです。とくにその内容で恐ろしいのは「障害者はかわいそう」だと子ども達に言わせている点です。障害はかわいそう。この気持がすでにありとあらゆる障害者や社会的障壁がある人より吃音者は優れているという優生思想があるのだと辟易します。吃音が障害ではない。頭のオカシイ精神障害者とは違うんだ。発達障害者とは異なる。と主義主張を開陳するのは言論の自由ですが、困っている人はずっと困っていれば良い。というのも人間の文明社会では異常でしょう。使える選択肢、社会保障を利用することを否定するのは理解に苦しみます。どのような選択をするかは当事者が決めることです。


このような実例を見ると、行政や民間企業において、吃音者を採用する場合は『障害受容のできている、障害者手帳を所持している、障害認定反対派ではない穏健な吃音者』を採用することが前提になると筆者は推測します。毎日新聞の報道を糾弾する叩く団体は今後近い将来、吃音者を対象とした就労移行支援事業所や吃音者を障害者雇用した官民の団体が事例として集まってくれば、次にその関係各所に刃を向けて攻撃することは予想できます。

もちろん吃音や発達障害がある人でも、どのような社会的障壁がある人でも、障害者手帳を所持しておらず法定雇用率に計算できなくとも、ウチの団体は社会的障壁のある人を雇用するよという先進的な考えを持った篤志家な経営者もいると思います。これはこれでとてもありがたいことです。本来なら障害者手帳がなくとも全ての社会的障壁のある人が働ける社会になればいいのですが…。雇用する側としては仕事に配慮が必要ならば障害者手帳を持っていてほしいというのが本音でしょう。

日本社会の現実として、障害や難病がある人はなかなか一般枠で働くことはできません。一般枠でも双方の条件が一致すれば問題はありません。障害者の就労移行支援事業所もその訓練の中でこのように利用者に説明しています。就労移行支援事業所としては現実も知っているためです。

例えば

1.障害を完全に隠すことができるなら、一般枠で応募しなさい。障害者手帳を持っていても言わなければ問題ありません。エントリーシートや履歴書に●●障害や苦手なことがあるとは書いてはいけませんし、カミングアウトは絶対にしてはいけません。それが理解できているならば一般枠での就職活動をしてください。その方法も教えます。と。

一方で

2.もし障害についてカミングアウトする場合はこのように説明がなされます。
一般枠と障害者枠での両方で就職活動しなさい。そして現実を体験しなさい。
一般枠というのは雇用する側が想定した給与分100%以上の仕事をすることができる人が働きます。障害者枠とは障害や病気により、雇用する側が想定した仕事をこなすことができない、仕事の一部免除や苦手な仕事の完全免除、転居なし、通勤時間を前後させる、障害に応じた合理的配慮などなどをするために見返りとして障害者手帳・法定雇用率に計算できることが必要だからです。
と説明します。


精神障害、発達障害を扱う就労移行支援事業所は特に1と2の説明を強くします。なぜこのような説明をするのかというと、就労移行支援事業所の職員は雇用する側の希望、本音を知っているからです。

人事採用担当者の本音。雇用する側、企業側の本音ですね。カミングアウトする場合は、
配慮しなければいけない場合は障害者手帳や難病の証明を持っていて法定雇用率として計算したいという本音です。

例えば2015年12月内閣府の障害者週間セミナーでこのようなセミナーがありました。ここで説明されたことは、精神障害者雇用をするときは必ず「就労移行支援事業所に通所している者」、「ジョブコーチなど相談できる状態がある者」を雇用すべきと説明しています。このセミナーの場合精神障害者と限定していましたが、発達障害者も共通する部分があると思います。

さらに2016年12月の内閣府障害者週間連続セミナーでも同様のことが言われました。
「発達障害のある人は、障害受容のできている人、病院、就労移行支援事業所とつながりがある人、相談できる支援者がいる人」を採用の際に考えるようにという説明でした。
http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/h28shukan/event.html#seminar

精神障害者雇用は今! ~精神障害者の職域拡大の可能性について~
http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/h27shukan/event.html#forum
一方、平成25年度に厚生労働省が実施した障害者雇用実態調査では、精神障害者の雇用上の課題として、「会社内に適当な仕事があるか」と回答した企業が77.2%と最も多く、依然、企業において精神障害者の職務の創出・設定に苦慮している状況がうかがえる。
そこで、専門的な職種が主となる医療機関において、創意工夫して新たな職務で精神障害者を雇用する取組の紹介、そのノウハウなどについてのディスカッションを行い、精神障害者の職域拡大の可能性等について参加者とともに考える。
主催:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
所在地:〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2
電話:043-213-6203
FAX:043-213-6556
URL:http://www.jeed.or.jp/
平成25年6月に成立した改正障害者雇用促進法により精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられたこと等を契機に、雇用されている精神障害者数は大きく伸びているところである。



■3.吃音当事者は『吃音をカミングアウトすれば一般枠採用されると思っている』当事者も存在する 雇用する側と吃音当事者側の考え方の違い?

吃音当事者側の視点です。
吃音当事者は派閥に関係なく、吃音をカミングアウトすれば一般枠で採用される! と思っている人もいます。これは実際そうなのですが、吃音があっても雇用する側が吃音は仕事に関係ない、結果で評価する。という主義主張であれば成立します。しかし雇用する側が想定した給与分100%の仕事のうち90%くらいしかこなせないかもしれません。

この『吃音をカミングアウトすれば一般枠で採用されるはず』という考えは性善説的です。正直に自分の気持ちを相手に伝えれば、まっすぐに正直にありのままの自分をエントリーシートや履歴書、面接でカミングアウトしても、『吃音だけで評価する会社』は存在しないと思っているのです。吃音があっても一般枠で採用されて仕事をする機会を入手できると思っているのです。

しかし、世の中、全てがそうではありません。全てが善人とは限りません。吃音があれば雇用する側からすれば想定した給与分に見合った勤務ができないと判断し『貴意に添えない結果』など不採用通知を届けることになるでしょう。やはり、吃音がある=うまく話せない → 出来ない仕事がある。お客様や取引先に何か言われるのではないだろうか? と考えている雇用側の本音もあります。

また雇用する側の本音として、障害者の法定雇用率を満たせるなら、障害者手帳を持っていてほしいという考えもあります。カミングアウトしてきた吃音者に障害者枠での応募をアドバイスする場合もあります。もちろん障害者手帳を持っていない、吃音があっても一般枠で問題ないという雇用する側の人もいますので、これは雇用する側の主義主張次第ということになります。

2016年現在。発達障害者や精神障害者を採用時に見極める方法、発見するテストを販売しているビジネスモデルが存在しています。人事採用担当者ならご存知のことだと思います。自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群や自閉症、広汎性発達障害)、ADHDと言われる注意欠如多動性障害、LDと言われる学習障害の特徴を発見する方法が人事業界では出回っています。またそもそもDSM-4やDSM-5と言った精神疾患診断の手引きという医学書が一般人も購入できますし、医師免許がなくとも『その障害の特徴』をなんとなく見極めることはできるのかもしれません。

吃音も2016年現在でこそ、『吃音は発達障害者支援法に定義されている障害』ということになっています。が、そもそも吃音の場合は一般に言われる発達障害のように見た目ではあまりわからないわけではありません。吃音者が面接やグループディスカッションや集団面接のときに採用する側がカミングアウトしていない吃音者の状態を『あれ?この人喋り方変だな。うーんコミュニケーション能力低いから不採用方向でチェックっと』と判断することも、今まであったかもしれません。


例えば防衛省の防衛省訓令第一号があります。航空身体検査に関する訓令です。ここでは「不合格疾患等」という項目に一般に言われる自閉症などの発達障害、吃音や気分(感情)障害や既往歴が不合格の基準として明記されています。海幕衛第8931号は海上自衛隊の身体検査です。こちらでも不合格疾患として「精神と行動の障害」、「吃音」が明記されています。陸上自衛隊達第 36―1号は陸上自衛隊の身体検査です。こちらでは具体的に吃音という項目はありませんが「脳神経・精神」の検査項目があります。

このような検査を見れば、行政職員でさえこのような基準があるなら、民間でも存在するはずだ、いや表向き存在しないとしていても裏ではあるはずだろうと思います。2013年に北海道で自殺した吃音者も警察官になりたいという夢があったとのことでしたが、どうしても面接で落ちてしまうことを繰り返したそうです。警察内部の採用活動基準については不明ですが、自衛隊でNGなら警察や消防でも難しいのではないかと思いました。

他にもこのような研究報告が独立行政法人労働政策研究・研修機構から発表されています。
吃音で困っていても、適切なソーシャルワークや、支援機関につながることができず、困難な状況に陥っているようです。

・若者サポートステーションなどに訪れるクライエントの中に吃音がある人がいる。
このような人は就職困難者である
http://www.jil.go.jp/institute/siryo/2013/123.html

・大学4年生に未診断の発達障害??、および吃音の学生がいるがどうしたらいいのだろうか?
障害受容はどうなっているのか? 
http://www.jil.go.jp/institute/siryo/2015/156.html


年配の吃音者、とりわけ、今現在の「就職活動」というものが存在しない時代に就職できている人はラッキーな人です。吃音者は一般に言われる発達障害者のように一部にとても頭の良い人がいます。IQが高いといえばいいでしょうか。難関大学、国公立大学を卒業している人もいるので、履歴書のみで採用、出身校の先輩の紹介で採用、などがあったのです。年配の吃音者はよく若い吃音者に「私は吃音があっても就職できた、東証一部上場企業だ。結婚もした。子どももいる。自動車も買った! マイホームも買った! 子どもは全員大学卒業させた! キミもやればできる!」などアドバイスをしてしまいますが。その当時は発達障害や吃音の概念はあまり浸透していないという好条件も重なったのだと思います。ゆえに学歴で採用活動側、雇用する側は判断していた場合もあります。

年配の吃音者は自分が吃音ありつつも就職できたことを誇りに思っているので、現在の若者たちがなぜ就職できないのか?なんていうことは関係ないのです。

吃音の障害者認定反対派なら『吃音をカミングアウトしなさい。エントリーシートにも履歴書にも吃音のことを明記しなさい』と危機意識のカケラもないアドバイスをして悦に入る場合もあります。この手のアドバイスは2016年現在ではもはや通用しないのですが…。
逆に考えれば『自分の地位を脅かすかもしれない若い吃音者に就職してほしくない。同じ会社に入社してほしくない』など下心もあるのかもしれません。


吃音のある若者が『吃音をカミングアウトすれば一般枠採用されると思っている』理由には性善説を信じている場合もありますが、他にもこのような理由があります。障害者枠だと給与が安い、出世しない、スキルアップができない、正社員採用されないというのをデメリットだと思っていることもあります。給与が安ければ恋愛もできない結婚もできない。幸せな生活ができない。自分の両親や親類縁者と同レベルの生活水準を維持できない…。などを不安に思っている人もいます。

吃音のある子どもの父母や祖父母が『自分の職場で吃音者が採用されることは無い』と知っている場合は特に厳しく子どもの吃音に接します。なんとか治そうとしたり、病院や民間療法などなどありとあらゆる手段を使うかもしれません。親御さんの気持ちはわかります。それは社会が吃音者に冷たい、吃音があると就職や結婚が不利、ということを知っているのです。親御さんも障害者や社会的障壁のある人に冷たい接し方をしていたこともあるかもしれません。

吃音のある子どものお父さんお母さん、家族のみなさん、親戚のみなさん。ぜひ、ご自身が働いている職場の人事採用担当、人事部の人に『吃音者が就職活動で私たちの団体に応募してきたら採用する?しない?障害者枠なら採用する?』と質問してみればよいでしょう。その答えが現在の日本社会の真実です。

筆者自身も若い頃は吃音の障害者認定反対派の教典に心酔しており、就職活動の際は吃音を堂々とカミングアウトしていましたが。結果は全て不採用でした。最初の書類選考で落ちます。障害者認定反対派の人の堂々と吃れ、吃音を治してはいけない、吃音は障害ではないということが通用するのは本当にごく一部の限られた吃音者だけのものだとやっと目が覚めたのです。


■4.吃音は吃音のみの人が存在する一方で、吃音と(自閉症スペクトラム、ADHD、LD、チック・トゥレットなど)が併存している人もいます

吃音は神経発達障害とDSM-5で分類されるようになりました。
この1つの理由として、その他の発達障害と併存している事例が報告されているからです。

こちらのリンクを見てください。
 吃音に併存する発達障害・精神神経疾患に関する検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp/57/1/57_7/_article/-char/ja/

http://stutteringperson.blogspot.jp/2016/02/blog-post_23.html


■5. それでは吃音者の採用 吃音者雇用ガイドラインはどうなるか? 吃音の就労支援、合理的配慮とは?

まず、これは採用する側、雇用する側の主義主張を明確にする必要があります。
人事採用担当と経営者がよく考えて明確にする必要があります。

吃音は現在、精神障害者保健福祉手帳の対象になっています。2年更新の手帳です。
ごく一部、吃音の状態が重度な『家族でないと意思疎通できない』レベルの人であれば身体障害者手帳の4級を持っています。

4番で説明したように、吃音だけではなく、吃音とその他の発達障害を持っている吃音者もいます。これも難しいところです。


これらの情報や吃音者の派閥抗争を知ったうえで考えを明確にする必要があります。雇用する側は吃音者をどのようにとらえるのか?が重要になります。


1.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、仕事の成果を出すならば一般枠で働いてほしい。一般枠で働く機会を与える。法定雇用率には興味ない。

2.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、手帳を取得して障害者枠で働いてほしい。法定雇用率に計算したいのが本音。

3.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、障害者手帳を持っていれば、一般枠でも障害者枠でもどちらでもよい。法定雇用率に計算したいのが本音。

4.吃音に限らず、どんな障害でも社会的障壁がある人でも、手帳を取得して障害者枠で働いてほしい。しかし仕事は責任ある仕事、出世できるようにする。正社員雇用する・いつかは正社員にする。スキルアップ・キャリアアップの機会を与える。



この4つでしょうか。
まずこの部分を明確にする必要があります。雇用する側としては少なくとも『障害受容のできている吃音者』を採用したいと思うはずです。派閥抗争をしているトラブルメーカーよりもそうではない温厚で穏健な人が良いと考えるはずです。そして発達障害者支援法やICD-10やDSM-5に定義されている吃音という障害であれば障害者手帳を持っていることがデフォルトであると考えるかもしれません。

この雇用する側のホンネ、障害者雇用業界のホンネを理解していない吃音者が多いことも事実です…。


吃音者を雇用する、吃音者を採用する、吃音者と一緒に働く。
これには企業団体がどのような立ち位置になるか?が重要になります。

1.「吃音丸出し。いついかなる時でも常に吃りまくっていてもいい。聞き手は吃音者の話を待つ。ちゃんと待って聞く」
2.「吃音があるなら、吃りそうなら発話発語以外の使用を認める。そのほうが聞き手も時間効率が良いから。常に吃るのは正直勘弁してほしい。」
3.「吃音があっても、どんな職務を遂行してもいい・接客も放送も営業などお客さんと接することもなんでもやっていい」
4.「吃音があるなら、話すこと以外の仕事をしてほしい。無理して話さなくていい。接客や営業や放送などお客さんと接する仕事にこだわらないでほしい」

吃音者側には吃ることは権利であり。どもらせないようにするのは差別だという人も一部にいます。
上の1から4、この条件にさらに法定雇用率に計算したいために障害者手帳の所持を希望する、希望しないという前提もあることになります。



えっ、でも、吃音者側だけの希望を聞かないといけないの?

良い質問ですね。
そうです。そもそも吃音に限らずですが、合理的配慮とは過度な過重なものはしなくてもよいということになります。

平等であるならば、合理的配慮される側の希望、合理的配慮を提供する側の希望ということ、両方が必要です。

吃音は「吃る」障害でもありますが。「相手の時間を奪う、多く消費させる障害」でもあります。吃音者が吃りまくって話しているのを最後まで相手は待たないといけないのか?吃りまくっている吃音者に話を丁寧に聞くたびに、1分、2分、3分と時間が消費されていきます。これが1年間の出勤日と計算すれば、年間吃り時間により、これだけ時間が多く消費されたということにもなります。

【吃音Q&A】吃音は発話発語の障害 そして相手、聞き手の時間を奪う障害
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2017/06/q.html


となると吃音者とコミュニケーションをする聞き手、相手、お客さんなども「希望」がでてきますよね。無理に発話発語してコミュニケーションしなくてよい。チャットでも筆談でもメールでも、丁寧な言葉遣いではなくていい、マニュアル通り話さなくていいから・・・と希望が出てきます。

合理的配慮とはバランス、話し合い、お互いの歩み寄り、譲り合い、落とし所を考えることにもなるのです。

■6. 吃音者への合理的配慮とは具体的に何をすればいいのか?
吃音は話すこと、発話することの障害です。(ただし発話器官に障害があるのではなく、発話しろと命令する脳神経の障害・神経発達ネットワークの障害です。)
例えば、挨拶ができない、自分の名前や社名が言えない、他人の名前を言えない、マニュアル通りの決められた順番で話せない、言いやすい言葉を発話するために敬語を使わない場合もある。などなどが考えられます。

(ただ、これだけ色々な合理的配慮を職場で、採用側、雇用する側が行う可能性があるとなると障害者手帳所持は必須だと思いますが……)

(吃音の障害者認定反対派の人は、吃る権利があると考えているので、一年間365日ありとあらゆる場所で吃りまくるので、そのありのままの状態を一般雇用枠で認めることになります…)



◆吃音者に想定できる、考えられる合理的配慮一覧

・声をだして挨拶ができない場合は笑顔や会釈でも良いとする。

・電話応対を一部免除する。全部免除する。社内の電話のみ応対させる。外部との電話応対は免除する。

・社内アナウンスや店内アナウンス、放送の業務を免除する。

・落語家の桂文福さんのように歌いながらメロディに乗せて職場内やお客様のところで話してよいと認める。吃音者は歌いながら、メロディに合わせて話すと吃らない人がとても多いため。

・落語家の桂文福さんのように、会話の中でギャグを織り交ぜたり、舌打ちをして滑稽な音を鳴らして職務遂行をしても、それを許容する。許す。怒らない。吃音者の道化キャラで働くことを認める。

・社内の朝礼、全体集会、全体挨拶、飲み会の挨拶、式典の挨拶などで口頭発表させることや社訓の暗唱や社内用語暗唱などを免除する。

・吃音者には営業以外の仕事をしてもらう。他の障害者のように社内の仕事をその分切り出す。その仕事をしてもらう。

・吃音者は吃ること避けるため、言いやすい言葉に言い換えを行う。「赤いボールペン」→「レッドなボールペン」、「トイレ」→「お手洗い」、「昨日(きのう)」→「昨日(さくじつ)」、「水曜日」→「火曜日の次の日」、「新聞紙」→「ニュースペーパー」などと言い換えることがあります。

それを不自然だと笑わない。指摘しない。

・吃音で有名な芸能人やアナウンサーや総理大臣や王族がいるからといって、あなたの目の前にいる吃音者はそうではない場合もあると認識を改めること。XXさんがこうやって成功したからあなたもやりなさいと意味不明のアドバイスをやめる。障害が個性となる職業のイスは非常に限られている。

・筆談を利用できるようにする。

・吃音者は吃ることを避けるため、言いやすい言葉を発話する。場合によって敬語などを使わずにタメ口になってしまうことがある。それを認める。許す。怒らない。

・営業や電話応対を認めるにしても、必ず初回に外部やお客様に接するときに、同僚や上司が「弊社のXXは吃音という障害があるので。話し方が不思議に思われるかもしれませんが仕事には影響がないので気にしないでほしい」と説明する。

→とくに職場の同僚や上司が一度、吃音当事者とファーストコンタクトする相手に説明するステップは重要です。吃音当事者自分の言葉で説明するのは大切ですが、同僚や上司のワンクッションがあるかないかでは相手側の受け止め方も変化します。

・電話応対の場合 自動音声システムでを利用する。「この電話は吃音者、吃る人が架電しています」、「この電話は吃音者、吃る人が受電しています」こういったアナウンスも必要になるでしょう。

・口頭での報告連絡相談よりも筆談以外に手書きメモやEメールやチャットの利用を認める。コミュニケーションアプリの利用を認める。

・吃音者は人それぞれであるが、話すときに、唾液を飛ばしてしまうことがあるので、マスクの着用を認める。

・工場や調理場など安全確認が重要視される職場で、「後ろ通ります」、「声出し安全確認作業」ができない場合ブザーやホイッスルなど他の手段を考える。

・飲食店やサービス業であれば、いきなりステーキの従業員が利用している透明マスクの着用を認める。(これは吃音者の中に吃るとき唾液を飛散させる場合もあるためである)

・飲食店やサービス業以外では普通の顔が隠れるマスクの着用を認める。吃音者は吃る時の顔を見られたくない人もいます。口がまがる。唇が震える。唇が尖る。口元が痙攣する。唾液を飛ばしてしまう。白目をむいてしまう。視線が合わない。などなど吃るときの外見上の影響がでる当事者も存在するためです。

・飲食店やサービス業ではお店の入り口などに、「吃音者が働いています」と告知すること。聴覚障害者の洋菓子店のように吃音者が働いていることを説明しましょう。タッチパネル方式だと聴覚障害者も吃音障害者も助かりますね。

・吃音者がホウレンソウや会話をするときに、吃ってしまうため他の人よりも時間が倍近く必要だとしても、ゆっくり余裕をもってその話を聞く。

・吃音者の言葉を先取りしない。吃音者の主義主張によっては最後まで言い切るまで待ってほしい人もいます。逆に話している途中で、XXXのことを言いたいの?と言われたほうが話しやすい人もいます。 ※このあたりは当事者とよく話し合う


★医療従事者、コメディカルの吃音者はどのような合理的配慮? 学校教員や弁護士、警察官や消防士なども同様
吃音当事者の中には、医師、言語聴覚士、看護師、精神保健福祉士、社会福祉士、介護士、臨床心理士など心理系、の仕事をしている当事者もいます。

医療従事者、コメディカルの吃音者にはどうしても言い換えのできない言葉を多く使用する場面が想定できます。人名や薬品名、患者さんクライエントさんとの面接や心理検査、言語療法、結果の説明などがたくさんあります。とくに心理検査や言語療法などの場合は一言一句間違わないで実行できなければいけません。

心理検査や言語療法などで患者さんに「私のあとに続けて話して下さい。マネしてください」などと説明して、吃る部分まで真似をされてしまうという事例も発生しています。事前に患者さん、クライエントさんへの吃音の説明が必要になります。この場合も同僚や上司がワンクッション説明を入れることが重要です。

また、吃音を持った当事者が医療従事者など、警察官、自衛隊、消防士、国家資格や専門資格などを目指す場合。吃音当事者学生を受け入れる学校、大学や専門学校等は、研修所、実習先にも合理的配慮を求めるときに助けてあげてください。




以上のように様々な合理的配慮が今のところ考えつきます。
話すこと発話することの配慮だけが必要です。それ以外はおそらく大丈夫だと思います。

※しかしながら、吃音当事者には吃音だけではなく、自閉症スペクトラムやADHDなどの一般によく知られている発達障害を持っている場合もありますので、この場合はその発達障害特性にも配慮をする必要もあるかもしれません…。

何れにせよ、当事者と雇用する側がその都度、その人その人ごとにカスタマイズ就労について話し合い考えることがとても重要なステップになります。吃音はその人それぞれにより症状が異なります。また吃音当事者の主義主張によっては合理的配慮をたくさんされるよりも、吃ったまま仕事をしても怒らない環境、笑われない環境を希望する場合もあります。一律にこうすれば良いという正解はありません。雇用する側の譲歩できる部分、当事者側の希望する部分。これらをじっくり話し合い落とし所を見つけてお互いが納得できる気持よく仕事ができるようになることが重要です。

まずはスモールステップアップで吃音者の雇用事例が日本全国で集まっていくことを期待します。その際は吃音の障害者認定反対派の妨害工作もあるかもしれませんが気にせず冷静な対応をしましょう。

■7. 就労移行支援事業所は吃音者とどのように向き合うか?
2014年7月から突如として吃音が発達障害者支援法に含まれていると定義されていますと発表があり―。しかし吃音以外の発達障害の業界では吃音が発達障害者支援法に含まれていることはそれ以前から知られていたようです。就労移行支援事業所の職員でもそれを理解している人はいるかもしれません。

さて、今後は、発達障害者の就労移行支援に吃音者が入るようになります。就労移行支援事業所によっては吃音者が利用申請をしてくる場合もあるでしょう。成人しても吃音が治らずに継続する吃音者は全人口の1%に世界中に存在していると言われています。吃音者への就労支援は一般に言われる発達障害を併存している場合もありますので、その部分については既存のメニューで対応ができるでしょう。

問題なのは就労移行支援事業所内で、吃音をどのように扱うのかです。これは6番でも説明したように合理的配慮を提供するのか?などを考えなければいけないでしょう。

吃音当事者が吃音だけではなく一般によく知られている発達障害を持っている場合もありますので、その部分については現在のノウハウが利用できます。

その他にも就労移行支援事業所が営業や案内やセミナーを企業団体向けに行うときに、企業側、雇用する側の吃音者への本音をどれだけ聞き出せるか?ということも重要です。そしてその本音を吃音者や吃音当事者団体に気付いてもらうことも必要です。しかしながら吃音者は障害受容ができていない場合も多く時間がかかる場合もあります。かなりのミスマッチが起こることが想像されます。

■8. 障害者手帳を持っていないのに合理的配慮を宣言された場合、雇用する側は不採用を決断する 採用したが失敗した場合 事案紹介 事例紹介
※全ての事例や事案がそうだとは限りません



1.
「吃音者の人が障害者手帳を持っていないのに。合理的配慮をしてくれ」と言ってきたので、面接では合理的配慮をしたが、後日不採用通知を出したということだ。理由は障害者手帳を持っていないから、障害受容ができていないから、他の障害者に何か悪影響を及ぼすような気がしたという。

一度非公式に「障害者手帳のコピーを今度持参してください」と伝えたが「吃音は障害ではありません。個性です。仕事上問題はありません。私は吃音で障害者手帳を取る予定はありません。」と自信満々に言われたため、『あぁ。これが講演会や勉強会でよく出てくる障害受容ができていない人か。入社後もトラブル起こしそうだし、すでに働いている障害者に個別の障害についてあれこれ説教し始めそうだから不採用』という結論にいたったという。

2.
カミングアウトしてきた吃音者が面接に来たので、障害者手帳を持っていれば、障害者枠で採用できると水面下で伝えたが、応じなかった。吃音は障害じゃない!と反論してきた。採用は見送った。

「私の団体では、吃音のある人とも一緒に働きたい。とは思っている。でも障害者手帳を持っていない吃音者が本当にいるとは思わなかった。残念だ」という。

合理的配慮をする以上。法定雇用率に計算できること、という部分については吃音者側にも理解してほしいのだけど残念だという。

3.
障害者手帳を持っているが、不採用になった吃音者。
障害者手帳を持っている吃音者が障害者枠で応募してきた事案。
合理的配慮の希望と法定雇用率の問題はクリアできたが、吃音者側が「障害者枠の仕事じゃなくて。一般と同じ仕事がしたい。なぜ接客や営業をしてはいけないのですか?なぜ喋る仕事をしてはいけないのですか?吃音者に対する差別ですか?機会を奪うなんてズルい。吃っていても総理大臣やアナウンサーや医者や営業がいる。接客や営業だって経験したい」と面接段階で意見を述べていたため、不採用通知を出したという事案。

これも吃音者側と雇用する側のみミスマッチです。
現在、吃音業界、吃音当事者団体では、東証一部上場企業や国家公務員、地方公務員に就職して活躍する人もいるため。成功した吃音者がやっている仕事や職務を遂行したい!という若い学生、新卒就活をする吃音学生が多いことと条件が合わないという事案。

たしかに発達障害という概念が世界に生まれる前は「ちょっとあの人変だよね」という人は就職できていたが、2017年現在の就職活動は件の障害者発見試験や面接、グループ面接、グループ討論、などに「発達障害傾向のある人」をなんとかしてあぶり出す手法が販売されているため、一般枠で発達障害者が隠して応募してもなかなか突破するのは難しい。ましてや吃れば一発でバレる吃音者にはハードルが高い。

そこで障害者枠で就活している吃音者が出てきたが。吃音のある先輩達、パイオニア達がやってきたこと、同じ仕事をしたい。機会を提供しないのは差別だ!という雇用する側が用意した仕事をしたくない!差別だ!と衝突につながる事案が発生したという。

雇用する側としては無理に話す仕事はしなくていいので、社内に限り電話や通信はまかせるけど、積極的に表舞台では活躍しなくていい。もっと他にも仕事があるから、こっちを一緒に頑張っていきたいと吃音者側に伝えても。吃音者側が拒否する、その仕事しかさせないのは差別だと反論してきたという事案だ。雇用する側としてもトラブルになりそうな人は最初から雇用したくないというのだ。たとえ障害者手帳を持っていたとしてもだ。

4.
採用後の事例。雇用側が吃音だけ配慮する予定で採用計画を考えており無事入社した吃音者。しかし吃音以外に、発達障害があることがわかり雇用側が「採用ミス」だと社内で一致した事例。吃音者は社内ニート扱い。

採用時に吃音者は吃音のことしかカミングアウトしておらず、雇用側も吃音だけだと思っていた。しかし、発話発語のコミュニケーションよりも空気や気持ち、雰囲気、ホウレンソウが原因となる問題が多発。時間配分や時間を守ること、ケアレスミスなども多い。独自ルールが社内ルールよりも優先されるなどのトラブルも。

吃音以外に広汎性発達障害、ADHDがあることが後に判明。雇用側は採用時に見抜けなかったのかと問題に発展。

吃音者は純粋吃音だけではないと障害者の人事採用、障害者の就労移行支援など支援者や就職エージェントなどの間で支援困難事例として現在情報共有されている。

5.
採用後の事例。せっかく障害者枠で採用した新卒吃音者が4ヶ月で辞めた。
障害者枠で採用した新卒学生の吃音者。意欲も高く採用したが。入社の後の新人研修期間、組織の人事制度、給与面、キャリアアッププランなどに不満があったらしい。吃音ではない発達障害の新卒学生は黙々と仕事を続けているのを見ると吃音の人は今後、採用対象から外すという判断をせざるを得ないことになる。発達障害の新卒学生は就労移行支援事業所に行っていた経緯もあるので支援者が間にいることが影響しているのかとも反省。「不安」や「希望」などを聞いてくれる支援者のワンクッションがここまで大切だったということが判明した残念な事案。

障害者枠で入った新卒学生がたった4ヶ月で自分勝手に辞めていった事案は、今後吃音者の就職活動全般に、後輩吃音者にとても不利になるだろう。採用にもコストがあるということを吃音者側が理解しないとならないだろう。また、吃音者も就労移行支援事業所経由でないと採用が難しくなるだろう。自分勝手に辞めてしまう衝動性からADHDもあるのではないかとも思われる。吃音者の採用をお考えの企業様、公的機関様に悪い印象になったことは間違いない。

吃音者と働く。吃音者就労ガイドライン、吃音就労ガイドライン、吃音合理的配慮ガイドライン、吃音者就労支援ガイドライン。吃音採用。吃音は障害。吃音採用事例。吃音は面倒。吃音は支援困難。障害者手帳を持っていない吃音。吃音者すぐ会社辞める。吃音の離職率高い。吃音は採用困難。