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2018年6月13日水曜日

吃音が含まれる労働保険審査会資料を精神障害の件、自殺の件 2件紹介

厚生労働省の労働保険審査会が公開する資料に吃音について書かれたものが2点ありましたので紹介です。(公開された文書は最下段に掲載)
リンク先はこちら
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/roudou/saiketu-youshi/


関連記事
2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2015/11/2013.html
【重要なお願い】吃音業界は2005年4月から施行の発達障害者支援法を本当に知らなかったのか?なぜ2013年に北海道で吃音看護師が自死したのかhttp://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/12/200542013.html 

1.はどこかの大学で働いていた人の事例である。
労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による療養補償給付及び休業 補償給付を支給しない旨の処分を取り消すとの裁決を求めたが。棄却されたということである。


2.は吃音を持った看護師が自殺したことで。亡子が自殺に至るまでの経緯が記録されている。 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による遺族補償給付及び葬祭 料を支給しない旨の処分を取り消すとの裁決を求めたが。棄却されたということである。


筆者はこれを読んでいて本当に怒りや悔しさがある。克明な記録である。
しかし、法律上、ルール上、棄却ということになる。
この後、国を相手に行政訴訟するのかどうか?(棄却を知った日からX日以内が間に合っていればの話)
もしも行政訴訟まで行けば、毎日新聞社などから報道があるかもしれない。
行政訴訟となれば吃音業界の団体も、お金を援助すべきではないかと思う。
2018年は吃音者の世界大会!吃音者の世界大会!とお金がたくさんある団体なのだから。それくらいは大根を購入するような感覚だろう。


――― 克明な記録、じっくり読んでほしい 可能なら音読してほしい

「2経過」から音読してほしい。筆者が気になった部分を強調する。全文は最下段に。
看護師さんは病院で働いていた。

・請求人によれば、被災者は、入職後、同年○月頃から、指導の受け答えの時に 突っ掛かる、言葉が出ないなどからコミュニケーションを取ることができず、少 しずつ悩み始め、同年○月になると退職や自殺を意識し出し、精神的に病んでいったという

 ・看護師は、同年○月○日、事業場に出勤せず、自宅で死亡しているところを発 見された。死体検案書には、「死亡したとき:平成○年○月○日昼頃(推定)、直接死因:酸素欠乏による窒息(推定)、死因の種類:自殺」と記載されている。

請求人は、被災者の死亡は業務上の事由によるものであるとして、監督署長に 遺族補償給付及び葬祭料を請求したところ、監督署長は、被災者の死亡は業務上 の事由によるものとは認められないとして、これらを支給しない旨の処分(以下 「本件処分」という。)をした。 請求人は、本件処分を不服として、労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」 という。)に審査請求をしたが、審査官は、平成○年○月○日付けでこれを棄却し た(以下「本件決定」という。)ので、請求人は、更に本件決定を不服として、本 件再審査請求に及んだものである。


・(3)被災者の本件疾病発病前おおむね6か月間において、認定基準別表1「業務 による心理的負荷評価表」(以下「認定基準別表1」という。)の「特別な出 来事」に該当する出来事は認められない。 (4)そこで、「特別な出来事」以外の出来事についてみると、請求人及び再審査 請求代理人(以下「請求代理人」という。請求人及び請求代理人を併せて、以 下「請求人ら」という。)は、①認定基準別表1の具体的出来事「達成困難な ノルマが課された」に該当する出来事、②同じく「(ひどい)嫌がらせ、いじ め、又は暴行を受けた」に該当する出来事、③同じく「理解してくれていた人 - 3 - の異動があった」に該当する出来事、④同じく「上司が替わった」に該当する 出来事があり、①及び②の出来事による心理的負荷の総合評価はそれぞれ「強」 に該当する旨主張している。 (5)上記(4)の請求人らの主張を踏まえ検討すると、以下のとおりである。 ア 上記(4)①の出来事についてみるに、請求人らは、被災者は患者に対す る説明を行う前に、先輩看護師に向かっての説明練習を繰り返し実施させら れていたが、これは、事業場が被災者に対して突っ掛かることのない説明を 行うことを業務目標として課していたものであって、かかる業務目標はノル マに該当し、当該ノルマは流暢性障害を有する被災者にとって「客観的に、 相当な努力があっても達成困難なノルマ」であり、また、被災者に対する試 用期間延長の通告が「重いペナルティの予告」に該当することから、この出 来事の心理的負荷の総合評価は「強」に該当する旨主張する。


しかしながら、請求人らが主張する先輩看護師に向かっての説明練習は、 プロの看護師として業務を遂行していく上での前提となる、患者や家族との 円滑な意思疎通、コミュニケーションを図るための基礎訓練と考えられ、新 人看護師の教育プログラムの一環として実施されていたものであることか ら、これを、営業上の利益を確保することなどを目的として労働者に一定の 業務成果の達成を求めるために課せられるノルマと同視することはできな い。

↑これ。吃音者としては憤激しますね。
また一方で『プロの看護師として業務を遂行していく上での前提となる、患者や家族との 円滑な意思疎通、コミュニケーションを図るための基礎訓練と考えられ』ということです。これが発達障害者支援法により、精神障害者保健福祉手帳を持っており、合理的配慮を事前に申し出て、雇用側と当事者が合理的配慮について話し合えば。落とし所があればどうなったのかとも思います。

『プロの看護師として業務を遂行していく上での前提となる、患者や家族との 円滑な意思疎通、コミュニケーションを図るための基礎訓練と考えられ』

これについては、2018年現在でも、2017年の秋ころ放送されたNHKハートネットTV、吃音学生の就職活動を見た、発達障害業界の就労移行支援事業社、事業員、発達障害専門の病院医師などからは『吃音の人はなぜ、なぜ、なぜ、一般枠でカミングアウトしてしまうのか?』と不思議がる人もいます。なぜなら『プロのXXXXとして業務を遂行していく上での前提となる、社内やお客様との 円滑な意思疎通、コミュニケーションを図るための基礎訓練と考えられ』というのが、ほとんどのどのような職業でも当たり前だからだという理由でした。

吃音当事者の立場としては『吃音があったままでも、障害者手帳を持っていなくとも、職場は合理的配慮すべき。障害者手帳を持たずに働く先輩もいるから、この職場もそうするべき』だという主張もありますよね。

しかし発達障害のある学生や大人むけの就労移行支援事業を経営運営している人やその職員・支援職、企業団体の障害者枠雇用担当者はそうは思っていないという現実もあります。


・したがって、当審査会としても、決定書理由に説示するとおり、この出来事を「達成困難なノルマが課された」に該当するものとして評価することは できず、下記イのとおり、認定基準別表1の出来事の類型「対人関係」の出 来事として評価すべきものと判断する。 なお、請求代理人は、被災者に対する試用期間延長の通告について、達成 困難なノルマに係る「重いペナルティの予告」に該当する旨主張するが、前 述のとおり被災者にノルマが課されたものとみることはできず、別途出来事 として評価すべきものである。そして、その心理的負荷の程度を検討してみ ても、当該延長は被災者の試用期間中の状況をみて総合的に検討した結果と して行われたものであって、不当なものとまではいえず、被災者には技術面 (採血・注射)の修得が不足していた旨のC課長の申述にも信憑性を欠くも のとみるべき事情もないところ、管理者であるC課長から被災者に対して今 - 4 - 後の課題を含め相応の説明がされた上で通告されたものと推認されることか ら、心理的負荷の程度は「弱」であるものと判断する。


なるほど、正式採用されず、試用期間延長になったのですね。これは初見でした。
看護師の場合は、当事者にとってとても苦痛なものだったことでしょう。
しかし労働保険審査会の主張する認定基準別表1の出来事の類型「対人関係」の出来事として評価すべきものと判断するということになってしまっています。
吃音のある人が繰り返し繰り返し発話発語の練習をさせられるというのは労働保険審査会では通用しないということになる…。



話を変えます 発達障害のある人を解雇する方法のこと

これは2014年くらいからある2018年現在でも水面下で存在する『発達障害のある人を間違えて採用してしまった場合に去ってもらう虎の巻』にあることです。

最近だと、それを行使されたのではないかと思うニュース記事があります。当事者は発達障害の診断がついているかは不明ですがエピソードを読んでいるともしかしたら未診断の人なのかもと思える記述もあります。
新卒1年目で解雇された地方公務員の主張 http://blogos.com/outline/300401/

関連した記事でリタリコから
発達障害カミングアウトで退職に追い込まれた26歳。実体験から伝える、退職までの軌跡とこれから https://h-navi.jp/column/article/35026527


何れにせよなのですが。
発達障害があること見抜けずに間違えて採用してしまった発達障害者を解雇する方法。
これはまず。試用期間中に本採用しないことや、「普通解雇」にすることが前提となっています。また転職させるように仕向ける。障害当事者が自ら辞めると決断するように外堀を埋めるなどなど。
虎の巻によると、発達障害を持っていると思わる当事者が失敗したことを更にやらせること。当事者が失敗しやすいであろう業務に配置転換することが解説されています。
そして、重要なことがあります。手書きの業務日報を毎日記入させるのです。
手書きが苦手、筆記が汚い当事者の人もいるでしょう。
手書きの業務日報に今日の業務内容一覧を記載させます。
また、仕事上のミスがあった場合さらに始末書や反省文などを書かせます。
(この時点は他の社員や職員はやっていないことを自分だけさせられます。または他の人も表面上やっていても、これはターゲットを普通解雇するためだと知っているため適当に書きます。会社に残ってほしい人材についてはいい加減な内容でも不問です)

すでにこの時点にうつ病になりそうですが。
当事者の中には負けずに戦う人もいるでしょう。
しかし、1年ほどすると、業務日報と始末書や反省文を根拠に
「職務遂行能力が欠けているため、普通解雇します」という流れになります。
普通解雇は罰則もなにもないので、発達障害に限らず使われる手法です。

※当事者は業務日報を詳細に自分だけ書けと言われたり、配置転換の話があった場合
不自然なタイミングで人事が話をしたいと言ってきた場合
ICレコーダーやスマートフォンのレコーダー機能で会話を全て録音することを
おすすめします。業務日報を毎日提出しろと言われた場合は。職場の中でICレコーダーの録音を勤務中は全て行うことも大切です。雇用側が辞めさせようと画策する場合、言葉の暴力や理不尽な要求や、度をこした叱責などがはじまるからです。これが録音できていれば後々有利な武器になるかもしれません。


吃音のある人を合法解雇したければ
吃音の場合は発話発語が苦手なわけですから、配置転換をして話すことが多い部署に異動させて。そこで手書きの業務日報、仕事のミスやお客様からの苦情があれば(もちろんお客様は本当にお客様かわかりません、会社側が準備したお客様の可能性も)その都度、反省文や始末書を書きます。これが継続していけば、当事者はうつ病、適応障害、などなどにより自ら退職するかもしれません。(雇用主としては1番良い展開です)
次にここまでやってもへこたれずに働き続けると。いよいよ普通解雇が宣告されることになるのです。

避けることはできるのか?
現在、改正された発達障害者支援法の第十条の3 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=416AC1000000167_20160801_428AC0000000064
『3 事業主は、発達障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の機会を確保するとともに、個々の発達障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。』この条文に書いてある「発達障害者の雇用」とは精神障害者保健福祉手帳を持っていても持っていなくてもよいという解釈が重要視されているからです。
これで立ち向かうことができるともされていますが。そもそも手書きの業務日報の段階に来ると当事者もそのような余裕があるとは思えません。このレベルでは、雇用側と対峙しているのではないかと思いますし。良い状態の関係に戻せないということもあります。




話が脱線しました元に戻します


・イ 上記(4)②の出来事についてみるに、請求人らは、流暢性障害を負って いる被災者に対して、突っ掛かることなく説明を行うという不可能ないし困 難な行為を求め、繰り返しの指導ないし叱責が行われており、これは、認定 基準別表1の具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受け た」の心理的負荷「強」の具体例「部下に対する上司の言動が、業務指導の 範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定する言動が含まれ、かつ、 これが執拗に行われた」に該当する旨主張する。 被災者の指導看護師の申述を踏まえると、指導看護師は、被災者が患者へ の説明等改まった場面において緊張から言葉が出にくくなるものと理解して いたと推認されるところ、説明練習を繰り返すことで、患者への説明を日常 の会話と同様によりスムーズにできるようになるものと期待して行わせたも のとみるのが妥当である。


吃音のことが全く知られていないことがわかりますね。
スムーズに淀みなく話せるようになるために。
説明練習を繰り返すことでスムーズに発話発語ができるようになると期待したそうです…。吃音のこと全然知らないですね。

 ・この点、D主任は、1日5、6回も練習をさせると被災者も気落ちするの で1日2回程度であった旨述べるのに対し、請求人らは、Eが、被災者は説 明練習を何十回もさせられていた旨やスムーズに発言できないのを承知でわ ざと被災者に言わせたり、失笑したりするスタッフがいた旨申述していることを主張する。


これは新潮45で連載された近藤雄生氏が書いた記事にもあったように思います。


・しかしながら、EがSNSでも個人的につながるくらい親密とす るC課長、D主任、F以外の事業場関係者であるGの申述をみても、Eの申 述内容を裏付けるに足るものは見当たらず、他方、被災者が事業場外で信頼 を寄せていたと考えられるHも、事業場に勤めるようになってからも吃音の 悩みやいじめのことで決定的な話は聞いていないと述べていることを併せ勘 案すると、説明練習を繰り返し行わせていたこと自体が、業務指導の範囲を 逸脱し、嫌がらせやいじめに該当するものとみることはできず、被災者は看 護師として必要な基礎的能力を修得するため、教育プログラムの一環として の業務指導を受けていたものとみるのが妥当であると判断する。 もっとも、関係者の申述を踏まえれば、被災者が叱責されていた事実が認 められるものの、被災者の指導看護師から業務指導の範囲を逸脱した言動が なされた事実を目撃した者はおらず、被災者が記録していた日々のメモ帳に もそのような事実の記載は全くないことに照らせば、説明練習の指導をもっ - 5 - て認定基準別表1の具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行 を受けた」に該当するものとみることは相当ではなく、被災者が説明練習を 繰り返し行わされていたことと叱責されていたことを併せ、認定基準別表1 の具体的出来事「上司とのトラブルがあった」(平均的な心理的負荷の強度 「Ⅱ」)に該当するものとして評価することが妥当である。 そして、被災者の指導看護師による叱責に関しては、指導看護師が厳しく 叱ったことがあるとし、Gも、若干言い方がきつかったのかもしれないと述 べており、被災者が厳しく叱責される状況も複数回あったものと認められる が、ほかにも新人看護師がいる中で、被災者のみが厳しい叱責を受けていた ものとは認められず、看護の現場において想定される一般的な指導、叱責を 超えるものとみるべき客観的な事情も見受けられないことから、当審査会と しても、説明練習と叱責の出来事による心理的負荷の総合評価は、決定書理 由に説示するとおり「弱」であると判断する。 ウ 上記(4)③の出来事についてみるに、請求人は、吃音のある被災者に対 して、スムーズに発言できないことを責めるのではなく、教育効果を考えな がら接してくれた唯一の理解者であった同僚が、平成○年○月○日付けで別 の部署に異動になり、被災者に対して同様に接してくれた人はほかにいなか ったことから、被災者がますます追い込まれていった旨主張する。 しかしながら、この出来事は、被災者の本件疾病発病後の出来事であり、 本件疾病が死亡に至る間に悪化したとする事情は認められないことから、評 価の対象とはならないものである。 エ 上記(4)④の出来事についてみるに、請求人は、被災者の吃音を理解し 事業場に来るよう誘ってくれたI元看護部長が、被災者が事業場に雇用され る前に退職しており、その後任の看護部長も被災者の雇用時には交代し、被 災者が事業場で働き始めるまでの間に看護部長が3人も代わっているが、被 災者の吃音について看護部長間で引継ぎがきちんとなされていたのか疑問で ある旨主張する。 請求人が主張する看護部長の交代は、被災者が事業場に雇用される以前の 出来事であることから、これを業務による出来事として評価することはでき ないが、仮にこれを決定書理由に説示するとおり、J看護部長となっていた ことを知ったのが事業場に雇用された後のこととして、認定基準別表1の具 - 6 - 体的出来事「上司が替わった」(平均的な心理的負荷の強度「Ⅰ」)に該当す るものとみても、心理的負荷の強度を修正すべき要素はないことから、この 出来事の心理的負荷の総合評価は「弱」であると判断する。 (6)上記(5)のとおり、被災者には心理的負荷の総合評価が「弱」の出来事が 3つ認められるが、その業務による心理的負荷の全体評価は「弱」であって「強」 には至らないことから、被災者に発病した本件疾病は、業務上の事由によるも のとは認められず、またその死亡も業務上の事由によるものとは認められない。 3 以上のとおりであるので、監督署長が請求人に対してした本件処分は妥当であ って、これを取り消すべき理由はない。 よって主文のとおり裁決する。




説明練習を繰り返し行わせていたこと自体が、業務指導の範囲を 逸脱し、嫌がらせやいじめに該当するものとみることはできず、被災者は看 護師として必要な基礎的能力を修得するため、教育プログラムの一環として の業務指導を受けていたものとみるのが妥当であると判断する

(略)

ほかにも新人看護師がいる中で、被災者のみが厳しい叱責を受けていた ものとは認められず、看護の現場において想定される一般的な指導、叱責を 超えるものとみるべき客観的な事情も見受けられないことから、当審査会と しても、説明練習と叱責の出来事による心理的負荷の総合評価は、決定書理 由に説示するとおり「弱」であると判断する。


と書いてありますが。
根本的に吃音とはどんなものなのか? が知られていないことが根底にあるように思えます。もしも仮に、就職の段階で吃音の説明、合理的配慮を申し出ることができればとも考えますが。看護師は一般枠就労を望んでいたと仮定すれば、それはできなかったでしょう。仮に一般枠就労で「XXX障害について理解せよ!合理的配慮せよ!」と言えば雇用側と争う状態にもなります。そうするとそもそも勤務先の仲間や上司との軋轢にもなるのでそういうカードは使えません。さらに、一般枠就労なので、看護師としてできて当たり前の業務はできなければいけない。障害者枠であれば免除や合理的配慮があるかもしれないが。一般枠なので発話発語訓練のノルマを課せられるということは避けられなかったでしょう。そもそも医療従事者の障害者枠はあまり存在しないということもあります。


・その業務による心理的負荷の全体評価は「弱」であって「強」 には至らないことから、被災者に発病した本件疾病は、業務上の事由によるも のとは認められず、またその死亡も業務上の事由によるものとは認められない。


最後の文章ですが。
業務上の事由ではなく。また死亡に至ることも業務上の事由ではないとなっています。









吃音のある人の働き方は今後どうなるのか?

吃音のある人の働き方というのは
吃音があっても大丈夫だ! 一般枠で働ける!!
障害者枠は給与やすいし。障害者と一緒だと思われるよ!
吃音でどもりまくって仕事している!
という人もいますし。(真実かどうかは別です。本当は職場でカミングアウトしていない場合もあるでしょう)

何らかの訓練や改善方法や
自分なりの技術で吃音が出ないように、うまく隠せるようになる当事者もいます。
吃音が出る状態をコントロールして。盛大に吃る→少し吃るにする場合も
あります。大破から小破にダメージコントロールすることです。

吃音があって困っている人。合理的配慮を受けて安心安全な環境で仕事したいと思えば。
精神障害者保健福祉手帳を取得する人もいるでしょう。


労働保険審査会の視点(吃音看護師の事例のみならず全てに当てはまる指針)

『しかしながら、請求人らが主張する先輩看護師に向かっての説明練習は、 プロの看護師として業務を遂行していく上での前提となる、患者や家族との 円滑な意思疎通、コミュニケーションを図るための基礎訓練と考えられ、新 人看護師の教育プログラムの一環として実施されていたものであることか ら、これを、営業上の利益を確保することなどを目的として労働者に一定の 業務成果の達成を求めるために課せられるノルマと同視することはできない。』



この部分「看護師」を他の職業に言い換えても。
この部分「患者や家族との」を「取引先やお客様との」に言い換えても。
この認識は成立します。
これは看護師に限らないということです。どのような職業でもこれは成立します。そして労働保険審査会が想定する一般枠雇用ではこのようなことが最重要視されていることになります。

吃音業界では吃音をカミングアウトして働いているという人もいますが、全ての企業団体がそのような環境ではありません…。不思議なことに吃音をカミングアウトして働いているという人が、その職場名を公開して、インターネット上にリスト化するということもありません。職場の人事を説得して「私のような吃音のある後輩が応募してくるからよろしくな!」とはなりません。吃音業界の不思議です。

では看護師が障害者枠雇用ならばどうだったのか?と考えてしまいます。合理的配慮を受けられたのではないか? しかし障害者差別解消法のいう合理的配慮は申し出があれば絶対に提供しなければいけないわけではありません。努力義務ということになっています。

さらに就労の場合の合理的配慮は障害者差別解消法よりも改正障害者雇用促進法になります。そこには「合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のもの」であって。当事者の合理的配慮の申し出。その後双方での話し合いがあり、相互理解が必要。相互で共通の落とし所が求められるのです。一方的に「私は障害や症状があるから御社は合理的配慮しないとならない」と申し出をすることは、相手と対峙することになるということです。対決姿勢になってしまうのです…。

そこで多くの企業団体、組織は「落とし所はこのへんですね。わかりました。これでいきましょう。合理的配慮を提供するから、障害者手帳のコピーをだしてくれ。法定雇用率に計算したい」となるわけで。カミングアウトすれば一般枠でも働けるはずだという吃音業界の常識と大きく異なることになります。しかし、一般枠でカミングアウトをしてはいけないこと。大手の発達障害者向け就労移行支援事業所でも耳にタコができるほど、口酸っぱく、これでもかというほど何度も説明されます。リタリコ社の場合、就職を希望する当事者、リタリコ社職員、応募先の企業団体の三者間で合理的配慮を取り決めた内容の書面化をして保存するといいます。またリタリコ社のリタリコワークスでは「職場での合理的配慮ガイドブック 一人ひとりに合った働き方に向けて」をウェブに公開しています。 https://works.litalico.jp/interview/consideration/

しかし吃音当事者・吃音業界では一般枠雇用でも「吃音をカミングアウトできる」という事例が多数あります。吃音への合理的配慮希望を、ボールを投げるだけ投げて、雇用主側の事情や雇用先の立場とのギャップが発生してしまうのです。雇用側としては法定雇用率に計算したいから障害者手帳を持っていてほしいという本音と建前があります。


しかし何よりも、吃音とはどういったものなのか?
練習して治る人もいるかもしれないが、そうではない人もいる。
吃音についての情報提供がもっと必要になっていくと思います。

別記事でも書きました。
吃音ガイドライン 流暢性障害ガイドライン: 吃音者と働く 職場で吃音者の合理的配慮がうまくいかないのはなぜか? http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2017/10/blog-post.html

吃音当事者言う「私どもるんです。吃音があるんです」
これを雇用側が「どのくらいの吃音状態なのか」がわからないことの情報不足もあるでしょう。しかし吃音当事者によっては、吃音は障害ではないと思いこんでいるわけですから一般枠で就活して、カミングアウトをして採用される人もいますが、そうではない人もいることになります。この状況は今後変化していくでしょうか?


そして何よりも大切なこと 吃音のことをもっと強く社会に伝えていくこと 吃音の認知度をあげよう

これが何より重要でしょう。
2005年から吃音は発達障害者支援法に定義されていました。
マスコミ、報道のみなさんにはここを報道してほしいのです。
なぜ吃音業界において2005年から発達障害者支援法に吃音が含まれたこと。そして発達障害者支援法ができたときに、発達障害当事者や支援者、親の会の連合体が発足し、その中に吃音業界の団体が1つ加盟していたのに。2013年に吃音を苦にした自死、自殺が2件起きてしまったのか。なぜ発達障害業界は吃音業界を怪訝そうに見ているのか?
ここを報道してほしいのです。
関連記事
2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2015/11/2013.html
しかし吃音業界にはそれがなぜか秘匿、隠匿、隠蔽されてしまい。自死を決断する者が出てきた。2005年以降は別の選択肢もあったはず。もしも2005年から吃音のことが広く知られていれば。といろいろな事が巡り巡ってしまいます。

吃音業界、吃音者の中には、吃音以外の障害種別の当事者や家族を差別する人もいます。
これを吃音至上主義といいます。吃音至上主義が『吃音が発達障害者支援法に含まれていることを隠そう、隠匿、隠蔽、秘匿しよう。社会に広まらないようにしよう』につながるとしたら本当に怖いことです。

吃音業界では2005年4月から発達障害者支援法に吃音が含まれたことが共有されなかったことは本当に悲しいことです。吃音業界の団体がこの時点で団結し、運動をおこし、積極的に行政や医療との連携を行い、精神障害者保健福祉手帳取得への手引やホームページ上での使える社会保障制度紹介、吃音以外の障害児者、困ってる当事者との連携があれば。少なくともその後、高校や大学を卒業した吃音当事者は苦悩する時間、死にたくなる気持ち、自分の人生を考える時間、吃音があるからといって絶対にこれをしなければいけないという焦り、いろいろな重圧や悩みを別の視点、別の選択肢によって回避することもできたのかもしれません。2014年に国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報支援センターが「吃音は発達障害に含まれる」とホームページ上で公開することによって事態は急変しました。黒船来航と同じで吃音業界はいよいよ外圧によって動かざるをえない状況になりました。

しかし、しかしです。吃音業界はなぜ発達障害者支援法の存在が隠されていたのか。なぜ吃音者(家族やそれに関係する人間)は精神障害や発達障害を持った人を差別するのか。こういった過去を調べて検証して反省するということはありません。検証した結果をしっかり報告書にしてウェブ上に公開することも大切だと考えます。本来なら吃音業界はまずここからやらなければいけないのです。労働保険審査会(ウェブ上に公開されるレベル)にまで行動しなければいけなかった。それくらい吃音業界はとても深い闇を抱えているといえます。もっと早く、少なくとも発達障害者支援法が開始された当時から吃音当事者とその家族の選択肢を増やすための行動をしていれば、権利擁護をしていれば、令和時代になって、吃音で苦悩し苦しみ生きることへ絶望する当事者や家族も少なくなっていたでしょう。とりわけ吃音者が大きな壁と感じる就職活動では一般枠も障害枠も両方就活しよう。精神障害者保健福祉手帳を取得しよう、社会保障制度を堂々と利用しようという流れもあったかもしれません。


吃音至上主義(きつおんしじょうしゅぎ)とはなんですか? どんな差別主義ですか?
https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/12/blog-post.html


吃音業界では吃音のことが100%全部社会に知られてしまうことを反対する人もいます。
吃音が発達障害になると精神障害や発達障害の人と同じに思われてしまうから、精神障害や発達障害の人は犯罪をしても無罪だから、そんな人たちと同じに扱われたくないから。吃音は身体障害だという吃音至上主義者もいます。

発達障害者支援法に入っていることを2005年の施行日から2014年7月3日に国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報支援センターが改めて告知するまで、隠匿していた業界でもあります。もしも2005年から吃音が発達障害者支援法の対象であるとわかっていれば。イジメや不登校を経験した人も。その後進学を諦めてしまった人も。就職活動で失敗してしまった人も。いまはニートやひきこもりになっている人も。自殺をした人も。何か別の道があったのではないかと思います。

発達障害による精神障害者保健福祉手帳は「本人の困りごと」により取得できます。
身体障害の場合は身体障害の認定基準という明確な線引、数値、検査などがあります。これにより厳格に等級が決まります。もしも吃音が身体障害になったとすれば。軽度の人が手帳を取得できない可能性もあります。

また、うつや適応障害、社交不安障害といった二次障害がなくても精神障害者保健福祉手帳は取得できます。自閉症スペクトラムだけで精神障害者保健福祉手帳を持っている人もいます。吃音業界ではこのような正しい情報が医療従事者の間でも共有されておらず。二次障害が発生しないと手帳を取得できないと判断する人もいます。自閉症スペクトラムなどを診療する医師は「二次障害が発生しないように当事者を守るため」にも発達障害の症状単独で精神障害者保健福祉手帳が取得できることをもっと世間に浸透してほしいといいます。


吃音の認知度を上げること。「吃音を知られたくない」という気持ちもあるでしょうし。うまく吃音を隠して社会に溶け込んでいるいる人はなおさらでしょう。

しかし、吃音があってもうまくいっているとか、どもりまくって仕事している、私ができたから、あなたもできる。それは間違っています。「パターナリズム」です。あなたの成功体験が他の人にあてはまるわけないのです。

吃音のある人に限らず、身体障害でも発達障害でも精神障害でも知的障害でもマイノリティでも難病でも、どんな人でも世界中に同じ人は存在しません。生まれた国家。生まれた家の貧富、親の価値観、学校の環境、いじめにあうか、あわないか。不登校になるかならないか。うまく何事もなくいってしまうか。挫折するか。まったくひとりひとり異なるのです。今目の前にいる困っている人は、過去に経験したこの人とパターンが同じだから、こんな感じで助ければいいや。ではありません。

もしも吃音があってもうまく行っている、会社は理解あるという人は自分の所属する企業団体・組織の名称をインターネット上に公開してください。そして人事部に「私は吃音があるけど。今度後輩がエントリーしてくるから。頼むよ!」と説明して「後輩吃音者のみなさん!私の働く職場に応募して!!吃音があっても絶対大丈夫!全く気にされないよ!」とアナウンスすべきです。全ての吃音者に平等なエントリーできる機会を提供すべきです。

しかしそれはできませんよね。
だからこそ。社会保障制度、障害者基本法、発達障害者支援法、差別解消法、精神障害者保健福祉手帳制度などなどがあるのです。これらは人間が文明を築いてきた中で生まれたものです。障害者に限らず、社会的弱者の人へのセーフティーネットは近代ではどの国家でもあるわけです。


そしてライフステージにあわせた。
いつでもどこでも、誰でも。困ったときにどのような制度があるのか?
これらを「可視化、見える化」していかないとなりません。
発達障害のある人の団体やてんかんのある人の団体では、使える制度一覧の説明。学校での合理的配慮の受け方。学校での個別の指導計画・支援計画の発動方法。障害のある生徒を多く受けれ入れている高校説明会、発達障害のある学生を手厚く支援してくれる大学、就職は一般枠?障害者枠?と考える時間。いろいろな機会を情報を教えてくれます。

吃音がある子どもであれば「うまく話せるように学校にいくのではありません」
安心安全な環境で勉強するため。無理に発話発語をしない合理的配慮を求めること。
こういうことでもいいのです。


少し古い資料で、一部内容が変わっているかもしれませんが。
東京大学先端研で発達障害のある人の研究を熊谷晋一郎氏と行っている綾屋紗月氏が発達障害の説明、当事者研究の際に利用するスライドです。
「吃音のある私」
「吃音のある私が困っていること」
「社会に返せる問題は社会に返す」

個人の問題と社会の問題を切り分ける。
そして使える制度や社会資源を使いリカバリーしていく。
安心安全な環境を手に入れる。
自分が生きやすい環境を構築していくことが大切になるでしょう。

そして吃音業界の医療従事者ではなく、精神科医療の医療従事者のみなさんにお願いです。吃音業界は本当に複雑です。発達障害者支援法が存在したのにも関わらずそれが見える化わかる化使える化されていないのです。そして、「成功してる吃音者」という価値観があり、ここでは社会保障制度、障害者手帳制度を利用する吃音者は弱い人、甘えた人、負け組、ずるい人などとレッテルはられます。あくまでも一般枠で成功してこそ、そして吃音当事者の保護者と同じ収入レベル生活レベルの維持をすることが評価されます。ここには相談支援、ソーシャルワーク、バイスティックの7つの原則、パターナリズムなどが理解できる人がいないのです。どうか助けてください。みなさんの活躍するフィールドで吃音を積極的に扱ってほしいのです。









以下、労働保険審査会の公開した文書


1.28労103 [190KB] 棄却 准教授の上司、同僚からのパワハラ等により発病したとする精神障害

- 1 - 平成28年労第103号 主 文 本件再審査請求を棄却する。 理 由 第1 再審査請求の趣旨及び経過 1 趣 旨 再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、労働基準監督 署長(以下「監督署長」という。)が平成○年○月○日付けで請求人に対してした 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による療養補償給付及び休業 補償給付を支給しない旨の処分を取り消すとの裁決を求めるというにある。 2 経 過 請求人は、平成○年○月○日、A所在の学校法人Bに採用され、同法人が運営 するC大学(以下「大学」という。)に専任講師として勤務したのち、平成○年か らは准教授として就労していた。 請求人によると、平成○年○月頃から学長や同僚から受けたパワーハラスメン トやいじめにより慢性的なストレスが蓄積されたという。 請求人は、同年○月○日、Dクリニックに受診し、「適応障害」と診断され、そ の後、平成○年○月○日、E病院に受診し、「適応障害」と診断された。 請求人は、精神障害を発病したのは、業務上の事由によるものであるとして、 監督署長に療養補償給付及び休業補償給付を請求したところ、監督署長は、請求 人に発病した精神障害は業務上の事由によるものとは認められないとして、これ らを支給しない旨の処分をした。 請求人は、これら処分を不服として、労働者災害補償保険審査官(以下「審査 官」という。)に審査請求をしたが、審査官は、平成○年○月○日付けでこれを棄 却したので、請求人は、更にこの決定を不服として、本件再審査請求に及んだも のである。 第2 再審査請求の理由 - 2 - (略) 第3 原処分庁の意見 (略) 第4 争 点 本件の争点は、請求人に発病した精神障害が業務上の事由によるものであると認 められるか否かにある。 第5 審査資料 (略) 第6 事実の認定及び判断 1 当審査会の事実の認定 (略) 2 当審査会の判断 (1)請求人の傷病名及び発病時期について、労働局地方労災医員協議会精神障害 等専門部会(以下「専門部会」という。)は、平成○年○月○日付け意見書に おいて、請求人の発病の状況、F医師の意見書等から、ICD-10診断ガイ ドラインに照らし、「F43.2 適応障害」(以下「本件疾病」という。) を発病したと判断し、発病時期を平成○年○月下旬頃としており、請求人の症 状の経過等に照らすと、当審査会としても専門部会の意見は妥当であると判断 する。 (2)ところで、精神障害の業務起因性の判断については、厚生労働省労働基準局 長が「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月2 6日基発1226第1号。以下「認定基準」という。)を策定しており、当審 査会としてもその取扱いを妥当なものと考えることから、以下、認定基準に基 づき検討する。 (3)そこで、請求人の本件疾病発病前おおむね6か月間における業務による心理 的負荷についてみると、次のとおりである。 ア 「特別な出来事」について 認定基準別表1「業務による心理的負荷評価表」(以下「認定基準別表1」 という。)の「特別な出来事」の類型に示されている「心理的負荷が極度の もの」又は「極度の長時間労働」に該当する出来事は認められず、「特別な - 3 - 出来事」は見受けられない。 イ 「特別な出来事以外の出来事」について 請求人は、本件疾病を発病に至らしめる多くの業務による心理的負荷をも たらす出来事があった旨主張していることから、以下、同主張の出来事ごと を検討する。 (ア)まず、請求人は、平成○年○月○日に請求人の身体状況を確認するため に大学が指定した医療機関を受診するよう学部長より指示がなされ、請求 人は受診することとなったが、当該指示自体が不適切であると主張する。 当審査会では、請求人が当該医療機関を受診することとなった経緯につい て精査したが、受診は事実確認書からみて、明確に請求人の合意を得た上 でなされたものであり、また、当該指示の理由についても、請求人が今後 授業を支障なく継続できるかを判断するためという合理性が認められるも のであることから、仮に、請求人にとって不満があったとしても、一般的 に心理的負荷をもたらす業務上の出来事であるとは判断できない。 (イ)次に、請求人は、自身の授業のやり方等について平成○年○月○日に学 生から提出された嘆願書を取り上げ、同年同月○日にG委員会が開催され、 さらに同月○日には学生に対する説明会が開催されたことについて不当で ある旨を主張する。この点、一件記録を精査すると、請求人の主張と大学 側の主張には、学生の請求人による授業に対する受け止め方や説明会に至 る経緯において食い違いがあるものの、少なくとも学生から「嘆願書」が 出されたことは事実であると認められる。学生から、こうした文書が提出 された以上、大学側が請求人から事情を聞き、また、学生に対して説明を したことについては、合理性があると判断すべきである。この点、請求人 は、呼び出し回数が○回にも及んだことを不当である旨主張するが、こう した事態に至った背景には、請求人の釈明が学生の主張と乖離していたた め事実確認が必要であったと判断し得るものであり、調査が長期間に及ん だことも致し方ないと言わざるを得ない。したがって、この一連の経過に ついて、請求人が不満を抱いたことは理解できるも、大学側として学生の 苦情に係る請求人への対応が不当であったとは判断できず、同出来事を認 定基準別表1の具体的出来事に該当する出来事として「上司とのトラブル - 4 - があった」(平均的な心理的負荷の強度「Ⅱ」)に該当するとみて評価し ても、やや強い業務指導が行われたものであると判断することが相当であ り、その心理的負荷の強度は「中」であると判断する。 (ウ)また、請求人は、学部長ら上司から発病直前まで継続して「いじめ」を 受けていた旨を主張するが、当審査会において、一件記録を精査するも、 決定書に記載のとおり、上記G委員会や学生への説明会の場において、請 求人にとっては厳しいと感じられるであろうやり取りがあった事実は認め られ、また、H委員長から試験の監督をするよう求められた等の事実は認 められるものの、いずれも大学教員としての一般的な務めを求められたと 判断すべきものであり、それらの場面において、請求人の人格や人間性を 否定するような嫌がらせが執拗かつ繰り返し行われたという事実も認めら れないことから、業務による心理的負荷をもたらす出来事であったとは判 断し得ない。 (エ)さらに、請求人は、事実確認書について、記載内容やその手続き等につ いて不当である旨を主張するが、当該確認書は、平成○年○月○日から同 年○月○日までの間の○回にわたる請求人と学部長らとの話し合いの結果 として作成されたものと認められ、最終的には、請求人も自ら署名してい る。請求人は、法律学を専門とする研究者であり、当該署名の意味につい ては理解しているものと判断されるところ、後にこれを不当な要求であっ た等との反論は受容しがたく、同主張について、業務による心理的負荷を もたらす出来事であるとは判断できない。 (オ)以上のことからすると、請求人について認定基準別表1の具体的出来事 に該当する出来事としては、心理的負荷の総合評価「中」となる出来事が 1つ認められるに過ぎず、請求人の業務による心理的負荷の全体評価は 「強」には至らないものである。 なお、請求人は、本再審査請求において、公正かつ慎重な審理を希望す る旨主張しているところ、当審査会においては、事実認定に係る関係者の 申述及び証拠については、各位の立場や事情を十分に斟酌してその採否を 決定しており、本件についても、大学関係者の申述については、その信憑 性や矛盾の有無についても精査したものであることを付言する。 - 5 - (4)業務以外の心理的負荷の評価及び個体側要因の評価 本件における一件記録からは、業務以外の心理的負荷については認定基準に 基づき特に評価すべき要因は認められない。個体側要因については、請求人は 平成○年○月よりIクリニックに定期的に通院し「吃音」、「神経症」、「抑 うつ状態」、「不眠症」と診断され、抗うつ薬や睡眠薬が継続して処方されて いる。また、平成○年○月から「抑うつ状態」により約○週間休業しているこ とも確認できる。 (5)請求人のその余の主張についても子細に検討したが、上記結論を左右するに 足るものは見いだせなかった。 (6) 以上のことから、当審査会としても請求人に発病した本件疾病は業務上の事 由によるものとは認められないと判断する。 3 以上のとおりであるから、請求人に発病した本件疾病は業務上の事由によるも のであるとは認められず、監督署長が請求人に対してした療養補償給付及び休業 補償給付を支給しない旨の処分は妥当であって、これを取り消すべき理由はない。 よって主文のとおり裁決する。

2.28労391 [209KB] 棄却 看護師の自殺

- 1 - 平成28年労第391号 主 文 本件再審査請求を棄却する。 理 由 第1 再審査請求の趣旨及び経過 1 趣 旨 再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、労働基準監督 署長(以下「監督署長」という。)が平成○年○月○日付けで請求人に対してした 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による遺族補償給付及び葬祭 料を支給しない旨の処分を取り消すとの裁決を求めるというにある。 2 経 過 請求人の亡子(以下「被災者」という。)は、平成○年○月○日、A所在のB 病院(以下「事業場」という。)に雇用され、看護師として業務に従事していた。 請求人によれば、被災者は、入職後、同年○月頃から、指導の受け答えの時に 突っ掛かる、言葉が出ないなどからコミュニケーションを取ることができず、少 しずつ悩み始め、同年○月になると退職や自殺を意識し出し、精神的に病んでい ったという。 被災者は、同年○月○日、事業場に出勤せず、自宅で死亡しているところを発 見された。死体検案書には、「死亡したとき:平成○年○月○日昼頃(推定)、直 接死因:酸素欠乏による窒息(推定)、死因の種類:自殺」と記載されている。 請求人は、被災者の死亡は業務上の事由によるものであるとして、監督署長に 遺族補償給付及び葬祭料を請求したところ、監督署長は、被災者の死亡は業務上 の事由によるものとは認められないとして、これらを支給しない旨の処分(以下 「本件処分」という。)をした。 請求人は、本件処分を不服として、労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」 という。)に審査請求をしたが、審査官は、平成○年○月○日付けでこれを棄却し た(以下「本件決定」という。)ので、請求人は、更に本件決定を不服として、本 件再審査請求に及んだものである。 - 2 - 第2 再審査請求の理由 (略) 第3 原処分庁の意見 (略) 第4 争 点 本件の争点は、被災者の精神障害の発病及び死亡が業務上の事由によるものであ ると認められるか否かにある。 第5 審査資料 (略) 第6 事実の認定及び判断 1 当審査会の事実の認定 (略) 2 当審査会の判断 (1)被災者の精神障害発病の有無及び発病時期について、労働局地方労災医員協 議会精神障害専門部会(以下「専門部会」という。)は、平成○年○月○日付 け意見書において、症状経過及び主治医意見等を踏まえ、ICD-10診断ガ イドラインに照らし、「F43.2 適応障害」(以下「本件疾病」という。) を発病していたと判断し、その時期は平成○年○月下旬頃としている。 被災者の症状経過等を踏まえると、当審査会としても、専門部会の意見は妥 当であると判断する。 (2)ところで、心理的負荷による精神障害の業務起因性の判断については、厚生 労働省労働基準局長が認定基準を策定しており、当審査会としても、その取扱 いを妥当なものであると考えることから、以下、認定基準に基づき検討する。 (3)被災者の本件疾病発病前おおむね6か月間において、認定基準別表1「業務 による心理的負荷評価表」(以下「認定基準別表1」という。)の「特別な出 来事」に該当する出来事は認められない。 (4)そこで、「特別な出来事」以外の出来事についてみると、請求人及び再審査 請求代理人(以下「請求代理人」という。請求人及び請求代理人を併せて、以 下「請求人ら」という。)は、①認定基準別表1の具体的出来事「達成困難な ノルマが課された」に該当する出来事、②同じく「(ひどい)嫌がらせ、いじ め、又は暴行を受けた」に該当する出来事、③同じく「理解してくれていた人 - 3 - の異動があった」に該当する出来事、④同じく「上司が替わった」に該当する 出来事があり、①及び②の出来事による心理的負荷の総合評価はそれぞれ「強」 に該当する旨主張している。 (5)上記(4)の請求人らの主張を踏まえ検討すると、以下のとおりである。 ア 上記(4)①の出来事についてみるに、請求人らは、被災者は患者に対す る説明を行う前に、先輩看護師に向かっての説明練習を繰り返し実施させら れていたが、これは、事業場が被災者に対して突っ掛かることのない説明を 行うことを業務目標として課していたものであって、かかる業務目標はノル マに該当し、当該ノルマは流暢性障害を有する被災者にとって「客観的に、 相当な努力があっても達成困難なノルマ」であり、また、被災者に対する試 用期間延長の通告が「重いペナルティの予告」に該当することから、この出 来事の心理的負荷の総合評価は「強」に該当する旨主張する。 しかしながら、請求人らが主張する先輩看護師に向かっての説明練習は、 プロの看護師として業務を遂行していく上での前提となる、患者や家族との 円滑な意思疎通、コミュニケーションを図るための基礎訓練と考えられ、新 人看護師の教育プログラムの一環として実施されていたものであることか ら、これを、営業上の利益を確保することなどを目的として労働者に一定の 業務成果の達成を求めるために課せられるノルマと同視することはできな い。 したがって、当審査会としても、決定書理由に説示するとおり、この出来 事を「達成困難なノルマが課された」に該当するものとして評価することは できず、下記イのとおり、認定基準別表1の出来事の類型「対人関係」の出 来事として評価すべきものと判断する。 なお、請求代理人は、被災者に対する試用期間延長の通告について、達成 困難なノルマに係る「重いペナルティの予告」に該当する旨主張するが、前 述のとおり被災者にノルマが課されたものとみることはできず、別途出来事 として評価すべきものである。そして、その心理的負荷の程度を検討してみ ても、当該延長は被災者の試用期間中の状況をみて総合的に検討した結果と して行われたものであって、不当なものとまではいえず、被災者には技術面 (採血・注射)の修得が不足していた旨のC課長の申述にも信憑性を欠くも のとみるべき事情もないところ、管理者であるC課長から被災者に対して今 - 4 - 後の課題を含め相応の説明がされた上で通告されたものと推認されることか ら、心理的負荷の程度は「弱」であるものと判断する。 イ 上記(4)②の出来事についてみるに、請求人らは、流暢性障害を負って いる被災者に対して、突っ掛かることなく説明を行うという不可能ないし困 難な行為を求め、繰り返しの指導ないし叱責が行われており、これは、認定 基準別表1の具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受け た」の心理的負荷「強」の具体例「部下に対する上司の言動が、業務指導の 範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定する言動が含まれ、かつ、 これが執拗に行われた」に該当する旨主張する。 被災者の指導看護師の申述を踏まえると、指導看護師は、被災者が患者へ の説明等改まった場面において緊張から言葉が出にくくなるものと理解して いたと推認されるところ、説明練習を繰り返すことで、患者への説明を日常 の会話と同様によりスムーズにできるようになるものと期待して行わせたも のとみるのが妥当である。 この点、D主任は、1日5、6回も練習をさせると被災者も気落ちするの で1日2回程度であった旨述べるのに対し、請求人らは、Eが、被災者は説 明練習を何十回もさせられていた旨やスムーズに発言できないのを承知でわ ざと被災者に言わせたり、失笑したりするスタッフがいた旨申述しているこ とを主張する。しかしながら、EがSNSでも個人的につながるくらい親密とす るC課長、D主任、F以外の事業場関係者であるGの申述をみても、Eの申 述内容を裏付けるに足るものは見当たらず、他方、被災者が事業場外で信頼 を寄せていたと考えられるHも、事業場に勤めるようになってからも吃音の 悩みやいじめのことで決定的な話は聞いていないと述べていることを併せ勘 案すると、説明練習を繰り返し行わせていたこと自体が、業務指導の範囲を 逸脱し、嫌がらせやいじめに該当するものとみることはできず、被災者は看 護師として必要な基礎的能力を修得するため、教育プログラムの一環として の業務指導を受けていたものとみるのが妥当であると判断する。 もっとも、関係者の申述を踏まえれば、被災者が叱責されていた事実が認 められるものの、被災者の指導看護師から業務指導の範囲を逸脱した言動が なされた事実を目撃した者はおらず、被災者が記録していた日々のメモ帳に もそのような事実の記載は全くないことに照らせば、説明練習の指導をもっ - 5 - て認定基準別表1の具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行 を受けた」に該当するものとみることは相当ではなく、被災者が説明練習を 繰り返し行わされていたことと叱責されていたことを併せ、認定基準別表1 の具体的出来事「上司とのトラブルがあった」(平均的な心理的負荷の強度 「Ⅱ」)に該当するものとして評価することが妥当である。 そして、被災者の指導看護師による叱責に関しては、指導看護師が厳しく 叱ったことがあるとし、Gも、若干言い方がきつかったのかもしれないと述 べており、被災者が厳しく叱責される状況も複数回あったものと認められる が、ほかにも新人看護師がいる中で、被災者のみが厳しい叱責を受けていた ものとは認められず、看護の現場において想定される一般的な指導、叱責を 超えるものとみるべき客観的な事情も見受けられないことから、当審査会と しても、説明練習と叱責の出来事による心理的負荷の総合評価は、決定書理 由に説示するとおり「弱」であると判断する。 ウ 上記(4)③の出来事についてみるに、請求人は、吃音のある被災者に対 して、スムーズに発言できないことを責めるのではなく、教育効果を考えな がら接してくれた唯一の理解者であった同僚が、平成○年○月○日付けで別 の部署に異動になり、被災者に対して同様に接してくれた人はほかにいなか ったことから、被災者がますます追い込まれていった旨主張する。 しかしながら、この出来事は、被災者の本件疾病発病後の出来事であり、 本件疾病が死亡に至る間に悪化したとする事情は認められないことから、評 価の対象とはならないものである。 エ 上記(4)④の出来事についてみるに、請求人は、被災者の吃音を理解し 事業場に来るよう誘ってくれたI元看護部長が、被災者が事業場に雇用され る前に退職しており、その後任の看護部長も被災者の雇用時には交代し、被 災者が事業場で働き始めるまでの間に看護部長が3人も代わっているが、被 災者の吃音について看護部長間で引継ぎがきちんとなされていたのか疑問で ある旨主張する。 請求人が主張する看護部長の交代は、被災者が事業場に雇用される以前の 出来事であることから、これを業務による出来事として評価することはでき ないが、仮にこれを決定書理由に説示するとおり、J看護部長となっていた ことを知ったのが事業場に雇用された後のこととして、認定基準別表1の具 - 6 - 体的出来事「上司が替わった」(平均的な心理的負荷の強度「Ⅰ」)に該当す るものとみても、心理的負荷の強度を修正すべき要素はないことから、この 出来事の心理的負荷の総合評価は「弱」であると判断する。 (6)上記(5)のとおり、被災者には心理的負荷の総合評価が「弱」の出来事が 3つ認められるが、その業務による心理的負荷の全体評価は「弱」であって「強」 には至らないことから、被災者に発病した本件疾病は、業務上の事由によるも のとは認められず、またその死亡も業務上の事由によるものとは認められない。 3 以上のとおりであるので、監督署長が請求人に対してした本件処分は妥当であ って、これを取り消すべき理由はない。 よって主文のとおり裁決する。

2017年11月27日月曜日

ブラック企業大賞ノミネート発表 ゼリア新薬工業がノミネート 

吃音のあったとされる若者が自殺した事件のことでゼリア新薬工業がノミネートされたようです。ゼリア新薬工業の新人研修ニュースですが、その後続報がないように思えます。
吃音があったか、なかったかの視点の違いもあり、吃音業界団体もとくに公式声明を出していません。

当時のニュースの内容はこのようになっていました。
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.btkRy6q7w#.wdgkZv7pO


さて、2017年11月27日弁護士ドットコムニュースによると今年のブラック企業大賞のノミネートが発表されたといいます。今回のノミネート発表により、人格否定や自己否定の企業研修がなくなっていけばと思います。そういった研修がビジネスとして成立してしまう社会も変化していってほしいと考えます。

2017年11月27日現在、バズフィードジャパンからもブラック企業大賞ノミネートについて記事が出ています。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/black-kigyo-2017?utm_term=.fdgo4AMpx#.bp6pQdv60




ブラック企業大賞実行委員会の公式ページ
http://blackcorpaward.blogspot.jp/



https://www.bengo4.com/internet/n_7024/
NHK、ヤマト、新国立関連の大成・三信建設…ブラック企業大賞ノミネート発表
弁護士や学者、ジャーナリストでつくる「ブラック企業大賞」実行委員会は11月27日、NHKやヤマト運輸などノミネート企業を発表した。ノミネートされたのは、ゼリア新薬工業、いなげや、パナソニック、新潟市民病院、日本放送協会(NHK)、引越社・引越社関東・引越社関西(アリさんマークの引越社)、大成建設・三信建設工業、大和ハウス工業、ヤマト運輸。
ブラック企業大賞は、長時間労働やパワーハラスメント(パワハラ)などを従業員に強いる悪質な企業や法人を選出している。今年で6回目となる。昨年は、新入社員が長時間労働の末、過労自殺した電通が大賞に選ばれた。大賞など各賞を発表する授賞式は12月23日に開かれる予定だ。ノミネート企業は毎年授賞式に招待されているが、これまで1社も出席したことはないという。
この日都内で会見を開いた同実行委の佐々木亮弁護士は今年のノミネート傾向について、労災・長時間労働の企業が多いと述べた。「政府の『働き方改革』という打ち出しもあり、過労死・過労自殺事件の遺族代理人の会見も多かった」とその背景について説明した。
実行委が挙げたノミネート理由の要約は、以下の通り。
ゼリア新薬工業・・・大手製薬会社。男性社員(当時22)が2013年5月、新人研修受講中に自殺した。2015年に労災と認定された。遺族は今年8月、会社と研修会社に1億500万円の損害賠償を求めて提訴したことを明らかにした。
いなげや・・・スーパーマーケットチェーン。男性社員(当時42)が2014年、脳血栓で亡くなり、労災認定された。違法な長時間労働のほか、タイムカード打刻前後のサービス残業があったことが確認されている。
パナソニック・・・総合電機メーカー。男性社員(40代)が2016年6月が亡くなった。過労による自殺と認定された。16年5月の残業時間は100時間を超えていたという。また、法人としてのパナソニックと幹部社員2人が、社員3人に対して違法な長時間労働をさせたとして書類送検されている。
新潟市民病院・・・公立総合病院。女性研修医(当時37)が2016年1月、長時間勤務がつづいたことで睡眠薬を服用して自殺した。月平均残業時間は187時間、最も長い月で251時間だった。今年5月、女性の自殺は長時間労働による過労が原因として労災認定された。
日本放送協会(NHK)・・・放送法に基づき設立される特殊法人。女性記者(当時31)が2013年7月、うっ血性心不全で亡くなった。亡くなる直前の1カ月の時間外労働は159時間37分に及んだ。労基署は「深夜に及ぶ業務や十分な休日の確保もできない状況にあった」と認定した。NHKは今年10月、女性の過労死事件があったことを発表した。
引越社・引越社関東・引越社関西・・・引越による荷物の運搬等を業とする企業。引越社関東の男性社員を不当にシュレッダー係に配転したり、懲戒解雇するなどした。さらに懲戒解雇の理由を「罪状」などと記載して、男性の顔写真を入れた書類をグループ店舗に掲示した。東京都労働委員会は今年8月、「不当労働行為」として認定した。
大成建設・三信建設工業・・・大手建設会社。東京オリンピック・パラリンピックで使用する「新国立競技場」にからみ、三信建設工業の新人男性社員(当時23)が今年3月自殺した。長時間労働による過労が原因の労災であると認定された。元請けの大成建設にも行政指導がおこなわれている。
大和ハウス工業・・・総合住宅メーカー。男性(20代)に違法な時間外労働をさせていたとして、今年6月に是正勧告を受けた。これまでにも是正勧告を受けており、一定の時間になると消灯して社員を帰宅させるなどしていたが、実際は多量の業務を課していた。男性は長時間労働の末、うつ病になり退職を余儀なくされている。
ヤマト運輸・・・宅配便事業者。昨年12月にセールスドライバーに対する残業代の未払い、今年5月にパート従業員の勤務時間改ざんで是正勧告を受けた。さらに今年9月、セールスドライバーに労使協定で定めた残業上限を超える残業を違法にさせていたとして、法人としての同社と幹部社員2人が書類送検された。
(弁護士ドットコムニュース)

2017年9月18日月曜日

8月7日 日本経済新聞の吃音記事について思うこと どこの組織?団体?がやっているの?

(読了目安 15分)
少し古い記事を紹介。
2017年8月7日に日本経済新聞が15面医療健康にて吃音の記事を掲載した。
日経スタイルがそれをネット上に記事公開。引用記事は最下段に。

さて、この記事が出た時に思ったのはどこの誰が研究しているのか?ここです。
吃音当事者団体が吃音の治療や診療ガイドラインを厚生労働省に要請要望したという話が
過去にあるが、それに厚生労働省が応えた結果なのか?ということだ。

また、吃音の記事が日本経済新聞社から、また関連の日経と冠するメディアから発信されるのは影響力が大きいと考える。日本経済新聞と言えば読者層もビジネスに関心がある層、人事部門、採用部門、障害者採用担当部門、発達障害者と一緒に働く人、経営者層が読んでいるともいえる。

吃音(きつおん・どもる人)は障害でもある。
発達障害者支援法に含まれていること。
精神障害者保健福祉手帳を取得できること。
吃音者は法定雇用率に含むことができること。
これらを読者層が知ったというのは大きな一歩だ。
困っている吃音者、障害受容のできている吃音者、障害者枠で働きたいという吃音者と経営者側の情報がリンクしたことになるからだ。

また、発達障害者の就労移行支援事業を行う事業主、経営者も『吃音者も就労移行支援事業所で受け入れるようにしよう』という考えをひらめいた人もいるであろう。

■1 記事本文について

―――記事冒頭は吃音の説明

記事は吃音の説明。幼少期の20人に1人。そのうち7割は自然になくなるという説明だ。
吃音は専門家の間でも病気や障害としてのとらえ方や、治療や対策の考え方に違いが出る難しい分野だ。世界保健機関の定義をもとに、厚生労働省は吃音症という病気の分類を設けている。これに沿って診断を受けると発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合もある。
というように、厚生労働省は吃音の分類を世界保健機関の定義をもとにして発達障害者支援法を利用し精神障害者保健福祉手帳をもらう場合と明記している点も見逃せない。

吃音を診療する医療従事者や支援者の間では、『吃音は身体障害者手帳を取得することも可能』との見解を述べる人間もいる。この場合は『吃音と明記しないで言語障害を表現すればよい』とのことであるが。身体障害者手帳申請書類を書く15条指定医師は 音声・言語・そしゃく機能障害の診断基準に明記されていない状態を書くことを躊躇う人もいる。15条指定医師としての資格を取り消されるリスクもあるためだ。

日本経済新聞では身体障害者手帳については触れていない。発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合、としている。15条指定医師も吃音については曖昧な基準になっている身体障害者での申請よりも発達障害者支援法で明確になっている精神障害者保健福祉手帳での申請を促すだろう。

実は筆者もこの点が気になっており。東京都に確認したところ、『吃音は発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳を申請できる』と説明を受けている。身体障害者手帳も取得できるのでは?と聞くと『発達障害者支援法に吃音が含まれている』と説明を受けた。

この点、日本経済新聞の藤井寛子氏はしっかり取材しているなと受け止めた。
日本経済新聞が『世界保健機関の定義をもとに、厚生労働省は吃音症という病気の分類を設けている。これに沿って診断を受けると発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合もある。』と明記したことは大きな影響がでるだろう。



―――国立障害者リハビリテーションセンターが2016年夏からアンケートを実施
記事中盤では国リハが中心となり、3歳児健診などの際に吃音を調べる調査を昨夏から始めたこと。自治体と連携して親にアンケート調査をし、必要ならば面談もするという。言葉の繰り返しの状況などを確認し、4カ月ごとに質問用紙を送り、計2000人を調べるという。
 
 調査期間は2年で、2017年3月の集計では約5%が吃音と推定されたという。同センターの森浩一部長は「幼児全体では5%よりもっと多いと考えている」と話す。調査を続けると増える可能性があるとみているとのこと。

―――気になるのは「費用対効果」という発言
記事中盤では
 一般に、8歳になるころから、症状はなくなりにくくなるといわれる。早期に日常生活の対策となる訓練を受ける必要性が指摘されている。森部長は「半数以上は自然になくなるため、支援のかけすぎという声もある。費用対効果を考えて、最適な介入のタイミングを調べたい」と話す。
と書かれているが。費用対効果を治療、療育、訓練に持ち出すのはいかがなものか?というのが率直な感想だ。X歳までに、●●をすれば吃音が完治する。寛解するというならばよいが、そうでない場合もよくよく想像してほしいものだ。

そもそも2005年から吃音が発達障害者支援法に含まれていること、それが公に広く周知されるのは2014年7月3日の国立障害者リハビリテーションセンター内部の発達障害情報支援センターが「発達障害の一覧」に「吃音」を加えた日である。

本来であれば2005年から、自閉症スペクトラムやADHD、学習障害、トゥレット症候群の当事者や家族と同じ権利が吃音児者にあったはずである。医療機関の充実や、社会保障制度、合理的配慮、障害者雇用枠の利用、自立支援医療費(精神通院)などなどありとあらゆる面で全く同じ権利、同じ内容を利用できたはずである。

とくに国立障害者リハビリテーションセンター病院は2014年7月3日以前から吃音者に精神障害者保健福祉手帳を取得できることをホームページ上で公開していたのか?医療従事者に吃音は発達障害者支援法に含まれていて、法によりありとあらゆるサービスを利用できますとアナウンスしていたのか?という疑問がでてくる。まさかと思うが費用対効果という価値観で、吃音者に気軽に精神障害者保健福祉手帳を取得されたら日本の財政が傾くというような価値観があったから?吃音が発達障害者支援法に含まれていることを故意に伏せていたのかしら?と想像すると恐怖しかない。

このように発達障害者支援法に吃音が含まれていたことが事実上、見えなくされていた過去があったうえで「費用対効果」という言葉がでてくるのは驚きを隠せない。
困っている当事者が、ライフステージに合わせて、いつでもありとあらゆる制度が利用でいて良いはずである。

そもそも、発達障害者の中でも精神障害者保健福祉手帳3級を取得しているが、服薬、スマートフォンのアプリ、スケジュール管理、リマインダー、イヤーマフ、静かな環境、人が少ない時間に移動、ソーシャルスキルトレーニング、当事者会で悩みを話す、病院で医師や支援者に相談などなど、余暇活動でストレス発散、仕事や職場ではなんとかなるが帰宅した後は何もできないから家族や他人に助けてもらう、仕事や職場で働く時間の体力・ヒットポイントはあるが使い切ってしまう(仕事や職場以外で定型発達を装うのが精一杯でそれ以外の場所で発達障害特性がでてしまう、飲み会や遊びの誘いを断ることも)いろいろな選択肢を利用して健常者・定型発達者を装い、振る舞い、

(上に書いた数々の努力により)精神障害者保健福祉手帳を持っていることを勤務先に隠して、一般枠で働く当事者も存在するからである。吃音だって上手く吃らずに話す方法を編み出して頑張っている人が精神障害者保健福祉手帳を取得することはできるはずなのです。

ここに「費用対効果」という価値観が入ってきてしまうのは悲しいことだと考える。この考えが拡大していくと軽度吃音者は精神障害者保健福祉手帳を取得できません。手帳申請書類を医師が書きません!! などという日本社会に発展する可能性もある。また発達障害者も一般枠で働ける人には精神障害者保健福祉手帳を交付しません!という日本社会に発展する可能性も考えられる。

吃音も含む発達障害は学校や職場だけ「障害特性」が表出しなければいいというものではない。日常生活も、毎日の終わりの飲み会や遊びのお誘いも、買物、銀行、役所の窓口、友人との電話、家族や親戚とのつきあい、御近所付つきあい、パートナーとの時間、余暇活動などどこの場面でも困ったことがあれば精神障害者保健福祉手帳を取得できる。こういった価値観が吃音業界にも、吃音を診療する医師にもひろがってほしいものですが…。吃音業界はあくまでも学校や職場という想定ばかりなのが気になるところだ。

吃音を含む発達障害を一般の人が体験できるシステムができればと思う。発達障害については最近、その世界を体験できる方法が開発されたが、吃音の場合はまだまだ難しい。口が動かない、喉を締められている、頭のなかで何かが衝突している、話したいことを話せない。こういったことが365日、いつどんなタイミングで襲われるのかということである。医療従事者にはこういった「●●障害体験」などは積極的にしてほしいと思う。

2014年7月3日に発達障害情報支援センターの説明に吃音を加えるように指示した、英断した、「英雄の職員」には心から感謝している。あなたのおかげで吃音児者の失われた1X数年に終止符がうたれた。

こういうところを日本経済新聞に取材してほしかったとも思う。



―――診断方法の紹介
費用対効果の語りのあとは。診断方法や治療について書かれている。
診断は患者の年齢もふまえ、音の繰り返し、子音と母音の長さ、単語の途切れなどの症状をみるという。
 子どもの対策では、海外で開発された手法「リッカムプログラム」を使う医療機関が増えているという。環境調整法という子どもが話しやすい環境を整える例についても言及されている。


―――吃音治療ガイドライン作成へ
この記事の本題だと思われる、吃音治療ガイドラインの作成について言及。
 現場では様々な取り組みが進むが、国内の学会などによる治療ガイドラインはまだない。そこで国立障害者リハビリテーションセンターなどは、これらの対策の効果を探る多施設での試験を昨秋始めた。約2年で結果を出し、ガイドラインの作成につなげる狙いだ。
 この分野は専門家不足が指摘されている。実際に訓練などをする言語聴覚士は高齢者施設に就職することが多く、吃音に対応できる人は少ないという。森部長は「十分な対策をとりたくてもできない」と話す。
 悩みのある人は耳鼻科医や言語聴覚士に相談することになるが、診断や訓練などを十分に受けられないことも多い。受け皿の整備が求められている。
吃音の治療ガイドライン作成。これは一定の評価はできる。
吃音が治療できるなら、筆者も治したいものである。
ただ、問題なのは吃音はそもそも全員が全員治るものなのか?
ある一定の年齢でなになにをすれば治るものなのか?
それとも何をどうやっても治らない吃音もあるのか?
こういったことも判明していけば嬉しいが。

―――吃音治療ガイドラインだけでよいのか?

吃音を治療するべきだ治すべきだという医学モデル、医療モデルではなく、吃音をもったまま生きていける日本社会の構築も同時にやっていかないとならないだろう。社会モデルである。
吃音でうまく話せないこと、発話発語できないことの不利益は発達障害者支援法や障害者基本法、精神障害者保健福祉手帳、障害者権利条約、障害者差別解消法でも対応できる。

吃音を治療しなければいけないという価値観のガイドラインを作成するよりも。
吃音を診断するガイドラインを作成し、その後の生き方は当事者の自己決定権に委ねるという視点も忘れてはならない。精神障害者保健福祉手帳を取得してオープン就労、精神障害者保健福祉手帳を取得してクローズド就労する際のガイドラインも考えてほしいところである。

もしも吃音は治すものであるという価値観が広がれば、そのうち出生前診断の中に「発達障害があるかどうか」を調べる時代になったときに吃音のある子どもを出産しないということにもつながりかねない。

例えば東京大学、大阪大学、京都大学、同志社大学、早稲田大学などが協力しているこの研究がある。
構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-
http://devsci.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/about

http://devsci.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/archives/42#A01

この研究では各分野の研究者が横断研究をし、発達障害を多角的に解明していくという。
しかし、この研究の目的は発達障害を持った人がこの世に誕生しないように生まれないよにするためではなく、発達障害があってもこういう配慮やこういう方法があって、こうやって生きてけるんだ。と勇気づけるものだという。当事者にも親にもどのような支援が必要?周囲の人はどう接する?という視点だ。発達障害を治すよりも発達障害があってもこうやって生きていけるという視点である。

吃音業界では吃音を治せ。吃音を治せ。吃音を治せ!!!という価値観がまだまだ消えないということである。吃音治療ガイドラインだけではなく、別の視点を入れてほしいのである。吃音業界の医療従事者も上に書いたこういった研究者とつながってほしいと考える。

吃音を持つ子どもの親は保護者は「なぜ。子どもが吃音だと困るんだろう。悲しくなるんだろう。子どもの吃音を治さないといけない」と考えるのか?
親、保護者向けのアンケート調査も必要だろう。
たとえば「お父さん、お母さんの職場では発達障害者や吃音者が働いていますか?」、「働いている人はどのような条件で働いていますか?」、「吃音を持った子どもは不幸だと思いますか?」こういったアンケートを行い、そもそも日本社会が吃音を含め発達障害児者に厳しい価値観なのではないか?という仮定をして問題解決するアプローチがあってもよいのではないか?とも考える。


記事終盤でも
 悩みのある人は耳鼻科医や言語聴覚士に相談することになるが、診断や訓練などを十分に受けられないことも多い。受け皿の整備が求められている。
という書き方がされているが。そもそも吃音のある人は耳鼻咽喉科医師や言語聴覚士に相談するだけで良いのだろうか?発達障害分野につよい精神科医師、社会福祉士、精神保健福祉士などともつながるべきではないか。


―――北里大学東病院について
記事終盤は北里大東病院の事例が書かれている。
こちらは大人の場合という内容である。
吃音について治療のマニュアルはないというのが印象的だ。
それでも少しでも吃らないように、吃りを減らせるようにというのは吃音当事者の切実な願いだろう。
北里大東病院を訪れる人が存在するということは、吃音を持ったままでは生きられない、日本社会が吃音を許容していないということがうかがえる。



■2 日本経済新聞の吃音記事 この研究はどの組織がやっているの?
日本経済新聞を読んだだけではわかりませんでした。
調べた結果
発達性吃音(どもり)の研究プロジェクト
http://www.kitsuon-kenkyu.org/
というグループが行っていたということがわかりました。

―――構成メンバーは?
メンバーは以下の通りです 2017年9月18日閲覧時点
氏名所属担当
研究代表者森浩一国立障害者リハビリテーションセンター全体統括/青年~成人期の治療研究
研究分担者原由紀北里大学疫学調査/介入研究
宮本昌子筑波大学疫学調査/介入研究
小林宏明金沢大学疫学調査/介入研究
菊池良和九州大学病院疫学調査・介入研究
酒井奈緒美国立障害者リハビリテーションセンター疫学調査統括・青年~成人期の治療研究
見上昌睦福岡教育大学ガイドライン作成
前新直志国際医療福祉大学ガイドライン作成
川合紀宗広島大学ガイドライン作成
坂田善政国立障害者リハビリテーションセンターガイドライン作成/介入研究統括
北條具仁国立障害者リハビリテーションセンター青年~成人期の治療研究統括
金樹英国立障害者リハビリテーションセンター合併症への対応
研究協力者大野裕国立精神・神経医療研究センター認知行動療法に関する助言
堀口寿広国立精神・神経医療研究センター啓発活動に関する助言
須藤大輔薩摩川内市鹿島診療所疫学研究に関する助言
宇高二良宇高耳鼻咽喉科疫学調査

構成メンバーは主に、吃音業界で吃音研究をしているおなじみの人達だ。
ただ、発達障害を専門するに著名な医師や社会福祉士や精神保健福祉士養成学校の教員、
社会学者の参加はない。ソーシャルワークについて研究やガイドラインは作成しないのだろうかと心配になる。あくまで吃音を治療することが重視されているようだ。
また就労移行支援などの視点も不足しているように見受けられる。

―――研究予算はどこが出している?
この研究予算は国立研究開発法人日本医療研究開発機構  
http://www.amed.go.jp/

から出ている。

詳細は平成28年度「認知症研究開発事業」「長寿科学研究開発事業」「障害者対策総合研究開発事業」の採択課題について の中にある。
障害者対策総合研究開発事業→(イ)感覚器障害分野→発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一

http://www.amed.go.jp/koubo/010420151125_kettei.html

と説明がある。


―――この研究の目的は何?
この研究の目的については
ホームページにこのように書かれている。
研究の詳細 http://www.kitsuon-kenkyu.org/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E8%A9%B3%E7%B4%B0/

1) 幼児吃音への支援ガイドラインの作成
1a) 幼児の疫学調査
幼児吃音への早期介入システムの開発
1b) 幼児の介入研究
1c) 合併症のある幼児の対応
2) 中高生・成人の認知行動療法による治療
2a) グループ訓練
以上が行われるという。

メインは幼児期の吃音について子どもや保護者向けに支援するようだ。
吃音児への早期介入システムも開発するという。
ここがX歳までになにかをすれば吃音が消失または寛解するというところだろう。

合併症がある子どもへの対応であるが。こう書かれている
吃音のある幼児さんの中には、自閉スペクトラム症や注意欠如多動性障害(ADHD)、構音障害といった他の難しさを併せ持っているお子さんが少なくありません。幼児の介入研究を行う中で出会う、このような合併する問題があるお子さんの経過や、研究班のメンバーのこれまでの臨床経験、文献レビューをもとに、合併症のある幼児の対応に関するガイドラインを作成することも、本研究では目指しています。
まずは子どもへの対応であるが。しかもこれだと、吃音を主訴にした子どもに他の発達障害や症状があった場合に読める。例えば(耳鼻咽喉科ではなくて精神科病院などで)発達障害を先に発見された子どもに吃音があった場合の展開を想定していないように見受けられるので、国リハの精神科医師1人だけではなく、このような部分はなおさら、発達障害に強い精神科医師が入るべきだと思う。吃音を普段研究する環境から作るガイドラインでは不足である。発達障害児者を診療する精神科医師も入るべきだと考える。

もちろん幼児だけではなく、成人している吃音者の中にも「発達障害」を持った人いるのではないか?という研究もしてほしいところ。ここは吃音業界の派閥抗争、戦争、当事者会分裂、当事者団体分裂、ソーシャルワークの失敗を含めて研究してほしいものなのだが。今回の研究グループのこのような危機感を持った研究者がいないことが残念である。

そもそも厚生労働省もこのように調査をしている
平成28年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業指定課題15「発達障害当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」を委託し、結果がでている。
http://jdda.or.jp/info/chousa2016_15.html

なかでは当事者会運営における、トラブル。運営スタッフ内の喧嘩や主義主張の違い、結果的に団体を分裂させる、発展的解消と称して会を潰す、発達障害者どうしのトラブルを第三者機関が仲裁するというサービスを希望する当事者の声も聞かれた。しかし、この話を聞いていて思うのは吃音業界が1960年ころから繰り返している歴史だということがよく理解できるためである。発達障害者の間で起きているトラブルはそもそも吃音業界が昔むかしからやっていることなのだ。

●「発達障害当事者同士の活動支援のあり方に関する調査」に関連する報道
発達障害 85%が「就労支援必要」
 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14HC0_U7A710C1000000/

「本人が自覚していないと周りが振り回される」「事務作業が苦手」大人の発達障害当事者会で見えた課題 池上正樹
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakiikegami/20170731-00073946/

「大人の発達障害」当事者会の国内初の調査報告 参加者は30~40代男性が突出
池上正樹
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakiikegami/20170705-00072937/

大人の発達障害、悩み話し合う 当事者の交流必要 初の全国調査 /東京 
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170819/ddl/k13/040/011000c

全国の発達障害当事者会が一堂に会する日本初のフォーラム!〜発達障害当事者会フォーラム2017〜 りたりこ発達ナビ
https://h-navi.jp/column/article/35026532



―――2) 中高生・成人の認知行動療法による治療 2a) グループ訓練
について。
ここでも吃音を治すことについて重視されている。
これも仕方ないのかもしれないが…。

例えば、就労移行支援事業所やどのような合理的配慮があれば吃音者と一緒に働けるのか?という雇用する側、一緒に働く側のことについて触れられていないのだ。吃音のある人同士の訓練や吃音を治療する医療従事者との訓練だけだと実社会では使えない可能性もある。吃音者と医療従事者以外がいることにより、より実社会に近い状態になるわけである。

また、実社会でも、無理に発語発話するよりもテキストチャットやメール、筆談してほしいという要望もあるだろう。

この部分も今後、もっと別の視点がある研究者が加入して方法を編み出してくれると期待する。




以上
2017年8月7日 日本経済新聞の記事を読んで思うところである。




「吃音」幼少期20人に1人 治療ガイドライン作成へ
2017/8/7付 日本経済新聞 朝刊

 話すときに言葉がつまったり同じ音を繰り返したりする「吃(きつ)音」について、実態調査や有効な対策を探る動きが進んでいる。幼少期には約20人に1人にみられ、そのうち約7割は自然になくなるといわれるが実態はよく分かっていなかった。学校など日常生活を過ごしやすくするための明確な治療ガイドラインもない。担当できる専門家の医師や言語聴覚士が少なく対策が遅れていた。
 吃音は専門家の間でも病気や障害としてのとらえ方や、治療や対策の考え方に違いが出る難しい分野だ。世界保健機関の定義をもとに、厚生労働省は吃音症という病気の分類を設けている。これに沿って診断を受けると発達障害者支援法に基づき精神障害者保健福祉手帳をもらう場合もある。
 吃音の症状は「おおおおかあさん」などと音を繰り返す、言葉につまる、「ぼーく」などと言葉を伸ばすことが代表的だ。自身が吃音の九州大学の菊池良和助教は「頭の中では話しているつもりだが、タイミングがあわず、つまった感じになる」と説明する。
 いつも言いよどむわけではなく調子の波がある。周囲にも左右され、誰かと一緒に同じ文章を読んだり、メトロノームに合わせて文章を朗読したりすると症状が出ないことも多い。
 原因は遺伝的な要因や脳の機能障害なども指摘されているが、明確には分かっていない。緊張や不安、ストレスは原因ではないが、症状が悪化する要因になると考えられている。
 2~4歳から症状が出始め、幼少期は20人に1人にみられるが、約7割は3年ほどで自然になくなる。成人になると100人に1人になるともいわれている。だが国内の実際の対象者数はきちんと調査されていなかった。
 そこで国立障害者リハビリテーションセンターが中心となり、3歳児健診などの際に吃音を調べる調査を昨夏から始めた。自治体と連携して親にアンケート調査をし、必要ならば面談もする。言葉の繰り返しの状況などを確認する。4カ月ごとに質問用紙を送り、計2000人を調べる。
 調査期間は2年。今年3月の集計では約5%が吃音と推定された。同センターの森浩一部長は「幼児全体では5%よりもっと多いと考えている」と話す。調査を続けると増える可能性があるとみている。
 一般に、8歳になるころから、症状はなくなりにくくなるといわれる。早期に日常生活の対策となる訓練を受ける必要性が指摘されている。森部長は「半数以上は自然になくなるため、支援のかけすぎという声もある。費用対効果を考えて、最適な介入のタイミングを調べたい」と話す。
 診断は音の繰り返し、子音と母音の長さ、単語の途切れなどの症状をみる。幼児や小学生、中学生以上と年齢に合わせて検査する。
 子どもの対策では、海外で開発された手法「リッカムプログラム」を使う医療機関が増えている。家庭で吃音の子どもの発言に対して声をかけていく方法だ。
 流ちょうに話せたときはほめたり、「いまのどうだった」などと自身の評価を聞いたりする。明らかにつまったときなどには「ちょっと疲れてたね」などと指摘し「さっきのすらすらでどうぞ」と言い直しを促す。指摘よりも褒める頻度を増やすことが重要ともいわれる。言語聴覚士がかける言葉の内容やタイミングなどを家族に定期的に助言しながら進める。
 国内では以前から「環境調整法」と呼ばれる方法が使われている。子どもが楽に話しやすい環境を整えることで滑らかに話す力を伸ばす。症状に合わせて、吃音が出にくい話し方の練習も組み合わせる。
 九大の菊池助教は「話し方をアドバイスするのではなく、話を聞いて内容に注目して自信を育ててほしい」と指摘する。家庭で子どもが話せずいらいらしていたら、順番に話すなどの工夫で話す意欲を育てる。
 現場では様々な取り組みが進むが、国内の学会などによる治療ガイドラインはまだない。そこで国立障害者リハビリテーションセンターなどは、これらの対策の効果を探る多施設での試験を昨秋始めた。約2年で結果を出し、ガイドラインの作成につなげる狙いだ。
 この分野は専門家不足が指摘されている。実際に訓練などをする言語聴覚士は高齢者施設に就職することが多く、吃音に対応できる人は少ないという。森部長は「十分な対策をとりたくてもできない」と話す。
 悩みのある人は耳鼻科医や言語聴覚士に相談することになるが、診断や訓練などを十分に受けられないことも多い。受け皿の整備が求められている。

■大人の対処法 悩みにあわせ練習提案
北里大学東病院では、その人にあった練習法で支援
 「『いらっしゃいませ』や『ありがとうございます』がうまく言えない」。北里大学東病院を受診した吃音の人の悩みだ。アルバイトを始めたが、流ちょうにあいさつできないときがあり、このままでは仕事に支障があると考えて来院した。

 中高生や大人になると、吃音の対策は、実際に社会生活で言えなくて困っている言葉や苦手な場面でも話しやすくする訓練をするのが中心だ。電話や面接での名のり方などそれぞれ言いたいことがうまく言えなかったり苦手に思ったりして悩んでいる。それを聞き、症状や悩みにあわせた練習方法を提案する。

 練習の基本は力を抜く、話す速度を変える、息の吸い方を変えるなどがあり、試しながら、その人にあった方法を探ることになる。同病院の言語聴覚士、安田菜穂さんは「吃音の治療にマニュアルはない」と話す。

 国立障害者リハビリテーションセンターなどは、中学生以上を対象に認知行動療法を生かしたグループ訓練法を開発した。5~6人のグループで週に1回、約3時間かけて話す訓練などをする。例えば、言葉が滑らかに出てこなくても、やめずに続けて話すようにする。今年からこの訓練法の臨床研究を始めており、2020年度まで実施して効果を探る。

https://style.nikkei.com/article/DGXKZO19661070U7A800C1TCC001?channel=DF140920160921

2017年8月8日火曜日

2013年に北海道とは別件で吃音者が自死していたことがわかりました

悲しいお知らせです。
心よりご冥福をお祈りいたします。

2013年は北海道の吃音看護師さんの自死がありましたが。
まさか東京(千葉)でも吃音者の自死があったとはショックです…。



詳細はバズフィードジャパンより 全文はリンク先で
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.ssj0RPqpp#.xbRmnv4xx

製薬会社・ゼリア新薬工業に勤めていた男性Aさん(当時22歳)が、新入社員研修で「過去のいじめ体験」を告白させられ「吃音」を指摘された直後の2013年5月に自死し、「業務上の死亡だった」として2015年に労災認定を受けた。
Aさんの両親は8月8日、ゼリア新薬と研修を請け負った会社、その講師を相手どって、安全配慮義務違反や不法行為に基づく損害賠償、約1億円を求める訴訟を東京地裁に起こした。千葉県在住の父親(59歳)と代理人の玉木一成弁護士が厚生労働省で記者会見し、明らかにした。
何が起きていたのか。
中央労基署の認定によると、労基署が注目したのは、4月10日〜12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんはこうした話をさせられていたという。
Aさんは、研修報告書に、次のように書き残していた。
「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」
「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になってその後何をどう返答したのか覚えていません」
「涙が出そうになりました」

2017年7月26日水曜日

記事紹介 障害は個性???

Facebookから気になる投稿がシェアされてきたのでご紹介します。
吃音業界でも吃音は個性、武器といわれることがありますよね…。


2017年5月8日月曜日

沖縄県沖縄市の障害福祉課が吃音は精神障害者保健福祉手帳が取得できると市民の声で回答

沖縄市役所 障がい福祉課 給付係の市民の声への回答を掲載する。
吃音が発達障害者支援法に含まれており、発達障害者として精神障害者保健福祉手帳が
取得できるということが市役所レベルでも周知されてきているようだ。これはとても良い流れだ。

2017年01月05日 精神障害者保健福祉手帳についてというURLだ。
http://www.city.okinawa.okinawa.jp/voice/c/17/d/11519

 ご質問内容

吃音症という症状を持っています。
外見ではあまり分からないものですが、仕事の際に支障を感じており、職場を転々としている状態です。
吃音ではどの程度の症状の人が手帳の申請をできるのでしょうか。
 
 ご回答内容

こんにちは。回答が遅くなり、誠に申し訳ございません。
ご質問のありました件について回答させていただきます。

精神障害者保健福祉手帳の申請に関しては、専用の診断書を病院(精神科、心療内科など)の主治医に書いていただく必要があります。
「吃音症でどの程度の症状が手帳に該当するか」というご質問ですが、沖縄県の担当者によると、「提出された診断書の内容を総合的に判断するため、診断書をみてみないと判断できない」とのことでした。
日常生活や社会生活にどのくらい支障があるのか、ということを診断書で判断するようです。
申請は診断書があれば可能ですが、初診日から6か月以上経過している必要があります。役所で申請後、沖縄県の審査会で手帳の承認・不承認が判定されます。
また、障害年金をもらっている場合は、障害年金証書(精神障害の事由によるものに限る)で手帳を申請することも可能です。

ご不明な点などありましたら、下記までお問い合わせください。



沖縄市役所 障がい福祉課 給付係

2016年12月10日土曜日

【保護者・当事者必見】吃音者、吃音の子ども、病院にいくタイミングとは 障害者手帳を取得するタイミングとは デメリットは何?初診日問題について

この記事は長文です。関連リンクなどを含めると1時間程度必要となります。
自宅など、リラックスして余裕があるときにお読みください。


保護者の方、当事者の方へ。
吃音業界では知られていない。または隠匿されている現実を書きます。


下記リンク 時間がある時にお読みください。
【別記事紹介】【保護者必見】吃音の子どもを育てる立場の人はどうしたらいいのか?どうやって合理的配慮を発動する? 保護者に向けたガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016/11/blog-post.html
【必読】はじめて吃音を知った人へ 吃音・吃音業界と関わる上で絶対に知っておくべきこと 大切な吃音ガイドラインhttp://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html
具体的に吃音で精神障害者保健福祉手帳を取得するために必要なこととは?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/07/blog-post.html
吃音至上主義(きつおんしじょうしゅぎ)とはなんですか? どんな差別主義ですか?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/12/blog-post.html
2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2015/11/2013.html
【自殺に至るまでの記録】吃音が含まれる労働保険審査会資料を精神障害の件、自殺の件 2件紹介
https://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/06/2.html

この記事は最初に「初診日問題」という発達障害業界では当たりまえに知られていることですが、吃音業界ではほとんど知られていないことを扱っています。

記事については【随時更新】しています。

記事前半はデメリットのこと。
記事中盤は吃音者が取得できる可能性のある障害者手帳のお話です。
後半は「吃音があるとわかった場合、吃音以外の発達障害もあるかもしれない?」と考える時間の大切さについて解説します。

吃音者、吃音のある子ども。発達障害者、発達障害のある子ども。(自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群・広汎性発達障害、高機能自閉症)やADHD、学習障害、チック・トゥレット症候群などの発達障害)
いったい、いつ、どのようなタイミングで病院に行けばいいのでしょうか?
障害者手帳はいつ取得すればいいでしょうか?

という話をこの記事でまとめようと思います。

まず最初にみなさまに必ず知っておいてほしいこと。
吃音を病院で診療してもらうことのデメリットです。

この投稿はとても重要なことです。
しかし吃音業界ではこのことがあまりにも周知徹底されていません。筆者は驚愕しています。
吃音を診療する医師や医療従事者も「気軽に吃音のことで病院に行きましょう。相談しましょう」などとアドバイスをしてしまう人もいます。


子どもの吃音で1回でも病院に行ってしまうとどうなるのか?
すでに子どもを病院につれて行ってしまった保護者。
大人の吃音者にはとても厳しい内容が書いてある記事になります。
精神的に大変ショックを受ける場合もあります。

ではこれから下に記述する数々の問題・課題をどう解決するか?後述する障害年金格差は障害者の権利に関する条約にある「平等」な状態とはいえません。それは吃音者や家族だけではなく、他の障害者・当事者や家族や団体と協力して国の政治や企業団体に変化してもらうように運動することです。吃音者が困っていることは吃音者だけが困っていることではないからです。



■1.吃音・吃音以外の発達障害を病院で診療してもらうことのデメリット (吃音も含めて障害者手帳をもらう以前)
とても重要なことです。
まず、日本では「初診日」が発生します。

初診日とは患者がその症状を訴え、障害の原因となった病気や怪我について初めて医師又は歯科医師の診断を受けた日です。しかもたとえその医師が誤診して他の病気だとカルテに記入してもその日が初診日になります。

しかも、この初診日とは診療する医師の担当科は関係ありませんのでご注意を。吃音の場合は耳鼻咽喉科と精神科で初診日が違うのでは?と勘違いする人がいるためです。また、吃音はICD-10コード「F00-F99 精神および行動の障害」の中に含まれているため、法制度上も精神障害者(発達障害を含む)ということになります。


「吃音は障害ではありません。ましてや発達障害ではありません。可哀想な障害者ではありません。頭のオカシイ、犯罪を起こしても無罪という精神障害者や発達障害者と一緒にしないでください」と差別発言を繰り返す吃音当事者や保護者も残念ながら存在しますが。 診断コードにおいて吃音は精神障害扱いです。

ICD-10コード一覧 (東京大学)http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/icd10/
※現在、アメリカ精神医学会の2013年発表DSM-5において、よりいっそう明確に吃音は「神経発達障害」であると分類されました。
※2018年現在、日本精神神経学会がICD11の邦訳案を公開しました。ここでも吃音は「神経発達症群」とされました。より明確に吃音が発達障害の一つの特性であるとされたことになります。
https://www.jspn.or.jp/modules/info/index.php?content_id=622

しかし吃音業界は日本精神神経学会のパブリックコメントに反応せず無視した経緯があります。他団体はしっかり団体として呼びかけや行動をしています。
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.com/2018/06/blog-post.html 


この初診日が一般に言われる発達障害者、吃音者、吃音のある子どもにどのようなデメリットになるのでしょうか?

1. 初診日が国民年金を納付する前にあれば、国民年金の障害年金等級(1級、2級)しか申請できない。厚生年金の障害年金で3級程度の障害や困り事があっても国民年金の障害年金に3級は存在しない。

2. 初診日が厚生年金を納付している時であれば、厚生年金の障害年金等級(1級、2級、3級)と国民年金の障害年金等級が該当すれば両方受給できる。事例として成人して厚生年金などの保険料を納付している場合に初診日があれば厚生年金と国民年金の障害年金2級がダブル受給(およそ毎年120万円程度)できるのです。大人になってから運良く厚生年金などの初診日を持っている状態の発達障害当事者はダブル受給している人がいます。生活はとてもラクになります。

3. 厚生年金の3級は配慮があれば仕事ができる程度なので、多くの軽度吃音者はこの部分に該当する。

・健康告知が必要な商品やサービスに加入できない。
●●共済、生命保険、住宅ローンなど健康告知、健康診断、病歴、通院歴を告知する商品に加入できない。
吃音のある子ども、吃音のある大人の家族である。お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、親戚など健常者の人が加入できる1番最高ランクの商品には加入できない。他のグレードの、病気のある人向け、障害者向けの商品には加入できる可能性がある。



この3つが、一生死ぬまで、その吃音者、吃音のある子ども、発達障害者、発達障害のある子どもについてまわります。
よく吃音について書かれた書籍で医療従事者・医師や言語聴覚士などが「幼少期に気軽に病院に行ってみよう。相談しよう」と保護者に思わせるような記述が多く見受けられます。学校で合理的配慮を受けるために、ことばと聞こえの教室に行くために、英語検定試験や高校入試や大学入試で合理的配慮を受けるために、国家資格取得のための試験で合理的配慮を受けるために医師の診断書が必要な場合があります。

しかし「診断書や意見書」を書くということはその医師が「この人は吃音であると診療してしまい、カルテに書いている」のです。そのためこの診断書や意見書を書いてもらう以前に初診日が確定してしまっているのです…。

吃音のある人を診療する療育する立場の人、上手く話せるように訓練する、医療従事者の人、支援者の人の中には

とても気軽に

病院に行きましょう お医者さんに相談しましょう 言語聴覚士に相談しましょう

とアドバイスをする人も存在しますが。
よく考えてください。
お父さん、お母さん、よーく考えてください。


はい。残念ながら、その時点で「初診日」が発生しました!!!
ということになっていまします。


障害年金は、現在、大人の発達障害と言われる、大人になってから発達障害が発見され、運良く仕事をしていて厚生年金保険料を納付しているときに初診日がある当事者は、『厚生年金の障害年金3級を貰いながら、これから仕事や生活ができます』

しかし、大人になってから、発達障害特性で職場でフルボッコにされて退職に追い込まれたあとに病院に行くと、初診日が厚生年金保険料を納付していないので、国民年金扱いの初診日になってしまいます。

現在、発達障害者の中で、障害特性や困り事が全く同様のAさんとBさんがいても、片方は障害年金3級が貰えない、片方は障害年金3級を貰いながら生活しているという収入格差(およそ毎年50万円ほどの3級がもらえていれば一人暮らしできる、職場の同僚とランチや飲み会などにいける、スーツやワイシャツなどをクリーニングにだせる、趣味余暇活動に使えるお金が増えるなどなどの事例)が出てきています。この問題については吃音者だけでは解決できません。他の障害者と協力して政治を動かさないとダメでしょう。国民年金の障害年金3級を創設してほしいと障害者運動をしていくしかないのです。

また、ことばと聞こえの教室など通級指導を利用した履歴でさえ、年金事務所は「そこに通級するということは、子どものときに何らかの障害を疑われていましたよね?その時に初診日があったのではないかと」疑義を呈してきます。年金事務所では疑義が1%でもあると国民年金での申請に切り替えるように指導してきます。そして国民年金の障害年金には等級が該当しませんでした。不受理という結果が告知されます。

吃音のある方で障害年金を申請する場合は必ず精神障害や発達障害に特化した社会保険労務士の申請代行をすることをオススメします。病院によってはソーシャルワーカーが記述内容を考えてくれる場合もあります。くれぐれも個人で障害年金申請はしないでください。将来もらえるはずだったものが貰えなくなる可能性が高いのです。


―――健康告知が必要な商品やサービスに加入できないのは。うつ病の人が健康告知が必要な商品やサービスに加入できない問題と同じです。しかし、うつ病の場合は治ることがあるので、医師が治ったと判断したあと5年くらい待てば加入できる場合もあります。

うつを放っておくと、保険に一生入れない?(加藤梨里 ファイナンシャルプランナー)
http://sharescafe.net/47681033-20160131.html

発達障害の場合は、国際的な診断基準で「障害」とされていますのでそもそも、「治った」という状態が存在しません。もちろん当事者が私は治ったと思っていても、世間の基準、生命保険や住宅ローン会社に属する医療従事者はそのように審査はしません。セクシャルマイノリティの当事者も同じ問題があります。障害や性の特性により、「うつ」になる。結果として自傷行為や自殺リスクが高いというのです。これらも将来、変えていかなければいけないでしょう。 

参考情報
私はワタシ ~over the rainbow~(セクシャルマイノリティの人が出演しているドキュメンタリー映画) http://rainbowreeltokyo.com/2017_sp/program/iam_what_iam_over_the_rainbow


もちろん吃音であることを告知しないでウソをついて、偽って加入することはできるかもしれません。しかしその場合は社会的責任や制裁を受ける可能性があるのでよく考えましょう。



―――吃音を含む発達障害者が加入できる保険は何?

・各保険会社の引受基準緩和型/限定告知型の保険商品

・ぜんち共済
http://www.z-kyosai.com/


・株式会社 ジェイアイシー
http://www.jicgroup.co.jp/index.html



これが吃音で病院に行くことのデメリットです。
障害者手帳を取得するかしないか以前にこんなデメリットがあるのです。
吃音を気軽に診療してもらうために。
学校や試験で合理的配慮を受けるために。
資格取得のための実習の際に合理的配慮を受けるために。
障害者手帳を取得するために。

気軽に病院に行ったがために「初診日」が発生します。
お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、親戚のみなさん。
吃音のある子どもの人生をよく考えましょう。

これらを踏まえると、

吃音があっても病院に行かない、ことばと聞こえの教室など通級にも通わせない。

生命保険など健康告知が必要な商品にはあらかじめ初診日が付く前に加入させておく。
初診日が付く前に子ども時代から入れる保険商品があれば加入しておく。

大人になって厚生年金を納付するときになってから、生まれて初めて病院に行って初診日をつける。そして障害者手帳と障害者年金3級をもらって生きていくというルートが考えられます。


また、運良く、現在大人になって働いているときまでに初診日がない吃音者は厚生年金や共済年金を納付しているときに初診日をつけましょう。吃音を指摘されて勤務先や職場などで精神的に大ダメージ、フルボッコにされていたとしても、初診日を発生させてから辞めましょう。勤務先を辞める、退職したあとに病院にいくと国民年金対象の初診日になってしまいます!


この記事に書いてあることが信じられない!!この記事はウソだ!!

と思う人は保険会社や住宅ローン業界、金融業界などにて営業や審査をしている人が親戚や友人、知り合いがいれば、このことを質問してください。正面からお客様センターに問い合わせるのはNGです。そういった電話での相談ですら、現在はお客様対応の品質改善のためなどという名目・理由で録音されているためです。その業界で働く友人知人に対面した状態で会話して質問しましょう。

現在、生命保険会社の申し込み書類を取り寄せると「精神障害や発達障害がありますか?」という質問項目があります。質問項目ではなく、持っている病気や障害をお申し出くださいという項目に発達障害(          )という場合もあります。

発達障害のある人(吃音を含む)がインターネット上に実名で公開すること。吃音のある人向けの体験談の発表などもそうです。健康告知が必要な商品の加入、加入後の支払いの際に影響が出る場合もあります。病歴・障害を隠していてもいざというときに保険金の支払いなどが実行されない、契約を解約される場合がありますのでご注意ください。


■2.吃音で取得できる障害者手帳とはなんですか?

まず最初に重要なことをお伝えまします。吃音の障害者手帳5級は存在しません。
※最近、吃音で障害者手帳5級を取得しようというデマ、流言飛語があるため。

さて本題に入ります。
吃音で障害者手帳を取得できるというのはなんでしょうか?
この3つがあります。身体障害者手帳4級、精神障害者保健福祉手帳2級、精神障害者保健福祉手帳3級です。

身体障害者手帳の4級は精神障害者保健福祉手帳2級と同程度になるイメージ(あくまで筆者のイメージ)

身体障害者手帳4級   = 精神障害者保健福祉手帳2級
該当する等級無し   = 精神障害者保健福祉手帳3級
・身体障害者手帳4級(家族としか会話ができない)
また身体障害者手帳は『明確な検査数値や可動範囲、喪失など基準があります』
これは言語障害に限らず、どのような身体障害も『この基準を満たしている』ので交付を認めるという形式です。しかし発達障害による精神障害者保健福祉手帳は『日常や学校や職場でどの程度困っているか』が基準になるため軽度吃音者でも取得することは可能なのです。

・吃音を身体障害者手帳に! という意見がありますが。これをしてしまうと軽度の吃音者の選択肢が無くなることになります。なぜなら身体障害者手帳は明確な基準をクリアしなければいけないからです。

・精神障害者保健福祉手帳2級(日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度)吃音が中度から重度、または吃音以外の発達障害を持っている。または適応障害、社交不安障害、うつ病を持っている。

・精神障害者保健福祉手帳3級(日常生活又は社会生活が制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度) ほとんど多くの吃音者はここに当てはまることになります。

・吃音と社交不安障害、適応障害、うつがあれば精神障害者保健福祉手帳2級ということもあるかもしれません。

・吃音と自閉症スペクトラム障害、ADHD、LDなどと併存があれば、精神障害者保健福祉手帳2級ということもあるかもしれません。

・医師に困っていること、不利益があること、過去の辛い経験などしっかり話すことが重要になります。それに基づいて医師は申請書類を書くことになるからです。

・吃音を診療する耳鼻咽喉科医師は精神障害者保健福祉手帳の申請書類の書き方をよく理解していない問題もあります。困っていることの表現が理解できないのです。精神科医師なら困っていることを具体的に文書化することができます。精神障害者保健福祉手帳の基準にあった表現方法を理解しているからです。これにより、本来吃音により精神障害者保健福祉手帳2級が取得できたのに、3級になってしまうということもあります。

  関連記事 吃音による精神障害者保健福祉手帳申請書類の書き方


よく吃音業界・吃音当事者の相談などで言われるデマ、ウソ、誤認識「吃音が軽度だと障害者手帳は取得できない」という情報がある。 いいえ!軽度でも取得できるのが発達障害者支援法による精神障害者保健福祉手帳です!

実は発達障害のある当事者で、全然、発達障害があるように見えないのだけど精神障害者保健福祉手帳3級を持っている人がいます。(初診日の関係で厚生年金の障害年金3級をもらっている人もいます)

その人に言わせれば『私と関わるようになって???なことが日々、徐々にでてきて。3ヶ月くらいすればやっぱり変だ!』と思いますよ(笑)という当事者もいます。吃音者も軽度であれば、すぐに吃音とはバレずに時間が経過してから。ある程度人間関係ができたあとに『以前から気になっていたんだけどさ』とその話し方について質問を切り出される場合もあるかもしれません。


吃音業界では誤解が多くて残念なのですが―。
精神障害者保健福祉手帳3級は発達障害が軽度でも日常生活でも学校でも職場でもどこでもいいので、困っていることがあれば取得できるのです。
吃音業界では本当に腐ったデマが流れています。
精神障害者保健福祉手帳を取得してしまうと、障害者枠でしか就職できない。一般枠は選べないというデマです。


―――とても発達障害が軽度な人でも精神障害者保健福祉手帳を持っている事実 そして精神障害者保健福祉手帳を持っていることを隠して一般枠で働く人もいます
発達障害特性により困っていることをしっかり書いてくれる病院・医師を探すことが大切に! 吃音業界ではこれが隠されています


はっきり言うと、精神障害者保健福祉手帳を持っていても、一般枠で【障害を隠して、定型発達者のフリをして】応募できます。そして応募先にバレなければそのまま採用されて働くことはできます。これをクローズド就労といいます。発達障害があることをクローズで秘密にして働くことです。

逆の場合はオープン就労といい。発達障害があることを応募段階から明かして、障害者枠で働くことを目的とします。オープン就労は応募者自身が苦手なこと、失敗しそうなこと、配慮してほしいことを職場に伝えます。職場の人も発達障害があることを前提に接してくれます。クローズド就労は障害や苦手なことを一切明かせないので、自分で自分を守る、自分が編み出した処世術で乗り切ることになります。

このように一般に言われる発達障害者が、精神障害者保健福祉手帳3級を持っていても、仕事をする際、一般枠で採用・雇用する側に障害者手帳を持っていることを隠して(クローズド)働いていることを考えれば吃音でも、どんなに軽度な吃音でも、困っていることを医師に伝えて、障害者手帳申請書類に書いてもらえれば取得できることは間違いないのです。現状、筆者の知っているA病院は軽度吃音者でも障害者手帳3級を取得できる事例が増えています。吃音業界側の医師は軽度吃音では障害者手帳を取得できないとか、一般枠で働いているなら障害者手帳を取得できないと言う人もいますが。これは大きな間違いです。発達障害者がクローズドで、一般枠でどうやって就労しているのか? そしてなぜ精神障害者保健福祉手帳3級を持っているのか? を理解していないのです。

そもそも重要なこととして、発達障害は365日24時間、いついかなる時でも、障害特性が出る場合もありますし、出ない場合もありますし、学校や職場ではなんとか乗り切れるけど、私生活、日常生活がムリという人もいます。学校や職場で困っていなくても、それ以外で困っていることがあれば、学校や職場において全力で定型発達者を演じるために毎日体力を使い切り、日常が犠牲になっている場合もあります。日常や私生活が大変ということで精神障害者保健福祉手帳を取得できる事例もあります。

たとえば発達障害のある人は、実家で生活している人もいます。なぜなら、掃除洗濯料理ができない、苦手という場合です。ゴミ出し、お風呂の掃除、トイレの掃除、部屋の掃除も苦手です。これが一人暮らしだとゴミ屋敷になります。水道光熱費であったり、役所・自治体の重要書類を紛失したり忘れてしまいます。学校や職場では全力で発達障害特性と戦いながら定型発達者の世界・ルールに適応しますが、それ以外が疲労で手がつかないということもあるのです。

―――発達障害のある人は、毎日体力(ヒットポイント)を使い切る人も
定型発達者の人は日々、365日。毎日、体力・ヒットポイントが100だとして、20から40位を残して生活しています。睡眠をすれば80から100まで回復します。

しかし発達障害のある人の場合、毎日、残りの体力・ヒットポイントは1から10という瀕死の状態です。睡眠をしても50から100くらいと、安定しない回復力です。新しい環境など適応が困難なストレスがあると睡眠をしても効果が少ないという意味です。

発達障害のある人はなぜ体力・ヒットポイントが安定しないのか、毎日瀕死状態まで使い切るのか。
それは学校や職場という定型発達者の世界、ルールに必死に適応するからです。適応しようとするからです。また、身体の「疲れや空腹」を認識できないという特性を持つ人もいます。発達障害のある綾屋紗月さんは「身体が動かない。なぜだ。空腹だったと気付くまでに時間がかかる」という説明をします。

こうしたことが私生活、日常生活に大きく影響します。ゆえに、発達障害によりできないことに私生活、日常生活のことを書けば精神障害者保健福祉手帳を取得できます。診断する医師も、この人は学校や職場で全力で適応している!と知っている一方で、私生活と日常生活がその分割を食う結果になっているとしっかり困りごとをひろってくれるからです。吃音者の場合も、学校や職場で、「普通」と言われる価値観の世界に死に物狂いで適応しているわけですから、学校や職場以外の困りごとで精神障害者保健福祉手帳を取得することは可能なのです。あとはそれをひろって、診断書を書いてくれる理解有る、医師が増えていくことが大切になるでしょう。



発達障害者のクローズド就労の場合
服薬、スマートフォンのアプリ、スケジュール管理、リマインダー、イヤーマフ、静かな環境、人が少ない時間に移動、ソーシャルスキルトレーニング、当事者会で悩みを話す、病院で医師や支援者に相談などなど、余暇活動でストレス発散、仕事や職場ではなんとかなるが帰宅した後は何もできないから家族や他人に助けてもらう、仕事や職場で働く時間の体力・ヒットポイントはあるが使い切ってしまう(仕事や職場以外で定型発達を装うのが精一杯でそれ以外の場所で発達障害特性がでてしまう、飲み会や遊びの誘いを断ることも)いろいろな選択肢を利用して健常者・定型発達者を装い、振る舞い、社会に食らいついているという事例もあります。

(上に書いた数々の努力や訓練、アイテムの利用により)精神障害者保健福祉手帳を持っていることを勤務先に隠して、一般枠で働く当事者も存在します。吃音だって上手く吃らずに話す方法を編み出して頑張っている人が精神障害者保健福祉手帳を取得することはできるはずなのです。


―――吃音も含め発達障害のある人、子どもが利用できるサービス、就労移行支援でオススメのところは?

現在、東京と東京近郊、大阪に事業所を展開している株式会社kaienという発達障害児者に特化した就労移行支援事業を展開している企業があります。ここの経営者は元NHKアナウンサーで家族に発達障害の方がいるということです。東京の自閉症協会会員でもあり、発達障害についての情報ネットワークは豊富です。

ここは発達障害のある人の就労移行支援事業所としてはパイオニアです。就職率、就職後の定着・安定率、就労訓練の厳しさ、発達障害特性に合わせた訓練内容、就労訓練後のアフターサービス、アフターケア、当事者同士や支援者がコミュニケーションできる場の提供などなど。とても充実した内容を行っています。2018年秋頃のNHK発達障害プロジェクトとして約一ヶ月間放送がありましたが、その中でもkaien訓練生、卒業生の映像がありました。kaienが凄いのはkaien独自求人というものを持っていることです。企業団体からするとkaienの訓練を問題なく行えている人材であれば採用したいという本音と建前があるわけで、故に人事採用担当からの信頼があるということになります。それを知っている当事者や保護者はkaienの就労移行支援待機に登録すると人も多いです。就労移行支援事業は自立支援サービスを使っても原則2年しか使えません。だからこそ最初から信頼と実績のあるkaienの利用待ちに登録するという人がいることになります。

また、kaienはHPやTwitterで情報公開をしているように、kaien訓練生は非正規雇用よりも正規雇用される人が多い、2019年現在では最初から正規雇用される事例もある、給与額もある程度良い、その後の出世の事例もあるなど(先程書いたNHKの番組でもkaien訓練生のその後の取材があり、責任ある仕事、出世しているなどが取り上げられていました)

吃音業界では精神障害者保健福祉手帳、発達障害者だと給与が安い、生活できない、結婚できない、幸せになれないなどなどの価値観が満ちていますが、そうではないということです。

事実上のkaien枠と表現してもよいでしょう。ここは吃音のある子ども、大人にも選択肢として覚えておいてほしいところです。

2019年以降、大学や高校の中で「kaien並の就労移行支援、就労訓練をしてきてほしい」という企業団体側の人事採用担当側の本音と建前が(その世界では)強く出てくるようになりました。レベル99の障害者、即戦力の障害者がほしいという本音と建前です。学校の学生支援室やキャリア支援室で、厳しい就労訓練をしてきてほしいというのです。

この理由は新卒障害者採用枠と関連します。採用側としては、kaienで行うようなレベルの訓練や新人研修を負担したくないという本音と建前があります。そして大学や高校で同レベルの訓練をやってほしいということなのですが。ここが現在、自立支援受給者証では対応できません。すべて自費です。ここが空白の、支援が行き届いてないところです。kaienでも学生向けサービスガクプロを行っていますが。こちらは全額自己負担です。これは自立支援サービス、受給者証の法律の問題であり、現在はどうしようもありません。

―――吃音の当事者は新卒障害者枠を狙え そしてみんな違ってみんな良いがまだまだ本音と建前であること

現在、身体障害者手帳を持った人の就職活動戦線は完全な売り手市場です。
しかし法制度が法定雇用率を徐々に引き上げて行くと、身体障害者のみでは達成できなくなります。そのため次に熱い視線が向けられているのはkaienのような厳しい訓練を受けたことがある発達障害者です。なおかつ新卒であれば強いです。そのため、新卒就活は一般枠と障害者枠を同時で行えるように逆算して精神障害者保健福祉手帳を取得しておく必要があります。一般枠での就職活動に失敗してから精神障害者保健福祉手帳を取得して障害者枠を検索してもすでにその年度の応募が締め切られています。障害者枠採用も一般枠と同じタイムスケジュールで行われているからです。一般枠で就職活動失敗してから障害者枠にいく場合は就職活動留年をするほうがよいかもしれません。一生に一度しか使えない新卒カードだからです。

吃音の当事者や保護者はよく間違えてしまうのですが、障害や病気をカミングアウトすれば採用される!!と思い込んでいることです。これは現在間違いであるとされています。まず企業や団体は病気や障害がある人を雇用したくないのが本音と建前になっています。そこで吃音者が一般採用枠で『吃音がありますが就職したいです。吃音があってうまく話せませんが、営業職や接客をしたいです』と言ったところで採用はとても困難です。しかし、吃音業界では、運良く、たまたまその人の環境やコネクションの強さで一般枠で採用されている人がおり、その人物が後輩吃音者や吃音のある子どもに『吃音をカミングアウトしても大丈夫だよ。吃音は障害じゃないよ。堂々とどもって仕事しよう』などと教えていることがありますが。これは発達障害のある人の就労移行支援事業を行っている企業団体からすると驚愕の内容です。吃音のある子どもの保護者の人は、保護者自身が所属している企業団体の人事採用担当にその部分を確認したほうがよいです。実際のところどうなっているのかという部分です。そうすれば一般枠でカミングアウトすることがどれだけ危険なことなのか判明すると思います。

kaienについても、LITALICOについても、その他の就労移行支援事業所でも障害を1%でも開示する、合理的配慮を希望する場合は障害者枠で応募すること、一般枠でそうすると貴意に添えない結果になりやすいと訓練生、利用者さんに教えています。LITALICOワークスでは職場での合理的配慮ガイドブックを公開しています https://works.litalico.jp/interview/consideration/ 障害当事者と支援者と採用側で覚書のように合理的配慮事項を文書化して3者間で保存するということです。

就職の場合の合理的配慮は、お客様として、学生としての合理的配慮とは異なるため、現在このようなことになっていると推測できます。お客様や学生の身分ならほぼ、可能な範囲での過度の負担にならない合理的配慮は実現されます。それはお客様と学生という身分はお金を落としてくれる、支払ってくれる立場だからです。これが企業団体が、採用側が当事者に給与を支払うという立場になると大きくかわります。給与という形式でお金を払う以上、過度な過重な負担や無茶な合理的配慮を要求してくる応募者を採用しないという本音と建前があるためです。合理的配慮することが多いならば面倒だから不採用ということになるのです…。 吃音業界によく見られる一方的な合理的配慮要求は実現困難です。

2018年財務省が障害者採用募集案内にて表記が差別であると障害者団体に抗議された事案がありました。毎日新聞記事https://mainichi.jp/articles/20181027/k00/00m/040/124000c

しかしこれは実際のところ発達障害者の採用や精神障害者の採用を行う人のための講演会やセミナーなどで、しかも独立行政法人が行うセミナーでも『障害者雇用をしたい人事採用担当者向けセミナー』で説明することがそのまま表現されていたわけです。財務省担当者も独立行政法人の説明をバカ正直にそのままコピーしたのが実際のところです。これは独立行政法人だけに限らず、就労移行支援事業所、社長や企業団体側に近い社会保険労務士は熟知していることです。要は「雇用するメリットがある障害者と雇用しなくてもよい障害者」を見分ける、ふるい落とす手法が開発されていることになります。そのバカ正直な本音と建前を障害のある当事者に、別の方向から教えてくれるのがまだマシな就労移行支援事業所でしょう。就労移行支援事業所でも独立行政法人のセミナーでもそうですが、『イベントや講演会の対象が障害当事者の場合』と『イベントや講演会の対象が人事採用担当者の場合』ではまったく正反対の説明をしているので、本当に辟易します。むしろ発達障害当事者や吃音当事者、保護者はなんらかの方法で『人事採用担当、障害者雇用担当者向けのイベントや講演会』に出席してみることをオススメします。本当に驚くでしょう。採用する方は本当にレベル99の、可能なら新卒、あまり合理的配慮しなくてよい障害者を探しているのか。そしてどんなに軽度でも困りごとが少なくても障害者手帳を持っていること法定雇用率に計算できること。こういったことが説明でされるからです。

例えば発達障害のある人、精神障害のある人の最低採用基準は『自力通勤できる、障害を受容している、自分の取扱説明書を書ける、月イチで通院している、服薬があればしっかりしている、勤怠が安定している、過度な過重な要求をしない(例 吃音なのに営業をしたいとか話すことが多い仕事を要求するとか)、就労移行支援事業所に通所した実績があるか、いつでも相談できる支援者(就労移行支援事業所職員やジョブコーチ)がいるか、軽度でも障害者手帳を持っている法定雇用率に計算できる、仕事をするという場合の合理的配慮とは何かを知っている、合理的配慮の話し合い落とし所が理解できる、一方的な合理的配慮をつきつけてこない』などなどが実現できるなら採用しなさいと教えているからです。ここが吃音当事者の一般枠カミングアウトが不採用になりやすいことにリンクします。

※過度な過重な負担とは?
  
事業活動への影響の程度
吃音のある人の場合、無理に営業職や会話、コミュニケーションが必要な職種をしたいという希望が多々あるが、それを実現できるか。否か。発達障害当事者なら自分のできないことできることを障害受容しており、まずは仕事、職場に慣れること、実績を出すことが要求されます。その後上手くいけば徐々に仕事の幅が広がる可能性も。
  
実現困難度
当事者の要求する合理的配慮ができるのかどうか。合理的配慮をするために、支援する立場の社員、職員が、設備が、コミュニケーションのルールがなどなどが実現できるかどうか。発達障害のある人の中に感覚過敏の人がいる。この場合、業務中にノイズキャンセリングイヤホンやヘッドホンの着用を許すかどうか。時間差通勤を許すかどうか。時間差通勤をすることにより実際に一般枠の人が勤務する時間からズレるため、1日の業務の流れに影響がないか。

費用・負担の程度
例えば身体障害者の場合、その人一人のためにエレベーターなどを設置できるのか。そのような余裕がお金があるのか? 発達障害のある人がクールダウンする部屋。静かな部屋を用意できるのかなどなど。

企業・団体の規模・財務状況
これはズバりそのものです。規模や財務状況が合理的配慮のための費用を賄えるのか。


これらは障害者雇用促進法にて『合理的配慮は当事者と事業主が話し合い実現可能な部分で行われる』とされているからです。これは障害者差別解消法の考え方とは少し異なります。お客様としての、学生としても立場の合理的配慮とは異なっているのです。

吃音のある子どもの保護者さんの本当の不安とは、『本音と建前の部分』だと思います。日本社会の常識やルール、慣習、保護者さんが実際に勤務している企業団体が障害者をどうあつかっているか、日本社会が障害者をどうあつかっているか。保護者のみなさんはこれらを本当は知っているから、吃音は障害じゃない、吃音を治さなければ、吃音のある子どもがかわいそう、吃音を障害にしてはいけないなどなどの考えがでてくるのも本音と建前(保護者さんの勤務する企業団体が障害者をどうあつかっているか、親戚親類が障害者をどうあつかっているか、日本社会が障害者をどうあつかっているか)の実際を知っているからではないでしょうか?

実際問題、現実はこうなっていますが。ここは吃音以外の障害者団体などと協力して日本社会や法律そのものを変化させていく運動していくしかないでしょう。100年後なのか、それ以上なのかわかりませんが、社会や価値観を変化させていくこともしていかないとなりません。



―――最初に吃音の手帳の等級イメージについて述べました。
しかし『吃音で身体障害者手帳を取得すること』は困難です。

現在、吃音とはそもそもICD-10という診断基準で「Fコード」で始まるため、都道府県(例 東京なら 東京都心身障害者福祉センター)、政令指定都市などの障害を審査する部署が吃音を受け付けない。そもそも身体障害者福祉法別表に吃音は明記されていない、さらにFコードである「F98.5 吃音」を身体障害者福祉法で対応するのは困難である。FコードとはF00-F99 精神および行動の障害とされているためです。市区町村の申請窓口にいっても吃音は身体障害者手帳ではないと言われる可能性もあります。

この点は2016年10月22日に厚生労働省の発達障害対策専門官 日詰正文氏が指摘している。吃音で身体障害者手帳を取得するなら、吃音とは書かないで、上手く話せないことを医師に表現してもらうことを指摘した。
2016年10月22日の講演会詳細
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2016_10_01_archive.html
講演会詳細 ハフィントンポスト版
http://www.huffingtonpost.jp/takahiro-koguchi/disfluency_b_12614138.html


―――身体障害者の診断をする医療従事者もリスクは避けたい!

身体障害者手帳申請書類を書く、身体障害者福祉法第15条指定医師も『吃音で身体障害者手帳を交付させる書類を書くのは、リスクがあるので、断る』ということも考えられます。15条指定医という資格を剥奪されるかもしれないような危ない橋は渡らないということです。また、医師が記入する障害者手帳申請書類を自治体の担当する部署が吃音ではそれを渡さないということもあるでしょう。精神障害者保健福祉手帳の申請書類で書いてくださいと言われることもあるでしょう。

ゆえに、現在、運良く吃音で身体障害者手帳4級(更新無しの場合)を交付されている当事者はそれを亡くなるまで大切にしましょう。


■3.吃音がある場合、子どもに吃音がある場合。その他の発達障害、自閉症スペクトラム、ADHD、LD、チック、トゥレット症候群、発達性協調運動障害があるかもしれない


別記事 吃音至上主義とはなんですか?


現在、発達障害を研究する人、発達障害の診療をする医療従事者が説明をよくするようになった発達障害が1つだけの純粋者は少ないことという情報です。これは、吃音のある人、吃音のある子どもは、『吃音の診断を受けた』のかもしれませんが。もしかしたら他の発達障害もあるかもしれません。2つなのか、2つ以上併存しているかもしれません。

吃音と自閉症スペクトラム
吃音とADHD
吃音と学習障害(LD)
吃音とチック、音声チック、運動チック
※発達性協調運動障害は身体能力・手先が不器用だったり、力加減がコントロールできないなどがあります。詳細については割愛します

吃音と自閉症スペクトラムとADHDとLDということもあるかもしれません。
下のレーダーチャートのように今後は、Aのさんの発達障害特性はここが強くて
ここはあまり出ていないね。こういう特性があるんだね。ということはこうやって自己分析して、障害特性を防いだり、回避すること、対策もできるかもしれないね。逆に頑張っても無理な部分は受け入れて、得意分野で活躍したり、障害者手帳の利用、社会保障制度の利用、合理的配慮を利用してもいいかもね。

というように、吃音のある人、子どもと保護者ももっといろいろなことが困りごとやライフステージごとにカスタマイズして選択できるようになります。



吃音以外の発達障害について書かれた書籍を図書館で一度読んでみることをオススメします。吃音のある子どものお父さん、お母さんにオススメの書籍はミネルヴァ書房のこのシリーズ書籍です もしも子どもの吃音がわかった場合。もしかしたら他の発達障害もあるかもしれない。これを認識してほしいのです。子どものころに吃音以外にも何かあることがはやく分かっていれば、生きづらさが軽減する可能性もありますし、不利な状況を選ばないようにするという事前の準備や生き方を学ぶこともできるからです。


当事者であれば、子どものころのエピソードがそのまま書籍に書かれている場合もあります。吃音のある子ども親であれば、子どもの行動を注意深くみていれば、嫌がる環境、やる気がなくなるぼーっとしてる、具合悪そうな環境がある、嫌がる音や洋服がある。忘れ物、衝動性、こだわり、とてつもなく才能がある分野がある、あまりにもできない分野がある。記憶力がすごい、カメラアイやレコーダー特性がある、友人関係を維持できない、ルールや法律に厳格でちょっとした逸脱行為を見逃せない(学校で不正をする友達を許せない→イジメられるなど)、ウソをつけない、定型発達者の世界が平然とウソをつくことがあたりまえなので言うことがコロコロ変化する人間関係や上辺だけやお世辞がわからない、定型発達者は人間関係やパワーバランスを読める・空気を読めるため自身に有利な行動をとることや沈みそうな船から逃げることができる、字が汚い、書き順は関係ない、試験勉強を1回しかしなくても良い点が取れる(記憶の仕方が違う)、国語はできるけど計算がぜんぜんできない、手先が不器用、身体の使い方が不器用(体育の評価が低い)、美術の評価が高い、音楽の評価は高いのに嫌いな音がある……



書くとキリがないのでここでやめておきます。


吃音がある人、子どもと保護者は、吃音業界にはじめにアクセスしてしまう可能性が高い

吃音の当事者や家族、保護者、支援者、教員で吃音以外の障害種やマイノリティを差別する人が1000回音読してほしいTwitterのつぶやき 聴覚障害、発達障害をもつ当事者さんのTwitterをご覧ください 僕の彼女は発達障害という本を学研から出している方です



ここで発達障害(精神障害のある人、精神障害者保健福祉手帳を利用する人)のことを差別する、吃音と発達障害(精神障害)とは異なるという価値観や思想を植え付けられてしまうと、その後の障害受容が困難になります。

吃音至上主義というモノ、差別主義に取り込まれないように、染まらないようにしてください。子ども吃音だったとわかった場合、その他の発達障害もあるのではないか?と考える時間も必要になるのです。

吃音至上主義にハマってしまった、洗脳されてしまったことにより、吃音も自閉症スペクトラムも、ADHDもLDも「なんとかなる」ということで、適切な支援や療育を子どものころ(大きく成長する大切な時期に)受けられずに大人になってしまうということが実際に起こりえるからです。



吃音の他にも発達障害があるかもしれないと心配な場合。発達障害のある人、子どもと保護者さんは。発達障害を診る病院に行くこと。自閉症スペクトラムやADHD、LD、チックを扱う当事者団体、親の会にも参加することを強くオススメします。価値観や選択肢はいろいろ知ったほうがいいためです。発達障害の業界と吃音業界の価値観の大きな違い、生き方の違い、選択肢の違い、先輩保護者からのアドバイスや情報引き継ぎの多さにも驚くはずです。また、暖かさやふれあいが吃音業界と全く異なることにも驚くでしょう。

――吃音以外に発達障害も持っている当事者、吃音のお子さんの困りごとが特性が吃音だけではないように思える場合はどこに相談すればいい?
吃音以外に発達障害を持っている当事者やお子さんもいるでしょう。保護者さんもいるでしょう。そういう場合はまずJDDネット、日本自閉症協会、東京都自閉症協会に相談することをオススメします。吃音至上主義という差別主義がなくならない現状を重く見て吃音者、吃音のある子どものことを考える取り組みが開始されたといいます。

吃音業界では『吃音当事者には純粋吃音者が多い』という神話があります。
これは吃音は精神障害ではない、発達障害ではない。あのような可哀想な人とは違うという差別があるからです。前述した『あなたの子供が障害を持って「不幸だ」と思うとしたら、それはあなたが障害者をこれまでどう見てきたかということの反映なのですよね。— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 』というTwitterの投稿がまさにそれです。

吃音の子が生まれてしまった。この日までお父さん、お母さんは『障害者』をどのような価値観で見ていましたか? この価値観が差別的であれば、子どもの吃音は障害じゃない、差別されるようになっては困ると考えるかもしれません。それはお父さん、お母さんが差別の心を持つように育ってしまったからです。学校や職場で障害者がどのように扱われているか知っているからです。でも、それはこれから変えていくしかないのです。障害名、障害種別に関係なく特性が違っても困っている人同士、当事者でも保護者でも連携協力していけばいいのです。

吃音の子ども。どうやら吃音だけが困りごとではない気がする。そう思った場合。吃音業界の耳鼻咽喉科医師に相談しても意味はありません。吃音は発達障害と併存併発することは稀ですよと誤ったアドバイスをする場合もあります。しかし吃音業界はとても狭いです。吃音業界の団体のように、発達障害の団体があります。そこに参加する子ども、若者、大人の中には、ASDと吃音、ADHDと吃音、LDと吃音、ASDとADHDと吃音、などなど複合して特性を持っている人もいます。ということは逆に考えると、吃音業界に参加する吃音当事者にも未診断(または吃音至上主義に染まりすぎて発達障害を受容できない、認めない価値観のため、そもそも確定診断をしたことがない)の発達障害当事者は多いでしょう。

そして吃音業界の医師の言葉を真面目に受け止めずに、しっかり発達障害業界で活躍している精神科医に診断してもらうことをおすすめします。発達障害特性を調べる知能検査(得意不得意がわかる検査)があります。もしも発達障害がある、発達障害特性がある程度あるということが判明すれば、それに合わせた子どもへの接し方も知ることができます。

また保護者さんで、まだ医師に相談する段階ではないなと思う方は。まずは一般向けの専門書を読むことをおすすめします。https://www.minervashobo.co.jp/search/s4448.html
わかりやすいのはミネルヴァ書房のシリーズです。この他にも講談社の健康ライブラリーというシリーズの中にも発達障害を扱った本があります。http://bookclub.kodansha.co.jp/product_list?code=health-library

とりあえずです。購入しなくてもいいので図書館でいいので、発達障害関係の書籍を読んでください。内山登紀夫医師、本田秀夫医師など、NHKあさイチ、ハートネットTVなどにも出演している医師が書いている書籍もおすすめです。

まずは知ることです。
そして、ASDの子ども、ADHDの子ども、LDの子ども、トゥレット症候群の子どもの特性を知ってください。そして、その内容がどうも自分の子どもにもあるかもしれないと思えば、精神科医に相談しましょう。発達障害は吃音を含めて、早期発見早期療育が大切です。障害を治すのではなく、文部科学省がよく使う「可能な限り最大限の発達をうながす」というように、まずは大人になるその日まで、障害特性とどううまくつきあっていくか、コントロールするか、無理な場合大変な場合はどう周囲や他人に助けてほしいとSOSを発信する方法を学ぶか、いろいろ療育があります。そして大人になっても困りごとが多い、発話発語以外でのコミュニケーションもうまくいかない、人間関係の構築や維持ができない、仕事はできるけど(学校はいけるけど)自宅がゴミ屋敷、お風呂が嫌い、掃除や料理ができない、感覚過敏は結局治らないからうるさいところで明るいとこで人が多いところで我慢して働くと(学校にいくと)自宅で何もする元気がない。こういうこともあるかもしれません。こういう場合も精神障害者保健福祉手帳は取得できます。

吃音業界では吃音と発達障害を持っている人は少数であるとされてしまっています。しかし、吃音を持った発達障害当時者や知的障害当事者もいます。彼彼女らと吃音業界の医師や言語聴覚士、社会福祉士、精神保健福祉士は接点がないのです。仮にあったとしても、その事実は公にはできないのです。公にしてしまうと吃音業界で活躍することができなくなるからです。それほど吃音業界は窮屈なのです。

「子どもが発達障害(吃音も含む)だと診断されるまで、今まで私は(お父さん お母さん)障害者差別をしていた」こういうエピソードはよくある話です。要は気づきを得たのです。日本社会での障害者の位置づけ、権利擁護が遅れていること、障害者が学校や職場で社会でどういう扱いをうけているのか、お父さんお母さんが働く職場では障害者がこんなふうに扱われている。だから吃音が障害になっては駄目なんだ。という強い思いこみも、先輩のお父さんお母さんと話せば変化するかもしれません…。そして何が問題の根底にあるのかがわかるでしょう。

お子さんが吃音以外にも困りごと、その他の発達障害を持っているかもしれない。そう思ってしまったとき。こういうときこそ、まず知ることが大切になるんです。そして発達障害の子どもの親の会、団体にもつながってみてください。吃音業界の団体とは違い、保護者会、保護者の団結力、行政や政治への働きかけ、医師や医療従事者福祉従事者との連携力、発達障害を持った医師・言語聴覚士・心理士・社会福祉士・精神保健福祉士・教員の存在と会への参加、マスコミ対応などが全く異なることがわかるでしょう。またお子さんが発達障害であることがわかり、その父か母もまれに両方が発達障害でした!という事例もあります。吃音業界では相談できないこと、相談してください。吃音業界ではこんな相談したら馬鹿にされるんじゃないか、裏で差別されるんじゃないか、裏であの子は純粋吃音者じゃないのよ混血よと言われるんじゃないか、裏でうちの子どもは可哀想な子どもと思われるんじゃないか、やっぱり吃音業界の団体ではASDやADHDやLDやトゥレット症候群のこと相談できないよ…。 こんな心配はいりません。まずはつながってみましょう。


2016年11月28日月曜日

2016年11月27日 東大スタタリングが駒場祭で吃音をテーマに演劇を披露 その内容はセルフヘルプの限界を指摘するものだった

◆筆者感想 

2016年11月27日、東京大学駒場祭の最終日でした。
東京大学スタタリングという学生サークルでは吃音をテーマにした演劇がリーディング形式で披露されました。今回の演劇は、もっともっと100回でも上演してほしいです。
吃音業界のことをこんなにコンパクトに短時間に伝えることができる脚本はこの世にありません。東大スタタリングの今回の劇は問題提起としてわかりやすいです。この脚本は実在の人物に着想を得て創作している内容だと思われますので、非常にリアリティのある作品です。



今回の演劇のテーマは「医療従事者やソーシャルワーカーが見守り役として参加しない、当事者しかいないセルフヘルプグループが如何にして価値観の違いを受け入れず、排除し、腐敗し、崩壊するのか?」という第三者が参加しない当事者会、ソーシャルワークの失敗事例を扱ったことなのかなと筆者は感じました。

この演劇をみた一般の人も、「この当事者会ちょっと怖い。絶対参加したくない」と感じたはずです。医療従事者からみれば「うわー相当こじらせている当事者会だな。今までソーシャルワーカーが参加していないのかな?これはできれば遠慮したい。呼ばれても行きたくない」と感じるレベルです。

劇中にて吃音は障害か障害ではないか?という「内に秘めたる優生思想を問う」シーンも演じられます。これも医療従事者や支援者、他の障害者や難病や社会的障壁のある人が見れば、「うわわああ。吃音者…うわわああ」となんともいえない感情を持つでしょう。

吃音が障害か障害ではないか?
一冊の書籍があります。 『障害を持つ息子へ ~息子よ。そのままで、いい。~ | 神戸 金史』これを読んでほしいと思います。内に秘めたる優生思想や相模原殺傷事件のことが扱われています。



東大スタタリングの詳細はコチラ
http://ut-stuttering.wixsite.com/start

毎日新聞社でも事前記事がありました
http://mainichi.jp/articles/20161116/k00/00e/040/223000c


毎日新聞記事によると

 昨春発足したサークルの名前は、英語で「どもること」を意味するstuttering(スタタリング)からつけた。代表で、今回の脚本を書いた山田舜也さん(25)=同大大学院修士2年=は「吃音は、当事者によって公的支援が必要な障害と考える人がいる一方、個性や話し方の特徴と受け止める人もいる。当事者同士が意見の食い違いで衝突することも少なくないので、今回の脚本は『対話』にこだわった」と解説。山田さんは「対話を通じて人間関係が変化する描写を心がけた。演劇を通じ、吃音者を取り巻く複雑な現実を社会に伝えたい」と話す。

と書かれていました。
東大スタタリング演劇の本番、まさにその通りの内容でした。


吃音者の主義主張の違い、派閥抗争があることが演劇の中でも、それぞれの当事者や支援者の演技という形で表現されました。

この演劇の最重要点は「医療従事者やソーシャルワーカーなど国家資格などを持った支援者が参加しないセルフヘルプグループ、当事者団体はどのように悪い方向へどんどん陥って行き、不利益・不都合なことが起きるのか」という部分でしょう。

今回の演劇を精神医療・発達障害医療に携わる医師、看護師、精神保健福祉士、社会福祉士、言語聴覚士などが観劇すれば「あまりの見事な教科書に掲載されるレベルの失敗事例」だと認識し観劇中でもウズウズ、ソワソワするような内容でした。吃音業界、吃音当事者を支援する場合は困難事例が多いのだろうと認識するでしょう。

東京大学と言えば、熊谷さん、綾屋さんが携わる「おとえもじて」という発達障害者の当事者研究も存在します。ここでは、安心安全のためのルールが決められていること、言いっ放し、聞きっぱなしの手法、どうしても悪い事態になりそうなら運営スタッフがそれを食い止めるということもあります。一般に言われる発達障害者の支援者も今回の東大スタタリングの演劇を見れば、「吃音業界は相当病んでいる。支援困難事例だ。」と感想を持つでしょう。

おとえもじて
http://otoemojite.com/


吃音業界とは長い長い間、本当に当事者のみの世界で成立していました。

例えば、第三者視点の医療従事者やソーシャルワークをできる人が吃音者の当事者会に参加していれば普段は最小限のサポートをしつつ、意見の衝突や考えの押し付け合いや人格攻撃がはじまりそうな場合、吃音は障害ではない、障害者はそもそも可哀想な存在で吃音者は可哀想な障害者ではないと他の障害者を見下す思想、さらに発展した考えや主義主張の対立に空中戦、それが発展し派閥抗争になり、ハルノートが提出され当事者団体の分裂になる前にそれを食い止めて、安心安全な当事者会、居場所を守ったはずです。

吃音業界はこれが無かったのです。
本当に医療従事者やソーシャルワークができる人が、所属しない当事者だけの団体というのは歪みや不利益や不都合なことが起こる、どんどん狭い世界で物事や価値観が共有される、日本赤軍や連合赤軍などと似ているかもしれませんね。吃音業界は。

もしも、吃音当事者団体に医療従事者やソーシャルワーカーが参加し、運営にもご意見番として携わっていれば、2005年の発達障害者支援法を吃音者が見落とすということもなかったでしょうし。仮に吃音が発達障害者支援法に入っていることを隠そうとする動きがあったとしても、それに対抗するパワーもあったでしょう。

少なくとも2014年7月3日に吃音が発達障害者支援法に入っていました!なんて寝耳に水、青天の霹靂な状況にはならなかったはずですし、吃音を苦にした自殺もひきこもりを発生しなかったはずです。「一般社団法人 日本発達障害ネットワーク JDDnet」という発達障害者の連合体にも、2005年から2012年?まで吃音業界の団体である「NPO法人 全国ことばを育む会」が正会員として参加した過去、「一般社団法人 日本言語聴覚士協会」も2007?2008?から現在に至るまで参加している現実があるのだから吃音が発達障害者支援法に含まれていたことは、2005年から知ることができた人はいたわけです。それでも2016年現在でも、吃音が発達障害者支援法に入っていたなんてことは初耳だというテイで責任から逃れようとしている方もいますが。自責の念で潰れることはないのでしょうか?後悔の気持ちはないのでしょうか?と心配になります。



東京大学の学生の視点だと、瞬時に吃音業界の闇を見抜けるのでしょうか?
筆者がこれを認識するのにX年かかっているのに、東大スタタリングの方々はもっと短期間にその闇に気づいたわけです。東京大学の学生は本当に優秀だと思いました。次回は吃音業界を当事者研究する!をテーマにしてほしいなと個人的に感じました。

この深い深い吃音業界の闇に切り込んでくれた東京大学スタタリングという学生サークルには心から感謝の気持ちを表明します。ありがとうございました。

今後も東京大学という多種多様な価値観、多種多様な学部、吃音以外の障害や社会的障壁がある学生や教員などの視点、東京大学という高度な知識を持った学生や教員からの視点などにより吃音業界に意見表明をしてくれることを祈ります。外部から指摘されないと吃音業界は気付くことができない状態に現在陥っているからです。




◆東大スタタリング 「ことばがひらかれるとき」 詳細
(記憶違いがあるかもしれません ご容赦願います)

●会場の待ち時間と終了時のBGMは藤原さくらさん

●場面設定
駒場 夢言会(ムゲンカイ)という吃音当事者団体の例会

●登場人物
・ミッキーさん(本名はヤマネ) 男性 夢言会初参加という設定
初参加の吃音者なので「吃音業界タブー」を知らないので、どんどん爆弾を投下する。ボンバーマン。

・トバさん 副会長 男性 会の運営に徹しているよう見えた。

・コイワさん 毎朝新聞の記者 中国出身で吃音当事者 男性 
吃音者にもいろいろな選択肢があるべきだと考えている人。障害者手帳など社会保障制度のことを訴える。中国出身のため、ダブルマイノリティ。

・サシマさん 介護職員 男性 吃音当事者団体で社会的支援の運動をしていたが、吃音業界の体質に辟易しているよう すでに吃音当事者団体からの卒業を心に決めている 
自閉症スペクトラムっぽいキャラ設定 他人の会話に急に割り込んでくる 受動型ASDのようで仕事を断れないタイプ 終盤で癇癪を起こす 会からも離脱?

・ヤギさん 自営業でスペインバル経営者 初代会長 男性 
吃音が障害ではなく個性だと思っている。
最初からコイワさんとは仲が悪い? 喫煙所で挨拶をしなかった場面がある。無視している?
吃音者の中に実在するギャグ発言を得意とするタイプ そのキャラが処世術なのか? 本当の性格なのかは不明

・トガワさん 吃音当事者ではない 父親が吃音者 それに影響され吃音を研究する立場 女性
吃音を研究する立場であり、吃音治療や改善のために実験協力や専門職としての助言もする


・イヌイシさん とても吃音が重度な人 
サシマさんが癇癪を起こして会場から退出する際に サシマさんへ感謝の気持ちを伝える サシマ
さんがいたからこそ―。と。


●演劇内容

―――当事者が集まりだす

どこかの施設?で駒場夢言会という当事者グループ(セルフヘルプグループ)の例会をしている。

最初の場面、トバさん。初参加のミッキーさんがやってくる。

お互いに自己紹介で吃る部分があるとあるあるネタを披露。

その後、コイワさんがやってくる。

コイワさんは新聞記者でありながら、自身の吃音について情報発信をしている。

つい最近あった、吃音者団体の全国大会も取材報道したという。


サシマさんがやってくる。

タバコを吸っていたそうだ。喫煙所の場所をコイワさんに教える。

トバさんは今日は飲み会もあるよとミッキーさんに伝える。サシマさんも参加しますよねと誘う。


サシマさんは今日は引き継ぎのための書類を持ってきただけ、あとは君たちにまかせるよ的な言い回し。

そこにヤギさんがやってくる。コイワさんとすれ違いませんでしたか?喫煙所にいたでしょう?と言われるが『知らないフリ』をする。

ヤギさんは「ディズニーシー」が発話できないため、他の人に言わせる。(吃音者によくあるネタ)

サシマさんはもう当時者会から卒業するような言い方をする。トバさんが次だという。



トガワさんがやってくる。(トガワさんはこのまま特に発言なし)

こないだの全国大会でも分科会を担当したようだ。


コイワさんが喫煙所から戻ってくる、ヤギさんが気づかなかったという説明をするが、微妙な空気になっている。




―――当事者が集まったので会が開催

それぞれの自己紹介、近況報告。

コイワさんから自己紹介

先日は吃音の記事に協力ありがとうございましたとトバさんから感謝される。

吃音が全国紙に報道されるなんてすごいよねとトバさんが持ち上げて。全国紙の1面に乗るなんて初めてなんじゃないの?と

(するといきなり会話に割り込むサシマさん ASDっぽい)

サシマ『いやかなり前にもあったよ40年くらい前だよ』 

サシマさんの発言を華麗なスルーで、コイワさんが発言を続ける。




イヌイシさんの自己紹介

イヌイシさんは吃音が重度な設定。

かなり自己紹介に時間がかかる。

32歳なので、結婚を考えています。こないだ街コンに参加してみました。

ぜんぜん喋ることができなかったとのこと。




トガワさんの自己紹介

トガワさんは吃音者ではない。大学で吃音の研究をしている。

全国大会でも分科会を担当したとか。



トバさんの自己紹介

現在は休職中?求職中?のトバさん。夢言会の副会長。

先日、トガワさんの実験協力をしてきたとのこと。



ヤギさんの自己紹介

お店で注文を取るときに困ることがあるけどたいしたことない。



サシマさんの自己紹介

夢言会の活動を後輩に引き継ぐという。



ミッキーさんの自己紹介

初参加の人。大学四年生で、11月なのに就職が決まらないという。

書類選考は通過するが面接の後に不採用通知がくるそう。

みなさんはどうしているのか聞きたい。



―――トバさんがトイレにいくため 仕切りをヤギさんに託し フリートークに

ミッキーさんが、いつもこんな風にはじまるのですか?と質問

ヤギさんがこういうのを自助グループというんだと。


ミッキーさんはすごくうれしいです。自分以外にも同じ悩みをもった仲間がいることに安心しましたという。

ヤギさんは安心して吃りなさいよという。

トガワさんみたいな当事者ではない専門家もいるけどと余計な事を口走る。



ミッキーさんは、トガワさんはどのような研究をしているのですか?と質問

トガワさんは理工学部で吃音者の脳の研究をしているという。

父が吃音でそれが吃音に興味をもったキッカケだという。吃音とはどのような感じなのか知りたいという。



コイワさんが当事者でない人が吃音を知るのは難しいと会話に割り込む。

吃ることを読者に伝えるのは難しいという。

世間から理解されないので、まずは世間に知ってもらうことが大事だという。



サシマさんが知ってもらってそれでどうするわけ?知ってもらったら吃音者の悩みって解決するものなの?


まぁまぁサシマくんもっと和やかにとヤギさんが発言。




ミッキーさんはトガワさんが吃音の研究しているので、吃音の治し方、服薬とかあるのかと質問する。



毎度おなじみサシマさん。
吃音は治らないよ。言語訓練、認知行動療法、XXXXXXXX方法など(筆者 聞き取り不能)、確実に完全に治る方法は存在しないのに専門家はお金を俺たちから巻き上げるんだよ。


ミッキーさんは、じゃあ吃音はもう治らないのかという。


トガワさんは、確実に治る方法はなく、子どものときに治らないと大人は難しい。確実に全ての人に効果あるものはないが、症状の軽減や悩みの軽減はできるという。


コイワさんがここで社会的支援や障害者手帳制度について説明をする。社会保障制度について述べる。

もちろんお約束のサシマさんが食いついてくる。


ミッキーさんは、吃音は障害者だったんですか??と驚く。



またサシマさん。
サシマさんは、そういうヤギさんは吃音についてどう思うのか?という。

ヤギさんは吃音は個性で治すべきものでもないという。



ミッキーさんは、吃音で困ることはたくさんあるのにどうして吃音を治すべきでないものと思えるようになるのですか?という。



―――トバさんが戻ってくる

トバさんが、ミッキーさんに話し合いたいテーマはありますか?と聞く。

ミッキーさんは「吃音は治すべきか 治さないべきか」を知りたいという。


トバさんはいきなりすごいテーマ持ってきたね。いいね話し合おうと承認。


サシマさんは職場からタイミングよく電話がかかってきて、一時離席。

その間にミッキーさんからサシマさんは何かあったんですか?(いろいろ噛み付いてくるから)と質問


サシマさんの話をヤギさんトバさんがはじめる。

サシマさんは頑張り過ぎちゃう人なんだ。
仕事をなんでも引き受けてしまうサシマさん。事務や調整の仕事をしているという。
社会的支援の仕事もしていたという。ヤギさんトバさんがサシマさんに感謝の気持ちと、なんでもやってもらっていて悪かったと後悔の気持ちを述べる。

(筆者が、サシマさんは、「断る力」がない、周囲に依頼されると断れない受動型ASDっぽいと感じたところ。最初は頑張って仕事をこなしていても、なぜ自分だけこんなにしているんだと気付くと癇癪を起こす周囲に敵意を向ける。または仕事そのものが能力をオーバーして癇癪を起こすより前にぶっ倒れて、うつ病や適応障害になるパターンもある。最悪、入院になることも)





サシマさんが戻ってくる。

サシマさんが言うには「施設の利用者が亡くなった」がよくあることなので、すぐに向かう必要はないとはなしている。



―――改めてミッキーさんの質問に戻る

ミッキーさんは吃音を治したくないとヤギさんが発言したこと、どうしたらその考えにたどり着くのか知りたい。


ヤギさんは言う。
吃音は今のところ、治す方法はないし原因も不明なんだ。
それを治したい治したいと思うのは辛いことだと思う。
自分を否定することだと思うんだ。


ミッキーさんは言う。
じゃあ治す方法がないから、寧ろ治らないほうがいいって思うことにしているんですか?


ヤギさんは言う。
いやーその。どういうふうにいえばいいのかな。
例えば、ハゲとか顔がよくないとかコンプレックスになったりすこともある。
でも、だからといってみんながみんな整形手術やカツラを利用することはない。
受け入れる人もいるじゃん。


ミッキーさんは言う。
吃音はハゲや不細工と同じようなものだということですか?


ヤギさんは言う。
いや、そういうとちょっと乱暴な言い方だけど。
どうしようもないコンプレックスって開き直るしかないじゃない。
受け入れるっていうか、気にしないっていうのが1番なんじゃないのかな。
吃音は気にしなくなるよと症状も軽くなると言うし。


ミッキーさんは言う。
吃音は気にしなくなると、軽くなる?改善するのですか?


トガワさんは言う。
吃音はどうしても治さなければいけない、吃音が劣ったものだと、吃音に対する否定的な認知や感情を修正することで、吃音を改善する方法はたしかにありますね。


ちょっといいですか?? コイワさんは言う。
私はヤギさんの意見に全く共感できません。
私は吃音により学校でも会社でも対人関係でものすごい苦労をしてきました。
だから吃音は個性だという考え方は受け入れられません。
XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX(筆者 聞き取り不能)


ヤギさんは言う。
そういわれるとちょっと厳しいなぁ。

コイワさんは言う。
人とうまくコミュニケーションしたいというのは当たり前の気持ちです。
研究者の人には、ぜひ、吃音を治す方法も研究してほしいと思います。

また、吃音者が望めば、誰でも障害者手帳を取得できるようにこれからも社会的な運動をはじめなければならないと考えています。



―――吃音は障害なのか?
ミッキーさんから質問

吃音は障害なのですか?
たしかに吃音は治したい。治したいと思うのは当たり前の気持ち。
でも、吃音者が障害者というのは何か変な感じがする。



トバさん。
なるほど、吃音が障害か障害ではないか? どうなんですかトガワさん。


トガワさんは言う。
うーんそうですね。
難しいですね。
もちろん当事者が障害か個性かとらえるのはその人の自由です。
ただ、実際はどこかで線引をしないと医療や社会保障の対象にならない。
医学的な見地だと流暢性障害という分類されています。
そういった意味では障害に含まれると思います。



コイワさんは言う。
吃音は障害ですよ。
吃音で障害者手帳を持っている人もいます。
でも、それはとても限られています。その状況は改善しないといけません。
手帳がないと支援をすぐに受けられませんからね。


ミッキーさんは言う。
でも支援、支援って言いますけど。
吃音って別に車椅子とか点字ブロックが必要なわけじゃないし。
どう助けてほしいかわからない…。


コイワさんは言う。
いま、1番問題なのは新卒の就職活動です。
新卒採用でもっとも重視されるのはコミュニケーション能力です。
XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX(筆者 聞き取り不能)
だから吃音は障害だと受け入れて、障害者雇用枠を利用できる選択肢を増やさないといけない。


ヤギさんは言う。
あのーちょっといい?
吃音があるからって必ずしもコミュニケーション能力が低いとはいえないんじゃない?
田中角栄だって吃音をもっていて、吃りながらめちゃくちゃ演説がうまい人もいるし。


コイワさんは言う。
そういう人はそれでいいですよ。
私が言っているのは社会生活で困っている人のことです。
障害者手帳を取得できるようにしておかないといけないですよ。

ヤギさんは言う。
でもさ、手帳を取得することではなくて、吃音を持ちながらどうやって前向きに生きていくことのほうが大事だと思う―。



ミッキーさんは言う。
症状が軽い人はどうすればいいですか?見られてしまう人はどうしたらいいですか?
僕はいま話せていますけど。
手帳とかは無理だと思うのです。
障害者手帳を取得できない人はどうしたらいいですか?


トバさん。
サシマさん詳しいですよね。お願いします。


サシマさん。
トバさんだって詳しいでしょ。別に俺にふらなくても大丈夫でしょ。


トバさん。
私がこたえます。
2016年4月に障害者差別解消法が施行されました。
障害をもっている人(筆者補足 障害に限らず難病も)が何か困りごとがあるときに申し出れば
役所やお店は過剰な負担にならない範囲でちゃんと対応をしないといけないという法律なんだ。
合理的配慮というんだ。



ミッキーさん。
それは吃音者にも当てはまるんですか?

トバさん。
ええ、この法律は障害者手帳所持の有無はとわないんだ。

ミッキーさん。
吃音への配慮はどういうものが?

トバさん。
たとえば、筆談の対応。人口音声の利用を認めるとか、挨拶ができなくても怒らないとか。
まぁ、吃音者への合理的配慮が過剰な負担になるとは考えにくいからちゃんと配慮してもらえると思います。

ミッキーさん。
でも筆談とかって、話さないように済むっていうするってこと?

ヤギさん。
筆談って話さないよう済むようににすること。そうじゃなくて吃りながら、話すことを諦めないことがとても大切なことなんじゃないの?


コイワさん。
いや、だから。そういう配慮を受けたいかは、個別の対話で決めることで。第三者が決めることではないですよ。

ヤギさん。
でもそれでいいのかな?人それぞれってことで、みたいにまかせてしまった。
吃音だから、話すことから逃げるのはよくないことだと思う。


ミッキーさん。
でも、そんな風に配慮してほしいとか、特別扱いしてほしいってなかなか言いにくいですよね。
僕はできれば周囲に自分が吃音だと知られたくないです。


トバさん。
配慮を受けるために、カミングアウトしなければいけないのは大きな問題ですよね。

コイワさん。
でもそれは仕方ないですよね。
吃音が障害者と思われたくないという感情は、ある意味「障害者」を差別に加担していることです。


ヤギさん。
僕は吃音者は障害者なのかな?って思うけどね。
障害者というほどの重い障害ではないと思う。

ミッキーさん。
喋るのが苦手なのにしゃべらないといけない。矛盾していませんか?
そもそも吃音者が抱える困難って急に頼んでもしかたないことが多いと感じる。

バカにしないでほしいというのはありますけど。基本的に周りのひとは何もできないですし。寧ろ何もしないでほしいと…。

そもそも人口音声とか筆談とかしゃべらないっていう選択肢を希望するでしょうか?


???さん
トガワさんどうですか?


トガワさん
え???私??


ヤギさん
いやーやっぱり僕はね。
吃音は社会で取り組むべき問題なのかな?って思うよ。
障害というのはあんまりよくないと思うよ。
実際にいままでほとんどの吃音者は障害者手帳なんてなくても吃音をうまくやってきたと思うけどな。


コイワさん。
ヤギさんは吃音は障害と認めながら、吃音をXXXXX(筆者 聞き取り不能)
吃音は個性的なものだけど、障害はXXXXXX(筆者 聞き取り不能)
やっぱり他の障害者に対する差別なんじゃないですか?

ヤギさん。
で、でもさ、筆談や人口音声を使うのは、自分の身体を否定していることになる。
吃音を含めて自分なんだから。
やっぱり障害だといって障害者手帳に頼るのはあんまり良いことではないと思うよ。どうやって吃音と上手く付き合っていくかが大事だと。


コイワさん。
ヤギさんみたいな人がいるから。ダメなんですよ。
みんながみんな前をむくことができるかはわかりません。困っている人もいるんです。


サシマさん 癇癪を起こす
(俳優の藤原竜也さんが演じる「゛」濁点が全てにつくような話し方になる)

うううう!!!!!
め めんどくさいんだよ

なおすとか なおさないとか ぜんぶ どうでもいい

いつまで こんな 小さな意見をグチグチとさ。周囲からみたら滑稽だよ。

びびょびょびょびょ 

平等とか対話だとか、そもそも全然対等じゃないし。

今日だって話している人はいつも同じ人だし。

今日だってイヌイシさんは全然話していないじゃないか。


そそそそそs コイワさんあんたのいっていることがくだらないから。

障害者に対する差別ってあんたがしていることじゃないのか?



コイワさん

ん゛は゛ぁ???

私はXXXXXXXXXXXXXXXXX(筆者 聞き取り不能)
困りごとを持っている人が少しでも生きやすいように。


サシマさん
相模原事件の被害者の人たちはどうでもいいというのか
俺は介護職員だからあの事件はとてもショックだった。
全国大会であの事件を考えようとする吃音者いなかったんだ。
コイワさんあんたもそうだ。吃音で悩んで自殺した看護師のことを取り上げても、障害を理由に無残に殺された人のことを取り上げようとしなかった。


コイワさん
それの何がいけないのですか?
私のかかわる、当事者として自分たちの声を発表することの何がいけないのですか?


サシマさん
あんたは被害者の人たちは自分たちじゃないと思っているんだ。
自分たちとは関係のない人達がころされた。
障害をもった自分たちと違う特別な人が殺されたと思っているんだ!
どどど誰もが年を取れば施設に入れるかもしれない。
俺はこの吃音の世界の欺瞞っていうかさそういのに飽き飽きしたんだ。
言いたいやつが自分のいいたいことを言って。
声の小さいやつに仕事をおしつけて。

まぁ。もう俺には関係ないから、あとは好きにやってくれ。



―――サシマさん会場から去る
そこをイヌイシさんが止める。

ぼぼぼぼぼくは吃音で
か かか かか か からかわれて
わ わ わっ わ笑われてずっとひとりぼっちでした。
ぼくもこんな連中の話なんて聞いてやるもんかってずっと

こ こ こ こ こ 心を閉ざしていました。

で でもこのムゲンカイに参加して、サシマさんが話を聞いてくれた。

本当にうれしかったです。



トバさん
そういえば僕もそうでした。
吃音で話せることができなくて。そんなときにサシマさんに誘ってもらったんです。



イヌイシさん
それから周囲の人達に
ちょっと話せるようになりました。自分では無理だとおもっていたけど、街コンとか参加できるようになりました。
サシマさんにやめてほしくない。もっとサシマさんと話がしたい。だから こ こ こ こ ここにいてください。



―――サシマさんはそのまま会場を去る



トガワさん
あ、あの私もいいですか?
父親が吃音といいました。
これまでほとんど父親と話してこなかったです。家庭内別居で暴力をふるいました。
それから父親は家のなかでいない人扱いして、ほとんど会話をせずにすごしてきました。

そして色々あって、このムゲンカイに来て、この会をとおしてみなさんと話して、最近になって
他人と話せるようになったんです。


コイワさん
あのーいいですか?
僕には言葉を話すときに壁が2つあります。
吃音の壁と日本語の壁です。

母国語ではない言葉でコミュニケーションする感じとよく似ているなと思うんですけど。



????さん
ああなるほど。僕も東北出身なんですよ。標準語になおして話すときに、吃音の言い換えとかXXXXXXXX(筆者 聞き取り不能)


コイワさん
なんていうかな
吃音があると吃音がある人とXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX(筆者 聞き取り不能)

トバさん
ちょ!!
ちょっといいですか??


ヤギさん
おやおや。トバくんも意見かなぁ


トバさん
もう時間ですよ。後の予約の人もいるし帰りましょう。
このあとみなさんと渋谷のイタリアンのお店にいきまよう。

トガワさん
ヤギさん ヤギさん今度実験に参加してもらえないですか?

コイワさん
みんなの写真を撮影していいですか?


トバさん

あぁ。いいですよーーー。



ここで藤原さくらさんの楽曲。

終劇